Event Report

1,000を超える接客施策でCVRを改善。多様な顧客ニーズに応えるベアーズのKARTE活用

2022年7月、「顧客ロイヤルティ向上を阻む壁の越え方」をテーマに開催されたカンファレンス「KARTE CX Conference 2022」。「顧客とは『一期一会』だと思え!多様化するニーズに応える接客の考え方と活用事例」と題したセッションでは、家事代行やハウスクリーニングなどのサービスを展開する株式会社ベアーズのCXへの取り組みが共有されました。

2022年7月、「顧客ロイヤルティ向上を阻む壁の越え方」をテーマに開催されたカンファレンス「KARTE CX Conference 2022」。「顧客とは『一期一会』だと思え!多様化するニーズに応える接客の考え方と活用事例」と題したセッションでは、家事代行やハウスクリーニングなどのサービスを展開する株式会社ベアーズのCXへの取り組みが共有されました。

同社は、Webサイトをはじめ、ランディングページ(以下、LP)、メール、LINEなどの顧客接点で“誠実に心を込めた接客”を実現するためKARTEを導入。開発リソースの限られるなか、エンジニアでなくても施策を実装できる環境を整え、1,000以上の接客施策を実施、CVRの向上につなげています。

セッションには、株式会社ベアーズ コミュニケーションデザイン事業本部 マーケティング&SP部 課長兼BWO統括責任者の倉持剛志氏が登壇。ベアーズの目指すCXや接客の考え方、接客施策の事例、社内浸透やチームづくりの方法が語られました。

法人向けサービスも好調。多様な顧客接点への対応が課題に

ベアーズは1999年に家事代行サービスのパイオニアとして創業。「仕事・家事・育児に忙しい中でも、笑顔で前向きにやりたいことにチャレンジしてほしい」という思いで、家事代行やハウスクリーニング、キッズ・ベビーシッター、高齢者支援など複数のサービスを展開してきました。

個人向けサービスはもちろん法人向けサービスも充実。ベアーズの各種サービスを福利厚生として導入し、従業員が利用できる法人会員制度を、2006年から提供してきました。

倉持氏「近年ではリモートワークの導入に伴い従業員の健やかな生活環境を支援する企業が増え、法人会員数も伸びています。2022年10月時点で720社を超えました。

ベアーズでは『“働き方改革”は “暮らし方改革”から』を謳っており、生活を豊かにすることが、仕事の質を高めることにつながると考えています。

実際に「幸福学の父」とも称される米イリノイ大学心理学部名誉教授、エド・ディーナーらの論文によると、主観的幸福度の高い人はそうでない人に比べて創造性は3倍、生産性は31%、売り上げは37%高い傾向にありました。また、幸福度の高い人ほど職場において良好な人間関係を構築していること、離職率や欠勤率も低いことを示す研究データもあります。

今後も労働人口の減少に伴い、働き方改革による生産性の向上は欠かせない取り組みになっていくでしょう。そのなかで私たちは新しい暮らしインフラとしての役割を担っていきます」

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「新しい暮らしのインフラ」として、個人から法人まで幅広い顧客を対象にサービスを展開するなかで、ここ数年は顧客接点や顧客ニーズの多様化に直面していると倉持氏は言います。

倉持氏「営業やコールセンター、テレビやラジオ、雑誌などに加えて、自社のWebサイトやアプリ、LINE、メール、検索エンジンなど顧客接点が増えています。お客様も自身の生活やニーズに合わせてチャネルを使い分けていらっしゃる方が増えた印象です。

さらにサービスの拡充に伴い、利用するお客様の抱えるニーズも広がっています。子育て中の家族だけでなく、忙しく働く一人暮らしの方、ご両親の介護をされている方、あるいは子育ても仕事も介護もすべて頑張っている方もいらっしゃる。

このように多様な顧客接点で、多様なお客様のニーズに応えていくことは、今のベアーズに課されたチャレンジだと捉えています」

「一期一会」を大切にする接客を目指し、KARTEを導入

続いて倉持氏は、多様化する顧客接点でのコミュニケーションにおいて、ベアーズが大切にしている考えを共有しました。キーワードは、本セッションのテーマに掲げた「一期一会」という言葉です。

倉持氏「一期一会は、もともと茶道の心得を表した言葉。『新明解四字熟語辞典』では『どの茶会でも一生に一度のものと心得て、主客ともに誠意を尽くすべきこと』とあります。今という時間を『最良の時』まで高め、後悔のないよう、誠実に心を込めて接すること。そんなふうに私たちは理解しています。

家事代行を利用される方のなかには、スタッフを自宅に招き入れることに『プライバシーは大丈夫だろうか』や『誰が来るかわからない』といった不安を抱えている方もいらっしゃいます。デジタルのサービスですから個人データの扱いなどを気にされる方も少なくないでしょう。

だからこそ、私たちはあらゆる接点において安心感を抱いていただけるよう、心を込めて接客したい。一人ひとりのお客様にとって、ベアーズを利用する一瞬一瞬が『最良の時』になるにはどうすべきかに向き合いたいと考えてきました」

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デジタルの顧客接点におけるKARTEの導入も「一期一会」な接客を届ける取り組みの一環だったと倉持氏は話します。

倉持氏「KARTEならリアルタイムのデータをもとに、一人ひとりのお客様のニーズに丁寧に寄り添う接客を実現できるという期待がありました。また、データと人の力を最大限活かして、よりよい顧客体験をつくりたいというプレイドの目指す世界観への共感も大きかったです。それをしっかり事業として形にし、着実に資金調達などを行っている点も魅力でした」

思想的な共感に加えて、具体的な機能面でも決め手となったポイントがあったそうです。

倉持氏「気軽に接客のアクションを実装できることです。ベアーズは社内のエンジニアの数が決して多くはない。さらにサイトでは複数のサービスの情報を扱っており、構成もシンプルではありません。KARTEは使い方がわかりやすく、施策の実装や更新をエンジニアでなくても一定行える点が魅力でした。

また、機能が豊富なことに加えて『KARTE Blocks(サイトを構成する要素をブロックで分けて更新・評価・改善できるプロダクト)』や『KARTE Live(顧客のサイト上の動きを動画で確認できる)』など、目的に合わせて他のプロダクトも組み合わせて使える点にも惹かれました」

サイトやLP、メール、LINEでも。“心を込めた”接客施策でCVR向上

では、実際にKARTEを導入してから今まで、どのような施策を行ってきたのでしょうか。セッション後半では、WebサイトやLP、メール、LINEなど様々な接点で行ってきた施策を紹介いただきました。
Webサイトを訪れた顧客に合わせたコンテンツの最適化
Webサイトでは、来訪回数や閲覧したページ、流入元などに合わせて、トップに表示するポップアップの内容やタイミングなどを最適化しています。

なかでも、キャンペーン終了数日前からキャンペーン期間をカウントダウンするポップアップは高い成果が見られ、鉄板施策となっているのだそう。倉持氏は「お得な情報をお知らせすることで、サービスの利用を迷っている方に、申し込むきっかけを届けられたら」と語ります。

その他、特定のパラメータ経由でコンテンツを変更し案内するポップアップ施策として、顧客の住む地域の天候状況に合わせ、天候に左右されやすい商品を案内するポップアップや、占いコンテンツの結果に合わせて、サービスのクーポンコードや申し込みページを案内する施策なども行なっているそうです。

モバイルサイトでは「家事代行」や「ハウスクリーニング」などのサービスページの画面下に、フッタメニューのような見た目のバナーを常時表示。サービスの特徴や料金プランなど、顧客が利用時に知りたい情報やお得なキャンペーンなどを案内しています。

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Webサイトのコンテンツ改善やLPOには、KARTE Blocksも積極的に活用しています。KARTE Blocksは、タグを1行入れるだけで文言や画像、ボタンなど、Webサイトを構成する要素あらゆる要素を「Block」に分解し、管理や更新、評価を行える点が特徴。

倉持氏は「『Block』単位で簡単にABテストしたり、作成した『Block』を別のページでも活用したりと、サイト運営を効率化できている」と語ります。詳しい活用事例は、以下の記事でも紹介していますので、興味のある方はぜひ参照してみてください。

参考記事:「思い込みを捨て、お客様を正しく知る」ABテストで続けるサービス改善

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メールやLINEでのメッセージ配信には、KARTEに加えてKARTE Datahubを使っています。KARTE Datahubでは、基幹システムや外部サービスなど、社内外に点在するデータの統合・分析、多様な顧客接点でのアクションまでをワンストップで行うことができます。

ベアーズでは、基幹システムに蓄積された顧客データと、KARTEで把握した行動データを掛け合わせ、顧客の行動やニーズ、サービスの利用状況などに応じたセグメントを作成。それらに合わせてメールの配信内容やタイミングを出し分けています。

LINEでは、トーク画面下に固定表示されるメニューや自動応答のメッセージの内容をセグメントに合わせて最適化。ABテストも継続的に行い、表示するコンテンツやメッセージの内容を改善しています。

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顧客の動きを動画で確認できるKARTE Liveも活用。ポップアップの表示タイミングが顧客の閲覧を妨げていないかチェックしたり、エラーが出た際に顧客の画面表示を確かめたりと、細やかな改善に活かしています。

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これらの施策によって、Webにおける問い合わせのCVRは新型コロナウィルス感染症前の前年対比で、家事代行サービスは131%、ハウスクリーニングサービスは111%と大幅な伸びを達成しています。

倉持氏は数々の施策とその成果を振り返ったうえで、改めてKARTEの魅力を語ってくださいました。

倉持氏「KARTEでは、多少の施策のカスタマイズであれば、エンジニアでなくても少し勉強すれば、問題なく行うことができます。

さらに、その施策の結果をデータで確認し、改善のアクションまで素早く実施できる。だからこそ失敗を恐れず、トライし続けられるのです」

社内浸透の鍵は、新たなツールへの“ワクワク感”の醸成?

チーム内でKARTEを使うだけでなく、社内に浸透させるための取り組みも行っています。大切にしているのは「試してみたくなるワクワクの醸成」だそうです。

倉持氏「活用を広げていくには、新しいツールに触れたい!というワクワクや楽しさを共有することが大切だと思います。先にKARTEに触れている人が施策や成果を共有し、少しずつ他の人にも試してもらうよう導いていく“エバンジェリスト”のような役割を担えるといいのかなと考えています。ベアーズでも導入後から勉強会や定例での情報共有を行ってきました」

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また、現状のベアーズでは、CXの向上やKARTE活用にメインで関わる社員が多くはないため、社外のリソースを積極的に頼ることも意識しているそうです。

倉持氏「多様な領域・企業におけるCXの考え方、実践を紹介しているプレイドのメディア『XD』や『CXClip』、KARTEの導入企業同士で交流できるコミュニティ『KARTE Friends Community』などは、ナレッジの収集にとても役立っています。

また、プレイドのSlackの連携も活用してサポートいただいており、学びの共有や相談が頻繁に起きています」

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最後に倉持氏は、今後のCX向上への展望を語りました。

倉持氏「今は技術の発達も、顧客の価値観やニーズも、ますます簡単には予測できない時代になっていると思います。

そのなかで一人ひとりのお客様に寄り添い、体験価値を向上させるためには、『観察』だけではなく『洞察』が重要だと考えています。『観察』は現在の状態や変化を注意深く見ること、『洞察』は現在と、その先の未来を見通すことと私たちは定義しています。

データからファクトを集め、それらをもとに顧客を理解し、テクノロジーと人の力を活かして『洞察』を得る。洞察を活かしたアイデアを、柔軟かつ迅速に試し、振り返る。KARTEであればその両方を実現できます。今後もテクノロジーと人の力を活かして“一期一会”な接客、ベアーズならではのCXを形にしていきたいです」

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