マッチング品質向上と開発効率化を両立。タイミーにおけるKARTE活用とプロセス改善
スキマバイトサービス「タイミー」を運営する株式会社タイミーでは、マーケティング施策の強化と顧客体験の向上のためにKARTEを導入。KARTEの導入背景から活用の様子、今後の展望を伺いました。
株式会社タイミーは、「『はたらく』を通じて人生の可能性を広げるインフラをつくる」をミッションに、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングするスキマバイトサービス「タイミー」を運営しています。
働きたい人と、働き手を必要とする事業者という2つの異なる顧客に向けたサービスを展開する同社では、マーケティング施策の強化と顧客体験の向上のためにKARTEを導入。主要指標の改善、迅速な施策実行などの成果が生まれています。
今回、KARTEの導入背景から活用の様子、今後の展望まで、同社のマーケティング本部にて、既存顧客向けのマーケティングや新規顧客向けのマーケティング、マーケティングオペレーションの改善など幅広い取り組みを担当する石鍋 雄一郎さん、本田 朋史さん、多田 亮太さん、都築 誠慈さんの4名にお話を伺いました。
働き手にも、事業者向けにも、自由に働きかけられるようにKARTEを導入
まず、タイミーのサービスについてお伺いさせてください。
石鍋:タイミーは、スキマ時間に働きたい方と人手を必要とする事業者をマッチングするサービスです。そのため、「働きたい人」と「人を雇いたい事業者」という2つの異なる顧客層にアプローチする必要があります。
また、事業者が求める人材にマッチングしやすくすることはもちろん、スポットワークに伴う複雑な手続き(雇用契約、勤怠管理、給与計算、源泉徴収など)もシステムとして提供し、事業者が各種法令等を遵守しつつ、より便利に使っていただけるようにする必要もあります。
サービスとして大切にしているのは求人の「稼働率」という指標です。全社でモニタリングし、マーケティングでもKPIとしています。業界のリーディングカンパニーとして、「タイミーで募集すれば人が集まる」という条件を満たし続けることが強みだと考えています。
事業者側から見れば「人が集まるか」が重要ですが、働きたい方々の側からすれば「ちゃんと仕事が見つかるか」が重要です。そのため、特集ページの作成や機械学習を活用したレコメンドなど、両方の体験向上に注力しています。

みなさまの部署や役割について教えてください。
石鍋:私は、マーケティング本部 カスタマーマーケティング&オペレーション部の部長を務めており、既存顧客向けのマーケティング部門とマーケティングオペレーション部門のマネジメントを担当しています。両部門を連携させながら、顧客体験を向上させることがミッションです。
本田:私はマーケティング本部 マーケティングコミュニケーショングループに所属し、インバウンドでのリード獲得を主に担当しています。SEMやディスプレイ広告などのデジタル広告を活用し、事業者と働き手双方へのアプローチでリード数の最大化を目指しています。
多田:マーケティングオペレーションチームのリーダーとして、マーケターが最大の成果を出せる環境整備が私の役割です。システムの導入・活用を推進し、施策の実現や分析しやすい環境づくりに取り組んでいます。
都築:私の所属は、マッチングクオリティグループです。主にCRM領域を担当し、事業者と働き手双方にとってより良いマッチングを創出することに注力しており、その活動の一環で、事業者側のマーケティング手段としてKARTEを活用した施策を展開しています。
KARTE導入前はどのような課題を抱えていましたか?
石鍋:もともと、個人のお客様向けにメッセージを表示するためには別のツールを導入していましたが、事業者向けの管理画面には適切なツールが導入できておらず、マーケターが自由に施策を展開することが難しい状況でした。
サービスの状況としては、働き手の数に対して求人数が不足しており、その増加が求められていました。事業者側に働きかけて掲載数を増やし、アカウント開設から掲載までの導線を改善する必要があったのです。

マーケティング本部 カスタマーマーケティング&オペレーション部 部長 石鍋 雄一郎氏
さまざまなツールがある中でKARTEを選んだ理由は何ですか?
石鍋:前職でKARTEを活用していた経験があり、良いプロダクトであることを理解していました。社内では既に別のツールを使っていたので「それを事業者向けの管理画面でもそのまま使えばいいのでは」という声もありましたが、既存ツールはアプリでの接客に強い一方、KARTEはWebでの接客やデータ連携に強いという傾向がありました。
また、働き手と事業者への働きかけを別々のツールで管理すると複雑性が高くなってしまうという懸念もありましたが、KARTEはUIも分かりやすく設計されているので、メンバーの学習コストの面でも問題ないと判断しました。
導入はどのように進めていったのでしょうか。
石鍋:2023年12月頃にKARTEとKARTE Datahubを導入し、最初は私が中心となって設計を進めました。2024年2月頃には社内の別チームから本田のリソースを借りて仮想タスクフォース的に運用を進め、同年4月には都築が入社して本格的な運用体制が整いました。
事業成果に加え、エンジニアリソースの有効活用にも貢献
KARTEの導入当初、みなさんはどのように活用したのでしょうか。
本田:当時、初回の求人掲載率の向上が主なミッションでした。もともと、広告による新規顧客の増加を担当していたのですが、KARTEを使うことでその後の初回求人掲載も一貫したコミュニケーションにできればより良い体験が提供できるのでは、と考えていました。
検証期間中は、週2〜3回ほどKARTEにアクセスしていたと思います。その後、KARTE Blocksを主に活用するようになり、LPOなどを行っていますが、こちらでも検証期間中は週に1〜2回は管理画面にアクセスしています。
多田:KARTE Blocksの導入は私が担当しました。当時、サイト訪問者数は順調に伸びていたのですが、CVRが伸び悩んでいました。以前はGoogle オプティマイズを活用していたのですが、サービス提供が終了して時間が経過していたこともあり、新たなLPOツールを検討する必要がありました。すでにKARTEを導入していたこともあり、直感的に操作できるKARTE Blocksであれば運用メンバーの負荷を最小限に抑えて施策を展開できると考えました。
都築:私は当時、プロダクトマーケティングGに所属しており、その中でもテックタッチを手段としたCRM領域を担当しておりました。プロダクトに新しい機能がリリースされた際に、それをお客様にポップアップなどでお知らせして活用してもらえるよう働きかけていました。
たとえば、「バッジ限定公開」という機能がリリースされた際にポップアップでお知らせしたり、求人を掲載する際に該当機能が選択されなかった場合に、そのイベントをトリガーにしてKARTEで「利用してみませんか?」と提案する接客などを行っていました。
前職もCRMだったこともあり、MA関連のツールはいろいろと触っていたものの、KARTEを使うのは初めてでした。ですが、UIを理解できれば、活用に困ることはあまりなかったですね。

マーケティング本部 カスタマーマーケティング&オペレーション部 マッチングクオリティG 都築 誠慈氏
KARTEを使ってどのような施策を実施し、どのような成果がありましたか?
都築:特に効果が大きかった施策として、初回の求人掲載に至った事業者のお客様に対して複数日の一括求人掲載を促すポップアップがあります。この「一括求人掲載」の機能は、既に掲載した求人と同条件での求人を複数日分一括で掲載できるというものです。複数の求人を掲載しているお客様のほうが継続利用につながりやすい傾向があり、そうでない場合は初回掲載で止まってしまう傾向がありました。初回掲載を終えたお客様に、継続してサービスを利用いただくためにも、ぜひ活用してもらいたい機能なのですが、この機能が十分に認知されていないのではという仮説があったのです。
そこで求人掲載完了画面で一括掲載機能を訴求するポップアップを表示したところ、非接客群と比較して、求人作成率が最大8.7pt、一括掲載率が最大4.3ptのアップリフトを創出することができました。さらに接客を対象としたお客様経由の平均売上が最大46%増加するという成果が出ています。

複数日まとめての求人掲載を促すポップアップの画面例
都築:お客様が関心を持ちやすいタイミングに合わせて接客ができるようになったことに加え、セグメントを絞り込んで接客が出せるようになったことも、非常に大きな変化です。以前は、なにか障害やインシデントが生じた場合に、全体にお伝えするしか選択肢がありませんでした。そのため、届く必要のない方にも情報が届いてしまうというマイナスの体験につながっていたのです。KARTEを活用することで、インシデントが発生したとしても、関係あるお客様に対してのみセグメントを絞って個別にポップアップでお伝えできるようになりました。
KARTE Blocksはどのように活用していますか?
本田:KARTE Blocksでは、先程もお伝えしたようにLPOを中心に取り組んでいるのですが、印象的な施策は個人の働き手向けのWebサイトに迷い込んだ事業者向けの導線改善です。以前から、働き手向けのLPに、事業者の方も誤って流入しているのではという仮説がありました。
なぜそれが生じてしまうのかという原因として、「タイミー」を指名検索した方に表示する働き手向けの広告経由で事業者として利用を考えている方が誤って流入してしまっているのではというものがありました。実際に、数字を確認すると該当するケースだと思われる流入が全体の7〜8%ほどありました。
以前から、事業者向けLPへの導線は表示してはいたものの、あまり目立つものではありませんでした。そこで事業者向けの導線を案内するポップアップを固定表示して、表現もリッチにして、目立つように訴求する施策を実施したところ、正しい導線先への遷移数が5%ほど向上しました。これはKARTE Blocksを使って生まれた実績だと思います。

マーケティング本部 マーケティングコミュニケーションG 本田 朋史氏
本田:また、この施策はKARTE Blocksで仮説を検証した後、2週間という短期間でプロダクト側に本実装されました。マーケターが起案した施策をPoC的にKARTE Blocksで検証し、その結果を踏まえてプロダクトに本実装できたのは、良い取り組みだったと考えています。
エンジニアのリソースが限られるなかで、マーケターは検証したいことをすぐに試すことができますし、エンジニアは事業貢献に紐づくプロダクトの開発に集中できます。仮に、検証がうまくいかなかったとしても、マーケ側で施策が完結できるようになったのは大きな変化ですね。
都築:先ほどお伝えした「バッジ限定公開」についても、機能が公開された際に求人のひな形ができた段階でKARTEを通じて接客を出してみるという検証を行いました。この施策は大きく効果が出たこともあり、その後プロダクトに正式な機能として実装されました。
以前は確度が高くないアイデアに対してエンジニアのリソースを充当することは難しく、実装しづらい状態でした。今はKARTEを通じてクイックに検証し、良い結果が得られた場合にプロダクトへ本実装するという流れができています。比較的導入の初期フェーズでこうした実績が残せたことで、今後社内から「KARTEを使って新しい検証ができないか」といった相談が生まれやすくなるのではと考えています。

バッジ限定公開をおすすめするポップアップのイメージ画像
KARTEを通じて顧客理解が進み、改善サイクルも高速化
KARTEを通じて、課題の探索を進めたとも伺っています。どのように行ったのでしょうか。
都築:新機能の開発や課題発見に役立つ仮説を作るため、KARTEを活用してアンケートやインタビューも実施しています。2024年には、KARTE経由でのアンケート協力依頼を約40件、インタビュー協力企業の募集(リクルーティング)を約50件行いました。
特に効果的だったのは、サービス満足度の高いお客様へのインタビュー依頼です。まずNPSなどで満足度を測り、高評価をくださったお客様に限定してKARTE上でインタビュー協力をお願いするポップアップを表示しました。
この方法により、従来は候補探しから打診、日程調整まで人手で行っていたプロセスが大幅に効率化され、わずか2ヶ月弱で31社もの企業にご協力いただけることになりました。KARTEのおかげで、サービスに好意的なお客様へ効率的にアプローチできるようになったのです。
実際にインタビューをしてみると、「日頃タイミーにお世話になっているから役に立ちたい、恩返ししたい」といった温かいお気持ちを持つお客様が多いことも分かり、これは嬉しい発見でした。

サービス満足度の高いお客様にインタビューの依頼をするポップアップのイメージ画像
本田:施策の動作確認として、KARTE Liveを使っています。設定した施策が意図した通りに動いているかチェックするのと同時に、実際のユーザー画面の動きを見て、施策がユーザー体験を損ねていないかも確認しています。
もともとはn1分析に活用したいと考えて導入したのですが、まだ十分には使えていない状況です。今後はそちらの活用も進めていきたいですね。
多田:データ連携に関しても、いろいろと試行錯誤を重ねてきました。基本的なデータの流れとして、自社のBigQueryにデータを集約しています。その上で、KARTEからBigQueryのデータを参照することもあれば、逆にKARTEで取得したログデータをBigQueryに送り、ダッシュボードで可視化するといった使い方をしています。
どのようなデータをどう連携・活用するかは、マーケターも交えて議論しました。「KARTE内で分析を完結させるべき範囲」と、「BigQueryにある自社データと組み合わせて、より深く分析・可視化したい範囲」を明確にし、用途に合った分析ができるように環境を整えています。
例えば、事業者様に「稼働率が高くなりやすい求人」を作成してもらうために、KARTEを使って管理画面上でサポート施策を行うことがあります。この施策の効果を測るには、「実際に働き手とマッチングしたか」という情報が不可欠です。このマッチング実績データは自社のBigQueryにしかないため、BigQueryからデータを抽出し、KARTEのデータと突合させる、といった連携を行っています。

マーケティング本部 カスタマーマーケティング&オペレーション部 マーケティングオペレーションチーム リーダー 多田 亮太氏
KARTEはどのような体制で活用しているのでしょうか?
都築:KARTEを含む各種ツールを扱うマーケティング本部のメンバーが週1回の会議で情報共有をしています。運用上の課題や施策の進捗を共有し、より効果的なマーケティング活動につなげています。
本田:現在KARTEは6〜7人、KARTE Blocksは4人ほどが管理画面を操作しています。複数人が触ることでバッティングが起きないよう、施策はNotionで一覧化して管理し、公開前にはチーム内でのレビューのステップを設けています。
石鍋:KARTEの活用を通じて、弊社のマーケティング組織の形態を変えるためのインサイトも得られました。以前は、「toC」と「toB」という分け方をしていたのですが、2024年11月からは「獲得」と「マッチング」へと、マーケティング部の組織形態を変更しました。
活用範囲を広げ、KPIのさらなる達成を目指す
今後、KARTEをどのように活用していきたいと考えていますか?
石鍋:今後のKARTE活用には、大きな方向性が2つあります。一つは「お客様がどう感じているかを探る課題探索」、もう一つは「KPI達成のためにお客様の行動を促す施策実行」です。この2つの目的に沿って、さらに活用を広げていきます。
具体的には、まずチャネルの拡大。現在は管理画面での接客が中心ですが、これからはLINEやメールなど、他のチャネルでのKARTE活用も検討しています。加えて、データ連携も強化します。Salesforceなどと連携し、顧客データと行動情報をより高度に組み合わせて活用していく計画です。
連携データについても、現状、プロダクトのログ情報は部分的に連携しています。今後は必要に応じて連携する情報を増やし、お客様へのアプローチをより迅速かつ適切なタイミングで行えるように改善していきたいですね。
本田:新規顧客獲得については、広告運用やインバウンドでのリード獲得体制など、デジタル施策の基盤は整ってきました。しかし、まだアプローチできていない潜在的なお客様も多くいらっしゃると考えています。今後は、これまでのリード獲得施策だけでなく、より広い層への認知拡大にも力を入れていきたいです。
また、サイトに来てくださってもアカウント開設や資料ダウンロードに至らないお客様もいます。なぜコンバージョンしないのかという理由を深く理解することも重要な課題です。こうした顧客理解を進める上で、KARTEやKARTE Blocksをさらに活用していきたいですね。

多田:働き手に向けたアプローチ側ではアプリ以外の接点、WebやLINE公式アカウントなどを通じて求人情報に触れる機会を最大化していきたいと考えています。事業者側ではメールを活用して管理画面にアクセスする人を増やしたいです。そのうえで、管理画面内の接客と連動して特定の行動を促す流れを作っていけたらと考えています。
都築:働き手に向けては、KARTE Blocksを活用して「特定地域の求人ランキング」や「初めて働く人向けのおすすめ求人」など、コンテンツをより充実させていきたいですね。事業者に向けては、利用する意思はあるものの活用できていないお客様に対し、なぜ使えていないのかを探索し、最適なソリューションを提供していきたいと考えています。