ユーザーが楽しく、開発も楽しい開発プロセスでアプリをグロースする。レシート買取アプリ「ONE」の体験設計|KARTE Friends Meetup vol.35レポート
2024年10月に開催した「KARTE Friends Meetup vol.35」では、レシート買取アプリ「ONE」を運営するWED株式会社でプロダクトマネージャーを務める麻原 彪史さんが登壇。
2024年10月に開催したKARTE Friends Meetup vol.35は、ゲストにWED株式会社 Product / Platform GM 兼 Services GM の麻原 彪史さんをお迎えしました。
WED株式会社は、レシート買取アプリ「ONE」を開発・運営しています。レシート撮影やオンラインショッピングをするとお金がもらえるなど、楽しい消費体験をユーザーに提供している「ONE」。
麻原さんから体験設計時のポイントや施策検討プロセス、KARTEの活用事例など、さまざまなお話を伺いました。
ユーザーも楽しく、開発も楽しい。それが結果として良い数値につながる
Meetup冒頭の参加者同士の挨拶タイムを経て、早速麻原さんのプレゼンテーションの時間となりました。麻原さんは、今日のキーワードとして「自分はユーザーじゃないし、自分もユーザー」「アーリースモールウィン」という2つの言葉を挙げた後、サービスの説明を行いました。
麻原「『ONE』は、お金を使うのが楽しくなる世界をつくることを目指してサービスを開発しています。お金を使って、少し楽しくなるだけでなく、さらに普段の行動やレシートがお金に変わる、プラスワンの楽しさを提供したいと考えています。
『ONE』には大きく2つのサービスがあります。レシートの写真を撮ると、どんなレシートでも瞬時に1円から10円で買い取られる『ONEレシート』と、オンラインショッピングをするとお金がもらえる『ONEモール』です。
現在、600万を超えるユーザーが『ONE』を利用していて、これまでの累計のレシート買取枚数は10億枚を突破しました」
「ONE」は、ゲーミフィケーションの考え方を取り入れたアプリだという麻原さん。実際に、ゲーミフィケーションを取り入れた企画として、アプリ5周年の際に実施した「ワンくんを探せ!」を紹介。
この企画は、「ワンくん」というキャラクターをアプリ内で探して、スクリーンショットを送ると参加でき、抽選でオリジナルワンくんグッズをプレゼントするというもの。「デザイナーが趣味で3Dモデリングを学んでいて、それが企画にもなりました」と、麻原さん。メンバーも楽しみながら企画をつくり、ユーザーの体験にこだわれば、ビジネス的な価値につながると続けます。
麻原「今年の6周年イベントでは、初めて診断系コンテンツを企画しました。この企画で、参加のインセンティブにかけた費用はゼロ。KARTEとSTUDIOを活用して開発工数ゼロで実施し、結果的に10万人以上のユーザーに参加していただきました。
この企画では、ユーザーに楽しんでもらえるよう、デザインにかなりこだわりました。ムードボードをつくりながら、ロゴタイプも複数案つくり、キービジュアルやキャラクターのイラストなどを検討。最終的にできあがったキャラクターも、ポップな絵柄のものになりました」
ユーザーは、6つの簡単なアンケートに回答することで、お買い物タイプ診断に参加。診断結果として、5つのお買い物タイプのどれに該当するのかが表示されます。ユーザーに興味を持って下までスクロールしてもらえるよう、ページのデザインまで配慮したと麻原さんは言います。
麻原「ユーザーのお買い物への興味関心や触って楽しいデザインということに加え、私たちが楽しんでつくるという掛け算がうまく結果につながりました。今後は、お買い物タイプに応じて、ユーザーに商品をおすすめしたいと考えています」
「ONE」でのKARTE活用についての具体的な内容はこちらの記事をご覧ください。
質の高いユーザー体験と収益性を両立する——レシート買取&お買い物アプリ「ONE」を展開するWEDのエンゲージメント向上術
ユーザー体験をどう思い描き、どんなプロセスで実現するのか
これまでの施策についての共有のあと、麻原さんはなぜこれだけユーザーの体験設計やデザインを大切にしているのかについて語ります。
麻原「アプリである以上、どうしても運営側からユーザーへの一方的なコミュニケーションは発生します。ですが、そうした場合でもユーザーが一方的に感じないコミュニケーションをとりたい。そのために、体験設計やデザインにこだわっています。たとえば、唐突にユーザーの動きを妨げるようなダイアログを出すことは最小限にとどめています。ユーザーが見たいと感じたときに、表示するような体験を重視しています」
たとえば、ワンくんがしゃべっているような形でデザインしたダイアログは、ユーザーが画面に遷移してから1秒後に表示するようにして、ユーザーのページ閲覧を阻害しないようにしているといいます。また、統計的に右利きのユーザーが多いため、スクロール時に誤タップが少なくなるようにダイアログを左寄せに配置するなど、こだわりを持って体験を設計しているそうです。
WEDでは、こうした施策はどのように進めているのでしょうか。麻原さんは、施策を進めるプロセスは、大きくウォーターフォール寄りとアジャイル寄りに分けているといいます。
麻原「ウォーターフォール寄りは、案件運用などゴールとなる指標が明確な場合や、施策の効果見積もりが具体的に可能な場合に選択します。ユーザー視点に立ち、『どのタイミングで、どのようなお知らせを受け取ると嬉しいか』をホワイトボードなどに書き出しながら検討し、KARTEのジャーニー機能に反映していきます。
アジャイル寄りは、目標値はありつつも完全達成という条件設定が難しい場合や、効果検証が不十分な状態で、仮説ベースで取り組む場合などに向いているアプローチです。PdMがNotion上に実施内容をある程度まとめて、それをベースにデザイナーと会話してHowに落とし込んでいきます。
このときの会話がとても重要なんです。ユーザーと事業者の視点を行き来しながら、双方にとっての嬉しいポイントがどこかを考えていきます。会話を広げるためには、PdMが事前に内容を細かく書きすぎないこと。それがデザイナーからユーザーの立場としての意見をもらう余白につながります。
私たちはユーザーにはなれませんが、ユーザーの立場で考えて施策に落としこむことが大切です」
施策を実行したあとは、定量面や定性面で結果をまとめて、それを踏まえて次にどんなことを実施するかの議論を行うそうです。この際もPdMとデザイナーが会話を重視し、ユーザーと事業者の視点を行き来するとのこと。
こうして会話を大切にしながら、事業の状況などに応じてウォーターフォールかアジャイルかを選び、毎月30〜60個ほどの施策を実行しているといいます。「数値のために体験設計やデザインを行うわけではありません。これらを大切にしているからこそ、結果的に良い数値が出ています」と麻原さんは語ります。
KARTEを運用し、アプリのグロースサイクルを素早く回転させる
そんなWEDでは、麻原さんが入社したタイミングで、アプリグロースに関することすべてを担うGrowthチームを発足。試したいこと、開発したいこと、分析したいことが無数にあるなかで、早く試して、早く改善できる状況をつくるためのCXツールが必要だと考え、検討開始から1ヶ月ほどでKARTEを導入しました。
麻原「私たちはスタートアップなので、一番避けたいのは時間とお金を無駄にすること。そのため、『アーリースモールウィン』というキーワードを掲げて、素早く成果を出すための動きを開始しました。
まず、セールスや開発など社内の役割に関係なくブレスト会を実施。アイデアを募ることよりも、施策に関わることで社内のメンバーにも当事者意識を持ってもらうことが狙いでした。
こうした機会を経て、導入後すぐに『なんだかKARTEはよさそうだ』という雰囲気を醸成できたので、次はKARTEを使うリテラシーがある人を増やすことに着手。さらにすばやく施策を実行できる体制をつくるために動きました」
社内では週次でKARTEに関する振り返り回を実施し、KARTE運用に携われる人を増やすためのアクションを積み重ねてきた麻原さん。次第に「KARTEでこれができそう」という会話も増え、KARTE運用に関わる社内のメンバーも増えてきたといいます。
麻原「KARTEの導入から4〜6ヶ月後には、セールスチーム内で案件獲得からKARTE設定まで可能になるなど、社内を広く巻き込んで使えるツールになりました。使える人が増えることで、それぞれの意見がぶつかり合ってしまい、ユーザー体験が損なわれることは避けたかったため、施策の空き枠管理はプロダクトチームで徹底しました」
最後に、麻原さんは自分たちはプロダクトを成功に導くために、グロースサイクルをぐるぐると回して大きくしていくチームだと語ります。そのためには、「自分はユーザーじゃないし、自分もユーザー」「アーリースモールウィン」の2つのキーワードが重要であり、組織づくりも含めてプロダクトづくりだと捉えていると語り、発表を締めくくりました。
ユーザーをグループで分析、AIでクリエイティブ制作をサポートする新機能の紹介
麻原さんからの発表のあとは、プレイドからプロダクトに関するお知らせを2つお伝えしました。
プレイド 中分健太
1つ目は、中分からKARTEを活用して、ユーザーをグループで捉えて分析する「ユーザー構成比」機能の紹介です。
中分「これまでにもKARTEにはn1分析の機能などはありましたが、今回お知らせするユーザー構成比は、ユーザーをグループで捉えて現状を把握し、課題を抽出するための機能です。ダッシュボード上で、ユーザーのボリュームや構成を可視化でき、推移や内訳などもコードを書くことなく確認できます。ユーザーをグループで捉えることで仮説の精度を高め、検証する際にぜひ活用していただけたらと考えています」
2つ目は、KARTEシリーズにAIネイティブなクリエイティブ制作を実現する機能を追加したお知らせです。木幡がデモ画面を見せつつ紹介しました。
プレイド 木幡 雄一郎
木幡「KARTE CraftにGoogleの最新画像生成AI『Imagen 3』を導入し、画像生成や改善の高速化・省力化を実現しました。加えて、生成した画像を他のKARTEシリーズでも活用できる連携機能もリリースしました」
高品質な画像生成AIをKARTEから柔軟に利用するための機能を8個リリースしました
盛りだくさんの共有を経て、交流会で意見交換するKARTE Friends
ゲストトークとプレイドからのお知らせのあとは、参加者同士の交流会の時間に。トークも、お知らせも内容盛りだくさんだったこともあり、交流会の時間はあちこちで活発にコミュニケーションが行われていました。
KARTE Friends Meetupでは、KARTE Friends向けに、KARTEの最新機能や実際の活用事例について共有しています。KARTE Friends同士やプレイド社員との交流の機会も設けておりますので、都合が合う際にはぜひお越しください!