「受けてよかった」と思える採用体験へ。ヤフーの徹底する“候補者ファースト”とサイトリニューアルの裏側
ヤフー株式会社ではサービスの開発・運営において、ユーザーへの価値提供を第一に考える「ユーザーファースト」と同様、採用活動でも「候補者ファースト」を徹底。ヤフーに応募した人が合否に関わらず「受けてよかった」と思える体験設計や仕組みづくりに尽力してきました。今回は、PD統括本部コーポレートPD本部 干場未来子さん、採用部採用ブランディングリーダー 廣瀬有希さんに、ヤフーの採用におけるミッションやリニューアルの内容、採用サイトにおけるKARTEの利点などを伺いました。
1996年の設立以来、日本のインターネットビジネスを牽引してきたヤフー株式会社(以下、ヤフー)。8500万人以上が利用するポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を筆頭に、約100ものサービスを運営しています。
※従前のヤフー株式会社は2019年に「Zホールディングス株式会社」に商号を変更。同年に新しい「ヤフー株式会社」として事業開始。
同社では、サービスの開発・運営において、ユーザーへの価値提供を第一に考える「ユーザーファースト」と同様、採用活動でも「候補者ファースト」を徹底。ヤフーに応募した人が合否に関わらず「受けてよかった」と思える体験設計や仕組みづくりに尽力してきました。
候補者との重要な接点である採用サイトではKARTEを導入し、多様な候補者が自分に合った情報に出会いやすい場を目指して施策を行っています。2023年1月末にはさらなる改善に向けて、採用サイトをリニューアル。サイトの導線やコンテンツを刷新しました。
今回はPD統括本部コーポレートPD本部 干場未来子さん、採用部採用ブランディングリーダー 廣瀬有希さんに、ヤフーの採用におけるミッションやリニューアルの内容、採用サイトにおけるKARTEの利点などを伺いました。
変化を楽しむ仲間を探す、“候補者ファースト”の採用
はじめに、ヤフーの採用活動におけるミッションを教えてください。
干場:採用のミッションは「未来をつくる『仲間』をつくる」ことです。それによって、ヤフーの企業ミッションである「UPDATE JAPAN 情報技術のチカラで、日本をもっと便利に。」の達成を加速させたいと考えています。
ヤフーは、変化のめまぐるしいインターネットの世界で、既存のルールにとらわれることなく“新しい当たり前”をつくろうとしてきました。設立から20年以上が経った今も、そのあり方は変わりません。最近では、安定した大企業のイメージを持ってくださる方もいますが、新卒でも中途でも「変化を楽しめるかどうか」は、採用の判断において非常に重視しています。
具体的には3つの人物像をまとめています。一つは、変化を楽しめる、または自ら変化をつくり出せる人。二つ目が学ぶ力のある人。最後に、決めたことをやりきる意思、および力がある人です。
PD統括本部 コーポレートPD本部 干場 未来子さん
2016年に発表した「ポテンシャル採用(経歴に関わらず30歳以下が応募できる通年採用制度)」や2020年の「ギグパートナー(さまざまな事業やサービスに携わる副業人材を受け入れる制度)」など、ヤフーは採用においても「未来をつくる」を実践していますね。
廣瀬:未来を切り拓くパイオニアでありたいという想いは、採用や人事領域においても同じです。
何より、ヤフーが仲間に加わってほしい候補者の方々からのニーズがあるなら、できる限りスピーディーに新たな制度や仕組みをつくりたい。それが採用のミッション、「未来をつくる『仲間』をつくる」の達成にもつながると考えているからです。
実際に「ギグパートナー」のリリース時はネーミングやサイト準備にいたるまで、干場さんが主導してかなりの短期間で制度リリースと発表まで行いましたよね。
PD統括本部 コーポレートPD本部 採用部 採用ブランディング リーダー 廣瀬 有希さん
干場:制度をつくると決めてから10営業日で、制度設計から受け入れるポジションの整理、サイトやプレスリリースの準備まで進めました。とても大変でしたが、自分ごととして精力的に動いてくださる多くのステークホルダーが仲間として加わってくれたおかげで、無事にリリースすることができました。複数のメディアにも取り上げられ、日本の働き方をめぐる議論にも一定のインパクトを与えられたのではないかと思っています。
プロダクトと同様、ユーザーのニーズに素早く応え、採用も進化させているのですね。
廣瀬:ここ2、3年は「候補者ファースト」を掲げ、候補者の体験向上に取り組んできました。一般的な事業では、LTV(Life Time Value:一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらすトータルの価値を指す)という考え方が広がっていますが、採用活動でも“LTV”を意識しているんです。応募された方が「受けてよかった」と感じ、そのタイミングではご縁がなかったとしても、いつか再びヤフーを受けてもらえることを目標にしています。
ほかにも、たとえば面談のフィードバックを丁寧に返す仕組みを整える、応募から結果が出るまでの期間を短くする、採用サイトを訪れた人に「いいものを見たな」と感じてもらえるようなコンテンツを充実させるなど、採用プロセスでのさまざまな接点で試行錯誤を重ねています。
ヤフー株式会社 採用ページ
PVや入社者の実際の声をもとに導線やコンテンツを刷新
今回、顧客との接点のひとつである採用サイトをリニューアルした目的を伺えますか?
干場:前提として、ヤフーでは採用サイトとオウンドメディア『linotice』の両方を、オンラインでの採用の接点と考えています。採用サイトは多くの方が訪れて回遊していただくことでヤフーのことを知っていただく場所、linoticeは一度訪れた方が私たちとつながり続ける場所と捉えています。採用サイトを訪れた方が、自分に合ったlinoticeの記事に出会い、ヤフーに関心を持って継続的な読者になる……といった形で両接点をまたいだ体験を設計しています。
そのうえで、今回の採用サイトのリニューアルでは、導線の改善が最大の目的になりました。ヤフーの採用サイトを訪れる方は、ビジネス職もエンジニア職もいますし、正社員を希望する方も副業を希望する方もいます。また、新卒向け、中途向けとサイト自体を分けていないため、当然、訪れてくださる方が求めている情報も多種多様。そのうえ、職種や職歴、採用形態に合わせたページを拡充し続けているため、サイトのコンテンツ数もどんどん増えています。
そもそものサイト導線やコンテンツから候補者目線に立って見直すことで、体験をよりよくできるのではと考えたのです。
実際に、採用サイトの導線をどのように変更したのでしょう?
干場:リニューアル後のサイトでは、トップページの上部に「キャリア採用」と「ポテンシャル採用」のボタンを設けて、属性に合わせて最初に選択できるようにしました。転職希望者と新卒・第二新卒採用への応募者では、求める情報が大きく異なるためです。
廣瀬:加えて、採用トップページと同じくらいのPV数がある「キャリア採用」ページや「ポテンシャル採用」ページにもCEO、CTOメッセージや制度、働き方に関するページへの導線をセットにしたメニューを配置することで、「情報を探させない」設計にしました。
これまでの入社者アンケートで、どのページの情報が入社の決め手になったのかを把握していたので、「必要な情報に必ずたどり着いてもらえる」ということを意識した導線にすることが大切であると考えました。
また、こういったセットメニューの下部には、ヤフー社員のキャリアやワークスタイルを紹介する『linotice』記事へのリンクも設定しています。
関連する職種や気になる制度、働き方について見つけやすくするため、各記事に「#PM/プロダクト企画」や「#営業/コンサルタント」「#働き方」など、職種やトピックに関わるタグをつけ、加えてタグごとの記事一覧ページも用意しています。
サイト訪問者が、自分に関係すると思えるコンテンツやオウンドメディアの記事と数多く出会い、ヤフーの世界観にのめり込んでいけるサイトを目指しました。
リニューアル後の採用サイトでは、動画や社員インタビューなど、コンテンツも新しくなっていますね。
干場:はい。今回のリニューアルでは導線の設計だけでなく、コンテンツ自体の拡充にも力を入れています。過去のページビュー数や入社者アンケートから、候補者の求めている情報を分析し、新たな動画やインタビュー記事を制作しました。
具体的にどういったデータにもとづき、どのようなコンテンツを増やしたのですか?
廣瀬:入社者へのアンケートで「自分の希望する職種の社員インタビューがなかった」という声がいくつか出ていたので、今回は24職種13領域の社員をインタビューし、できる限りサービスや職種を網羅的に用意できるようにインタビュイーのアサインを行いました。
また、入社してからの年数が浅い人の記事ほどページビュー数が多い傾向があることもわかっていたため、より候補者が身近に感じて読むモチベーションが高まるのだろうと考え、できるだけ入社5年以内の社員をアサインしました。
干場:あとは、入社者に「入社の決め手」となったコンテンツをたずねると、ミッション・ビジョンと答える方が多かったんです。やはり、目指す方向に共感する人が入社しているのだなと思い、ヤフーのミッションや世界観を伝える動画『UPDATE JAPAN』と、歴史を伝える動画『日本のインターネットはここからはじまった』を作成しました。
導線設計からコンテンツまで、データをもとに意思決定していったのですね。
干場:はい。私たちが「必要だ」とか「足りていない」と思うものではなく、応募する方の求めている情報は何なのか?を、データを確かめながら検討していきました。
候補者ファーストな採用チームに、KARTEがマッチした理由
採用サイトでは、リニューアル以前からKARTEを導入していますよね。導入の経緯を伺えますか。
干場:きっかけは、以前から情報交換をしていた他社の人事の方から、「自社の採用サイトにKARTEを導入した」と伺ったことでした。候補者に合わせたコンテンツの提案などが実施できて、手応えがあったと聞き、新たなインサイトや施策につながるのではと思ったんです。先ほどお話しした通り、ヤフーの採用サイトはコンテンツ量が多いので、必要な情報のみ届けられる点も、候補者にとってよりわかりやすいサイトにできそうだと感じました。
実際に使ってみて、いかがでしたか。
廣瀬:サイトの構造的に埋め込むのが難しい位置にも、KARTEを使えば、バナーやポップアップなどの要素を表示できます。サイトの制約に関わらず、訪れた人に合わせたコンテンツを、最適な場所に出せるようになりました。
また、そうした施策をエンジニアに頼らず素早く実装できる点は、大きな利点だと思います。ヤフーの採用チームでは、業務をできる限り内製化し、戦略や施策をスピーディーに実行することを大切にしているので、KARTEは最適なツールでした。
干場:ポップアップやバナーなどのコンテンツの表示条件を細かく設定できる点も、コンテンツ量の多い採用サイトにとって、非常に便利だと感じます。たとえば、サイトを訪れる度に役員のメッセージだけが目立つ形で表示されたら、候補者によっては求める情報と合致しないこともあるかもしれませんから。なので、表示される回数に上限を設けたり、一度クリックされたらもう表示されないように設定したりしています。
その他に、これまでKARTEで実施してよかった施策はありますか?
干場:求人応募を完了した方に、簡単なアンケートを表示する施策ですね。入社者へのアンケートと合わせて「応募した人」と「入社した人」の回答を比較することで、より候補者のニーズやモチベーションへの理解を深められています。
また、リニューアル後のサイトトップに表示しているCEOメッセージの画像も、AからFくらいまでパターンを用意して、KARTEでA/Bテストを実施。ユーザーの反応がよかったものを選んでいます。
簡単にA/Bテストを行えるので、サイトの細かい部分までユーザーの反応に合わせて改善できるのも、KARTEの利点だと感じました。
採用サイトも、データドリブンに改善しつづける
最後に、今回のサイトリニューアルも踏まえて、今後の展望について教えてください。
廣瀬:社員インタビューを含め、コンテンツの拡充でより幅広いニーズに応えられた手応えがあります。今後はコンテンツ間の関連も生かして、候補者が求める情報ともっと出会いやすくなる施策にトライしていきたいです。
また、募集要項のページは閲覧数が多い分、そこから離脱する人のボリュームも大きいことが課題です。今回作ったコンテンツを埋め込むなどして、閲覧の体験をよりよいものにできればと思います。
干場:やりたいこと、やれることは無数にあります。まずはリニューアル後のアクセス解析をして、訪れた人の行動やニーズをしっかりと分析し、スピード感をもって施策を実行していきたいです。
引き続きKARTEも活用しながら、データドリブンな意思決定を大切に、候補者の体験をよりよいものにしていきます。