Event Report

KARTE for App導入でアプリ改善スピードを高速化。マネーフォワードが成功&失敗事例から学んだこと

マネーフォワードのデジタルマーケティング部に所属する中村麻紀氏と小平剣也氏が登壇したセッションでは、KARTE for Appを導入するまでの経緯や実際に行った施策から得られた学びなどが共有されました。

「KARTEの導入によって、小さな仮説でもすぐに検証することが可能になりました。ユーザー一人ひとりと向き合い、良いプロダクトの提供につなげられるようになったんです」

そう語られたのは、「KARTE for App導入から施策実行チームをつくり成果をだすまでの3ヶ月間」と題した、株式会社マネーフォワードの事例を紹介する「KARTE CX Conference 2019」内のセッション。

2019年11月11日に開催された、KARTEでできることを「ユーザーの体験価値」に落とし込むための思考を学べるカンファレンス。同カンファレンスでは、KARTEを導入する4社をゲストに招き、各社の最新事例を通じて、KARTEで実現するCX(顧客体験)の「最前線」と「可能性」を紹介していただきました。

マネーフォワードのデジタルマーケティング部に所属する中村麻紀氏と小平剣也氏が登壇したセッションでは、KARTE for Appを導入するまでの経緯や実際に行った施策から得られた学びなどが共有されました。

月1~2ペースしかできなかった施策を毎週打てるように

マネーフォワードは、「お金を前へ。人生をもっと前へ。」をミッションに掲げ、お金の見える化アプリ「マネーフォワード ME」や自動貯金アプリ「しらたま」、経済メディア「MONEY PLUS」などを展開。2019年9月からマネーフォワード MEにKARTE for Appを導入してくださっています。

2019年11月には、マネーフォワード MEの利用者が900万人を突破。順調に成長しているように見えますが、小平氏は「まだまだスタートアップなので、部署で抱えている課題は多くありました」と、語ります。

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小平剣也氏

小平氏 「これまでデジタルマーケティング部で施策を実施するためには開発が必要でした。しかしエンジニアの工数が取れないため、都度リリーススケジュールを変更しなければいけない状況。また、アプリは小さな修正でもストア申請が必要になるため、反映には1営業日ほどかかります。スピード感を持って施策のPDCAを回せていませんでした。

この状況を打開するために、ツールの導入を検討。施策の実施を部署内で完結できること、ストア申請なしで施策を打てること、SQLを書かずにセグメントを設定したA/Bテストができるという理由から、KARTE for Appの導入を決めました」

KARTE for Appを導入した結果、月1~2個の施策しか検証できなかったのが、毎週新しい施策を打てるように変化。得られた成果の共有を徹底したところ、チーム内でKARTE for Appに対する期待感も生まれていったそうです。

中村氏 「KARTE for Appを導入してすぐのころは、どうしても経営陣や開発陣などから『費用対効果はどう?』という空気感が出ていました。その空気感に負けないためにも、まず小さくてもいいから成功体験を作ることを意識しました。

とにかく施策の量をこなすこと、そして成果を見える化すること。これらを地道に、徹底してやったんです。そうして施策を実施する中で重要指標の改善効果がきちんと見えてきて、『KARTEを使ったほうがいいね』という気運を社内で高められたと思います」

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中村麻紀氏

さらに、失敗を前向きに捉えられるようになったという変化もありました。

中村氏 「以前はマーケの部署内で1つの施策を打つまでに相当な時間がかかっていたので、数値の改善につながらないとチームに残念な空気が漂ってしまっていました。しかし、KARTE for Appを導入してからは、失敗を失敗だと早く認識し、素早く改善につなげていけるので、チームの空気も良くなっていきましたね」

「ユーザーに提供価値を伝えきれているか」突き詰める

KARTE for Appを使うことで改善したいKPIとして「サービス連携率」と「課金転換率」を設定しました。前者はマネーフォワード MEにクレジットカードや銀行口座をどれだけ連携させたかで、アプリの継続利用に重要な指標となります。後者は有料プランを契約してくれるかどうかであり、アプリの収益基盤に関係する指標。セッションでは、2つのKPIについてそれぞれ実際に行った施策が紹介されました。

中村氏 「サービス連携率の観点では、これまでもアプリの初回立ち上げ時に、『お金の見える化をはじめよう』という簡単なメッセージは表示していたものの、最初のチュートリアルで連携まで完了するユーザーは多くありませんでした。しかし、連携しないとアプリの価値を体感してもらいにくくなってしまう。モチベーションが高いダウンロード時に、各サービスとの連携を増やしたいと考えました。

そこで、マネーフォワード MEと各サービスを連携させると具体的にどのようなメリットがあるかを訴求する施策を実施。たとえば、『クレジットカードと連携すると次回の支払額をお知らせしてくれること』『銀行口座と連携すると給与の入金通知をしてくれること』などをポップアップで表示しました。その結果、最も効果的だったポップアップでダウンロードから24時間以内のサービス連携率は3.42%向上しました」

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中村氏 「アプリのチュートリアルを変えようとすると開発コストがかかってしまうのですが、これはチュートリアル完了後のホーム画面にポップアップを追加するだけで実施できました。ポップアップのデザインを作ってKARTEで設定するだけ。施策を素早く回せたことに喜びを感じましたね」

「サービス連携率」を向上させるための施策に続き、「課金転換率」を向上させるための施策についても共有されました。有料会員の獲得に向けた施策では、ダウンロードから24時間以内の課金転換率が2倍になったそうです。

小平氏 「ユーザー分析によって、有料会員のうち45%が初日に有料プランに転換していることがわかりました。ただ、会員登録後に表示されるホーム画面には有料会員プランに関する説明はなく、画面下部の「その他」を開かなければ詳細を閲覧できない。情報を見つけにくい状況でした」

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小平氏 「有料会員化への導線をわかりやすくすれば、初日の課金転換率が上がるのではないかと仮説を立てて、有料会員への転換を訴求するポップアップをホーム画面に表示する施策を実行しました。その結果、ダウンロード後24時間以内の課金転換率は約2倍まで上がったんです。

この施策を通して、運営側からしたら『伝わっているだろう』と思う情報も、意外とユーザーには伝わってないんだということに気付きました」

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「ユーザーには見えていないサービスの提供価値を伝えきれているか、突き詰めて考えることが重要」と強調します。「提供価値の伝え方」の重要性について、より具体的な学びを得られた施策事例も併せて共有されました。

小平氏 「有料会員プランの中に、『月額プラン』を1年続けた場合より1ヶ月分(500円)お得になる『年額プラン』があります。この年額プランへ誘導するポップアップに加えるテキストを、『500円お得に!』と『1ヶ月分お得に!」でA/Bテストをしたところ、後者の転換率の方が約2.5倍向上したんです。テキスト一つとっても、ユーザーの反応は全然違う。伝えている情報は同じですが、ユーザー目線に立ち、表現に気を配り、提供価値を伝えきれているか考えることの必要性を感じましたね」

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ユーザーと向き合い、プロダクトを磨き上げる

「課金転換率」については、成功例だけでなく失敗した施策も共有いただきました。

中村氏 「マネーフォワード MEは、有料会員向けの機能を1ヶ月間トライアルで使えるので、実際の課金ポイントは課金転換から2ヶ月目になります。無料トライアル終了後も継続してもらうため、「口座を好きなだけ連携できる」や「カードの利用残高がわかる」など、有料会員で居続ける具体的なメリットをトライアル期間中に訴求したんです。ですが、施策を実施する前より継続率は下がってしまいました」

その要因について、中村氏は「すべてのトライアル中のユーザーに、一律で伝えようとしたのが良くなかった。機能の利用状況に応じてセグメントを設定するなど、必要なユーザーに正しく届ける工夫が必要でした」と語ります。

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セッションの最後に、小平氏からKARTE for App活用にあたっての今後の抱負が語られました。

小平氏 「KARTE for Appを導入したことで、『スピーディーな施策サイクル』『数字的成果』そして『ユーザーと深くコミュニケーションをとるためにどうしたら良いか、会社全体で考える空気』が得られたと思います。
今後もKARTE for Appを活用してユーザー一人ひとりと向き合い、PDCAを素早く回すことで、より良いプロダクトにしていきたいです」

登壇資料

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