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顧客行動の「なぜ」を多角的に分析し、自己解決を促進。JCBによるKARTE RightSupport活用法|RightTouch Meetup vol.1

2023年7月27日、記念すべき第一回目となる「RightTouch Meetup」をプレイドオフィスにて開催しました。RightTouch Meetupは、プレイドの新規事業からスピンアウトしたスタートアップである株式会社RightTouchの提供するプロダクト「KARTE RightSupport」のユーザーが集い、よりよいサポート体験に向けて情報交換や対話を行う場です。この記事では、そんなRightTouch Meetupの当日の模様をお届けします!

リリースから1年を超え、広がる業界・業種、活用領域

KARTE RightSupportは、問い合わせ前の顧客のつまずきを収集・解析し、顧客一人ひとりに合ったFAQや問い合わせ方法を提示、自己解決に導くプロダクト。2021年末にβ版がリリースされて以来、金融・保険やエネルギー、IT通信など、幅広い業界で活用が進んでいます。

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冒頭では、代表の野村が集まったユーザーの皆さんに感謝をお伝えしつつ、ミートアップの趣旨を共有しました。

野村「KARTE RightSupportはリリースから1年以上が経ち、ユーザー数も2023年7月現在で40社を超えました。様々な業種や業界から多様な施策や顧客分析の事例が生まれています。

中には1年で100個以上もの施策を試してくださっている方もいて、使い倒していただけていることを大変嬉しく思います。

以前から皆さまとお話する中で、『もっと他社の事例を知りたい』といった声をいただくことが多々あり、ミートアップの開催は念願でした。この会が、よりよいサポート体験を目指す皆さまが“横のつながり”をつくり、取り組みを加速させる機会になれば幸いです」

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行動の“理由”を多角的に分析するため、KARTE RightSupportを導入

ミートアップ前半では株式会社JCBの千葉成次さんが登壇。同社のカスタマーサクセスを担当するRightTouchの田中とともに、同社におけるKARTE RightSupportの導入背景や顧客の自己解決促進の取り組みを振り返りました。

JCBではコミュニケーション本部コミュニケーション企画部において、1年ほど前からKARTE RightSupportを活用してきました。

コミュニケーション本部コミュニケーション企画部は、Webサイトを含む様々なチャネルにおけるCX向上を担っています。なかでも千葉さんは、顧客の自己解決を促進するためのコンテンツ改善を担当。他2名のチームメンバーとともにWebサイト中心に様々な施策を実行しています。

サイトキャプチャ

冒頭では、KARTE RightSupportの導入前に抱えていた顧客の分析をめぐる課題が共有されました。

千葉さん「もともと、お客様のサイトでの行動はアクセス解析ツールや係数分析ツール、電話での問い合わせはテキストマイニングツールを使って分析していました。これらのツールで、サイト内のお客様の行動傾向、問い合わせ数や用件などは把握できていました。

ですが、サイトにおけるお客様の細かい行動までは可視化できていなかったんです。お客様が何かしらの手続きにつまずき、問い合わせをしていること自体は把握できても、そこにいたるお客様の行動の経緯が細かく把握できない。

そのためチームメンバーは断片的な行動データと過去の経験・知見を頼りに、何とか仮説を立てている状況。分析や仮説の立案にも時間がかかり、改善のサイクルを素早く回せていませんでした。

加えて、既存の解析ツールは使いこなす難易度も高かったため、仮説の質が担当者のツールへの慣れや分析スキルに大きく依存していました」

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こうした課題を解消するために導入したのがKARTE RightSupportでした。千葉さんは導入を決めた理由をこう語ります。

千葉さん「KARTE RightSupportには、Webサイトのページごとの傾向やお客様の行動を一覧化して比較できる『ページ軸レポート』や、各ページのサポート観点から見た課題やお客様の行動を把握できる『ページ詳細レポート』など、多岐にわたるレポートが用意されています。

Webサイト全体や各ページでのお客様の行動について全体像を把握することも、一人ひとりの行動を深掘りすることも可能です。これにより、お客様の行動の経緯や理由を多角的に分析できると感じました。

こうした分析を感覚的な操作で行えるのも魅力です。データもわかりやすく可視化されるため仮説や施策を考案しやすく、チーム全体の仮説の質も底上げできればと考えていました」

ページを訪れる顧客課題を深掘りし、自己解決を促進

実際にどのような分析、施策を行っているのか。千葉さんは、わかりやすい事例としてKARTE RightSupport導入後に行った「一時増額(※)ページ」の取り組みを共有してくれました。
※クレジットカードの利用可能枠を一時的に増額すること。一継続的に利用可能枠を増額することは「恒久増枠」と呼ばれる

一時増額サービスキャプチャ

一時増額を含む利用可能枠の増額の手続きは問い合わせ数も多く、顧客の自己解決を促進したいと考えていたそうです。取り組みの流れをこのように振り返ります。

千葉さん「まず、KARTE RightSupportを使って増額手続きに関連するページを比較分析しました。すると特に一時増額のページの離脱率が高くなっていました。

そこから一時増額ページのセッション数や流入元、ページを訪れたお客様一人ひとりの行動をみていくと、検索から流入した後に離脱している方が多くいらっしゃることがみえてきました。

さらに離脱の理由を深掘りするため、『KARTE Live(顧客のページでの行動を動画で確認できる機能)』も活用。一時増額ページでのお客様の動きを確認しました。

するとページのファーストビューを数秒閲覧した後、何も操作せずに離脱しているお客様が一定数いることもわかりました」

また、Webサイトにおける行動だけでなく、検索流入した顧客のニーズを知るため、千葉さんはGoogle Search Consoleも併用。どういったキーワードで検索して一時増額ページに流入しているかを分析しました。

その結果「JCB 限度額 引き上げ」や「JCB 増額」といったキーワードで検索していること、「JCB 増額」で検索すると一時増額のページが一位表示されることがわかりました。

これらの分析から、千葉さんは「一時増額以外のニーズを持ったユーザーが流入してしまっている」と「ファーストビューの情報がわかりづらい」という二つの仮説を立案。KARTE RightSupportを使って施策の検証を行いました。

千葉さん「一時増額ページを訪れたお客様に、実施したい手続きを『一時増額』『恒久増枠』『減枠』から選んでもらうサポートウィジェットを表示。選択した手続きに応じて、適切なページのリンクへ案内しました。

施策の結果、それぞれの手続きページへの遷移率は3pt向上。さらにサポートウィジェットを利用したお客様のうち一時増額ではなく恒久増枠を希望する人が、3割もいらっしゃることが確認できました」

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「恒久増枠希望にもかかわらず一時増額のページに流入している」という仮説が一定証明されたため、千葉さんは増額手続き関連のページ構成の見直しに着手しているそうです。

千葉さん「『JCB 限度額 引き上げ』や『JCB 増額』で流入したお客様向けに、増枠全般について案内するランディングページを作成しようと考えています。そこで手続きの違いを理解してもらった上で、希望する手続きのページに進んでもらうイメージです。

ページを訪れたお客様のニーズとコンテンツのミスマッチを減らすことで、増額にまつわる手続きの自己解決を促進できると考えています」

スピーディーに改善を回し、さらなる満足度向上を目指す

こうした施策の仮説検証と合わせて、JCBではKARTE RightSupportを使ったコンテンツ改善のフローを整理。仮説検証のプロセスを共通化することで、安定して成果を出せるチームを目指しています。

千葉さん「施策の実施前と実施後の合わせて、7つのステップを設定しています。

実施前は、まず行動データを見て数値的な事実からお客様のつまずきをしっかり把握。その次に、事実をもとに課題の仮説を立て、解決のための施策の中身や狙いを整理します。

実施後は、施策結果を数値で確認。その上で当初の仮説が合っていたのか、狙い通りお客様の課題が解決されたかを振り返り、ネクストアクションを策定します。

こうした7つのステップをまとめたシートも作成し、施策ごとに担当者が必ず記入するようにしています。施策から得たナレッジもチーム間で蓄積・共有しやすくなりました」

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発表の最後に、千葉さんはKARTE RightSupport導入による変化を踏まえて、今後の展望を共有してくれました。

千葉さん「KARTE RightSupportを導入したことで、お客様の細かい行動から、つまずきやその理由を分析できるようになり、以前に比べて課題の仮説が立てやすくなりました。

また、スキルや知見がなくとも簡単に詳細な顧客分析ができるため、担当者それぞれが自らのアイデアを生かしながら仮説検証を進められています。

分析だけでなく自己解決を促進するための施策の実行もノーコードで簡単に行えるので、仮説の立案から検証までのスピードも上がりました。

今後は、この改善のサイクルをさらに加速してお客様の理解を深め、自己解決の促進につながるコンテンツを拡充し、よりよいサポート体験を実現していきたいです。

さらに、その中で発見したお客様のニーズや困りごとなどはチーム外にも共有し、機能の改善など、幅広い満足度向上の取り組みにつなげていけたらと考えています」

生成AIを活用した新機能で、よりよいサポート体験創出を支援

千葉さんの発表の後は、RightTouch代表の長崎より生成AIを活用した新機能を紹介しました。

一つ目が「ライブアシスト機能」です。顧客が問い合わせフォームに入力した内容をリアルタイムに解析し、関連するFAQを自動で表示します。

長崎「お客様が問い合わせ前に解決策を発見できる可能性が高まり、自己解決までの時間を短縮できます。実際に先んじて活用いただいた企業では自己解決の促進や問い合わせ対応工数の削減といった成果につながっています」

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二つ目が「シナリオ自動作成機能」です。ページ詳細レポート(※)の「ページを経由して閲覧された特徴的なアンサー」のデータをもとに、顧客の課題と解決策の組み合わせを自動生成。FAQを表示するサポートウィジェット施策などに組み込むことができます。

長崎「サポートウィジェット施策において『どのような問いをどの順番で表示するか』というシナリオの設計は重要である一方、工数もかかります。『シナリオ自動作成機能』を使うことで、自動生成された組み合わせをそのまま利用したり、叩き台として活用したりすることで、改善サイクルを素早く回せます」

※各ページのセッション数や経由問い合わせ、離脱数。各顧客の行動などを深掘り分析できるレポート

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これらの機能の発表は、KARTE RightSupportによる生成AI活用の第一弾。今後も「エンドユーザーとのコミュニケーション」と「オペレーターの支援」「施策の企画支援」といった3つの領域で新たな機能を拡充していきます。

長崎「エンドユーザーとのコミュニケーションについては、いきなり応対をすべて自動化するのは今のところ現実的ではないと捉えています。ですので、まずはライブアシスト機能のように、顧客がフリーテキストで検索を行って、より的確な結果を得られるような機能に焦点を当て、開発を進めていきたいと考えています。

オペレーターの支援では、『KARTE Talk』というチャットでの顧客コミュニケーションを支援するKARTEのプロダクトにおいて、回答補助機能を実装するなども構想中です。

最後に施策の企画支援では、KARTEの行動データとVOC(顧客から企業に寄せられた意見や要望)をかけ合わせた分析を支援するような機能を検討しています。

このように生成AIを駆使して、サポートを行う企業とサポートを享受する顧客の双方に価値を提供していきたいです。第二弾のリリースもぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです」

参考記事:プレイドグループのRightTouch、カスタマーサポート領域に特化したLLMの活用推進を強化。「KARTE RightSupport」に複数機能を実装開始

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よりよいWebサポートを目指す仲間同士で情報交換

ミートアップ後半では、「理想的な顧客の自己解決を促進していくためにこれから取り組んでいきたいことは?」をテーマにラウンドテーブルも実施。

複数のグループに分かれて、それぞれの抱えている課題や今後チャレンジしたいことについて共有し合いました。

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時間が経つにつれ、会場は時折笑い声が上がる和やかな雰囲気に。自己解決のため顧客理解やサポートチャネル・サポートコンテンツの拡充など、様々なトピックについて活発なディスカッションが起きていました。

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最後は参加者全員で懇親会を実施!飲み物や軽食片手に、KARTE RightSupportの活用や取り組みについて情報交換を行いました。

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今後もRightTouchでは、KARTE RightSupportのユーザー同士が活用法や施策を共有し、よりよいサポート体験を探索する機会をつくっていきます。第二回目の開催もぜひお楽しみにしていてください。

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