Event Report

ECにおける画一的な接客の限界を超え、パル、ナノ・ユニバース、ZOZOがKARTEで取り組んだこと|Apparel Halloween Night

2019年10月30日、「Apparel Halloween Night」と題したアパレル業界に特化したMeetupを開催。当日は、業界内でもWebを活用したサービス展開を積極的に進めているパル様、ナノ・ユニバース様、ZOZO様に登壇いただき、KARTEの活用方法を共有いただきました。

2019年10月30日、「Apparel Halloween Night」と題したアパレル業界に特化したMeetupを開催。当日は、業界内でもWebを活用したサービス展開を積極的に進めているパル様、ナノ・ユニバース様、ZOZO様に登壇いただき、KARTEの活用方法を共有いただきました。

  • PAL CLOSET」を運営する、株式会社パル WEB事業推進室の名嶋恵佑さん
  • nano・universe」を運営する、株式会社ナノ・ユニバース WEB戦略部の中川大介さん
  • ZOZOTOWN」を運営する、株式会社ZOZO マーケティング本部の坂間譲二さん

アパレルECにおける、おもてなしとは

スマホでファッションアイテムが買える時代。企業がECサイトを売上向上に向けた戦略の中心に置き、大量のプロモーションを行うケースも目にするようになりました。

しかし、画一的な施策だけでは、継続的に購買をしてくださるお客様を増やすことが困難です。お客様の顔が見えづらいECだからこそ、一人ひとりに適したおもてなしが求められます。

装飾やプチ仮装でハロウィンムードに包まれた会場には、アパレル業界のKARTEユーザー様を中心に約100名の方に集まっていただきました。Meetupが始まる前から、用意されたお酒を片手に和気あいあいと話す参加者の姿もちらほら見られます。

最初に行った自己紹介では、名前や仕事に加えて「今年一番感動したこと」を共有し合いました。中には「先月、結婚しました!」という声も聞こえ、拍手が巻き起こるテーブルも! 司会者の合図で乾杯をする頃には、みなさんの表情も柔らかになっていました。

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パルの事例紹介:「フェーズ」と「スコア」で顧客をセグメントし、接客の出し分けを実施

参加者の気持ちがほぐれたところで、プレゼンテーションがスタートしました。

最初の登壇者は、「CIAOPANIC(チャオパニック)」「Kastane(カスタネ)」など40以上のブランドの製造や販売、卸を行うパルの名嶋さんです。パルでは、自社ECサイト / アプリの「PAL CLOSET(パルクローゼット)」にKARTEを導入いただいています。

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名嶋さん「2018年9月に開始した店舗の共通ポイントサービスをきっかけに、PAL CLOSETは大きく成長しました。1年間でセッション数と会員数は昨年に比べて150%増加、アプリのダウンロード数は約200万になりました」

この成長には、店舗スタッフへのオペレーションの強化と、KARTEを活用したポップアップ訴求が効いたと名嶋さんは話します。

名嶋さん「店舗スタッフにもアプリのメリットを共有し、理解してもらったうえで、お客様にダウンロードを促すオペレーションを徹底しました。今では店舗での説明をきっかけにダウンロードする方が全体の90%以上を占めます。また、アプリをダウンロードしただけのお客様には、KARTEを活用して会員登録を促すポップアップを表示。これにより、アプリからPAL CLOSETの会員になってくれた方の40%が、KARTE施策経由となりました」

店舗スタッフとの連携によりPAL CLOSETの利用者は増えましたが、肝心なのは会員登録後の体験。同社では、顧客一人ひとりに適した接客をWebでも実現するため、KARTEを活用して顧客の「フェーズ」と「スコア」に応じて施策の出し分けを行いました。

名嶋さん「フェーズは初回訪問を起点にした会員登録の有無と購入回数、スコアは来訪から1週間におけるお客様の行動に点数をつけています。例えば、商品をお気に入りに登録すると5点、カートに追加で15点といった具合に加算していきます。スコアが高いほど、購入に近づいていると判断。こうしたお客様の状況や購買意欲に応じてクーポンを出しています」

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施策の一例として紹介されたのが、ECサイトからアプリのダウンロードを促す施策です。配信ターゲットを、ECを使い慣れてきた「フェーズが成長期(購入回数が2回)」「スコア70点以上」「アプリ未インストール」「カートに商品がない」顧客に絞り込み、「アプリをダウンロードすると、クーポンをプレゼントします」という内容のポップアップを表示しました。その結果、ECサイトからのダウンロード数が110%向上したそうです。

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名嶋さん「今後は、LINEやメールなど多様なチャネルで顧客とのタッチポイントを増やし、どのチャネルでも楽しい購買体験を届けるため、施策の幅を大きく広げる予定です。

現在、商品購入の翌日に、お客様が買った商品のコーディネートを提案する機能の実装を進めています。店舗で購入したお客様には、接客を担当したスタッフからのメッセージ付きで届ける予定です。また、お客様とスタッフのファッションに対する嗜好性をアンケートで集計し、趣味が似ている者同士をマッチングする施策も考えています」

ナノ・ユニバースの事例紹介:ABテストで、「スコア」による接客の反応率の差を実感

2人目の登壇は、2002年からオリジナル商品と国内外のファッションを扱うセレクトショップとして展開するナノ・ユニバースの中川さんです。同社では、公式通販サイト「nano・universe」において、KARTEを導入しています。

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中川さんが所属するWEB戦略部では、店舗とECの両方を利用する「クロスユース顧客」の増加を主な目的としてKARTEを活用しています。中川さんによると、同社におけるクロスユース顧客の年間購入額は、その他の顧客に比べて3倍以上にもなるそうです。

クロスユース顧客を増やすためには、店舗だけでなく、Webでも顧客一人ひとりに応じた接客を通じて、リピーターになっていただく必要があります。そのために、ナノ・ユニバースはECの戦略を設計するうえで、パルと同様に「スコア」を活用していました。

中川さん「スコアが高いお客様は全体の4%でありながら、売上の40%を占めていることがわかりました。購買意欲を定量で可視化したことで、スコアが高い方に対してCVR(購入率)を高める施策を行うことが、KARTEで可能になりました。」

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スコアによるセグメント分けの効果を感じた施策として、中川さんはクーポン配信時に行ったABテストを紹介してくれました。

中川さん「ABテストでは、気になる商品はあるが購入に至らないお客様のCVを目的に、直近7日間の未購入者に絞り、商品をお気に入りに登録したタイミングでクーポンを提示。スコアによってCVRの上昇率を検証したところ、効果の差は歴然でした。

スコアセグメントをせずに行うと275%、スコアが高いお客様のみにセグメントすると600%以上の上昇率となったんです。商品をお気に入り登録するという行動一つでも、スコアの差が購入決定率の差につながると確信し、Webでも一人ひとりにあった接客を行うことの重要さを実感しました」

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チャットサービスの利用を提案する際にも、スコアセグメントは結果につながりました。同じ商品ページを3回以上閲覧するなど、そのアイテムが気になっていることが明らかな顧客にチャットサービスの利用を提案した結果、ポップアップのCTRが116%、CVRが107%に上昇しました。

中川さん「店舗に来られたお客様の中には、スタッフの声かけを好まない方もいらっしゃいます。それと同じように、Webでも購入意欲が低いときに接客の提案をしすぎると不快に感じる方もいる。スコアを活用し、ニーズがありそうなお客様に絞り込んで、ポップアップやチャットサービスなどの“声かけ”を行うことが大切なんだと思います」

中川さんは、「今後さらにクロスユース顧客を増やすため、店舗行動のデータ化や店舗体験の向上を進めていきます。現在、店舗に行くのが楽しくなるようなアプリを開発しています」と、プレゼンテーションを終えました。

ZOZOの事例紹介:売上拡大の5原則をKARTEで叶える

最後に発表したのは、株式会社ZOZO マーケティング本部 プロモーション部の坂間さん。日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する同社は、2018年6月にKARTEを導入しました。

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坂間さんが所属するプロモーション部は現在、アクティブユーザー数の増加を主なミッションとしてKARTEを含めたサイト内販促施策を推進しています。
今回は、「売上拡大の5原則」をキーに、実際にKARTEを利用して行ったキャンペーンの事例紹介と、今後取り組んでいきたい内容に関してご紹介頂きました。
(5つの原則とは、「新規顧客の獲得」「離反顧客の減少」「購買頻度の増加」「購買点数の増大」「商品単価の向上」を指します。)

まとめ買いキャンペーン

2019年9月に実施した「ZOZOWEEK」という販促企画において、KARTEを利用したまとめ買いキャンペーンを行いました。

まとめ買いキャンペーンとは、一点あたり3,000円以上の商品に限定し、まとめ買いで最大30倍までポイントを還元するキャンペーンで、「売上拡大の5原則」における「購買点数の増大」「商品単価の向上」を目的とした施策となります。

3,000円以上の商品ページには、それがキャンペーンの対象商品であることを示すラベルを表示。カートページでは対象商品が1点の場合は追加購入の訴求を、2点以上購入した人には現在のポイント還元数を表示して、キャンペーンに参加するモチベーションの維持につなげました。

結果、商品を2点以上購入したお客様の割合は向上。注文単価の引き上げにつながり過去に実施した施策の中でも高い効果を発揮しました。

坂間さん「このような仕掛けをサーバ側でやると通信が重くなりがちですが、KARTEを使ったことでサーバの負荷を軽減でき、クイックに準備や実施ができた分、開発のリソースを削減できました」とのことです。

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KARTEを活用した今後の展望

アクティブユーザー数を増加させる点においては、「売上拡大の5原則」に含まれる「新規顧客の獲得」「離反顧客の減少」の部分への取り組みが重要となってくるという事で、KARTEを活用しての今後の展望についてもお話しいただきました。

現在は新規会員登録をしたが購入に至っていないユーザーや、直近1年間購入の無い休眠顧客をアクティブ化させる目的でKARTEを利用して特別クーポンの配布を行っております。

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しかし、ポイントの配布はアクティブユーザーを増やすための本質的な解決策にはなっておらず、いかにサイトに定着してもらえるかが課題となります。
特に新規ユーザーに対しては初来訪時における体験の満足度や、初回購入後のコミュニケーションが肝心ですが、坂間さんは、具体的に何が新規顧客の定着につながるか分からないため、まずは顧客心理の理解を目的に、「KARTE Live」を活用してユーザーインタビューを実施し、顧客理解を深めたいとの事です。
同機能では、クリックやスクロール、滞留といったWeb上における顧客の実行動を動画で確認できます。

坂間さん「『KARTE Live』の機能を利用すると、動画を見ながらモニターの方と『このときは、どういう状況でしたか?』『なぜ、この行動をしましたか?』といった質問を対面でしながら、お客様の行動心理を把握する事ができます。こうしてユーザーのインサイトを蓄積していく事で、初来訪のお客様がつまずきやすい点の解消など、サイトに馴染んでいただくための工夫を考えていきたいと思っております」

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また、休眠会員を増やさないためには、既存顧客の理解を深めることも大切です。坂間さんは、既存顧客の満足度を購入金額や頻度だけではなく、ZOZOTOWNへの信頼や愛着といった「ロイヤリティ」の観点からも見つめ直す重要性をお話いただきました。

坂間さん「購入頻度が高くても、『安さや使い慣れているから買うが、ZOZOTOWNでなくてもいい』というお客様が多い状態では、ZOZOTOWNから離れる可能性が高く、大きな損失につながります。そのため、ロイヤリティが高いお客様を増やすことが重要となります。これまでロイヤリティを測る指標が当社にはなかったので、まずロイヤリティを可視化するという目的も踏まえてネットプロモータースコア(NPS)の導入を検討しています。」

ネットプロモータースコア(NPS)とは、「このサービスを家族や友人にどれくらい勧めたいか」を顧客に聞くことで、サービスに対する満足度を計測するものです。
KARTEではNPSのテンプレートが既に用意されているので、それをベースにカスタマイズすることで、クイックに実装することが可能な点と、ユーザーセグメントに応じて配信できる点からKARTEを活用してのNPS導入を検討しているとの事です。

店舗と同じく、Webでも顧客の状況に応じて接客する

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3社のプレゼンテーションが終わり、質疑応答の時間へ。参加者から寄せられた質問や感想の中には、パルやナノ・ユニバースが実践する「スコア」による顧客のセグメント分けに関するものが多く、「明日から早速挑戦してみたい」と意気込む声もありました。

今回の発表では、顧客のスコアやフェーズ、ステータスに応じて施策を出し分ける反応率の良さから、これまでのECにおける画一的な接客の限界が伺えました。店舗でも顧客の様子に応じて声をかけるタイミングや勧める商品、コーディネートの提案を変えるように、ECでも顧客一人ひとりに適した施策を出し分ける重要性が高まってきているといえます。

プレゼンテーション中は、各社の取り組みについてメモを取る参加者の姿も見受けられ、他社の事例を自社に活かせるようにと学ぶ熱心さがひしひしと伝わってくるMeetupでした。

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最後は懇親会で、ドリンクやフードを片手に談笑する時間へ。今後も、このような形で特定の業界に特化したMeetupを開催する予定なので、ぜひお気軽にご参加ください!

登壇資料

株式会社パル

株式会社ナノ・ユニバース

株式会社ZOZO

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