KARTE STAR 2025 「GOLD STAR」受賞インタビュー:株式会社JTB

KARTE STAR 2025 「GOLD STAR」を受賞した株式会社JTBのチームの皆様へのインタビューをお届けします。

KARTE Friendsのチャレンジを表彰する年に一度のアワード「KARTE STAR」の受賞企業が2025年も決定いたしました。

KARTE STAR 2025の「GOLD STAR」を受賞したのは、「KARTE STAR 2023」「KARTE STAR 2024」でもGOLD STARを獲得した株式会社JTBのみなさま。

今年は新たなメンバーの参加に加え、KARTE Craftを活用して大きな成果も生み出すなど、多彩な施策を展開しています。

今回の取材では、新たにKARTE運用に加わったメンバーもお招きし、新たな取り組みの過程やその他にも生まれた波及の成果などについてお話を伺いました。


KARTE STARは、顧客の体験向上(CX)、デジタルによる事業変革(DX)、従業員およびチーム変革(EX)に取り組むKARTE活用企業(KARTE Friends)のチャレンジを表彰する年に一度のアワードです。KARTEとともにチャレンジを続け、輝きを放つKARTE Friendsに進呈する賞であることから「KARTE STAR」と命名しています。

プレイドでは、KARTE STARの表彰によって、KARTEによる顧客体験向上や事業成長を成し遂げた方々の栄誉を称え、そのベストプラクティスを広く共有することを目指しています。

KARTE STARでは、各社からエントリーいただいた内容を「顧客の体験向上」、「デジタルによる事業変革」、「従業員およびチーム変革」の3つの観点から評価させていただき、KARTE GOLD STAR、KARTE SILVER STAR、KARTE BRONZE STARを選定しています。

3年連続受賞。新メンバーも増え、KARTEの活用も広がった1年

今年も受賞、おめでとうございます!これで3年連続の受賞ですね。受賞時の社内の反応はいかがでしたか?

小野:受賞の連絡をいただいたときはオフィスを離れてリモートワーク中だったこともあり、最初は湯本に電話をして「3連覇」を達成したことについて盛り上がりました。その後、Slackでも共有したところ、これまで以上に社内が盛り上がったように感じます。やはり3連覇という実績が大きかったのではないでしょうか。

湯本:最初に小野からの着信を見た時は、なにかトラブルが発生したのかと焦りました。慌ててかけ直すと、GOLD STAR3連覇の報告だったので安堵と嬉しさが同時にあり、結果良い電話でした。正直なところ、さすがに3連覇は厳しいのではないかと思うところもありました。こちらも活用の高度化はしているものの、他社さんでも活用は進んでいるだろうし、相対的には厳しいかもしれないと考えていました。

セリン:普段のコミュニケーションをしているSlackのチャンネルで情報が共有されたので、「いよいよ3連覇か」という感慨深さがありました。小野が資料づくりをしっかり頑張っている様子も伝わってきて、良いチームワークでここまで来られたのではないかと思います。

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株式会社JTB 小野 道隆氏

初参加の方もチームに加わられていますね。

小野:そうですね。初参加となったのは、大城、佐藤、田代の3名です。大城は、KARTEを活用しながら、日々のJTBホームページに関する課題解決に対応しているメンバーです。佐藤はUIデザイナーとしてKARTEを活用するだけでなく、Figmaなどのデザインツールでデザインを起こしながら、フロントエンドエンジニアとの連携を図ってKARTEを有効に使っています。田代は国内商材のプロダクトオーナーで、JTBホームページ内でどの部分にKARTEを使っているかを管理し、KARTE以外では対応が難しい部分の管理も担当しています。重野は中居と共にSEOを推進しながら、KARTEを活用してさまざまな課題を解決しています。

重野:KARTEは、SEOの考え方とは真逆だと思われるかもしれませんが、実はSEOまわりの施策も行いながらKARTEを活用しています。特定のLP(ランディングページ)に対して導線をつくり、CVRを改善する成果も出ました。そのほかにもKARTEの活用をさらに推進する動きがあります。

SEO推進のためのLPOでもKARTEを活用されているとのことですが、具体的にはどのような施策を行っているのでしょうか?

中居:オーガニック流入は獲得できつつも、直帰率やコンバージョンの観点で課題があるページを発見しました。そこで、予約への導線を追加すれば流入を活かせるのではないかと考え、改善に取り組んでいます。通常であれば、こうした改修には時間がかかるのですが、KARTEを使うと素早く改修できたのが大きなポイントですね。

たとえば、海外ホテルの施設詳細ページには「料金をみる」といったボタンがなく、お客様が行き止まりになってしまっていました。そこにボタンを追加することで予約につなげることができたんです。私自身、少しコーディングの経験はありましたが、さらに知識を増やしたことでKARTEを使った施策の幅がぐっと広がりました。

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株式会社JTB 中居 美那子氏

新しくメンバーとして関わった方は、KARTEを活用してみてどのように感じていますか?

佐藤:KARTEについてプロフェッショナルともいえる先輩方がいるのはとても心強いです。入社時からKARTEを使っているので、KARTEはすごく身近な存在だと感じています。「JTBラウンジ」を訴求する取り組みでは、バナーやアイコンなどあらゆる面でKARTEを活用し、様々なアプローチでお客様の認知拡大を図っています。「JTBラウンジ」は、まだまだ認知度に課題があると感じていますが、こういったサービスを知っていただくことが、沖縄旅行の予約において大きなフックになり得ると考えています。そこで、できるだけJTBラウンジを知っていただけるよう、今後もKARTEを活用して訴求力を高めていきたいと思います。

具体的には、自分がつくった静的ページへの導線をKARTEで設定したり、アイコンや色を変えてテストしたりといったことが可能なので、どのデザインが一番効果的かを試せるのが魅力ですね。

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株式会社JTB 佐藤 すな緒氏

田代:今年度から初めてWebサイトを担当するようになり、それをきっかけにKARTEにも触れ始めました。率直な感想としては、「こんなことができるんだ」という驚きの連続の一年でした。たとえば、「こんな改善をしたい」と思っても、サーバーサイドの対応が必要だと時間がかかってしまいがちですよね。でもKARTEを使えば素早く改善できる場合が多いので、本当に助かっています。

ほかにも、時間がかかると思われた改善でも、一日や数日で実装できてしまうことがあります。そこで、まずは「KARTEでできるかどうか」を確認するところから相談するようにしているんです。そうすることで、よりスピード感をもって課題を解決できるのではないかと考えています。

大城:私は、KARTEを活用したBPR(業務プロセスの変革)促進の事例がとても印象的だと感じています。私自身は田代からの依頼を受けて作業を行う立場にあるのですが、KARTEを使って早めに施策を実装し、工数がかかりがちな部分を効率化する取り組みを進めています。

これまではKARTEの接客設定にはJavaScriptを用いていたのですが、JavaScriptが扱えるメンバーが少なく、何かあるたびに相談が必要でした。ところが、大石がよくあるパターンを集約してテンプレートを作成してくれたおかげで、ヘルプを依頼しなくても対応できるケースが増えました。結果的に工数や検討にかける時間が大幅に減り、より効率的に改善を進められるようになったと実感しています。

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社内向けに用意されたテンプレート例

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株式会社JTB 大城 奈々氏

先駆者的にKARTE Craftを活用して大きな成果を創出

今年はKARTE Craftの活用がより進みましたね。

小野KARTE Craftは昨年からいろいろと使いはじめていて、これまで実現が難しかったクーポンまわりのリアルタイム連携を実現できるようになりました。フロントエンド領域を超えてバックエンド領域もKARTEでカバーできるようになったのは、非常に革新的だったと思います。それによって、数値的な結果にも直結したのが大きかったですね。

クーポン施策を実現するにあたって、難しかったことはありましたか?

小野:正直なところ、KARTE Craftはまだ活用事例が少なく、ほとんどレファレンスもないに等しい状態でした。トライ・アンド・エラーを繰り返しながら、プログラムをゼロから学ぶような気持ちで発生するエラーに向き合っていったんです。特にKARTE Craftには「10秒以内に処理を終えないと機能として完結しない」という制約があり、それに対応するためには愚直に取り組み続けるしかありませんでした。そこが一番の苦労だったと思います。

とはいえ、プレイドのカスタマーエンジニア皆さまとコミュニケーションを重ね、アドバイスをもらいながら実装を進めていきました。もしまったく何もないところからスタートしていたら、本当に暗中模索のまま終わってしまったかもしれません。

クーポン情報のリアルタイム連携では、Craft FunctionsからAPIへクーポン残数をリクエストし、アクションテーブルに自動連携。トラフィックが多いページでのクーポン残数APIのリクエスト負荷がボトルネックとなっていましたが、その壁を乗り越えました。この連携により、CVRは未実施と比べて約3倍となり、販売額増加へ大きく貢献しました。

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KARTE Craft Friends Meetup vol.1 登壇資料より

KARTE Craftを活用した施策によって顧客の声や反応などはありましたか?

小野:まだそこまで幅広く収集できているわけではありませんが、社内で共有してもらっているVOC(お客様の声)のリストのなかに、クーポンまわりの声が増えてきました。良い部分も悪い部分も含めて、お客様がかなり注目してくださっているように感じています。

ただし、使えるクーポンは数多くある一方で、条件を満たさないと使えない場合もあります。自分がその条件に合っているかが直感的に分かりにくいという課題があり、その課題を解決できれば、より多くのお客様にクーポンをご利用いただけると考えています。

クーポンと連携したポップアップ運用の自動化なども小野さんが担当されているのでしょうか?

小野:その部分は芹田と連携して進めています。課題を整理して見える化してもらえたのが大きく、「KARTE Craftで解決できるかもしれない」という話になり、実際に実現に向けて動くことができました。

芹田:「クーポンを併用した際にどれだけお得になるのか」をポップアップで示す仕組みを実装しました。クーポンは併用する券種の組み合わせによって随時合計金額が変わっていくのですが、これまでは手動で計算していたため、即時反映ができませんでした。クーポン残数をAPIからリアルタイムに取得、割引金額も自動計算し、ポップアップへの反映を実現しました。KARTE Craftを使うことで、いくらお得になるかを自動で計算してくれるんです。また、すべての残数がなくなったら接客を自動停止し、slackに自動通知するという仕組みによって、運用コストは10分の1以下になりました。

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自動でクーポン適用後の金額を表示するデータ連携の表示例。これをポップアップでも実現するとともに、クーポンの残数がなくなると自動で停止。

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KARTE Craft Friends Meetup vol.1 登壇資料より

他にも、検索したお客様にクーポンを表示する、特集ページにクーポンを載せるなども実現したいと考えています。あとは、海外旅行のクーポンを取り扱うことにも挑戦していますね。国内とは仕組みが違うので苦労するところもありましたが、徐々に多くの人にクーポンを認知いただけるように取り組みました。

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株式会社JTB 芹田 南美氏

※JTBのKARTE Craft活用事例の詳細はこちらの記事をご確認ください。

リアルタイムデータ連携とBPRの進化で実現する業務革新!JTBが語るKARTE Craft活用法|KARTE Craft Friends Meetup vol.1

その他に、なにか印象的な施策はありますか?

小野:メルマガ配信にスクレイピングデータを活かす施策ですね。クーポンを訴求するメルマガを配信したいという相談が社内からあり、それに対応しました。クーポンのデータベースを直接参照できれば一番楽なのですが、データベースにはシークレットクーポンなど公にできない情報が含まれています。

そこで「公にされているクーポンは何か」をあらためて考えた結果、クーポンをまとめて掲載しているページのクーポン情報を利用すれば実現できるのではないかと考えました。そのページでは残数がなくなったクーポンがクローズになるなど、随時更新がかかるため、手動で都度情報を取得してメール送付時に更新するのは難しい状況でした。

そこでクーポンのページをスクレイピングし、必要な情報だけを抽出して、デイリーでデータ連携ができるように仕組みを整えました。これによってメルマガを担当するチームからは短期間で実現できたことと、効率的に運用できることにとても感謝されました。

最初は別のデータ連携のやり方も模索していたのですが、開発コストと時間がかかりすぎるため断念しました。「これはKARTEを使うしかないんじゃないか?」と考えて、おもしろい使い方ができそうだからやってみようとトライしたのが功を奏しました。社内の新たな課題をKARTEで解決できるのはとてもうれしいですね。困難な課題であるほどやりがいがあるので、どんなことでも解決しようと試みています。

社内の相談から実現のアイデアにつなげ、多彩な施策を展開

そういった社内からの相談はどのように発生しているのでしょうか?

小野:ケース・バイ・ケースですが、課長陣に課題を持ってきていただくこともあれば、もともと参加していたプロジェクト内で課題が浮上し、それに対応する場合もあります。そうした課題のなかで、まずどこから対応するかは事業インパクトの大きいものを優先しています。

「北陸応援割」もそうした流れで生まれた施策です。過去にGoToトラベルや全国旅行支援などのクーポン促進施策をKARTEで実施してきたノウハウを活かして、数日程度という短期間で実施にこぎ着けました。要望や要件が明確だったこともあり、スピーディーに進めることができたと思います。

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「北陸応援割」にてクーポン活用を促進するページ。数日で開発し、実施。

今年はA/Bテストの改善活動にも注力したと伺っています。こちらはどのように進めているのでしょうか。

小野:グループの戦略課題に対して、A/Bテストを実施して解決策を見いだしていくという改善活動を本格的に始めました。あわせて、事故リスクを低減するためのルール整備も進めました。

セリン:A/Bテストに必要なスキルが高度化していくなかで、どの施策がもっとも効果的なのかを、検証・分析のサイクルを回しながら探っています。大石と私が担当しているレコメンドプロジェクトでは、宿泊施設の在庫・料金を参照しつつ、施設の類似度を考慮したおすすめの宿を提示し、大幅なCVR改善を実現しました。

また、直近ではレコメンド表示ロジックに「距離」を考慮する処理を追加することで大きな改善を確認しております。これからはさらにユーザー行動から興味を推測し、より精度の高いレコメンドができるように改善を重ねていきたいと思います。

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株式会社JTB 崔 世林氏

A/Bテストを実施する際の課題設定や、レコメンドなどのプロジェクトはどのように施策を進めているのでしょうか?

湯本:A/Bテストに関しては、プロダクト別に集約されている課題一覧から「A/Bテストで取り組めそうだ」という課題を抽出し、プロトタイプを作るところから進めています。

一方のレコメンドでは、別部署の「データインテリジェンスチーム」と連携しながら、バックエンド側の開発を交えてディスカッションを元に進めている形です。

大石:レコメンドプロジェクトは、もともと「JTB内のデータをどのように活用できるか」というデータ活用推進の軸から始まり、セリンと私は、その途中からメンバーとして参画しています。

お客様の行動データがベースになっていて、たとえば「距離」×「類似度」のような観点でレコメンドを行う取り組みを進めています。当初はレコメンドのタイトル自体をA/Bテストするなど、本当に幅広い切り口で検証していました。結果として、今までの施策のなかでも特に大きなリフトアップ効果を得ることができたので、非常に手応えを感じています。

また、お客様に対して「JTBは自分に合った施設を提案してくれる」という認識を持っていただけるような施策を、旅行に行く前のタイミングでホームページ上に展開できるのはとても意義が大きいと思っています。

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宿泊施設の類似度を考慮したレコメンドの実施例

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株式会社JTB 大石 周氏

多彩な施策に取り組んでいますが、どのように施策をリストアップし、優先順位を決めているのでしょうか。

小野:実はさまざまなパターンがあります。たとえば販売課の田代から課題を受け取り、「この課題を優先して取り組もう」という形で整理することもありますし、外部原資を活用するような案件は重要度が高いため、ゼロベースで「どう活かすか」を考え、KARTEで何ができるかを模索する場合もあります。いずれにしても、「施策を検討する際の選択肢の一つとしてKARTEを考える」ケースが多いですね。そのなかで優先度の高いものから取り組んでいくのが通常の流れになっています。

人材採用における活用なども昨年に引き続き実施されていますか?

湯本:今年も実施しました。就活生向けの全5日間のインターンの内、3日間を受け持っており、実際の業務を経験してもらう形式としています。限られた時間の中で今後の就活に役立つものを得てもらうためには、解像度の高いリアルな業務を本気で体験してもらうことが一番ではないかと考えました。

たとえば、Figmaを使ったデザインや、KARTEの配信条件を考えてもらうなど、ツールも実際に使ってもらっています。こうした実体験を通じて、インターン生が「ツールを活用して業務に貢献できそう」と自信をつけられるのはもちろん、私たちとしても良いマッチングの機会となり、互いにとって良い体験となったのではないかと感じています。

その後、実際に採用面接を担当した社員から「複数社参加した中でJTBのインターンが一番良かったのでエントリーした」という学生の声があったとの報告がもらえました。当初私たちが目指していた「就活生にとって有益な体験となるインターン」が実現できたと思っています。

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新卒採用インターンでKARTEを活用。

引き続き、KARTEを使った機動力ある問題解決に挑む

来年度に向けて目指していきたいことはありますか?

小野:4連覇を目指すことも大切ですが、それよりも、KARTEという魅力的なツールを使って「何ができるのか」「どんな課題を解決できるのか」を試し続けることが重要だと考えています。これは3連覇に至ったプロセスに似ているように感じていますね。

それぞれが高いモチベーションで取り組み、サイクルを回していくことで、その動きが全体に波及していくと思います。そうした積み重ねが、チーム全体のさらなる飛躍につながるのではないかと考えています。

湯本:昨年から方針は大きく変わりませんが、JTBのなかでKARTEを使う価値は「機動力のある課題解決」だと思っています。これは人の力に支えられているとあらためて感じました。

小野やセリンのようなエンジニアがすぐに試してみて「できちゃいました!」と実現できたり、デザイナーがエンジニアに「こんなテストはできる?」とすぐ相談できるようなコミュニケーションこそが大切だと考えています。

今後また新しいメンバーが入ってくることもあるかと思いますが、こういったカルチャーを継承し、引き続きスピード感を持って進めていきたいです。


JTBの過去の取り組みについてはこちらの記事でもご紹介しています。詳細は各記事をご覧ください。

KARTE STAR 2024 「GOLD STAR」受賞インタビュー:株式会社JTB

KARTE STAR 2023 「GOLD STAR」受賞インタビュー:株式会社JTB

KARTEによる業務プロセス改善がCX向上に貢献、JTBにおけるBPRの実践例

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