Event Report

大切なのは、使いこなすことより目的に沿った接客作り。KARTEを活用するためのドットエスティの“マイルール”

2022年4月に開催されたKARTE Friends Meetup Vol.26では、株式会社アダストリア WEB事業部 上田航大さんが登壇。同社は2020年8月にKARTEを導入し、サイトでのお客様の動きを見られるKARTE Liveや、多様なデータを統合し活用できるKARTE Datahubも導入いただいています。販売員からWebサイトの運営担当に転身した上田さんに、KARTEを運用する上で最も大切にしているという「目的の明確化」と接客を作る際のルールをお話しいただきました。

新しいツールを導入したものの、使うことが目的化してしまう、目指していた成果や効果が得られなくなってしまう。そんな経験はないでしょうか。回避するには何が必要なのでしょうか。

2022年4月に開催されたKARTE Friends Meetup Vol.26では、株式会社アダストリア WEB事業部 上田航大さんが登壇。同社は2020年8月にKARTEを導入し、サイトでのお客様の動きを見られるKARTE Liveや、多様なデータを統合し活用できるKARTE Datahubも導入いただいています。販売員からWebサイトの運営担当に転身した上田さんに、KARTEを運用する上で最も大切にしているという「目的の明確化」と接客を作る際のルールをお話しいただきました。

KARTEで何を実現したい?やること、やらないことを明確に

アダストリアは「GLOBAL WORK」や「LOWRYS FARM」「niko and …」などの人気ブランドを展開、各ブランドの出店するECサイト「.st(ドットエスティ)」を運営しています。

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上田さんが、KARTEを効果的に活用するうえで最も重要だと語るのは「目的の明確化」。「サイトでのお客様のサポート」「データ活用」という二つの目的に絞って、KARTEを活用しています。

「サイトでのお客様のサポート」は、ECイベントやクーポン、ポイント利用の訴求と、商品のお気に入り機能や店舗スタッフのスタイリングを発信するサービスの案内を指します。前者は常時5〜10シナリオ、後者は20〜30シナリオの接客が常に稼働しているそう。

「データ活用」では、より顧客一人ひとりに合う接客を行うために、詳細なセグメントを作成。KARTE Datahubや他のMAツールなどと横断して配信リストなどに活用しています。

KARTE Datahubに蓄積した様々なデータを活用する|KARTE Datahub事例集 vol.1

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サイトでのお客様のサポートとデータ活用。目的からブレないよう、運用時には3つのマイルールを意識していると言います。一つ目は「不必要に時間をかけないこと」。現在、実装に4時間以上かかる接客は原則として作らないようにしているそうです。

上田さん「時間をかけて施策や接客を作ったからといって、CVや接客数が倍増するとは限りません。導入当初『使いこなさなければ』という焦りから難しい接客を作ったのですが、得られた効果がわずかだったことがありました。また、時間をかけて接客を作ると、どうしても情がわいてしまいます。せっかく作ったのに、という感情が起こる前にスパッと止められるかも大切です

マイルールの二つ目は、先程お話しした二つの目的、『お客様サポート』と『データ活用』に当たらない接客を作らないこと。KARTEは多くの便利な機能があり活用できる場面もあると思いますが、時間も作業人員も限られている中、私たちの目的ではないことに時間を割いてしまうことがないようにルールとして定めています」

KARTEを使うことが目的にならないためのマイルールは接客の実施時にも及びます。

上田さん「三つ目のマイルールは、新たな接客は、“大通り”から試すこと。例えば、クーポンを訴求する時などは、どのクーポンをどのように訴求すると効果的なのかを把握したい。ですが、小さく始めてしまうと、対象者も少なくなってしまいますし、具体的に何が効果を発揮したか、ポイントも見えづらくなる。新たな接客はできるだけ対象者が多い箇所で実施し、把握していくようにしています」

社内のメンバーも顧客の一人。意見を取り入れながらチームでKARTEを活用する

さらに、社内で接客のアイデアを出し合うことも大切だと上田さんは加えます。

上田さん「店舗スタッフを経験して感じたのは、訴求すべきポイントはお客様一人ひとり異なるということです。KARTEの接客も私一人で作るのではなく、チームメンバーの声を大事に、多様なアイデアを集めるようにしています。

それに、メンバーもお客様の一人。ドットエスティを普段から利用するメンバーも多くいます。メンバー自身が『使いにくいな』と感じた点は、お客様もそう感じている可能性が高いと考えています。

また、アダストリアにはレディースブランドが多いです。店舗での経験上、やはり男性の僕では気づきにくい部分を見ていたりもします。そういった意味でも社内のメンバーの声を、訴求ポイントの参考にすることもあります」

社内の多くのメンバーから接客のアイデアを集めることは、顧客目線の接客につながるメリットだけでなく、社内に対して「KARTEで何ができるのか」を知ってもらう効果もあると言います。

上田さん「普段から『KARTEを用いて、このような施策を行いました』と共有したり、『こういう取り組みを行ったのですが、何か他に解決できそうな課題はありませんか?』と尋ねています。その結果、「KARTEってこういうことができるんだ!」という認知が社内に広まり、どんどんアイデアが集まるようになりました。接客にバリエーションが生まれるだけでなく、社内でのKARTEの存在感、重要度が増したと感じています」

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『お客様にとって本当に良いこととは何か』考える力を養った、プロセスと失敗例

では、目的がブレないことを意識し、実際にどのように接客に落とし込んでいるのでしょうか。チームでは、初めに「お客様の声」を参照するそうです。同社では年2回実施するNPS(Net Promoter Score:満足度調査)や、お客様への常設アンケートで、サイトの改善点を探っています。KARTEの接客に反映するものも、こうした声を起点とすることが多いと言います。

実際に「お気に入り登録機能の利用者増加」の事例を元に、プロセスを説明いただきました。

上田さん「顧客アンケートで『お気に入り機能に登録する良さが分からない』といった声が集まっていたので、良さを伝え、使ってもらうための改善に取り組みました。

まずは目的の明確化です。作成したい接客が、『購買促進』『サービスの認知・活用』『セグメント作成』のどれなのか分類していきます。『お気に入り機能を知っていただきたい。もっと使っていただきたい』なので、サービスの認知・活用にあたります。

次に実装の妥当性を計ります。『施策の目的』や『解決したい課題』『解決に向けての取り組み』『実装後のUX・ビジネスの変化』という質問に、自ら答えていきます。答えが浮かばない接客は、お客様に響かない部分や欠陥がある可能性が高いため、この段階で排除します」

お気に入り機能の利用促進の事例では、上田さんは次のような答えを出しながら、施策を設計されました。

上田さん「目的は『お気に入り登録者数の増加』です。解決したかったのは『機能の良さが理解されていない。何が起こるか知られていない』という課題。具体的な取り組みとして考えたのは『お気に入り機能未利用のお客様に、商品詳細ページで機能の特徴をポップアップで訴求する』でした。

取り組み後のUXの変化は『お客様にお気に入り機能の良さを知っていただき、利用者増加につなげること』。ビジネス面の変化は『お気に入り登録のデータを商品発注に活用し、売り上げの促進につなげること』と想定しました。」

ドットエスティでは「お気に入りボタンの近くでお気に入り機能の紹介をする」というシンプルなポップアップを実装。クリエイティブの作成後、約3時間程度でリリースされたそうです。結果、お気に入り登録数は2倍に増加しました。(調査対象:施策実施期間2021/6/1~13と、施策実施前の2週間の数値を比較)上田さんは「あまり時間をかけずとも、お客様目線の接客を正しく行うことで良い成果が得られる」と振り返ります。

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さらにKARTEでの成功施策も失敗施策も紹介いただきました。

上田さん「まず成功事例です。お客様から『クーポン発行時にお知らせが欲しい』といった声が寄せられたことをきっかけに、サイト来訪時に、保有しているクーポンを案内するポップアップを作成しました。

その結果、クーポン利用者は前年比140%と大幅に増え、お客様からも『情報がタイムリーに得られて助かる』と、好評のお言葉をいただきました。

一方、失敗したのは通知の“無駄打ち”をやめる施策です。お客様への不要な通知を減らすため、一定期間、訪問がないお客様への配信を止める、お客様が最も使用しているデバイスだけに配信を絞るという施策を行いました。前者は、売り上げを同水準に保ちつつ、通知数を約4割カットできたのですが、後者は、サイトやアプリへの訪問数が減ってしまい、売り上げを失う結果となってしまいました」

上田さんは「お客様は複数のデバイスで見ることが当たり前」という点を見落としていたと失敗を分析。「お客様の行動や気持ちをしっかり理解できていない状態でセグメントを作ることは非常に危険。この失敗例からますます『お客様にとって本当に良いこととは何か』を考えるようになりました」と語ります。

店舗の販売員がお声がけをするように、web上のお客様の行動パターンを理解し寄り添った接客づくり

KARTEでの接客に効果を感じ始めた頃、上田さんは「お客様は、なぜこの商品を買おうと思ったのか、より深く知りたい」と感じ、サイトでの顧客の動きを動画で見ることができるKARTE Liveの活用にも取り組みました。

上田さん「KARTE Liveは、店舗での接客や、スタッフとしてお客様を見ていたときと似た感覚でした。『いろんな色を触っているから、カラー展開を考えているのではないか』『鏡を見ているから、合わせた際の丈が気になっているのではないか』と、店舗のスタッフはお客様の気持ちを想像します。

KARTE Liveで、ECに訪れたお客様が画面内のさまざまなボタンを触る動きを見たとき、『店舗の在庫を確認しているのではないか』『動画で着用感を確認しているのではないか』と想像できました。また、スタッフのスタイリングやレビューの項目が思ったより見られているといった発見もありました」

KARTE Liveによって、その商品を選ぶ動機やきっかけを言語化できたと言います。KARTE Liveで売上に繋がった施策も紹介していただきました。

上田さん「初めて購入したお客様は、何が決め手となったのか、にフォーカスして見てみました。ドットエスティは商品詳細部分のボリュームが多いのですが、特に商品のレビューにじっくりと目を通してからカートへ入れるケースが多いことがわかりました。

レビューの重要性がわかったので、積極的にレビュー投稿を集めるキャンペーンを実施しました。期間中、レビューの投稿数は前年比140%に増え、売り上げアップにつなげることができました」

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現在はKARTE Datahubの活用にも取り組んでいます。

上田さん「主な活用方法は、より詳細なセグメント作成です。店舗での購買情報や、ECでは取得できないポイント、クーポンの保有状況をマージさせています。一定以上のポイントを持つお客様に対して、ポイントを使ってもらうようポップアップで案内したり、有効期限の前には「もうすぐ切れます」と表示したりしています。よりお客様に合わせた接客を実現しています。」

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目指すのは、十人十色の体験ができるサイト

この2年間、合計200個の接客をKARTEで作成してきた上田さん。取り組みを振り返り、KARTE活用における考え方を改めて語ります。

上田さん「KARTEを『使いこなそう』ではなく、なぜKARTEを導入したのか、どんな世界を作りたいのか。言語化することで、施策や接客は考えやすくなると思います。『どうして買っていただけたのか』『この機能の何が良かったのか』とお客様の声に耳を傾けることも大事ですし、直接コミュニケーションが取れなくても、身近なメンバーに聞いてみるなど、大切なのはお客様の目線を知ることだと感じます。」

今後の活用について、単なるポップアップツールという見方、使い方を変えていきたいと語ります。上田さんからはKARTEは「いまだ40%ほどしか使いこなせていない」との言葉も。

上田さん「KARTE Datahubで詳細なセグメントを作り、他のツールとも合わせていくことで、さらにお客様に寄り添った接客ができる。ドットエスティのサイトは「十人十色の体験ができる世界」を目指しており、店舗のスタッフはお客様の表情や会話から、潜在的なニーズを読み取り、お客様に寄り添った提案をしています。今後もKARTEの力を借り、Web上でも「リアル」な接客が行われている世界を作っていきたいと思います」

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