Event Report

CS部門の従業員満足度がCX向上につながる。コンタクトセンターに求められる変化とは

KARTEと、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社のクラウド型コンタクトセンター向けサービス「Amazon Connect」は、2020年1月から機能連携を開始し、CS(カスタマーサポート)部門への活用が期待されています。KARTE×Amazon Connect連携の特徴、CS部門への活用事例、本連携を実際に導入した障害福祉施設の運営支援ソフト「knowbe(ノウビー)」の事例について紹介しました。

羽富 健次はとみ・けんじ
アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 事業開発本部 プラットフォーム事業開発部事業開発マネージャAmazon Connect
SI企業からスタートし、多数の外資系ベンダーにて20年以上に渡りコールセンター業界を経験。日本コールセンター協会 情報調査委員、人材育成委員。カスタマーサービスのあるべき姿やオペレータさんの負荷軽減を日々模索しています。
瀬沼 裕樹せぬま・ゆうき
株式会社リクルート 次世代事業開発室 グループマネージャー
1987年生まれ。早稲田大学卒業後、日本オラクルに新卒入社。大規模なシステムインフラに関するPJに従事。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社、SAPジャパン株式会社を経て、株式会社リクルートに入社。不動産メディアSUUMOのシステム統括部門のマネージャとして、事業横断での業務改善、IT戦略の立案、データ基盤構築・BI導入を経験。2017年より新規事業室に異動し、新規事業のインキュベーションおよびグロース全般を担当。
野村 修平のむら・しゅうへい
株式会社プレイド DX Growth Division Manager
Works Applicationsにて、Senior Vice Presidentとして大手企業向けセールスチームの統轄。北米事業の副社長で立ち上げを経験、アメリカのデジタルマーケティングの進歩を目の当たりにし、日本に帰国と共に、2018年12月よりプレイド参画。現在は、大手クライアントのセールスチームリーダーとして、DXの提案活動に従事。

CXプラットフォーム「KARTE」を提供する株式会社プレイドは2020年8月6日、オンラインセミナー「カスタマーサポートにおけるDX 効率化と顧客体験向上を実現する次世代クラウドコンタクトセンターとは」を開催しました。

KARTEと、アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社(以下、AWS)のクラウド型コンタクトセンター向けサービス「Amazon Connect」は、2020年1月から機能連携を開始し、CS(カスタマーサポート)部門への活用が期待されています。

セミナー前半では、AWSの羽富健次氏とプレイドの野村修平が、KARTE×Amazon Connect連携の特徴、CS部門への活用事例を紹介。後半では、本連携を実際に導入した障害福祉施設の運営支援ソフト「knowbe(ノウビー)」の事例について、運営元である株式会社リクルートの瀬沼裕樹氏に紹介いただきました。

業務効率化だけではない、Amazon Connectで実現する“クラウドコンタクトセンター” の魅力

「近年のコンタクトセンター(コールセンターなどの総称)には、CX(顧客体験)の向上が求められている」とAWSで事業開発マネージャーを務める羽富健次氏は語ります。

AWSが提供するサービスであるAmazon Connectは、2018年から日本での提供を開始。クラウドでコンタクトセンターを設置する仕組みで、企業はAWSのアカウントからインスタンスをセットアップするだけで、コーディングの必要もなく簡単に構築できるのが特徴です。

羽富氏「非常に導入しやすい仕組みであると考えています。一般的に半年から1年程度かかるコンタクトセンター立ち上げが、1ヶ月程度で完了し業務をスタートできます。電話回線もこちらで用意するので、膨大な初期費用はかからず、使った分だけお支払いいただく従量課金制です。

コロナ禍でリモートワーク環境の整備が求められる今、クラウドベースなのでCS業務にあたるオペレーターの所在地も問われません。この点も大きな利点だと考えています」

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コンタクトセンターに求められるCXの向上。そのためには、お客様のより良いCXの実現するだけでなく、CS業務の効率化と業務にあたる従業員の満足度を高めることの両方が重要です。

羽富氏「例えばこういう体験はいかがでしょう? 通常、CS対応はお客様の問い合わせを受電するところから始まります。自動音声応答装置で問い合わせ内容を選択、適切な担当者につなぐ、といったフローなので、オペレーターが少ないとお客様を電話口で待たせてしまいます。どこのコンタクトセンターに電話しても待たされるイメージがありますね。

例えば、お客様がAmazonの場合、問い合わせページでFAQを確認した後、指定箇所に質問内容を入力すると今の待ち時間が表示されます。オペレーターの空き状況にもよりますが、1分以内にこちらからお電話いたしますとメッセージが表示され、後ほどお問い合わせ内容に適したオペレーターから電話がかかってきます。いつつながるんだ?という不快な状況を取り除くだけでなく、お客様にお待ちいただく時間を、大幅に削減することができます」

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さらに羽富氏は、Amazon Connectの特徴としてAWSで提供している他のサービスはもちろん、KARTEやSalesforceのような他社ソリューションと連携できる点を挙げました。KARTEは、顧客の行動に合わせて最適なコミュニケーションを実現するプラットフォームですが、Amazon Connectと連携させることで、どのようなCS対応が実現できるのでしょうか。

羽富氏「例えば、チャットでお客様とのやりとりを進めている中で『これは直接会話した方がいいな』という場面。オペレーターがコールボタンを表示させ、お客様にクリックしてもらうことで、オペレーター側にはAmazon Connectが立ち上がりスムーズに電話へ移行できます。CS対応においてよりお客様に合わせたコミュニケーションが可能になります。業務効率化とCX向上に貢献できると考えています」

CS部門にも押し寄せるDXの波。お客様一人ひとりに寄り添う「動的サポート」が成功の鍵を握る

続いて登壇したプレイドのDX Growth Division Managerの野村は、近年のCSの在り方の変化について語りました。

野村「購買の手段が実店舗からオンラインへと移行する中、当然ながら問い合わせの数も増加しています。CSにおいてメールやSNSなど複数のチャネルが利用されるケースも増えました。さらにコロナ禍の今、出社を要するような従来のコンタクトセンターには人材を集めにくい。CS部門のデジタル化は現在とても重要視されています」

CS部門でのデジタル化を成功に導くキーワードは「動的サポート」だと、野村は言います。

野村「動的サポート、つまりお客様の属性や状態を把握し、能動的に対応していく仕組みです。オンラインのあらゆる導線を整備し、お客様の『自己解決率』を上げ、電話の問い合わせに至る数を減らす。また、解決のために電話が必要となれば、スムーズに電話に導いていく、といった対応が重要になります。

KARTEは、さまざまな段階でこの動的サポートを実現できます。例えば、申し込み意欲の高いと考えられるお客様に対して、チャットでお困りごとを伺い、必要に応じてコールにつなげるといった接客。既に契約しているお客様が料金の確認方法を調べているなら、料金に関するFAQをポップアップで表示し、解決しない場合はチャット機能でご案内する。こうした対応が可能です」

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さらに、お客様の行動の様子を動画で見られるオプション機能「KARTE Live」も、CS部門でよく利用されています。イベントでは、野村からソニーネットワークコミュニケーションズ様の導入事例を紹介しました。

野村「ソニーネットワークコミュニケーションズ様は、当初電話の問い合わせが多く、架電対応の負担軽減と、お客様の課題解決までの時間短縮などCX向上が課題でした。まずKARTE Liveでお客様の操作導線を確認してみると、サポートサイトの案内を見ずに、問い合わせ先の電話番号を探している方が多いことが分かりました。

そこで、KARTEの連携機能の一つであるBEDORE社のチャットボットを導入し、まずはFAQへの導線を用意。それでも解決しなかったお客様だけを電話につなげるようにした結果、電話での問い合わせ数を17%削減できました。

KARTEはお客様と向き合いながら、CXを変えていけるソリューションです。CS担当者がPCDAを回し、CXの変化を体感することで、従業員の満足度(EX)も向上させていけるのではないでしょうか。デジタルの力でCXが向上し、CS担当者が働きやすくなれば、CS人材の採用も強化できるはずです。そんな相乗効果も期待しています」

ツールごとに異なるデータ連携をすることで、シームレスなサポートが可能に

最後に登壇したのは、株式会社リクルートの瀬沼裕樹氏。同氏は、リクルート社の新規事業をマネジメントする部門に在籍しており、あらゆる新規事業に横断する開発基盤としてKARTEを採用していただいています。

瀬沼氏が在籍している新規事業開発室が手掛けている新規事業の一つ「knowbe」では、KARTEとAmazon Connect連携機能により、CS機能の強化を図りました。

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瀬沼氏「knowbeは障害者の福祉施設、就労支援施設などを対象とした運営支援サービスです。勤怠管理や日報管理、面談・支援記録、助成金を受け取るための請求書類作成などが一元管理できます。サービスの特性上、ITリテラシーが高いお客様ばかりではないため、お問い合わせフォームには電話番号を掲載しています。

当初、CS対応には新規事業開発室のオフィスの固定電話を使用していました。コロナ禍もあり、業務効率化に繋がるという点でknowbeのニーズが一気に高まると、オフィスの固定電話が鳴りっぱなしになるほど問い合わせが殺到しました。

新規事業なので、コールセンターを設置したり、CSを外部に委託したりするには時間も予算もない。そこでプレイドさんからKARTEとAmazon Connectの連携を提案していただきました」

瀬沼氏は、KARTEとAmazon Connect連携機能の導入ハードルの低さ、さらにその効果を強調します。

瀬沼氏「先ほどあった通り、Amazon Connectはクラウドベースなので初期費用もなく、実際に1ヶ月程度でスムーズに導入できました。

knowbeでは、お客様に馴染みのある従来のお問い合わせフォームは残していますが、FAQやチャット問い合わせと合わせて、ポップアップ機能で電話対応アイコンを表示するようにしました。電話対応を希望するお客様が、このアイコンから電話番号と問い合わせの種別を入力するとSalesforceからオペーレーターに電話リクエストが届き、Amazon Connectに接続する仕組みです。導入からまだ数ヶ月ですが、電話問い合わせ率を21%削減できました。こちらもご質問内容を事前に把握でき、最適な担当者をつなげられるようになりましたし、お問い合わせページからの離脱も減っています。CXの向上を実感していますね。

また、ツールごとに分断されていた顧客データを集約・蓄積できる『KARTE Datahub』※の機能により、我々が顧客管理のために使っていたSalesforceのデータも連携させることができました。Webサイトから電話対応までのフローが一気通貫で整いましたね」
※顧客データや行動データ、オフラインデータなど分断されているデータベースをKARTEに統合できる機能

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瀬沼氏にはあらゆる状態のお客様に適したCS対応がシームレスに行える体制となり、CX向上につながった好例をお話しいただきました。

CS部門のデジタル化は、対応クオリティと顧客満足度の向上につながる

さまざまな背景も重なり、近年のCS部門に求められるデジタル化。それを推進するポイントは「動的サポート」、すなわち1人の顧客に寄り添うようなCS対応を構築することです。今回ご紹介いただいた事例のように、Amazon ConnectやKARTE、さらに両者の連携機能は、CS部門のデジタル化実現に大きな価値を発揮するのではないでしょうか。

リクルートの瀬沼氏は、CX Clipの他の記事にも登場してくださっています。新規事業開発におけるKARTEとの相性について、事例も含めたより詳細なお話についてはぜひこちらもご覧ください。

https://cxclip.karte.io/interview/recruit/

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