GDOがKARTE活用から得た示唆とは。定量と定性、両面からのリサーチで顧客体験の向上をめざす

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)において、チャット機能を活用しプロアクティブに購入をサポートした事例と、「KARTE Live」を活用して得た成果や示唆について、リテールビジネスユニットの小笠原様、塚原様にお話を伺いました。

ゴルフに関するあらゆるサービスを提供する『ゴルフダイジェスト・オンライン』(以下、GDO)では、2015年よりKARTEをご利用いただいており、様々な機能を活用しながら顧客体験の改善に取り組まれています。

今回、「KARTE Talk」のチャット機能を活用しプロアクティブに購入をサポートした事例と、「KARTE Live」を活用してユーザー一人ひとりの行動を動画で確認しながらECの検索機能改善に取り組み、そこで得た成果や示唆について、リテールビジネスユニットの小笠原様、塚原様にお話を伺いました。

オンラインの購買体験をオフラインと遜色ない体験にする

所属されている部署とミッションについてお伺いできますか。

塚原:私たちはリテールビジネスユニットというゴルフ用品販売を担当する部署に所属しています。さらにユニット内は企画部・商品部・ロジ(倉庫・物流)・店舗運営という4つの部署に分かれており、私たちは企画部で仕事をしています。

企画部のミッションは、商品部が調達した商品をお客様に気持ちよく「お買い物」いただくこと です。そのなかでも特に、ECでの購買体験向上に注力しています。ECで商品を買うときには、試着ができなかったり、店員に相談ができなかったり、どうしても実店舗と同じようにできない部分がありますよね。私たちの理想は、実店舗で商品を買うときと遜色なく、またはそれ以上にお客様に満足いただけるような体験をEC上で実現することです。

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株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン リテールビジネスユニット 企画部サービスデザインチーム マネージャー 塚原様

KARTEはサービス初期から使っていただいていますが、これまではどのようにご活用いただいていましたか。

塚原:導入時の状況は詳しく分からないのですが、現在は複数部署で利用しています。企画部はUI/UXチーム、販促チームに分かれていて、それぞれで異なる使い方をしています。販促チームは、集客・接客での活用が主です。お客様をセグメントごとに分け、各セグメントに合わせたキャンペーンの訴求をしたり、あるセグメントに限定してクーポンを配布するためなどにKARTEを活用しています。

UI/UXチームではKARTEを利用し、ECにおけるUIのテストを実施しています 。UIの改修には時間も工数もかかるため、効果が予測できないうちに改修を行うことはリスクです。そのため、改修のアイデアは必ずKARTEを使って効果をテストします。例えば、閲覧履歴の表示など動的な機能でも、システム改修なしにすぐに検証することができました。KARTEを使えば画面の表示を柔軟に変化させられるので、さまざまなパターンを検証することができ、重宝しています。

店舗休止により空いたリソースを活用し、チャット相談の有用性を検証

今回、KARTEのウェブチャット機能を活用してEC上でチャット相談を実施されたそうですね。実施に至った経緯をお伺いできますでしょうか。

小笠原中古クラブの買取・販売サービスで、チャット相談を実施しました。 もともと中古クラブの販売は、実店舗とEC両方で行っています。お客様は実店舗にある在庫をECで購入することもできます。しかし実店舗の方はコロナの影響で休止になってしまいました。実店舗での購入を好まれるお客様にも、ECで購入いただくしかありません。

店舗の休止により、これまで接客がメインだった店長のリソースが空いてしまうことも問題でした。ECから注文がはいった店舗商品の出荷業務はあるものの、店長がもつ豊富な商品知識が活かされないのはもったいない。そこで 店長にEC上でお客様の相談にのってもらえないかと思いました 。店長の皆さんにも相談したところ、ぜひ協力したいという反応をいただき、実施にいたりました。

施策に使うツールとしてKARTEを選ばれたのはなぜでしょうか?

塚原スピード感とコスト が決め手です。すぐに始められそうか、追加コストがかからないか。その観点で検討すると、既存で導入していて、追加費用なしでチャット機能が使えるKARTEの他にありませんでした。

ウェブチャットを導入するにあたり懸念されていたことはありますか?

小笠原:チャット相談は、私たちにとって初めての取り組みです。やってみるまで、不安なことはたくさんありました。どういう質問が来るのか、回答にはどれくらい時間がかかるのか、商品に関する質問ではなく、個別商品の発送状況の確認といったカスタマーサポートセンターで対応するような問い合わせが多数きてしまったらどうしようか。

とくに店長が対応に追われてお客様をお待たせしてしまわないか心配でした。対応する店長は1日1名のみで、人数が少ないため、一度にご相談にのれるお客様の数にも限界があります。

店長さんが対応するお客様数をコントロールするために工夫されたことはありますか?

小笠原:導入にあたり、KARTEのサポート担当に懸念点を相談しました。後日いくつかの対策を提案していただき、”最大アサイン数に達した場合にチャットのアイコンを非表示”にして対応する上限を設ける方法を採用しました。

いきなり同時に何人ものお客様対応をすることは難しいので、まずは同時対応数を1人に限定(様子を見て、途中で2名に変更)。お客様の対応をしている間はチャットのアイコンが表示されないように設定しました。

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他にもチャットアイコンに”期間限定実施中”という文言を記載したり、”相談対象のカテゴリの商品詳細ページを一定時間以上みたユーザー”にのみチャットアイコンを表示するようにしたり。店長にかかる負担を最小限に抑えながら、購入意欲が高まっているお客様にのみご案内ができるよう工夫したんです。

小笠原:セグメントやコミュニケーションの工夫によって、懸念していた購入後のお客様からの質問はありませんでした。

チャット施策に関して、今後トライしようと考えていることはありますか?

小笠原:店舗が再開したため、チャット相談に関しては一旦クローズしています。現在、結果を分析している最中で、お客様からの満足度も高いように感じています。「EC上でも相談できる」という体験の価値を試してみる良い機会でした。協力していただいた店長からも高評価をいただいているので、続けられそうであれば今後も継続導入したいと考えています。

KARTE Liveで、定性と定量の両方を担保した課題抽出を実施

KARTE Liveを使われたきっかけをお伺いできますか。

塚原:最初は ユーザーのニーズを知る目的で、使ってみました 。どんな機能なのかという確認も含め、特にテーマは設定せずに、みんなで見る機会をつくりました。ただテーマがないまま見ても、漠然とした感想しかでてこないんですよね。「こういう動きがあったね」という事実確認になってしまい、「何が課題なのか」という具体的な議論の材料はでてきませんでした。

じゃあテーマがある状態で使ってみてはどうかと、別で動いていたプロジェクトで試してみることにしました。ショップ内の検索機能のリニューアルのプロジェクトです。ちょうど検索機能における課題の抽出に煮詰まってしまい、新たなヒントを探しているタイミングでした。

KARTE Liveとは、顧客の行動を動画で見ることで、実際の体験を理解し、インサイトを発見することができるKARTEのオプション機能(動画はサンプルです)

アンケートやアクセス解析といった定量調査に注力されている中で今回、KARTE Liveの活用を決めた理由はどこにあったのでしょうか?

塚原:定量的な調査は既にやっていたのですが、数字だけでは行動の裏にある背景や動作が見えず、課題が曖昧にしかわからなかったのです。かなり大きな改修になることを考えると、根拠が不十分な状態でした。そこで全く違うアプローチを試してみようと、KARTE Liveに着目しました。

KARTE Liveで見るユーザーの選定はどのようにされましたか。

塚原:絞り込み機能を日に何回使った方とか、セッション内で購買まで至った方など、切り口を変えていくつかのユーザーの行動を見ましたね。

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ユーザーのセグメントや来訪回数などの各種条件で絞り込んで、条件に合致したユーザーの過去の録画データを確認できる

どのような示唆が得られたかを、具体的にお伺いしてよいでしょうか。

小笠原:例えば、中古商品の検索シーンで改善すべき点がクリアになりました。 当社のECは、新品の売り場と中古の売り場が全く別のページとして分かれています。検索の仕組みも別々になっているため、お客様は新品と中古を一括検索することができません。

しかし新品の売り場へアクセスしたお客様のなかには、「中古 パター」で検索される方が一定数いらっしゃいました。現在の検索機能では新品の商品しかヒットしないため、表示される結果は0件となってしまいます。新品と中古が一括検索できないことを伝えきれていないため、なぜ0件と表示されるのかお客様には理由がわからない。他にも新品・中古を、売り場を行き来しながら比較検討されているお客様がたくさんいらっしゃいました。

データを元にUX上の課題を感じていましたが、KARTE Liveでお客様の実際の行動を見ることで仮説に確証を得ることができ、新品商品と中古商品をスムーズに比較できるような動線や機能の再設計が必要であることを確認できました。

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株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン リテールビジネスユニット 企画部サービスデザインチーム 小笠原様

塚原:もともと考えていた仮説が覆った場合もありました。本来のユーザーの動きを全くフィルターがかかっていない状態で見られるため、思いもよらぬユーザー行動の発見に繋がります。
普段実施しているユーザビリティ調査の場合、シナリオを説明し、そのシナリオに沿ってユーザーの方に操作をしてもらいます。その操作を見ながら想定通りの動きになるかどうか検証を行うんです。今回はKARTE Liveを使うことで、何もシナリオがない状態のユーザーを見ることができました。すごく貴重な機会だったと思います。

「思いもよらぬユーザー行動」とは?

塚原:当社の検索には、絞り込み機能が存在します。私たちの予想では、お客様はそれぞれ絞り込み機能を活用して、明確に欲しい商品のページへ遷移しているものだと思っていたんです。しかし実際見てみると、絞り込み機能が意外と使われていないことがわかりました。お客様の多くが絞り込みを使わず、検索一覧からポチポチと気ままに遷移している。自分たちがユーザーの行動に対して固定概念を持っていたことに気付かされました。

これまで見えていなかったことが見えてきたんですね。他にもKARTE Liveを使うことにメリットはありましたか。

塚原:課題抽出を行う時にネックとなるのは、プロジェクトメンバーそれぞれの主観やイメージです。同じデータを見ていても、それぞれ思い描く課題感がばらついてしまうことが多々あります。でもKARTE Liveの場合はユーザーの動きという事実を見ているので、課題認識にズレが起こりづらいですね。KARTE Liveを使うことでみんなが同じ課題を同じ解釈で認識できことは、とても大きなメリットでした。

他にも KARTEの素晴らしい点は定性と定量を行き来できること です。KARTE Liveで明らかになった課題が、たまたま私たちが見ているお客様だけに起こった課題である可能性も否定できません。「この課題は本当に何人ものユーザーにおこっている課題なのか」を検証する必要があります。

なるほど、定性から見つけた課題に関しては、定量で裏付けを取りながら仮説を深めていかれたんですね。

塚原:そうですね。KARTEで定性・定量の両面を把握できたので、私たちはインサイトの発見に注力することができました。

事業部を超えて、顧客のゴルフ生活に寄り添った体験を実現したい

顧客体験をより良いものにしていくために、今後考えられていることがあれば教えてください。

塚原:私たちはゴルフメディア、ゴルフ場予約、ゴルフレッスン、ゴルフ用品販売の4つの事業をメインに展開しています。どの事業においても、同じゴルファーのお客様がお相手です。理想的には、GDO全体でお客様のゴルフ生活を豊かにする一連の体験を実現したいと考えています。しかし現状は主要事業ごとに組織やサービスが縦割りになってしまっており、複数の事業間を行き来しづらい状態です。

全社的な課題として4事業を横断した体験の提供に、これから取り組もうとしています。まずはゴルフ場の予約事業と、ゴルフ用品販売の連携プロジェクトが立ち上がりました。サイト上でどのように導線を繋げるべきか、検索のプロジェクトと同様にまずは課題定義が必要です。そのなかで再度KARTE Liveの活用を考えています。

検索機能の改修と同様に、仮説・課題の抽出に使われているのでしょうか。

塚原 :今までゴルフ場予約ページとECページには導線がほとんどなかったため、そもそもどういう動きをする人がいて、それがどんな人なのかというデータがほとんどありませんでした。まずはそこを明らかにするためKARTE Liveを使っています。これまではデータがなかったために、課題を捉えることも、アイデアの有用性を検証することもできませんでした。ようやく糸口をつかめそうで、嬉しいです。

今EC以外のゴルフ場予約やメディアのwebサイトにもKARTEの導入が進んでいます。たとえばゴルフ場の予約をしてラウンドを控えたお客様に対して、ゴルフボールなどの消耗品の購入をご提案することも可能です。KARTEを使えば、事業部横断でお客様の動きを把握できます。お客様のゴルフ生活に伴走する形で、オンライン・オフラインを繋ぎながら1人ひとりにあわせたサービスをご提案していきたいですね。

ありがとうございました。

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