Product Story

DXでPDCAの基盤を手に入れる。シームレスなデータ活用で目指す新たな事業価値の創造

膨大なリアルタイムデータから、オンライン上にいる顧客の理解を可能にするCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を提供するプレイド。その可能性をさらに広げ、ニューノーマルへの時代の変化とともにますます重要となった企業のDX推進を支援するのが「KARTE Datahub」だ。その特徴やメリット、「本質的なDX」を促す効果について、同社プロダクトマネージャーの宮原忍氏に聞いた。

宮原忍SHINOBU MIYAHARA
株式会社プレイド Head of Business Development / Product Manager
日揮にて、エンジニア職として情報システムの企画・開発・プロジェクトマネジメントからグローバルIT戦略の策定と実行を担当。その後リクルートへ転職。不動産・住宅領域プロダクトの企画・開発・運用部門の戦略立案から実行マネジメントならびに周辺領域における新規事業の立ち上げ・グロース、中長期経営計画に基づくR&D戦略の策定と実行を担当。 その後、2社での事業開発責任者を経て、2017年よりプレイドに参画。CX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE(カルテ)」の事業開発からプロダクトマネジメント、アライアンス全般をリード。
加川洋平YOHEI KAGAWA
GYYM株式会社 Co-Founder兼三菱地所株式会社 新事業創造部 主事
2011年三菱地所株式会社へ入社。入社後は広報部IR室で機関投資家向け広報等を担当、その後、三菱一号館美術館の運営管理、商業施設・ホテルの開発や再開発における地権者協議、用地取得業務を歴任。現在は橋本氏と共にGYYM株式会社の共同代表を務める。
橋本龍也TATSUYA HASHIMOTO
GYYM株式会社 Co-Founder兼三菱地所株式会社 新事業創造部 副主事
2011年三菱地所株式会社に入社。入社後は三菱地所プロパティマネジメントに出向し、ビルの運営管理を担当。その後、三菱地所の経営企画部に異動し、全社の計数計画や中期経営計画の策定、グループ経営推進等を担当。現在は加川氏と共にGYYM株式会社の共同代表を務める。

膨大なリアルタイムデータから、オンライン上にいる顧客の理解を可能にするCX(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」を提供するプレイド。その可能性をさらに広げ、ニューノーマルへの時代の変化とともにますます重要となった企業のDX推進を支援するのが「KARTE Datahub」だ。その特徴やメリット、「本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)」を促す効果について、同社プロダクトマネージャーの宮原忍氏に聞いた。

CX(顧客体験)の旗手はより高度な顧客理解へ取り組んだ

「KARTE」は、企業が運営するWebサイトやアプリへの訪問者を一人ひとりリアルタイムに解析することで、来訪回数や購買履歴、閲覧しているコンテンツなどのあらゆるデータから、「人」としての文脈を理解し、パーソナライズしたコミュニケーションを実現するユニークなCXプラットフォームだ。
システム上に蓄積されている膨大な顧客関連データをつなぎ、その縦横無尽な掛け合わせの中から、顧客一人ひとりの欲求やサービスへの満足度を浮き彫りにする。管理画面にはそれぞれの顧客の表情がアイコンで表示され、それが「笑っている」(満足)か、「無表情」(不満足)かまでを可視化でき、まるで対面接客のように柔軟に施策を変えられるのが特徴である。
データの収集から解析、その結果に基づく施策まで、ワンプラットフォームでシームレスに実行できるのも「KARTE」のメリットだ。顧客をより深く理解できるだけでなく、タイムリーに施策を打てる点が高く評価されており、大手メガバンクを含めた金融、EC、不動産、人材など様々な業界で導入が進んでいる。KARTEを運営するプレイドは、昨年11月にGoogleからの資金調達も実施した。

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KARTEの管理画面イメージ。顧客一人ひとりの「今」を理解し、最適な体験の設計・実施を可能にする。

その有用性をさらに高めるべく、2018年12月に正式リリースされたのが「KARTE Datahub」である。これは既に「KARTE」を導入した企業から聞こえてきた「DXを推進する上での課題」を大きく反映したものだ。
「昨今企業の中には多くのデータが蓄積されています。しかしデータはためただけでは価値を生みません。必要に応じて組み合わせ、活用することで初めて現場や経営の意思決定に役立つのです。『KARTE Datahub』は、その実現を促すための基盤として開発しました」と説明するのは、プレイドで事業開発からプロダクトマネジメント、アライアンス全般をリードする宮原忍氏である。データサイズによってツールと利用者が分断されていることも、データの「ためっ放し」を生む原因の一つだと、宮原氏は感じていた。

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KARTE Datahubの管理画面イメージ。社内外に存在する多種⼤量なデータをKARTEに統合し、より⾼度なセグメンテーションやアクションの実⾏に加えて、ビジネス上の迅速な意思決定を⽀援する。

「蓄積されたデータの中には、たくさんの活用されないデータが存在します。私たちはその現状と真剣に向き合うべきだと思いました。『KARTE』の外にあるデータをシームレスに『KARTE』の中に統合して、誰でも自由に活用できる基盤が必要だという課題に行き着いたんです。『KARTE Datahub』があれば、『KARTE』がリアルタイムに解析したオンライン上でのユーザー行動データに加えて、実店舗での来店・購買といったオフラインデータやその他社内データをワンプラットフォームで一元管理することができます。その結果、よりデータは高度化され、顧客の姿や心の機微が浮かび上がるのです」

CX・DX・EXのサイクルを回しデータドリブン経営に繋げる

「KARTE Datahub」は、データの分析に基づいて打ち出せる施策のバリエーションも豊富である。
「社内の基幹システムや様々な外部サービスに存在する多種大量なデータを『KARTE』に統合できるように設計されており、例えばSFA(営業支援システム)やCRM(顧客管理システム)、DWH(データウェアハウス)などと接続すれば、Webサイトやアプリの枠内にとどまらない高度な施策も実現できます」と宮原氏は語る。
またエンジニアとしてのキャリアを持つ宮原氏が注力したのは、「ノーコード」と「ナレッジデータベース」による、エンジニアリング業務の効率化・省力化だ。
「『データをAからBに移す』という作業は一見簡単そうではありますが、ここにエンジニアの工数がかかっていました。『KARTE Datahub』なら、非エンジニアでも使いやすい管理画面上の操作でデータの取り込みを自動化することが可能。プログラミングなどの専門スキルを持たないマーケターでも自由に簡単にノーコードで設定できる点が、エンジニアの方々にはとくに評価されていますね。データの加工や突合、分析に必要なSQL(クエリ)については、クエリコレクションから『やりたいこと』を選ぶだけ。SQLによる分析手法のナレッジデータベースを機能として実装したことで、1からSQLを書かなくても、高度なデータ分析や活用を行うことができます」
「KARTE Datahub」を通して、ビジネス部門の従業員でもためたデータを直接活用する機会を得られ、さらにそれを顧客への施策にダイレクトに反映できる。エンジニアの負担が軽減されるだけでなく、CX向上のためのPDCAサイクルも、より高速で回せるようになるだろう。

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KARTE Datahubの全体像。DX推進時の課題である「データ蓄積と活⽤の分断」を解消することで、顧客に対するCXの向上と業務プロセスの効率化を実現する。

また、「KARTE Datahub」の新機能である「Datahub Direct Link(データハブ ダイレクトリンク)」が登場したことで、さらにDX推進が加速する。本機能は、プレイドがGoogleと戦略的パートナーシップを開始したことに加え、「KARTE Datahub」がペタバイト規模の膨大なデータに対して、集計・分析処理を極めて高速に実行可能なデータウェアハウス「Google BigQuery(グーグル ビッグクエリ)」を技術基盤として採用していることから実現した。「Datahub Direct Link」を利用することで、「KARTE Datahub」に蓄積したデータとユーザー企業が自社で契約する「Google BigQuery」に蓄積したデータを「KARTE Datahub」の管理画面上にユーザーインターフェイスレベルで統合し、シームレスなデータ活用を可能にする。すなわち、ユーザーはデータの量や場所を意識することなく、迅速かつ効率的にデータに基づいた事業に資するアクションを実施することができるのだ。
「リクルート様やMonotaRO(モノタロウ)様のような先進的な企業を中心に、『Google BigQuery』の導入が増えています。『Datahub Direct Link』により、お客様がご契約中の『Google BigQuery』に蓄積されたデータも『KARTE Datahub』の管理画面上に呼び出して、同じように分析や活用ができます。これは、Googleと国内外で協業関係にあるプレイドだからこそ提供できる機能です」と宮原氏は説明する。プレイドには、「KARTE Datahub」の活用によって、ユーザー企業に「本質的なDX」を実現してもらいたいという思いがある。
「ニューノーマル下でDXへの機運は高まりました。しかしDXの本来の定義はデジタル技術とデータの活用が進むことによって、社会・産業・生活のあり方が根本から変わること。 また、その革新に向けて産業・組織・個人が大転換を図ることだと考えています。そのためには技術そのものに着目するのではなく、それら技術によって実現できる、いままでになかった驚きと喜びに着目することが大切です。『KARTE Datahub』は企業内のあらゆる従業員がデータから示唆を得て、顧客の目線から顧客中心の体験を創るための機能を実装しています。本質的なDXは単なるツール導入、データ収集では実現できません。 デジタル化を促進することで社員の働き方、アウトプットとして充実しより良い顧客体験の提供が実現される、データドリブンな経営が実現されるといった『CX・DX・EX(従業員体験)のサイクルが高速に回り続ける』ことが最も重要であり、そのための基盤として『KARTE Datahub』を提供しています」

三菱地所の新規事業「GYYM(ジーム)」「KARTE Datahub」の統合データは全スタッフの「共通言語」 になった

ユーザー一人ひとりに向き合って構想した「都度利用型」フィットネスという形

「新規事業においては、提供するサービスがお客様のニーズに本当に適っているかどうか、仮説と検証を繰り返しながら改善を重ねていかなければなりません。そのPDCAサイクルを高速回転させるためのツールとして『KARTE Datahub』を利用しています」。
そう語るのは、スポーツジム・スタジオの施設運営者とユーザーをつなぐプラットフォーム、「GYYM(ジーム)」共同代表取締役の1人である加川洋平氏である。
同社は、三菱地所内の新事業提案制度により2019年11月に設立。「好きな時に、好きなだけ。」をコンセプトに、利用したいフィットネス施設を、入会金や月額費用などを支払うことなく、「都度利用」ができるサービスとして2020年1月にプレローンチした。
「運動はしたいけど、日々の仕事が忙しく、入会金や月額費用を払っても無駄にしてしまうのではないか、という自分たちの悩みに照らし合わせてアイデアを練り上げました」と語るのは、もう1人の共同代表取締役である橋本龍也氏だ。加川氏と橋本氏など、現在三菱地所入社10年目の同期4人がビジネスモデルを考案し、事業化に至った。
BtoB事業を主体とする三菱地所にとって、BtoCサービスへの参入は大きな挑戦である。そこで加川氏らは、より詳細なニーズを探るため、ユーザーとして想定した20~30代の働き盛り世代にペルソナを絞り、100人ほどに詳細なインタビューを行った。
「ヒアリングに基づく仮説の設定と、その検証を何度も繰り返しながら、サービスの具体的な内容を固めていきました」と加川氏は振り返る。
そのかいあって、プレローンチ直後に約2000人だった会員数は、半年余りで約5000人まで急拡大。途中、新型コロナウイルスの感染拡大の影響でサービスを一時的に停止せざるを得なくなったが、顧客理解を十分に深めたうえでサービスを作り上げていたことから、着実に会員を増やすことができた。
橋本氏は、「ローンチ後も、顧客ニーズを理解しながら継続的にサービスを改善し、成長に弾みを付けたいと考えました。適切なツールはないかと探していたところ、三菱地所のDX推進部が『KARTE Datahub』を活用していることを知り、自分たちも使ってみようということになったのです」と語る。

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GYYM加川氏(左)と橋本氏(右)。この日は同社の提携施設の一つ、SIXPAD STATION八王子を訪問。最新のEMS(Electrical Muscle Stimulation=筋電気刺激)トレーニングを受けられる同スタジオだが、「こうした最新のトレーニングを会員の皆様にお伝えすることもGYYMの大切な役割です」と加川氏。

統合されたデータは判断に自信を与えてくれる事業の「今」を示す、一番の指標

顧客理解のためのツールとして「KARTE Datahub」を選んだ理由はどこにあったのだろう。
「Webサイトやアプリから取れるデータだけでなく、様々なデータを結びつけてインサイトを得るというコンセプトに興味がありましたし、数値を見るだけでなく、一人ひとりの『人』の意識や行動に向き合って洞察を深めるという考え方にも共感しました。私たちも一人ひとりへのインタビューを繰り返しながら事業の骨格を作ってきたので、それをより発展的に実行できるツールではないかと感じたのです」と加川氏。
「GYYM」は、会員が「行きたい施設」と、施設が「提供できるサービス」をマッチングする仕組みなので、会員のニーズを施設側に伝えることも不可欠だ。
「マッチング率を高めるため、『KARTE』で収集・分析したアプリ上の会員の閲覧・行動履歴を基に、予約が進みやすい動線づくりや会員が好むアクティビティ、価格設定などを提携先に共有して、サービスの改善を進めています」と橋本氏は説明する。
同社の場合、Webサイトやアプリ上での行動履歴は「KARTE」に、会員情報データは「Google BigQuery」に保存しているが、「KARTE Datahub」の「Datahub Direct Link」によって、それぞれのデータはシームレスに連携されている。
行動履歴と会員情報データを結合させることで、意外なニーズも発見できたという。
「一般にスポーツジムの利用者は、自宅に近くて通いやすい施設を選ぶ傾向にありますが、『GYYM』の会員は、自宅から遠い都心の施設や、流行のフィットネス施設も利用する傾向が強いことがわかりました。入会金や月額費用を支払う必要がないため、近くに寄ったときに都度利用できることが利用スタイルを変化させたのでしょう。こうした新しい発見によって、施設側により効果の高い集客提案ができるのも、様々なデータを掛け合わせて『人』の意識や行動を可視化できる『KARTE Datahub』の魅力だと思います」と加川氏は語る。
もうひとつ、「KARTE Datahub」の導入効果として加川氏が挙げるのは、事業メンバーの間にデータという「共通言語」ができたことだ。社内ベンチャーであるGYYMのスタッフは、加川氏と橋本氏以外は業務委託であり、全員がリモートで働いている。
「メンバーは約20人ですが、小さいながらも企画や営業、システム開発、マーケティングなど、それぞれの専門が異なり、かつフルリモートで働くとなると、どうしても意思疎通が困難になりがちです。その点、全員が『KARTE Datahub』を使えば、その分析データが『共通言語』となるので、コミュニケーションが円滑で、進むべき方向が見えやすいというメリットを感じます」(加川氏)
一方、橋本氏は「『KARTE Datahub』はとても使いやすく、エンジニアの手を煩わさなくても、データの組み合わせや分析、ユーザーへのアクションが簡単に行えるのも便利です。高速でPDCAを回すことができる、願ってもないツールだと思います」と語る。
加川氏は、今後の展開をこう見据える。「現在は1都3県のみでの展開ですが、今後は全国展開や、フィットネス以外のスポーツアクティビティにもサービス領域を広げるなど、継続的な事業拡大を目指しています。結果的に顧客理解の必要性はますます高まるはずですが、『KARTE Datahub』をさらに活用しながら、成長を追求していきます」
※本記事は日経xTECHにて2020年11月13日から掲載されている記事の転載です。

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