Event Report

「試着できないから買わない」を解決せよ。VirtusizeとKARTEによるアパレル業界でのCX向上

株式会社Virtusize COO 森永マーク氏、株式会社プレイド 取締役 高柳慶太郎が登壇。Virtusizeはブランド間で微妙に異なるサイズ感をデータ化、フィット感にこだわりCX向上をサポート。データ活用により、パーソナライズされた接客体験が可能になる

2020年2月6日、株式会社プレイド主催のイベント「Virtusize×KARTE アパレルCX向上セミナー」を開催しました。

ECが普及し、オンラインでの商品購入は日常の行動になりました。企業側もただECを運営するのではなく、いかに顧客視点に立ってECを運営するかが問われるようになってきています。これからのEC運営におけるキーワードになるのが「CX(顧客体験)の向上」です。

「データ活用によって実現するアパレルにおけるCX(顧客体験)向上」をテーマに、プレイド取締役の高柳慶太郎、株式会社Virtusize COOの森永マークさんが登壇。サイズデータベースによる「試着体験」とサイズデータの新たな活用法、そしてKARTE導入によるデータ活用事例について語っていただきました。本レポートでは当日語られた内容の一部をお伝えします。

アパレルにおけるサイズ課題を解決するVirtusize

Virtusize森永さんが登場したセッションでは、冒頭で参加者に向けて、「アパレルのオンラインショップにおける課題は何か」という質問が投げかけられました。

森永さん :弊社で調査した結果、約8割のユーザーが「試着ができないから」という理由でオンラインでの買い物を止めていることが分かりました。

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アパレルのサイズ感はブランドによって異なります。例えば、ボトムスのパンツだけでも14,000種類ものパンツサイズが存在します。そこでVirtusizeはこれをすべてデータベース化して、ユーザーに正確なサイズを提示。実店舗で試着するのと同じような安心感をユーザーに提供しているのです。

サイズのデータベース化に取り組むVirtusizeは、2019年に大規模なユーザーテストを実施。オンラインショップに訪れるユーザーを5つのグループに分け、各グループのサイズにおける課題の特定や課題解決のためのソリューションを明確化しました。

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森永さん :例えば、20代から30代の女性像であるKAORUさんは、仕事などで多忙なため基本的にオンラインで服を購入します。過去にタイトな服が合わなかった経験から、ルーズフィットの服しか購入しないようにしています。

こうしたサイズにおける課題を抱えている彼女には「Size Recommendation」という機能で、過去に購入した商品とのサイズ比較を表示し、体型にあったサイズが選択できるようにします。

その他の機能は、ユーザーが自身の身長を入力して丈感を確認できる「Smart Table」、アイテム同士を比較してそのサイズ差を表示する「Size Comparison」など。ニーズに応じて複数の機能を利用することが可能です。

詳細にデータ化することで、よりユーザーに適したレコメンドが可能に

Virtusizeは、アイテムとユーザーのサイズデータを把握し、ソリューションを提供しています。データの取り扱い方が進化すれば、より優れたソリューションの提供も可能になります。

森永さんは、セッション内でリリースを控えている「モデル情報を活用したアルゴリズム最適化」も紹介。この機能がリリースされると、商品画像と商品詳細ページを画像認識と自然言語処理(NLP)で処理し、詳細なデータ化が可能になります。

一般的なデータといえばカテゴリ、カラー、価格、寸法などですが、このアルゴリズムでは素材詳細、洗濯方法、商品のフィット感、スタイルという細かな情報までデータ化されるそうです。

ここまで詳細にデータ化する理由の1つに、商品を着たモデルとユーザーの体型の違いが、オンライン上で反映しにくいことが挙げられます。

森永さん :アパレルブランドの多くは海外モデルを採用しています。例えば、女性の海外モデルの中央値の体型は、身長166cm、バスト80cm、ヒップ85cm、ウエスト58cmとスタイルがかなり良いです。しかし、日本人女性の中央値は年齢にもよりますが、身長158cm、体重51kg、バストは83cm、ヒップ90cm、ウエスト61cmと、モデルとかなり開きがありますので、モデル画像はサイズ感の参考になりにくいです。

しかし、Virtusizeでは画像認識によって服のフィット感を数値化します。例えば、モデル画像では0サイズを着ていてもユーザーには2サイズをお勧めするなど、ユーザーに適したサイズをレコメンドできます。

サイズ感が分からないという問題に、あらゆる角度から切り込んでいるVirtusize。ここまで詳細なサイズデータがあれば、顧客理解が進みCX向上にダイレクトに貢献するでしょう。

トレンド分析や商品設計。広がるデータ活用のバリエーション

データの活用はユーザーが求める商品の開発等にも関わってきます。Virtusizeには膨大なサイズデータが蓄積されており、2019年10月から2020年1月末だけでも約200万点もの商品データを分析したそうです。このサイズデータはさまざまな方面での活用が期待されています。

森永さん :例えば、2018年と2019年の秋冬シーズンとで、メンズパンツMサイズ、の中央値がどれだけ変わったかを比較すると股下だけが約4センチも短くなっていました。過去5年ほどジョガー系パンツが流行っていますが、2019年はこの傾向がさらに進んだことがデータから明らかです。サイズデータ分析によって流行スタイルやトレンドを理解すれば、そのシーズンの売れ筋をいち早くつかんで販売活動に活かせます。

またオンラインで販売された商品の分析結果から、どんなサイズ感の商品が売れるのかも予測できるそうです。

森永さん :オンラインショップで販売されていたレディーズニットのサイズを比較すると、2年前と現在とでは裾幅のサイズが広くなっていることが分かります。裾幅が細すぎるとECでは買われにくいことが分かってきて、商品を改良した結果がサイズデータにも反映されています。

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また昨年と今年の秋冬で売れ筋だったレディースニットのサイズは、あまり変化がありません。この原因を複数のクライアントと推測したのですが、多くのブランドでネット限定商品を販売することが一般的になり、オンラインで購入されやすいサイズに寄せたからではないかという結論に至りました。

ユーザーがオンラインで購入するアイテムのサイズデータを商品開発に活かせば、顧客のニーズに応える商品を生み出しやすくなります。データ活用がビジネスに与える影響はかなり大きいと言えるでしょう。

実店舗のような接客をオンラインでも可能に。KARTEの活用事例

プレイドの高柳のセッションでは、CXとは何か、CXに取り組むべき理由などを語り、アパレルメーカー3社のCX事例を紹介しました。

高柳 :環境に配慮したサステナブルなシューズブランドとして立ち上がったallbirds。昔ながらの優れた技術を持つ国内工場で流行中のスウェットを生産、原価を上げて中間マージンを省き、本当に良いものを販売する10YC。そして、顧客のニーズを深く理解し、メッセージ性の強い商品でヒットを飛ばす#FR2。

それぞれ独自のコンセプトやマーケティング手法で他社との差別化を図り、CX向上に成功しています。

データとCXは密接に関係しています。プレイドが提供するCXプラットフォーム「KARTE」には、「知る」「合わせる」という特徴があります。データを分析してユーザーを「知る」ことで、「合わせる」の精度を高められます。

高柳 :人間同士のコミュニケーションと同じで、その人は何が好きか、今何に興味があるかということが分かると、より深く、その人に合ったコミュニケーションができますよね。KARTEを活用すると、徹底的に相手を知って、相手に合わせて適切なアクションを行ない、顧客体験を向上させることが可能です。

KARTEを利用してCXを向上させた具体例として、PAL CLOSET様が実際に行っているオンライン接客のオペレーションの事例を紹介。

高柳 :まずユーザーがオンラインショップに来店したら「ウェルカムメッセージ」を表示します。実店舗での「いらっしゃいませ」という声かけの代わりです。そのメッセージにはブランドの特徴や、送料無料・予約商品はポイント5倍など、ショップの利用案内を載せ、初回来店のユーザーに基本的な情報を伝えるようにしています。

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ユーザーがショップ内の商品を閲覧し始めると、その行動がKARTE管理画面にリアルタイム表示されます。例えば、ユーザーがデニムを見ているなら、デニムの人気ランキングを表示するなど、その行動に合わせたレコメンドが可能です。ユーザーにとって最適なレコメンドを見せて悩みを解消し、購買につなげていきます。

ユーザーが商品画面に滞在している状態は、実店舗で商品を手に取って悩んでいる状態と同じだと考えられます。その状態を「知る」ことができたら、いくつかの方法で背中を押します。

高柳 :買おうか悩んでいるユーザーには、「5000円以上で送料無料です」「2点購入すると割引率が上がります」などの情報を表示して購買を促します。さらに、特定のユーザーにLINEからクーポンを発行することも可能。店舗のようにユーザーに合わせた接客ができるようになっています。

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こういった個別のアプローチはカート画面でも可能。カートに商品は入ったままの場合は通知を出して、カゴ落ちも防ぎます。またユーザー再来時には以前のEC来訪時データを使って、以前閲覧した商品の類似品を表示します。これは実店舗のスタッフが常連客の好みを掴んでいることと同じ役割ですね。

KARTEには他に、接客行動のリアルタイムな効果測定やさまざまなレポート作成、LINEやMessengerなどサイト外でコミュニケーションが取れる「KARTE Talk」など機能があります。最近ではサイト内でのユーザーの行動が直感的に分かる「KARTE Live」もリリースしました。さまざまなタッチポイントで個別最適化したアプローチをすることで、CX向上に貢献しています。

データを活用してオンラインのCXを上げる

サイズデータによるオンライン上での試着体験から、トレンド分析への応用を実現させたVirtusize。ユーザーの行動を可視化して、ユーザーへの深い理解と個別最適化された行動を可能するKARTE。両サービスは、データ活用によってパーソナライズされた接客行動を可能にする点で共通しています。

データを活用すれば、実店舗のような接客体験をオンラインでユーザーに提供できます。データを活用し、アパレルECにおけるCXを向上させるために必要な情報に触れた時間でした。

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