Event Report

テクノロジーを活用し、人間だからこそ生み出せる感動のサポート体験を目指して。ウェルスナビのRightSupport by KARTE活用

2023年10月27日開催の「FIT2023 金融国際情報技術展」内のセミナー「ウェルスナビが取り組むプロアクティブなカスタマーサポートとは?」にて語られた、RightSupportを通してウェルスナビが目指す理想の顧客体験についてレポートします。

「貯蓄から投資へ」という政府のスローガンもあり、より多くの方が投資に取り組むよう促す動きは強まっています。一方で、投資をはじめるために必要な証券口座の開設プロセスは複雑なものとなっており、途中で離脱してしまうことも珍しくありません。

こうした業種において顧客をサポートするためには、丁寧なアプローチが重要。とはいえ、運営のリソースも限られる中で、一人ひとりの顧客をサポートするためには、工夫が必要です。ウェルスナビ株式会社は、こうした課題を解決するために、全自動の資産運用サービス「WealthNavi」に「RightSupport by KARTE(以下、RightSupport)」を導入しました。

2023年10月27日に行われた「FIT2023 金融国際情報技術展」の中で開催されたセミナー「ウェルスナビが取り組むプロアクティブなカスタマーサポートとは?」では、ウェルスナビ株式会社カスタマーサポートグループ責任者の塚原崇氏と、RightSupport を提供する株式会社RightTouch Business Developmentの佐藤丈広が登壇。

顧客による問い合わせが発生する前段階のサポートを改善するプロダクト「RightSupport」の紹介と共に、RightSupportを通してウェルスナビが目指す理想の顧客体験を共有しました。

「エフォートレスな体験」の提供がサービス成長の鍵

WealthNaviは、「長期・積立・分散」の資産運用を全自動で行うサービス。2016年7月に正式リリースし、ユーザーは38.7万人(2023年12月時点)、預かり資産は1兆1,000億円(2024年3月4日時点)に上ります。

2024年1月の新しいNISA(少額投資非課税制度)のスタートに合わせ、非課税制度を活用しながら「長期・積立・分散」投資を自動で実行するサービス「おまかせNISA」をリリース予定であるなど、成長のためのさらなる開発も行っています。(※本セミナー開催当時は新NISA実施前でしたが、現在、同サービスはリリース済みとなっています)

ウェルスナビがサービス成長を目指す上での鍵となるのが、「エフォートレスな体験の提供」だと塚原氏は語ります。

塚原氏 「資産運用は長期に渡って取り組むものであるため、20年、30年という長い期間に渡ってお客様にWealthNaviをご利用いただける環境を整えることは欠かせません。そのためにカスタマーサポート体制の充実を事業戦略の一つに置いています。

お客様がサービスを利用する際に負担のないエフォートレスなサービスを目指して改善を重ねているのですが、どうしてもお客様へのサポートが生じる場合もあります。つまずくことなくサービスを使い始められるお客様もいらっしゃいますが、金融商品という特性上、少し複雑な手続きを踏んでいただかなければいけない場面もあります。

つまずいてしまうお客様に対して、カスタマーサポートが適切なタイミングで手を差し伸べ、ウェルスナビが展開するすべてのサービスにおいてエフォートレスだと感じていただけるような状態を目指しています」

カスタマーサポート体制を強化していく上で、塚原氏はデジタル接点の強化が顧客体験の鍵を握ると考えています。

塚原氏 「金融業界では、書類による手続きが未だに一般的です。ただ、書類による手続きの場合、顧客がどこでつまずいているかわからず、担当者が電話等の対人でやり方をご説明しなければサポートの手が届きません。しかし、デジタルであればお客様の行動を可視化し、問い合わせに至る前でも必要な場面でこちらから手を差し伸べられます。デジタルでこちらからお困りのお客様にアプローチできるツールの導入検討を始めました」

顧客のつまずきを先回りし、問い合わせ前に解決するRightSupport

サービスを使用するなかで生じる顧客の「つまずき」を、顧客自身が解決できるようサポートするため、FAQやチャットボットを導入する企業が増えています。しかし、RightTouchの佐藤は「そういった機能を利用し、お困りごとを自ら解決できるのはごく一部のお客様のみ」だと語ります。

佐藤 「FAQやチャットボットがあったとしても、大半のお客様は自ら課題を解決することができません。なぜなら、サポートを必要とするつまずいたタイミングで、必要な情報が届かなかったり、サポート機能の使い方がわからなかったりするからです。

そういったお客様の多くはサイレントカスタマー化し、良い関係性を構築する前に離脱し、他のサービスへと移ってしまうことも珍しくありません。我々は、お客様からのお問い合わせを受けてからサポートするのではなく、お困りごとが発生したその時、お問い合わせをいただく前段階からしっかりとお客様をサポートしていくことで関係構築ができ、継続的なサービス利用につながると考えています」

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株式会社RightTouch Business Development 佐藤丈広

問い合わせをいただく「前に」顧客にサポートを提供するためのソリューションが、「RightSupport」です。RightSupport は、サイト上の顧客行動を解析することで、問い合わせに多くつながっているページを定量的に可視化。そして、顧客が問い合わせに至るまで、サイト上でどのような動きをしていたのかを分析することで、つまずきの原因を簡単に把握できるようにします。

問い合わせ内容などの情報と組み合わせることによって、「どのページを」「どのように改善するべきなのか」、あるいは「どういったタイミングで、どのようなサポートを提供すべきなのか」の仮説を立案。そして、さまざまな課題に応じたWebサポート施策を用いることで、顧客のつまずきを先回り。それらを通して、RightSupportは顧客が安心して使い続けられるサービスの実現に貢献します。

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佐藤 「お客様がつまずくことなくサービスを利用できる体験を一つひとつ積み重ねることは、サービスやプロダクトのロイヤルティ向上にもつながります。我々のゴールは、お客様の目的を達成するための適切なサポートを企業が提供できる環境を作りやすくすること。自己解決はそのための『手段』であって、目的ではありません」

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顧客の行動を見て、素早く改善を重ねられる状態に

ウェルスナビでは、エフォートレスな顧客体験を目指して、問い合わせ前に顧客をサポートするRightSupportを導入。数あるツールのなかで、RightSupportを選んだのはどのような理由だったのでしょうか。

塚原氏 「一番の理由は、お客様の行動を定性的にも分析できる点です。定量的なデータの場合、ある箇所でつまずいているという事実は検知できるのですが、それ以上のことはわかりません。これまでですと、アンケートを取って把握するなど一工夫して実態を把握しなければいけなかったのですが、RightSupportであればつまずいた前後のn1の顧客行動を動画で見ることもできます。

定性・定量での分析を通じて、『顧客の行動を理解していたつもりだったが、実は理解できていなかった』ことを確認できるのがプロダクトの大きな強みだと思います。私たち企業側で『顧客が欲しがっている、これを提供すればいいよね』と思っていても、実は顧客にとってはそうでないこともたくさんあります。発見した気づきに対して、すぐにサポートアクションを通じて直接アプローチしていけることもRightSupportの良さですね」

ウェルスナビは、RightSupportを導入後、主に以下の3つの施策を展開。それぞれにおける顧客のつまずきを検知して、適切なタイミングで、適切な情報を届けられるようなWebサポート施策を実施しています。※本セミナー実施当時に実施していた施策です

- 施策①ログイン画面:ログインできないお客様からの問い合わせを削減
- 施策②口座開設:口座開設時に必要な本人確認書類のアップロード時での離脱防止
- 施策③出金口座:金融機関名、支店名など細かい情報入力のつまずきをサポート

これらの施策を重ねてみての手応えについて、塚原氏はこのように語ります。

塚原氏 「それぞれの場面において、お客様がお困りであることがわかっていたので、私たちからサポートできるように施策を試しました。3つの施策を試した結果、①、②は効果が出た一方で、③はあまり効果が出ず、むしろお客様に対してネガティブな反応を生み出してしまいました。

うまくいかないことも含め、お客様の反応を見ながら素早く施策を改善できるのはとても良いと感じています。1ヶ月単位であれば、従来のツールでも確認はできますが、RightSupportは1日、1週間などの単位でお客様の反応を細かく確認でき、すぐに施策を止めたり、別の施策を展開したりすることも可能なので、一度試してみるという行動がやりやすい。

複雑さが増す世の中において、お客様が置かれている状況も常に変化しています。まずお客様の行動を観察し、そこに対してアプローチ方法を考える。OODA(※2)(ウーダ)のループを実行できるというのは、強みだと思います」

※2 OODA(ウーダ):Observe(観察)、Orient(方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字を取った略称で、PDCAサイクルに類似した意思決定・行動のためのフレームワークで、変化の速い状況において強みを発揮する手法。

顧客の行動を観察して素早くアプローチすることの大切さについて言及した塚原氏は、RightSupportを活用して「面白い」と感じた機能について続けます。

塚原氏 「今までは端的な情報から、お客様の行動をなんとか想像するしかありませんでした。RightSupportを使えば、一つひとつのページを閲覧したかどうかだけでなく、『お客様がどのようにページを遷移していったのか』という一人ひとりのお客様の行動の流れが確認できるというのはとても面白いですね。定量データと合わせて確認できるので、お客様がつまずいているポイントをしっかりと見ることができています」

テクノロジーを活かし、人間だからこそ生み出せる感動体験を

セッションの終盤、佐藤が「デジタルにおけるカスタマーサポートを実行する上で、どのようなことを大切にしていますか?」と問いかけると、塚原氏からは人間に向き合うことの大切さが語られました。

塚原氏 「適したタイミングで、適した情報をお渡しできないと、どれだけ施策を積み上げても顧客にとってはありがた迷惑になってしまいます。『冷たいお茶が欲しい』方に、熱いお茶を出したら、ご迷惑ですよね。そういったズレが生じると、お客様のエンゲージメントが下がっていきます。一つひとつの良いサポート体験の積み重ねが、エンゲージメントに大きく影響するので、お客様がなにを求めているのかにはしっかりと向き合わなければなりません。

その際に難しいのが、人は常に合理的に行動するわけではないということ。『予想どおりに不合理』という行動経済学の本に書かれているように、人は不合理な行動をとるもの。合理的に解決策を提示すれば自己解決を促せるだろうと考えたとしても、実際はその通りにいかないことが往々にして起こります。

仕事ではお客様をサポートする側の私自身でも、一人の個人としてあるサービスを利用する際に本人確認書類をアップロードしなければならない際、面倒だから途中で止めようとしたことがありました。手続きの仕方はわかっているのですが、どうしても気が進まなくて。その際は、家族の後押しがあって、なんとかサービス利用にこぎつけたのですが、メリットがあると理解していたとしても、『ちょっと面倒だからいいや』といった気持ちから離脱してしまうのが人間です。

お客様が自分たちのサービスを利用するのは、何らかの達成したい目的があるから。そこに対して、テクニカルな問題だけがハードルなのではなく、お客様の感情などにも寄り添ってサポートをしていく。それができれば、お客様の本来の目的達成につながるのではないかと考えています」

最後に、塚原氏は目指すカスタマーサポートの理想状態を、東京理科大学名誉教授の狩野紀昭氏が1980年代に提唱した顧客の求める品質をモデル化した「狩野モデル」を引用しながら解説しました。

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塚原氏 「本来の狩野モデルからは少し簡易にまとめた図です。青い線で表現されている『当たり前品質』は、存在して当たり前とされ、ないと不満につながってしまうものになります。

カスタマーサクセスにおける『テックタッチ』と呼ばれる、テクノロジーを活用したサポートは、ここを不充足、不満足から脱したフラットな状態にできればよく、空いたリソースを他のところに使おう、という考え方だと捉えています。

私たちは、さらに一歩踏み込んで、テクノロジーを用いたサポートで、お客様が満足、充足する、というところまで持っていきたいと考えています。これを私たちは『ハイテック』と呼んでいます。私たちはフィンテックの領域でサービスを提供しています。それもあって、テクノロジーを活用して当たり前品質を引き上げていきたいと考えています。RightSupportのようなツールを活用し、お客様の分析をした上で、適切なサポートを提供することで、テックタッチをハイテックまで上げられる。そう考えています。

その上で、人間だからこそできるサポートにリソースをかけられるようにして、感動体験を提供していきたいと考えています。ここは赤いラインで表現している、魅力的品質につながる部分であり、カスタマーサクセスでは『ハイタッチ』と表現される部分だと捉えています。

お客様の期待値を超える感動体験の提供は、やはり人間でないと難しい。だからこそ、オペレーターも一人ひとりの特性を活かしたサポートができるように、ナレッジを蓄積し、トレーニングをすることで土台を作っていきたいと考えています。オペレーターの個性も伸ばした上で、しっかりとお客様一人ひとりにあわせたサービスを提供する。それが感動体験を生み出すために大切なことになるはずです」

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