目指したのはお客様の体験価値の可視化。三井不動産とPLAIDが挑むCXMサイクルとは

本インタビューでは、株式会社プレイドの高山晋(写真左)、三井不動産商業施設本部&mall事業室主事の山上裕之様(写真中央)、同事業室主任の鰭岡大樹様(写真右)の三者で、CXMサイクルおよび三井不動産が考える顧客体験について語っていただきました。

三井不動産株式会社は、「ららぽーと」などの商業施設とシームレスな連携を図る三井ショッピングパーク公式通販サイト「Mitsui Shopping Park &mall(アンドモール)(以下&mall)」を運営しています。

&mallでは、2018年7月よりKARTEを導入いただいています。また、本年度よりCX戦略を遂行するためのCXM(Customer Experience Management)サイクルをプレイドと共同で取り組み、今後最適な顧客体験のために様々な検証を実施する予定です。

本インタビューでは、株式会社プレイドの高山晋(写真左)、三井不動産商業施設本部&mall事業室主事の山上裕之様(写真中央)、同事業室主任の鰭岡大樹様(写真右)の三者で、CXMサイクルおよび三井不動産が考える顧客体験について語っていただきました。

三井不動産はどのような顧客体験の提供を目指すのか

―三井不動産は、「顧客志向の徹底」を掲げて街づくりを行っていらっしゃるそうですね。

山上:はい。三井不動産は、オフィスビル、商業施設、ホテル、住宅など関わる全てのサービスにおいて、「顧客志向」を重要視してきました。現在私たちの担当している商業施設の領域では、「Growing Together」というコンセプトを掲げ、お客様やテナント様と共に成長していく空間づくりを目指しています。

商業施設は、物を買うだけの場から、時間を過ごす場へと変化しています。三井不動産の象徴的な商業施設の一つ「ららぽーと」も、ショッピングセンターからスタートして、シネコン、ラゾーナ川崎のイベントスペースやららぽーと豊洲のキッザニア・ドッグランなどを代表例として、時間を過ごしていただく場所へと変化してきています。現在はその体験価値が拡張され、東京ミッドタウンの檜町公園、ららぽーと海老名のebicenやららぽーと湘南平塚の湘南ツリーハウスなど、徐々にコミュニティを形成する場、そしてその場にいる人々と体験や時間を共有してシェアする場としての機能も併せ持つようになりました。

鰭岡:「&mall」を立ち上げた背景として、これまで弊社の強みとしていたリアルだけでなく、ネットにおいてもお客様と接点を持つことで、よりお客様のことを理解したい、また、リアルとネットが融合した新たな体験を実現したいという想いがありました。

「&mall」とは、三井不動産グループで運営する商業施設と連動したECモールです。「高感度」をテーマに、アパレルを中心にライフスタイル商品まで幅広く取り揃えています。

「&mall」の特徴はオフラインとオンラインのシームレスな連携が可能なことです。これは商業施設を持っている三井不動産ならではの提供価値だと考えています。

例えば、せっかく買い物に出かけて気に入った商品を見つけたのに、自分に合うサイズや欲しいカラーが店舗になかった経験ってありますよね。そうなると、お客様の体験は下がってしまいます。もし、「&mall」に在庫があれば、(お客様は商品を購入できるので、)お客様の顧客体験は向上すると思います。また、店舗で買おうか迷った商品が後で欲しくなったとき、家に帰ってからでも「&mall」から購入することができます。

足元のCVRだけでなく、お客様の体験価値(CX)を中長期的にあげる必要を感じ、”CXMサイクル”を開発

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プレイド高山: KARTEを導入いただいて1年ほどご一緒するなかで、中長期的な顧客ロイヤリティ向上のため、足元のCVRを意識した数字改善から、CXを意識したCXMサイクルを中心とした改善へとシフトしたほうが良いのでは、という提案をさせていただきました。

―提案を受け入れた理由を教えてください。

山上:KARTEを導入した当初からお客様の体験価値をよくしていきたいと思っていましたが、初めはどうしても短期的指標である売り上げを追う施策にKARTEを使うことが多かったように思います。例えば、セールの案内やクーポンを提供するなどです。

しかし、短期的なCVRを上げても、顧客ロイヤリティが上がらなければ、中長期的に「&mall」を愛用いただけるようにはなりません。お客様には、まず「&mall」のファンになっていただき、そこから「ららぽーと」などの弊社商業施設のファンへ、最終的には三井不動産のファンになっていただきたいと思っています。

鰭岡:「&mall」での顧客体験を考えたときに、より広い視野を持つ必要性を感じていました。商業施設がただ物を買うためだけでなく、時間を過ごす場でもあるように、「&mall」にも物を買う以外に、トレンド情報を得る目的やオムニチャネル利用をされる人など様々な目的とそれに対するニーズがあるはず。また、ただ物を買うという体験にも、欲しい商品が決まっている人と決まっていない人とでは求める顧客体験は異なるはずです。「&mall」内のお客様の様々な反応を可視化し改善していくことで、「&mall」の新しい可能性を探りたいと考えていました。

山上:「&mall」での顧客体験の指標化と、CXMサイクルをとおした指標改善の取り組みを共同で行うことをお願いすることに決めました。PLAIDさんと一緒に取り組めて非常に助かっています。

プレイド高山:我々としてもCXを活かす取り組みにご協力できればと思っておりました。お力になれて幸いです。

※ 参考記事:「CXMとは?顧客から愛されるサービス作りのために会社全体で取り組むべきこと」

CX(お客様の体験価値)を可視化するプロセスを構築

―改めて、今後取り組む「CXM」の取り組みについてお伺い出来ればと思います。

鰭岡:「&mall」では、お買い物終了後に、購入体験やサービスの満足度に対する評価をしていただくアンケートを実施しているのですが、半年間実施してきたアンケート結果を踏まえて、お客様の声をもとに顧客体験を改善するフローを作る必要性を感じていました。

山上:そうですね。そこでご提案のあった「CXM」による改善プロセスを取り入れてみることに決めました。具体的には、専用アンケートから得られたお客様の声を「&mall」事業室メンバーに共有し、お客様視点を意識しながら改善していければと考えています。さらに、改善点をお客様にもお伝えし、その際もアンケートで改善点の評価を把握することで、更なる改善に繋げていきたいです。

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図-1「Feedback with 3S」からなるCXMサイクルの概略図

プレイド高山:上記の図で重要なポイントであるFeedback(ユーザーのフィードバックを得る)を取得するためのアンケートは、買い物時と商品利用後の体験に対して、どう感じたかを直感的に評価しやすいようなUIになっています。

―お客様の反応はいかがでしょうか。

鰭岡:アンケートの回答率の高さには驚きましたね。UI設計自体もお客様が答えやすいかたちにすることで、買い物終了後の購入体験アンケートが約50%、商品到着後の商品使用感アンケートは約70%の結果となり、ノーインセンティブでここまで高い数値になるとは思いませんでした。(参照:図-1 Feedback)また、アンケートのフリーコメントも、サイトの改善を行っていくうえで非常に役立っています。

山上:サービス改善後にもアンケートを設定して、お客様の反応に触れられるように設計されている点が良いと思っています。(参照:図-1 Ship)これまでは、施策がうまくいったかどうかはCVRで測るしかなかったですが、そもそも施策自体をどう受け入れていただけたのかを理解するべきだと思っていたので、今後の大型リリースでも積極的に取り入れたいと思っています。

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左から「買い物完了アンケート」「商品使用後アンケート」「施策通知アンケート」

―顧客の声からエクスペリエンスを良くする改善ループをまわす際、CVRとは違う新しいKPIが必要です。&mallでは今後どのような指標を取り入れる予定ですか?

鰭岡:CVRという評価軸は、時期やクーポンなどのインセンティブによって計測結果が左右されることもありますし、NPS等の指標もKPIに据えることで、よりお客さま視点に寄り添った改善ができるのではと期待しています。NPS等のアンケートは別で実施し始めていましたが、今後KARTEでも取得していくことを考えています。

山上:弊社で実施し始めているNPSでは、一部のメルマガ受信者からのアンケート回答に限られているため結果に偏っている可能性があること。また、アンケートの回答時点では過去の体験の話になってしまい、正確な回答が得られないのではないかという懸念がありました。KARTEでは、サイトに来訪されたお客様に広くアンケートを取ることができます。また、聞くタイミングを顧客体験に沿って適切に調整できるので、それらの課題を解決できるのではないかと考えています。顧客ロイヤルティ、顧客の継続利用意向とその要因を知るために必要なデータを、精度高く大量に手に入れることができれば、分析もしやすくなりますので期待しています。

オンラインもオフラインもひっくるめて「三井の街」として、お客様の体験価値を上げていきたい

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―最後に「&mall」とオフラインの連携なども含め、今後どんな顧客体験を提供していきたいと考えているか教えてください。

山上:お客様の期待を超える体験を「&mall」でも各商業施設でも提供していきたいです。ららぽーと等ではお客様の体験をデータとしてまだまだ分析しきれていません。購買しているデータは取れたとしても、その前後でどんな行動をしていたかわからない。また、顧客の情報をデータ化されていないことはたくさんあると思います。リアルの場でのデータや顧客情報も細かく取れるようにし、「&mall」上で顕在化しているニーズと掛け合わせて、オンオフを跨いだお客様の潜在的なニーズを捉えられるのではと考えています。そのニーズを踏まえ、新しい施策を仕掛けていきたいです。

鰭岡:私たちの主体はあくまで街だと思っています。「&mall」を始めたのも、より三井の街を便利に楽しく使ってもらいたいという思いからです。街の使い方の1つとしてWebサービスを使ってもらい、リアルで不便に感じていることをWeb上で解決していただきたいと思っています。今は商業だけですが、オフィスビルや住宅など、お客様のライフスタイルに寄り添いながら、リアルとWeb両方の手段を用いて、三井の街全体で顧客満足度の高い価値提供をしていきたいです。

―ありがとうございました!

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