急速な事業成長を支えるレンティオの小規模グロースチーム。成長サイクル確立におけるKARTE活用

人数を大幅に増やすことなく、小さなチームで大きな成果を上げているレンティオのグロースチーム。「事実、 仮説、打ち手」という独自のグロースサイクルにどのようにKARTEを活かしているのかを伺いました。

事業が成長していく過程では、検証すべきことも比例して増加していきます。そのために人員も比例して増えてしまうと、コミュニケーションコストが上がってしまい、事業のグロース速度が落ちてしまうかもしれません。

レンティオのマーケティング・広報部/グロースチームは、KARTEを活用することで、少人数のチーム編成のままで、事業成長に必要なケイパビリティを調達しながら事業のグロースを実現してきました。

レンティオのグロースにおいて、KARTEをどのように活用していったのでしょうか。グロースチームの高橋瑞生さん、関根光翼さんのお二人に話を伺いました。

スモールチームで事業のグロースを支える

まず、レンティオについてお伺いさせてください。

関根レンティオは、家電を中心としたサブスク・レンタルサービスです。2015年からサービス展開しており、4月から8年目に入りました。

サービス開始当初は、運動会用のビデオカメラなどの家電製品のスポット利用である「ワンタイムプラン」が主な利用シーンでした。環境変化や事業成長もあり、今では商材も家電全般に広がっただけでなく、レンタルの方法もサブスクリプションで利用可能な「月額制プラン」の提供も行っています。

家電製品の中には高額のものもあり、買ったけど失敗したという体験は避けたいお客様が多くいらっしゃいます。月額制プランであれば、月々の料金支払で利用できるので、リスクも少なく、受け入れやすいというお声もあります。この数年は月額制プランにも力を入れています。

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高橋:サービス開始当初、類似サービスは存在していました。当時、他のサービスは申し込み方法がFAXのみ、申し込みには免許証が必要、お客様が自ら受け取りに行く必要があるなど、決して使いやすいといえる状態ではありませんでした。

なるべく簡単に、誰でも使えるようにしようということで、顧客目線でのこだわりを持ち、行動指針にもカスタマーファーストを据え、会社のカルチャーとしても強いものになっていると思います。

お二人の経歴と担当されている業務について教えてください。

関根:前職はリクルートでディレクターとして勤務し、新規事業としてBtoC向けのシフト管理アプリの立ち上げを経験しました。その傍ら、さまざまなサービスに関わってプロダクトマネジメント、ウェブディレクション、グロースなどを経験した後、レンティオに入社しました。

レンティオに入社してからは、プロダクト改善などを行っていたのですが、最近ではデータを扱うチームに属して活動しています。というのも、ECにおいてサイト上での改善はもちろん重要なのですが、それだけでは出せるインパクトに限界があります。

どんな商品が、いくらでレンタルできるのかも重要です。それらも含めてUXだとすると、在庫データ、プライシングまで考えないといけない、ということで社内のデータをよく見るようになっています。

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関根 光翼氏

高橋:前職では、受託がメインのウェブ制作会社でデザイナーとして仕事をしていました。ウェブデザインなので、HTMLやCSS、JavaScriptの素養は少しあるくらい。その会社で7年ほど働いて、ベンチャー企業を一社経験してレンティオに入社しました。

レンティオに入社したときはデザイナーとしてデザインの仕事を中心に担当していたのですが、徐々にマーケティングのような仕事にも対応するようになりました。社内でマーケティングをメインで担う人間がおらず、社長と一緒に動いているうちにマーケティングの責任者のようになりました。今ではデザインも見ながら、マーケティングも見ている状態です。

グロースチームはどのような目標を目指して活動しているのでしょうか。

関根:レンティオには、一般的なECサイトと比べて特徴的な点があります。注文時にお客様が商品を手にする期間が柔軟に選択でき、商品が届いた後も延長・継続の意思決定があり、商品ラインアップが多岐に渡るということです。そのため、お客様の属性も利用方法も多様です。

目標に関しても、これらの特徴を踏まえて試行錯誤を重ねてきました。例えばKPIについても、最初は新規・既存のお客様ともにコンバージョン率を計測していました。そこから、カート追加、詳細ページへの到達率、一覧ページの閲覧率などに指標を分解していきました。

コンバージョン率自体が多くの要素で構成されているため、お客様の行動でKPIを設定することが難しい面もあります。最近では、商品の稼働率をKPIとし、一つひとつの商品がどれだけ回っているかをチェックしています。

高橋:こうしたレンティオのサービスが抱える複雑さと多様なお客様に対応していく上で、いかに多くのトライアンドエラーをしながらお客様からのフィードバックを得られるか、というのがUXを磨き込む際のポイントでした。

一方で、僕らのグロースチームの構成はデザイナー2名、ディレクター1名という非エンジニアの小規模な体制。後にデータアナリスト1名が加入しますが、それでも実装や分析を含めて回しきれる施策の数や内容に限界がありました。(※取材当時の人数です)

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高橋 瑞生氏

その課題をどのように解決しようとしたのでしょうか。

高橋:こうしたリソースとケーパビリティ上の課題を抱えていた中で、助けになったのがKARTEでした。KARTE導入後の2021年以降、グロースチームは当時から体制をほぼ変えずにさまざまな施策に対応でき、レンティオの急速な事業成長の一助となりました。

その観点でKARTEがお役に立っていたのですね。改めて、KARTEを導入するに至った背景についてお伺いさせてください。

高橋:関根さんがリードしてサービスに関するデータの可視化を行っていました。データが見えるようになってくると「A/Bテストやりたいよね」という声が出てきたんです。まずは、Google Optimizeを使ってA/Bテストを実施するようになりました。A/Bテストをやってみる文化が形成されてきた頃、より使いやすいツールを導入しようという話になって、KARTEを導入しました。

関根:最初はGoogle Optimizeで実施していたポップアップ施策をKARTEで実施するところからのスタートでした。Google Optimizeだと、施策のために書かないといけないコードの量が多いですが、KARTEならテンプレートを活用してノーコードで実現できる部分も多く、助かりました。自分のようにコードが書けない人間でもPowerPointを使っているような感覚で施策が実現できたのでよかったですね。

高橋:施策が実施しやすくなっただけでなく、出した施策の結果を分析し、改善につながったのかどうかも確認しやすく非常に助かりました。

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KARTE Liveで定性面も含めて顧客の動きをチェック

KARTEを導入いただいてすぐの頃は、ポップアップ施策中心のご利用だったかと思います。そこから、どのようにグロースチームを支えるような利用方法になっていったのでしょうか?

高橋:KARTEを導入することによって、改善活動の仕組みに大きな変化がありました。僕たちは、自分たちのチームに合ったやり方を模索しながら、KARTEの活用方法を試行錯誤した結果、レンティオなりのグロースサイクル(事実 → 仮説 → 打ち手)を確立して、そのスピードと質を磨き込むことができました。

「事実 → 仮説 → 打ち手」のグロースサイクルに、どのようにKARTEを活用しているのか教えていただけますか?

関根:まず、「事実 → 仮説」の部分からお話します。日々のモニタリングや分析の中では、お客様の行動、注文履歴、在庫状況など、さまざまなデータを扱うことになりますが、集約された数字を眺めているだけでは気づけないインサイトがあります。

このため「実際の一人のお客様から仮説を得る」ことは重要で、レンティオでもKARTE導入前からユーザーインタビューを数多く実施してきました。メリットが数多くある一方で、ユーザーインタビューは運用ハードルも高いですし、お客様自身が過去の行動を正確には思い出せないといった弱みもあります。

「お客様の隣に座って、操作している様子を眺めることができれば、非常に学びが大きいのに…」と考えていた僕たちにとって、有益だったのがKARTE Liveでした。2年ほど前からKARTE Liveを使い始めて、今ではお客様が画面を操作する様子を眺めるミーティング「ユーザーログ会」を隔週で実施しています。

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「ユーザーログ会」ではどのような発見があったのでしょうか。

高橋:一例ですが、お客様が商品を探す際に「検索一覧と商品ページの行き来を繰り返す」よりも「興味をもった商品ページを起点に関連商品を芋づる式にたどっていく」という動きがいくつか確認できました。

当時、関連商品機能は商品ページのかなり下の方にありました。その位置を商品ページファーストビューの直下にし、より目立つように変更することで利用率が5倍となり、CVRにも好影響がありました。その後も徐々に機能の認知は上がっており、現在は改善前の10倍の利用率になっています。

かなり数値が向上したのですね。それだけのインパクトが生み出せたのは、どこがポイントだったのでしょうか?

高橋:仮に「カートのこのページで離脱が多いよね」となったとして、どんな行動を経て離脱したかが重要です。途中まで入力して離脱したのか、何か選択を求められたタイミングで離脱したのか。離脱までの実際の動きをチェックしないと、リアルな課題は見つけられません。

例えば、決済での入力を迷ったのが、想定していた決済方法と表示されている決済方法のラインアップが違うという理由だったとします。その場合、決済の案内方法を変えるなど、迷いにつながっている根本の部分が改善できれば、カゴ落ちは減るはずです。

関根:KARTE Liveのデータに加えて、注文履歴などの別の情報と照らし合わせて、お客様の行動の前後の文脈も想像しながら仮説を立てるようにしています。

他にも、「ユーザーログ会」では、直近で追加した施策・UIの変化に注目しながら、実際のお客様の操作をチェックするようにしています。「仮説通りの使い方をしてくれているか」「別のネガティブな影響が出てしまっていないか」といったポイントを確認することで、定量的な結果と合わせて、打ち手の可否をより自信をもって判断できるようになりました。

A/Bテストのように定量だけで打ち手の良し悪しを振り返るためには、「十分なサンプル」と「未実施パターンとの明確な差分」の両方を満たす必要があり、これは意外に厳しい条件です。定性面の振り返りを行うことで、この課題の解消ができるようになりました。

例えば、定性の振り返りによって、どのような改善が可能になったのでしょうか。

高橋:レンタルサービスという特性上、初めての利用に不安に感じるお客様は少なくありません。そのため、できるだけ早いタイミングでサービスの自己紹介ページである「ようこそページ」を見ていただくことで、CVRが向上することがわかってきていました。

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そこでヘッダーに、初心者マークのアイコンで「ようこそページ」への動線を配置し、定量的には良い結果が出ていました。ただ、KARTE Liveでお客様の動きを観察している中で、初心者マークを「ヘルプ」だと思ってクリックしてしまう方が一定数いることに気づいたのです。

ページを開いた後に「間違えた」と思ったお客様は、すぐに別のルートから正しくヘルプページに辿り着いていましたが、こうした小さな違和感は、単一施策のA/Bテストからはわからないものでした。定性面も含めた振り返りでの発見から、現在では誤解のない表現・導線に修正できています。

非エンジニアで実装を完結できることによるスピード向上

続いて、「仮説 → 打ち手」の部分ではどのような取り組みをされていますか?

関根:
先程も申し上げた通り、KARTEには非エンジニアでも抵抗なく利用出来る直感的な操作性があります。また、KARTE Blocksを使えば、遅延のない表示が可能となるなど、エンドユーザーの体験を損なわない実装が可能です。

関根:現在、4名のグロースチームにエンジニアを本職とするメンバーはいません。KARTEを利用することで、8〜9割の施策を自分たちだけで実装可能になりました。実装する内容も、接客施策だけでなく、サイト内の要素自体の変更や追加といったものがほとんど。サービスのベースとなるUXを左右するような施策にもトライ出来ています。グロースチームで試してよい成果が出た施策は、開発チームに引き渡され、本実装されています。

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高橋:実装が簡単に出来るので、「グロースサイクルがチーム内で完結する」というメリットも非常に大きいですね。

仮説があったとしても、一つひとつの検証をプロジェクト化してしまうと、目指す事業の成長速度に追いつきません。できることが増えたからこそ、施策を実行するにあたってのフォーマットをコンパクトにするように心がけました。

仮説と施策の内容について、重要なことはドキュメントにすべきですが、ドキュメントをつくるよりも先に実行してみたほうが早い。関わる人数を少なくし、仮説を持ったメンバーが施策まで担当することでコミュニケーション、ドキュメンテーションのコストが劇的に下がりました。

チーム内で施策について議論する時間はあるのでしょうか。

関根:グロースチームで施策の優先順位を話し合う会議はありません。「ユーザーログ会」で顧客のイメージを共有できているのもありますが、KARTEを使えば、仮説を立てる人と、実装する人も同じにできるためです。また、仮説を立てる本人が実装まで手がける事で、目的意識がブレず、熱量高く完走できるので、施策のスピードと質の向上につながっています。

高橋:スピードが上がると、仮説のままで検証しないということがなくなります。例えば、私たちのサービスではお客様から返ってきたものをメンテナンスして再度貸し出すというものです。最近、取り扱いを開始した家電で「お客様は衛生面が気になり、レンタルへのハードルがあるのでは」という仮説が社内にありました。

「メンテナンスをどう実施しているかを紹介するページを表示すれば、安心して注文に進めるのでは」と考え、ライトにA/Bテスト実施してみました。ところが、A/Bテストの成績はそこまで良くはありませんでした。これも仮説のままで検証しなければわからなかったこと。施策までのスピードが上がったため、実現できたことだと思います。

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高橋:グロースチームの4人は、それぞれの専門領域を抱えていることもあり、事業成長に伴ってグロース業務に割ける割合はさらに限られてきていますが、それでも平均すれば、週に1度は新しい仮説をユーザーに向けて試すことが出来ている状況です。

多様な商品とニーズをマッチングするための試行錯誤

その他、グロースチームとして取り組んでいることはございますか?

関根:先程、レンティオの特徴として多様な品揃えがあり、お客様のニーズも多様であることをお伝えしました。お客様のニーズの平均をとって、全員に同じ商品棚を見せ続けると「自分のためのサービスだ」と思ってもらえる瞬間が減り、お客様は離れていってしまいます。

「一人ひとりに合った商品・コンテンツを表示する」と発想するのは簡単ですが、どのようにそれを実現するのかというロジックの磨き込みは一朝一夕では実現しません。グロースチームとして、大量の仮説をもとに実装し、トライアンドエラーできる仕組みが必要でした。

どのようにその仕組みを実現したのでしょうか。

関根:僕らはKARTE Datahubを利用することで、動的なレコメンド機能の実装と、その改善運用を、開発チームのリソースを使わずに実現できました。2022年5月ごろから取り組みを開始し、現在はサイト内の10ヶ所以上で「商品」「商品記事」「特集バナー」などを、各ユーザーの行動や特性に合わせて出し分けるコンテンツを運用しています。

例えば、コアなカメラ利用者に対して、以前はキッチンや美容家電に関するコンテンツを表示してしまっていたようなエリアで、「注文履歴が似たユーザーが最近チェックしたカメラやレンズ」「新作レンズを紹介した実写レビュー記事」「カメラ関連のキャンペーン」などを優先度高く表示出来るようになりました。

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ユーザーの過去の行動に応じて、おすすめされる商品が変わる

表示の仕方を変えてみて、いかがですか?

関根:特に、多くのユーザーが目にするトップページ最上部では、出す商品のラインナップの工夫で同エリアのクリック率が約2倍となるなど、徐々にお客様の関心が高い情報を提供出来るようになってきています。

こうしたレコメンドで必要なのは、お客様の行動データです。ここに在庫データを統合することで「予約が埋まってしまった商品は自動でレコメンドから除外する」といったロジックも適用出来ています。

サービスに関わるデータを一気通貫で最適化し、ユーザー目線と在庫マネジメント目線の双方を睨みながらサービス運営ができることも、KARTE Datahubの大きな魅力であり、レンティオにおける今後の可能性ですね。

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他にも今後なにか挑戦したいことはありますか?

高橋:One to Oneでのレコメンドの精度や量は上げていきたいですね。CRMやメールなどの配信など、サイト外のコミュニケーションにおいても、One to Oneでの取り組みに挑戦するのはこれからの大きなテーマですね。

関根:同じOne to Oneでも、お客様の状況によってどんな情報を出すのがいいのかは異なります。一人のお客様のなかでも、目的を持ってサイトを訪れているときと、目的なく雑誌をパラパラとめくるようにサイトを見ているときもあります。KARTE Liveを見ていると、そういったお客様の行動はすぐわかるので、サイト自体もお客様の状況によってお出しする情報を変えていけるようにしたいですね。

高橋:レンティオとしても、KARTEを使ってグロースサイクルを回すということがチームの外まで広がってきた手応えがあります。今後は、この認識をさらに会社全体へと広げたいですね。KARTEの使い方を覚えて、仮説と熱量を持って施策の実行までやってもらえたらベストです。私たちとしても、その入り口あたりまでは案内できるように、人材教育もセットで取り組んでいきたいと思います。

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