「カスタマーサクセス」とどう向き合うか?ユーザーを成功に導くプロセスとは
サービスの形態や利用方法に変化が生じている現在、企業が注力するカスタマーサクセスにはどのような役割が求められているのでしょうか。
サブスクリプション(定期購入)型のサービスを中心に「カスタマーサクセス」という概念が注目されています。
従来のカスタマーサービスを超える価値を提供するために、新たにカスタマーサクセスの部署を立ち上げる企業も増えてきました。
サービスの形態や利用方法に変化が生じている現在、企業が注力するカスタマーサクセスにはどのような役割が求められているのでしょうか。
新しい時代に求められる「カスタマーサクセス」とは
カスタマーサクセスは、サービスを成功させるための重要な概念として、国内外のスタートアップを中心に広まってきました。
成功体験を提供しファンを育てる
「カスタマーサクセス」はユーザーの不満や不安を解消するためにサポートするだけではなく、サービスを長く使ってもらうために、ユーザーに“成功体験”を提供し利益につなげていくことを目指します。
カスタマーサクセスの考え方では、顧客に商品やサービスを購入してもらうのがゴールではなく、購入後に顧客の成果が最大化できるサポートを行ったり顧客自身が気づいていない課題を解決したりするなかで、“顧客の成功(満足)”に導くことに焦点をおきます。
このような一連のプロセスは、顧客がサービスの“ファン"になることで継続的な利用を促し、新規顧客を獲得するよりも効率的に利益を生み出すことにもつながります。
ユーザーの潜在的な課題に能動的にアプローチする
顧客を成功に導くためには、ユーザーがサービスを利用する上で感じる疑問や問題点を先回りして読み取り、課題を解決することが大切になります。
例えば、サブスクリプション(定期購入)型の食材宅配サービスOisixでは、20分で主菜と副菜が作れるミールキット「KitOisix」でここ数年の利用者数を伸ばしています。
同社は、お惣菜やレトルト食品を買うことに後ろめたさを感じてしまうお客様の感情に注目。“作った満足感”を味わってもらうために、あえて20分という時間のなかで料理を楽しめるキット型の商品を提供しているといいます。食材の購入をゴールにするのではなく、それを使って楽しい、おいしいと思ってもらえるような感情に寄り添った体験を提供することで、解約を抑え、継続利用のサイクルを生み出しています。(参考:「食材を届けて終わりではなく、その先の満足が重要」Oisixの愛され続けるサービスへの取り組み)
このように、単なる顧客サポートに留まることなく、サービスを継続的に選んでもらえるように、顧客体験をアップデートし続けていくことが、カスタマーサクセスの考え方です。
なぜいま「カスタマーサクセス」が注目されるのか
カスタマーサクセスが国内外で注目を浴びるようになった背景には、どのような要因があるのでしょうか。
サブスクリプションモデルの普及に伴い浸透
冒頭にも述べたように、カスタマーサクセスという言葉が広まってきた背景には、サブスクリプション型のサービスの普及があります。
サブスクリプション型のサービスとは、動画配信サービスのNetflixやクリエイティブツールを提供するAdobeのような、利用期間に対して料金を支払うサービスです。
購入して所有する「買い切り」モデルとは異なり、顧客が継続して利用することで利益が生まれるため、企業はこれまで以上に顧客と良好な関係を築き、一歩踏み込んだ体験を提供することが求められるようになりました。
サブスクリプション型のサービスを提供する企業にとっては、顧客の解約率を下げ上位プランへの移行を促すような体験を提供することが、事業の安定化・拡大につながります。
消費者側も潜在的に長く使えるサービスを求めている
企業側がサービスの継続率を重要視する一方で、消費者側も潜在的には長く使えるサービスを求めているといわれています。
数多くの商品やサービスがある現在では、情報を集めて数ある選択肢の中から一つのサービスを選ぶことは、消費者にとっても手間です。さらに新しいサービスを使うためには、設定を再度行ったり使い方を覚えたりと時間的なコストもかかります。
市場の変化とビジネスモデルの変化によって消費者側も自分のニーズを満たすサービスを長く使いたいという欲求をもつようになったと考えられるでしょう。
カスタマーサクセスを実現させるために
“顧客にとっての成功”が何かを考える
まずは、自社サービスにとってのカスタマーサクセスが何かを定義することから取り組んでいきましょう。「企業としてどこを目指すのか」という指針がないと、目の前の対応ばかりに追われてしまいます。
カスタマーサクセスを定義するためには、まずは現状の把握をすることが必要です。サービスを利用し始めてから活用を行うなかで、どのようなユーザーがどれくらいの頻度でどのような機能を使っているか、顧客データ、行動データをつぶさに拾い上げて分析します。継続率や満足度などの指標と照らし合わせながら、行動の妨げとなるような潜在的な課題(ペインポイント)を見つけ、理想とする使い方へと改善していく事が重要です。
組織の体制をつくり施策を実行する
このようなプロセスを実行するために、カスタマーサクセスに取り組む企業のなかでは、オンボーディング(新規顧客にサービスを親しんでもらうプロセス)専門の部隊を作るケースもあります。その上でサービスを利用した顧客がどのような状態になっていれば継続したいと思えるのかを徹底的に考え、“顧客にとっての成功とは何か”という問いを、繰り返し議論していきます。
カスタマーサクセスの定義が固まったら「その定義を実現させるためならどんなことでもやる」という共通認識を、営業、マーケティング、開発などの部門を超えて浸透させ、カスタマーサクセスを実現するための施策を立てていきます。
実際に施策を進めていくうえでは、ツールを導入することで現状の把握や改善が行いやすくなります。Webサイトに訪れる顧客を多面的に捉え行動や感情を可視化するKARTEや、顧客情報管理など横断的なCSサービス提供するIntercomなど、カスタマーサクセスを支えるサービスを効果的に活用していきましょう。
カスタマーサクセスを共通の言語にできるような組織文化をつくることが、サービスの成長につながっていきます。
顧客と対面しリアルな改善に取り組む
カスタマーサクセスを実現させるためには、サービス提供者と顧客とのコミュニケーションの機会を増やしていくことも大切です。
サービスを開発するエンジニアは多くの場合、ディレクターやプロデューサーを通して意見を受け取り、サービス作りに反映させている場合が多いと思います。しかし、サービスの開発者がダイレクトに顧客とコミュニケーションを取って改善点を聞く機会を作ることも、顧客ニーズに合ったサービス作りを行うためには重要です。
たとえ提供するサービスが継続されなかったとしても、継続に至らなかった理由をしっかりヒアリングすることで、データだけでは見えにくい課題も明らかになります。
企業と顧客との心理的な距離を縮め、ユーザーファーストでサービス作りに取り組めるかどうかが、カスタマーサクセスの成功を左右するといってもいいでしょう。
これからのサービス作りに求められるカスタマーサクセス
様々なサービスが生み出され続けている現在では、顕在化した課題に対して改善していくといった受け身の姿勢では、他のサービスとの差別化は難しくなりました。
今後は、顧客自身も気づいていないような潜在的な課題を解決するサービスが世の中に受け入れられるでしょう。
これからのサービス作りにおいては、「どのマーケットのどのようなペルソナがどんなシーン・ユースケースで必要とするニーズか」を明確にすることが絶対条件です。その上で、一歩先まで踏み込んだ価値を提供するカスタマーサクセスを全社一丸となって理解し、定義や体験を時代に合わせてアップデートし続け、顧客とともに成長していくことが求められるでしょう。