ほぼゼロから始まり、右肩上がりで成果を伸ばしたグロービス経営大学院のKARTE活用の歩み|KARTE Friends Meetup vol.36
2025年2月に開催した「KARTE Friends Meetup vol.36」では、「グロービス経営大学院」を運営する学校法人グロービス経営大学院の荒木 伸哉さんが登壇。
2025年2月、今年最初のKARTE Friends Meetup vol.36には、「グロービス経営大学院」のマーケティングを担当する荒木 伸哉さんに登壇していただきました。
グロービス経営大学院では数年前からKARTEを導入。荒木さんは入社後しばらく思うような成果を出せず、苦労したそうですが、KARTEやKARTE Datahubを活用してユーザー分析を強化し、分析結果に基づいた施策立案ができるようになったといいます。
この実績が評価され、昨年のKARTE STAR 2024で「KARTE SILVER STAR」を受賞した荒木さんに、成果を安定して生み出すに至るまでの試行錯誤のプロセスをご紹介いただきました。
入社後、KARTEの活用度がゼロに近いところからスタート
荒木さんは約3年前に、グロービスに入社。Meetupでは、入社から現在に至るまでの取り組みを「ユーザー行動を理解したい!〜筋のよい施策を打ち、再現性を高めるために〜」というテーマでお話しいただきました。荒木さんはマーケターとして扱っている自社の商材の特性について、次のように語ります。

「私たちが扱っているのは、学費として325万円に加え、入学金が必要となる無形商材です。さらに、2年間という長い期間をかけて学ぶことになります。300万円以上を投じて受講いただくわけですから、大きな買い物ですよね。そして、二度入学する人はいないため、リピーターも存在しません。一度きりの購入で、検討している方は全員が新規顧客です。マーケティングとしては本当に難しい商材だと思います」
グロービス経営大学院のマーケティングでは、「体験クラスへの申し込み」をコンバージョンと位置づけ、入学に興味を持っている顧客に授業を体感してもらう施策に重点を置いているといいます。「体験クラス」に参加した人が、1科目から先行して受講できる「単科受講」を経て出願し、本科生として入学するというファネルを描いています。

「2022年5月に入社した後、最初の2ヶ月間はオンボーディング期間。KARTEについては前任者が退職していたので、ほとんど知らない状態。どんな頻度でチェックすればいいのかも分からない、手探りでのスタートでした。
当時は、KARTEの活用度はほぼゼロに近く、Webサイト上でのユーザー行動の解像度も低い状態。ここからさまざまな試行錯誤を行い、KARTEのポップアップや埋め込みによる訴求経由での申込数は右肩上がりで伸びていきました」

ユーザー理解を深める過程で、とある施策が初の大ヒットに
まず、荒木さんが着手したのはユーザー理解を深めるためのアクション。グロービスでの業務にも慣れてきた当時、荒木さんにはある仮説があり、その検証を始めました。
「ユーザーを高検討・低検討という2つの軸に分け、それぞれのユーザーがページをどのように閲覧していて、どのように申し込みにつながっているのかを見てみようと考えたんです。入試関連ページを見ている人を高検討層、単科受講ページを見ている人を低検討層と仮定して、KARTE上でセグメントを分けて行動を分析しました。実際にデータを取得してみると、意外な結果が得られたんです。
なんと、低検討層として想定していたセグメントのほうが、高検討層よりもCVRが高かった。この結果をどう解釈すればいいのか迷いましたが、おもしろい発見でしたね。また、両方のページを見る、セグメントが重複するユーザーは全体の50%ほどになると思っていたのですが、実際には15%ほどでそこまで多くなかった。こちらの想定よりも、ユーザーは各々の関心に基づいて効率的にサイト回遊をしていそうだ、という仮説が立ちました」

セグメントが重複していたユーザーのCVRは特に高いという結果になり、この結果は「両方の情報を見ている人はお申し込みしやすいだろう」という仮説とは合致していた、と荒木さんはいいます。「重複セグメントをターゲットにした背中を押す施策を打てばよいのでは」という次の仮説が立てられた意義は大きいと感じたそうです。
ただし、この時点で分析していたユーザーは全体の5%程度。より多くのユーザーを理解するには、さらなるデータが必要だと感じたそうです。「森を見ず、木だけを見ていてもインパクトが大きくならない」と気づいたことで、次のステップへと進んでいくことになります。
「ユーザー理解を進めながら施策をいくつか試していくなかで、ある施策が大ヒットしました。2023年1月頃に同僚から映像素材を提供され、試しにKARTEで特定のユーザーにセグメントして配信してみたところ、同年3月までに67件もの申し込みがありました。
正直なところ、その時点ではまだ筋のいい施策がどのようなものかは明確には分かっていませんでした。ですが、検討度が高い人に対して、スタッフの顔が出ている安心感や、グロービスの学び方を体験クラスで確認しようというメッセージを出すのが効果的だということが何となく見えてきました。同時期にトップページで広く同じポップアップを表示しても申し込みにつながらなかったところを、しっかりとセグメントを絞った接客を行うことで数字につながりました」

月50件を目標に「KARTE施策プロジェクト」を始動
こうして大きな成果を得ることができましたが、荒木さんは「ユーザー行動の解像度はまだ十分ではない」と感じていたそうです。しかし「KARTEがこれほどまでに効果を生むのか」という手応えが得られ、グロービス内での注目度も高まりました。この流れを受けて荒木さんのチームは、2023年に「KARTE施策プロジェクト」を立ち上げます。1ヶ月間で50接客という定量的な目標を掲げ、3名のメンバーでチャレンジしました。

「リーダーに『いろいろ試したいので、一時的には成果が落ちるかもしれないがやらせてほしい』と相談したところ、『責任は持つからやってみよう』と背中を押してくれたんです。そこからは思いつく限り施策をどんどん投入しました。狭いセグメントに絞って施策を打てば仮に失敗してもダメージは小さいですし、若手スタッフにもハードルを下げてチャレンジしてもらうことができました。成果の基準としては、未実施ユーザーよりCVRがわずかでもプラスになったら『ヒット』とし、目標は打率2割以上を達成すること、としました。
最終的には合計59件の施策を打ち、そのうち15件ほどがヒットに。このプロジェクトを通じて予想外の発見も多く得られました。ポップアップは、文字を詰め込みすぎると敬遠されるかと思っていたのですが、関心を持っているユーザーなら長文でもしっかり読んでくれることが分かりました。興味がないユーザーには、どんなにシンプルでも響かないので、結局、関心度合いが重要だと実感しました」
こうした試行錯誤を重ねるうちに、荒木さんが「2年間ポップアップ」と呼んでいる施策が大きな成果を上げ始めます。あるスタッフが登場する約6秒ループのGIFを用い、2年間の本科生の過ごし方を伝えるページへ誘導するというものです。この施策からは、四半期ごとに約46件の申し込みがあり、月ベースに換算すると15名ほどが体験クラスへ申し込むという成果を生み出しているそうです。
プロジェクト終了後には、KARTEを扱うメンバー全員のスキルが高まるという結果も得られ、安定的に成果を出す施策群である「接客ポートフォリオ」も6つほどに充実したといいます。この接客ポートフォリオで成果を上げながら、次の柱となる施策案を生み出すべく、試行錯誤を重ねていきました。

接客ポートフォリオを充実させながら、ユーザー行動分析をさらに強化
KARTE施策プロジェクトを通じて、「KARTEにはまだまだ可能性がある」と実感した荒木さん。さらにユーザー行動を分析しようと、グロービスで利用していたSalesforceと連携できるKARTE Datahubを導入。実際に現在は本科生や単科生となっているユーザーが、体験クラス&説明会申込前にどのページを見ていたのかを可視化しました。すると、特にアクセスが集中するページが6つあることが判明し、グロービス経営大学院全体でそのページの改善に注力する流れへとつながっていきます。
「この気づきは本当に大きかったですね。他部署にも共有した結果、体験クラス&説明会→単科受講→本科出願というバリューチェーン全体を見渡しながら何をすべきかを、高い解像度で考えられるようになりました。リーダーや他のチームメンバーと意見を交わす中でUX改善プロジェクトが本格化していき、自然と『ここでKARTEを使うと面白そう』という施策のアイデアもどんどん出てくるようになりました」
こうした分析から得られた示唆をもとに、新たな施策アイデアを出して検証した結果、全体の申込数が大きく向上したといいます。

そして、2024年10月から2025年2月にかけて、新たな「KARTE施策プロジェクト」を実施。第2回となるプロジェクトでは、「打率重視」をテーマにし、4割以上のヒットを目指して取り組み、ほぼ4割を達成したそうです。ここで生み出されたヒット施策が、新たな接客ポートフォリオになり、さらに申込数は伸びていきました。
「接客ポートフォリオが整っていると、日々のチェックやちょっとしたチューニングのみで継続的に一定のコンバージョンが見込めます。コンバージョンを生み出すためにかけるリソースを減らすことができ、その分新しい施策の検討にリソースをかけやすくなります。また、ユーザーの行動を把握する精度が上がっている分、ヒット率も高くなりました。
筋のいい施策を生み出すためには、まず何らかの手がかりをつかむことが重要。最初はやみくもでもいいので数を打つこと、社内外の事例を参考にすること、限られたデータでも分析しながら仮説を立てることが肝心です。
再現性を高めるには、一貫性を持って長期的に取り組むことが重要だと思います。継続こそが成果を出す鍵ですね」
荒木さんは試行錯誤を重ねてきた歩みを振り返りながら、こう発表を締めくくりました。
CX Clipでは、過去に荒木さんにグロービス経営大学院のKARTE活用事例をインタビューしています。さらに知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
ユーザー起点の分析から導き出した注力すべき「6ページ」。ユーザーが求める情報を適切に届けるための、グロービス経営大学院の取り組み。
直感的に複雑なデータ操作を行える次世代BIツール「Codatum(コダタム)」を紹介
荒木さんからの発表の後は、プレイドからのお知らせの時間に。プレイドからスピンアウトし、2023年10月に設立された株式会社CODATUMで開発している次世代BIツールについてお知らせしました。

KARTE Datahubの事業責任者を務める大畑が紹介したのは、データ分析を必要とするすべての方々に向けて、SQLを駆使して直感的に複雑なデータ操作を行える「Codatum(コダタム)」です。
大畑「Codatumは、データの探索から分析、可視化、レポートまでシームレスに実現できる次世代BIツールです。例えるなら、Notionとクエリを各画面を一箇所にして使いやすくしたようなイメージのプロダクトです。
Codatumが解決するのは、『データナレッジの構築・共有』『AIを使った高速かつ深い分析』『データをビジネスに活用』というデータ分析における3つのシチュエーションです」

従来のアナリティクスツールでは、同じクエリや分析内容がチーム内でバラバラに存在し、「どの定義でデータを出しているか」が分からなくなる問題が起こりがちでした。Codatumでは、ドキュメントとSQLの実行結果が一元化されるため、分析の重複や認識のずれを防止できます。
また、LookerやTableauなどのGUI中心のBIツールでは、細かい分析や修正を外部に依頼せざるを得ないケースが多く、時間がかかることがあります。CodatumではSQLをベースにしながらもAIサポート機能を組み合わせることで、専門知識がない場合でも柔軟な分析が可能です。
さらにCodatumのレポーティング機能を使えば、権限コントロールをしながら、分析結果の共有を自動化できます。さらに必要に応じてプロダクトへの組み込みができるため、独自にアプリケーションを開発する手間を大幅に削減します。
大畑は「Codatumは、現在ベータ版を提供しています。ご関心のある方は、ぜひ一度使ってみてください」とプレゼンを締めくくりました。
Codatum - 先進的なデータ探索を当たり前に。チームのためのデータノートブック
楽しむための企画も用意し、KARTE Friends同士の交流タイム
ゲストトークとプレイドからのお知らせのあとは、参加者同士の交流会の時間に。トークも、お知らせも内容盛りだくさんだったこともあり、交流会の時間はあちこちで活発にコミュニケーションが行われていました。


ミートアップの開催日は、バレンタインデーの前日ということもあり、KARTE Friendsのみなさまとビンゴ大会を開催!見事、ビンゴとなった方には、チョコレートのプレゼントというちょっとした催しもありました。

KARTE Friends Meetupでは、KARTE Friends向けに、KARTEの最新機能や実際の活用事例について共有しています。KARTE Friends同士やプレイド社員との交流の機会も設けておりますので、都合が合う際にはぜひお越しください!