チームの誰もがデータ分析から課題を発見できるように。改善サイクルの内製化を目指すJCBのRightSupport by KARTE活用

JCBのコミュニケーション本部では、顧客が抱える課題の自己解決誘導を行い、事業貢献につなげようとRightSupport by KARTEを導入。問い合わせ原因が可視化され、適切なWebサポートに接続できるようになるなど、さまざまな効果が生まれています。導入背景や運用体制、今後の展望などを伺いました。

株式会社ジェーシービー(以下、JCB)では、「お客様の自己解決向上により、お客様満足向上と事業貢献」を目指して、RightSupport by KARTE(以下、RightSupport)を活用したお客様の自己解決誘導を推進しています。

RightSupport導入以前は、お客様の行動データを取得したり、分析する過程で時間が費やされてしまい、施策を立案する十分な時間が取れていなかったそうです。導入以後は、改善を含めたPDCAが円滑に回るようになり、データを元にした各部との連携もスムーズに。

本記事では、JCB コミュニケーション本部 コミュニケーション企画部 支援推進グループ 谷口啓恵さん、阿部香織さん、千葉成次さんの3名にRightSupportの導入背景から活用方法と成果、そして今後の展望を伺いました。
※本記事記載の所属部署は2024年3月時点の情報です

顧客が抱える課題の自己解決誘導は事業貢献につながる

──まず、コミュニケーション本部のミッションとみなさんの役割を教えてください。

谷口: 2020年からコミュニケーション本部が戦略の軸のひとつとしているのが「お客様の自己解決を促して、事業貢献につなげた結果、コスト効果を得る」というものです。お客様の利便性向上や自己解決向上を目指して活動しています。

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コミュニケーション本部 コミュニケーション企画部 支援推進グループ 谷口啓恵氏

阿部: 支援推進グループでは、この戦略に沿って、お客様のWebでの行動分析を行い、お客様が問題を自己解決できるようチャットボットやFAQなどの施策や、お客様からのコールリーズンを起点にした施策を実行しています。

──顧客の自己解決を誘導するために、最初はどんなことから取り組んだのでしょうか。

千葉: 以前からデジタルでお客様の課題解決を誘導する取り組みは行っていたものの、当時使っていた分析ツールではお客様のお困りごとを具体的に把握するのは困難でした。課題が見えていない状態では、思うように施策を打つこともできませんでした。

谷口: お客様の課題やニーズを定量的に示すことができないため、施策を実施する際の各部門とのすり合わせや調整も困難でした。それもあり、主管部に改善施策の提案を行うことも様々なハードルが存在していたんです。

千葉: 加えて、自分たちで自己解決誘導のPDCAを回していくためには、お客様の行動分析を内製化(自部門での完結)できることは非常に重要です。分析が思うようにできない、というのは乗り越えるべき課題でした。

──そうした課題をどのように乗り越えようとしたのでしょうか。

谷口: 社外のコンサルに改善を任せる選択肢もあったのですが、それよりも社内で内製できることを重視しました。チャットボットやFAQを運営しているメンバーが日々のお客様の行動を知り、仮説を立て、振り返りを行うというPDCAをしっかり回していきたかったからです。以前利用していた分析ツールは使いこなせるまでに時間がかかっていたので、使いこなしやすいツールを探しました。

千葉: 代替する分析ツールを検討する際、大事な要件だったのは「誰でも簡単に、いつでも分析ができる」ということ。加えて、「点ではなく線で、つまりお客様の行動単位を追えるかどうか」は重視していましたね。

元々は分析ツールを探していたのですが、ご縁があってRightSupportについて知りました。同ツールでは分析から施策まで一気通貫で行うことができると説明を受けたんです。施策が出せることは当初想定していなかったのですが、お話を聞いていくうちに「たしかに、分析から施策まで使えるというのは大きいぞ」と考えるようになりました。

問い合わせ原因が可視化され、適切なWebサポートに接続

──実際にRightSupportを導入してからの印象を教えてください。

阿部: 導入後はカスタマーサクセス担当の方から丁寧にレクチャーしていただきました。題材を決めて、一緒に分析から施策まで一通り試してみたんです。思っていた以上に操作が簡単で、「これなら私にもできる」と感じられました。

以前使っていた分析ツールも触ったことはあったのですが、Web系の専門的なツールに慣れていない私にとって、使いこなすのは大変で…。見れている数値がこれでいいのかも不確かでしたし、たくさん機能はあるものの使いこなせていないと考えていたんです。

RightSupportでは、一人ひとりのお客様がどのページをよく見ているのか、各ページからお電話(問い合わせ)に至っている数はどれくらいか、などが細かな設定をせずともレポート画面に表示されます。

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RightSupportのページ軸レポート

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コミュニケーション本部 コミュニケーション企画部 支援推進グループ 阿部香織氏

谷口: 最初は、分析するといっても、どういう数値をどう見ればいいのかというのも探り探りでしたが、実際の数値の見方もフォローいただけてすぐに理解ができました。数値も取得できるようになり、数値の見方もわかるようになったことで、RightSupport導入以後は施策を考えるところに時間を使えるようになりました。

──RightSupportを使ってどのような成果が生まれていますか?

千葉: 具体的な事例として、「一時増額ページ」の取り組みがあります。クレジットカードの利用可能枠の増額には、一時的な増額と、継続的に利用可能枠を増額する「恒久増枠」とがあります。この二つの増額は別物の手続きなのですが、一時増額のページに恒久増額を希望する人や、そもそも一時増額という概念を知らない人が訪れているのではという仮説がありました。

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千葉 :まず、仮説を確かめるためにRightSupportを使って増額手続きに関連するページを比較分析しました。すると、一時増額のページの離脱率が高くなっていることがわかりました。そこから一時増額ページのセッション数や流入元、ページを訪れたお客様一人ひとりの行動をみていくと、検索から流入した後に離脱している方が多くいらっしゃることがみえてきました。

さらに離脱の理由を深掘りするため、顧客のページでの行動を動画で確認できる機能であるKARTE Liveを活用。一時増額ページでのお客様の動きを確認すると、ページのファーストビューを数秒閲覧した後、何も操作せずに離脱しているお客様が一定数いることもわかりました。

希望する内容が見当たらずそのまま離脱している人が多いのではないかと考え、一時増額ページを訪れたお客様に、実施したい手続きを『一時増額』『恒久増枠』『減枠』から選んでもらうWebサポート施策を提示。選択した手続きに応じて、適切なページへと案内しました。

カード利用可能枠の増額希望者へニーズごとに適した手続きをご案内。各手続きページへの遷移率が向上

施策の結果、それぞれの手続きページへの遷移率は3pt向上。さらに施策を利用したお客様のうち約3割が一時増額ではなく恒久増枠を希望するという結果になりました。

阿部: 他にも、クレジットカードの紛失について調べているお客様に表示する埋め込み型ウィジェットの事例があります。以前は「お困りですか」と該当ページ画面の右下にお客様への誘導文言が表示され、そこを押すと分岐するシナリオを設定していました。

RightSupportの新たな機能でページ内に埋め込みが可能になったので、それを利用し、テキストをクリックするとウィジェットが立ち上がるように設定しました。この施策で、お客様のクリック率は30%を記録し、そのうちMyJCB(マイページ)への遷移率は22%と電話導線にも関わらず多くのお客様をマイページへ誘導することに成功しました。

カード紛失でお困りの顧客に、Web完結のカード利用停止導線をご案内。埋め込み型の施策で誘導率22%、多くの自己解決を実現

谷口: 基本的に、紛失の用件はお電話での対応を希望されるお客様が多いのですが、ウィジェットを立ち上げていただければ「Webだと最短何分でできます」といったお知らせができます。訴求の結果、一定数のお客様をWebでの解決へとご案内できたのは発見でした。

千葉: 元々、クレジットカードの紛失に対して行った最初の施策は、会員専用のページで手続きいただくためにFAQの内容を変えることでした。この施策は効果が出ないどころか、マイナスの成果だったんです。「次の施策をどうしようか」と考えて、Webサポート施策のページ内埋め込みにトライしました。データを見ながら仮説検証を進められたからこその成果だと感じています。

負担が大きく、以前は難しかったPDCAサイクルを滞りなく回せるように

──RightSupportの運用はどのような体制で行っているのでしょうか。

阿部: 分析と施策実行は三人で実施しているのですが、それぞれ別の業務もあるため、専任というわけではありません。分析から施策立案までを行う社内ミーティングを定期的に実施しています。

谷口: 施策提案に際しては、必ず事実、課題、仮説をセットで議論します。また、施策実施後は差分を対比で振り返ります。結果が良くても悪くても、施策を通じて得られた学びをナレッジとして蓄積します。それを元に改善のPDCAを回せている手応えがあります。

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施策振り返り時のまとめ内容(PDCAの実例)

RightSupportを軸にPDCAをサイクルを回し施策を積み上げた結果として、多くの自己解決を実現することができました。

千葉: 最近の事例ですと、ポイントの案内ページにおいて商品を確認するまでの導線を検証する施策を行いました。ポイントを商品と交換する際、お客様は商品を確認したいニーズがあるのではないかという仮説がありました。実際にアクションしてみることで仮説通りのニーズがあることは検証できたのですが、Webに誘導する部分は見込んでいた効果に到達しなかったため、現在新たな施策を考えているところです。

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コミュニケーション本部 コミュニケーション企画部 支援推進グループ 千葉成次氏

阿部: 以前までは分析にかかる工数も多く、PDCAでいうところのPDCで止まってしまい、正直なところ再度改善するためのAに充てるだけのエネルギーが残っていませんでした。分析から施策まで一気通貫して行えるRightSupportだからこそ、滞りなくPDCAサイクルを回せている実感があります。

また、お客様の動きがデータで把握できるようになったことで、施策提案時の他部署とのコミュニケーションでも障壁が減りました。以前までは、そもそも提案にエネルギーがかかってしまっていましたが、現在は定量の結果を持って提案ができるのでスムーズに進み、スピードも上がっています。

谷口: RightSupportによって数字が見やすくなったことで、「こういう施策をやってみてもいいんじゃないか」といった提案も生まれやすくなりました。阿部や千葉が提案に対して積極的になったのは大きいですね。

──今後、RightSupportを使ってやってみたいことや、展望をお伺いできますか。

千葉: 最終的には、そもそもお客様の困りごとが発生しない状態を目指していきたいです。そのゴールから逆算して、何から手を打つべきかを考え、Webページに限らず改善していきたい。そのためには各部を巻き込んでいく必要があると思います。あとは、すでにPDCAを繰り返すなかで得られた成功事例を横展開していきたいです。

阿部: 当社ではページごとに必ず業務主管部がいるので、あらゆるWebの改善を相談される状態に持っていきたいですね。部署に関係なく「お客様の自己解決を促してサービスの利便性を向上したい」という思いは一緒だと思うので、RightSupportをうまく使いながら、良いタッグを組んで改善していこうと考えています。

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