マーケティング未経験者がKARTEと向き合った1年間。ユーザーを見つめ、“親切さ”を届ける「Rakuten TV」の思い

・動画配信サービスの「Rakuten TV」を手掛ける楽天株式会社のビデオストリーミング事業部。・マーケティング未経験からKARTE活用に取り組み、ユーザー視点でサービスを改善できるようになるまでの歩みを伺います。

「今の部署に異動してくるまでは、ずっと営業をしていました。だからこそ、KARTEを最初に見たときは何ができるのかさっぱりわからず、不安だったことを覚えています」

そう話すのは、楽天株式会社 メディア&スポーツカンパニー ビデオストリーミング事業部マーケティング課の津輕(つがる)辰彦様です。

動画配信サービスを手掛ける Rakuten TV Japan事業部では、2017年からKARTEを導入。KARTEを有効活用できていなかった状況を変えたのが、2018年6月に異動してきた津輕様でした。今回、KARTEと二人三脚でユーザーに向き合ったその歩みを伺います。

Webマーケ未経験から、KARTEの運用担当者に

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――最初に、Rakuten TVの特徴を教えてください。

Rakuten TV は、18万本以上の映画やアニメ、ドラマなどを視聴できる動画配信サービスです。動画配信サービスはサブスクリプション型が多いですが、Rakuten TVは一部を除き、「つど買い」のモデルとなっています。

サービスの特徴としては「楽天スーパーポイント」を利用できること、米プロバスケットボール(NBA)の試合を独占配信していることが挙げられます(※2019年11月から、NBAの配信はRakuten TVとは別サービスとなり、「NBA Rakuten」となっている)。

――津輕様は、KARTEの運用担当者になった時点でマーケティング業務は未経験だったそうですね。

はい。このチームに配属されるまではずっと営業をしていたので、マーケティングに関する知識はほぼありませんでした。今の部署に異動したときは「アナリティクスって何?」という感じで(笑)。

もちろん、KARTEを使いこなせる状態ではなく、最初は何ができるのかさっぱりわからなかったですね。KARTEの導入自体は、私が異動する1年ほど前からされていたのですが、マーケティングチームのメンバーも「ポップアップを表示してくれるツール」くらいの認識でした。

――そこからどのような変化があったのでしょうか。

異動して半年ほどWebディレクション業務をしていたのですが、経験がない中で効率的にPDCAを回せないことに不安を感じていました。そこで、「もしかしたらKARTEが使えるのでは?」と思いついたんです。

そこで改めてプレイドのカスタマーサクセスの宮野さんに何度か話を聞くうちに、「色々なマーケティング施策を簡単に試せそうだな」とわかってきました。

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楽天株式会社 メディア&スポーツカンパニー ビデオストリーミング事業部マーケティング課の津輕辰彦様

さまざまな機能があることはわかったのですが、具体的にどのような施策を検討できるのか、選択肢が自分の中にそもそもないので苦労しました。改善点の仮説は立てられるのですが、どのセグメントにどういう施策を打てば解決できるかがイメージできなかったんです。

――具体的な施策を立案できるようになるまで、どのように学んでいったのでしょうか。

KARTEのサポートサイトがあったことが大きいですね。サポートサイトはマーケティング未経験でも理解できるくらい詳しく書かれていて、わからない単語も簡単に検索できます。知識がなくても、サポートサイトを見ればある程度はKARTEを使えるようになると思えるくらいでした。

サポートサイトでわからないことがあったときも、宮野さんがアドバイスをくれたので、困らなかったですね。

――施策を検討する中で、ブレイクスルーとなったポイントがあれば教えてください。

基本的な知識が身に付いてきたタイミングで、一人ひとりの行動を時間軸に沿って可視化する「ストーリー機能」を活用し、自分自身がそのユーザーになったつもりでサイト内で同じ行動をとってみました。ユーザーがどのような思いを抱いているのか、それに対して何ができるのか、施策の方向性が見えてきたんです。

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ユーザーを深く知り、最適な情報を届ける

――ユーザーの視点に立って分析したことで、どのような課題が見えてきましたか?

「好みの動画に関する情報を見つけにくい」ことに気付きました。全体のランキングやおすすめ作品は掲載されているものの、自分が好きなジャンルの情報にピンポイントでアクセスするのが難しくて。

おすすめ動画の情報などは一応メルマガで配信しているのですが、そもそもメールをあまり見ない人も多いですし、決して情報が見つけやすいわけでもなかったんです。ユーザーの状況やニーズに合わせてパーソナライズした情報を届けられれば、より多くの方に動画を視聴してもらえると考えました。

――パーソナライズした情報を届けるために、具体的にはどのような施策を?

独占配信しているNBAの試合情報をプッシュ通知する施策を試しました。

まずは、ユーザーが応援しているチームや視聴頻度について知る必要があると思い、アンケートを実施。その結果をもとに、KARTE for Appの「プッシュ通知」機能を活用し、好きなチームの試合情報を配信してみました。そうするとプッシュ通知を受け取ったユーザーのうち26%が視聴を開始し、試合動画の視聴率が平均で3倍になったんです。

プッシュ通知はユーザーに煩わしいと感じられてしまうこともありますが、自分の興味関心に合う情報であればいい反応を得られるんだとわかりましたね。こんな風にユーザーごとに情報を出し分けて施策を回すのは、KARTEでしかできないことだなと思います。

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――その他にユーザーの興味関心に沿ったコンテンツを届けるために行った施策があれば、教えてください。

特定のニーズを持ったユーザーの解約を、新たなコンテンツを追加することで防止する施策を実施しています。例えば、パ・リーグがシーズンオフとなる11月ごろは毎年サービスの解約率が高まるのですが、PMから「この解約をどうにかできないか」という相談がありました。

そこで、解約したユーザーの行動をストーリー機能で見てみたら、何度も解約ページを訪れていたんです。少なくとも3~4回は他のページを回遊しながら、解約に至っている。ユーザーは解約する気まんまんなのではなく、迷っているということです。

引き留める余地があるのではないかと考え、解約ページを見ている方に、ポップアップでファン感謝祭の様子や引退した選手のインタビューなどの関連動画を配信する試みを今年から始めました。始めたばかりなのでハッキリとした成果は出ていませんが、昨年の同月と比較して解約率が低い傾向が出ています。ユーザーを理解する良いきっかけになりましたね。

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顧客体験で差別化を図る

――様々な施策を試行錯誤しながら実施してきたのですね。KARTEの活用に戸惑いがあった状況から活用を進めていく中で、チームの意識に変化はありましたか?

変化はありましたね。今では、キャンペーンを全てKARTEありきで回すようになっています。もちろん、いきなり変化したわけではありません。

最初のころは、チームの定例MTGで「こういう施策をやっています」と丁寧に共有するようにしていました。たとえば、文言を少し変えるだけでもCVRがこれだけ違うとか、もっというとポップアップを下から出すのと右から出すのでも全然違うなど(笑)。そうした報告を当時の上司が面白がってくれ、徐々にKARTEの活用が進んでいきました。

KARTEのおかげで、自信を持ってマーケティングの仕事に取り組めるようになったんですよ。

――とても嬉しいです!どのようなポイントで自信につながったのでしょうか?

KARTEでやっている施策の中には、フロントエンジニアに頼めば同じことができるものもあります。しかし、工数がかかる上に、修正が必要なとき気軽に相談できません。おそらく、施策の実施から効果検証までに1~2カ月必要になるでしょう。

KARTEを活用することで、土日で施策を打ち、月曜日に結果を見て細かい修正を加えるといったように素早くPDCAを回せています。試行を重ねることで、手探りだったWebマーケティングの仕事に自信を持って取り組めるようになりました。

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(右)株式会社プレイド Customer Experience Designerの宮野智世

――今後はKARTEを活用して、どのような施策を展開したいと考えていますか?

売り上げの向上はもちろんなのですが、一人ひとりのユーザーと向き合った“親切さ”を大事にして、「顧客体験で選ばれる」状態を目指していきたいです。動画配信サービスは、コンテンツの内容や値段で他サービスと差をつけるのが難しいため、顧客体験で差別化を図らなければいけないんです。

好みに沿った動画のレコメンドはもちろんのこと、視聴期間が残り少ないレンタル作品で見ていないものがあれば通知したり、視聴が途中でとまっている作品をお知らせしてあげたり……。各ユーザーに最適なタイミングで、喜ばれる情報を届けることに尽きるのかなと。その積み重ねが長期的な関係性の構築につながると思っています。

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