既存システムの課題を乗り越え、スピーディな節電キャンペーンを実現。東北電力のプロモーション戦略チームによるKARTE活用

既存のシステムや限られた人数という制約条件の中で、600万世帯の顧客に向けた最適なコミュニケーションの実現に取り組んだ東北電力のプロモーション戦略チームにKARTEの活用方法について聞きました。

インフラ事業として、600万世帯に対して価値あるサービスを届けることに尽力してきた東北電力。社会の変化もあり、従来のシステムでは柔軟かつスピード感のある対応が難しくなってきていました。

生活のインフラである電気に関わるシステム開発には長い時間と大きなコストもかかってしまう中で、迅速に顧客とコミュニケーションするためにKARTEを導入。顧客との柔軟なコミュニケーションに取り組みはじめました。

東北電力株式会社 販売カンパニー リビング営業部 プロモーション戦略チームの伴 正浩さん、桑田 晋吾さん、熊谷 貴大さんの3名にどのようにKARTEを活用しているのかを伺いました。

600万世帯の顧客とコミュニケーションするために

まず、貴社の事業についてお伺いさせてください。

:東北電力グループの経営理念は「地域社会との共栄」です。基本的な考え方は「東北の繁栄なくして、当社の発展なし」というもので、東北6県および新潟県を中心に電気の供給を主たる事業としています。

東北地域は全国的にみても高齢化が進んでおり、人口が減っています。省エネの流れもあり、EVなどの普及があったとしても、電気の使用量も減っていくと考えられます。電気事業だけだと立ち行かなくなるという危機意識もあり、中長期ビジョンで2030年代に「東北発の新たな時代のスマート社会の実現に貢献し、社会の持続的発展とともに成⻑する企業グループ」の実現を目指して活動しています。

ビジネスモデルの転換を進めていくなかで、電気以外にも様々な商材を扱うことになっていきますが、商材の違いがあるだけで、根底にある「地域社会との共栄」という思いは変わりません。

みなさんが担当されている業務はどのようなものになるのでしょうか。

:私たちの所属である販売カンパニーは、電気やガス、サービスなどのグループ企業との一体販売、カーボンニュートラル実現に向けた電源調達の最適化による調達費用低減などを担当しています。カンパニー内でもリビング営業部は一般家庭向けの対応を担っています。

リビング営業部リビング統括グループのプロモーション戦略チームでは、媒体を問わずプロモーションを統括しておりまして、ウェブ広告、ダイレクトメール、屋外・交通広告などのSP広告、ソーシャルコミュニケーション部門と連携してテレビCMなどのマス広告にも携わっております。チーム全体では10名ですが、ウェブを中心に活動しているのは4名。熊谷と桑田の2人がKARTEの活用をリードしています。

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伴 正浩さん

みなさんが入社されてからこれまで、どのような業務を担当されてきたのかを教えてください。

:私は新卒で入社して営業所を5年経験し、2001年から本店に異動して22年ほど経ちます。本店では半分以上の期間を法人営業として過ごしており、リビング統括の課長としての仕事をするようになってからは1年ほどです。

桑田:前職ではWebマーケティングの仕事に従事していて、2021年に中途入社しました。入社から現在の部署に所属し、KARTEの活用やWeb広告の出稿、サイトのアクセス解析、MAツールを使ったメール配信などマーケティング業務の中でもデジタル領域を中心に対応しています。

熊谷:2015年に新卒で入社し、8年が経ちました。入社時は営業所に配属され、電気料金の回収業務や契約管理業務を担当しました。3年前に本店へと異動になり、その後会員Webサービスの「よりそうeねっと」を主に担当する他、キャンペーンの運用設計を担っています。

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これまでの東北電力のデジタル化に向けた取り組みはどのようなものだったのでしょうか?

:電気事業はデジタル化が遅れていました。デジタルに対応する優先順位が低く、社内に知識を持った人材もおらず、教育のための仕組みもありませんでした。

社会全体でDXが必要だという流れもあり、会社として力を入れていこうという変化が生じています。私たちのリビング営業部はクラウドツールを入れたりしないと間に合わない状況にあり、率先して新しいことに取り組んでいます。

私たちのお客様の数は600万世帯。そうなると全てのお客様との対面での対応は難しく、非対面での対応が必要不可欠です。非対面とはいえ、ダイレクトメールを送るなどの昔ながらの手法だけでは対応が間に合いません。

電気メーターも以前は人が目で見て検針票を配布してきましたが、スマートメーターに変更になり、訪問が必要なくなりました。各所でお客様に接する面が少なくなってくる中で、様々なチャネルでお客様との接点をつくろうとするのは自然な流れなのだと思います。

不確定要素が多い中での節電キャンペーンをKARTEで実現

KARTEを導入した背景はどのようなものだったのでしょうか。

桑田:もともと、弊社の70周年のキャンペーンにおいて、最適な料金プランをご案内する際にKARTEを活用していました。

私たちが前任者から引き継いでKARTEの活用を検討するきっかけとなったのは、節電キャンペーンへのエントリーを募集する際に、目標を達成するためには既存のシステムだけでは困難なのではという課題です。

その際、熊谷から「KARTEであれば簡易に実施できるのでは?」と発案があり、話し合いながらKARTEの活用を考えていきました。

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桑田 晋吾さん

既存のシステムを補完するような形で活用を検討されたのですね。

熊谷:弊社だけでなく、自社のシステムの柔軟性のなさに課題を感じている会社は多いのではと思います。施策展開の速度に合わせて、スピーディにシステムの改善を進める難しさを感じているはずです。

自社システムを開発・改修しようとすると1〜2年は期間がかかり、開発に着手した際には最先端だったこともリリース時には古くなってしまいます。私たちの場合、それでもなんとか対応できていたのですが、この数年で業界が変化する速度も上がってきました。

:電力会社のシステムは、エネルギーセキュリティの観点で基本はオンプレミスです。そうすると、熊谷が言うように環境変化のスピードについていけません。最近は、その傾向が顕著になっていました。

2016年ごろからクラウドツールを導入するようになり、弊社としての導入基準が見えてきたのはここ最近のこと。変化速度についていくために、オンプレミスで残すところはそのままにして、クラウドを導入して対処しています。

熊谷:弊社のビジネスとしても、昨年以降エネルギー価格の上昇により、電力の調達価格と販売価格のバランスが崩れ、「逆ザヤ」の状態も発生していたことから、電気をどう効率良くつかってもらうかに腐心する必要が生じていました。

また、2022年の冬はエネルギー価格の高騰により日本全体で節電する必要が出てきました。国の節電に関する補助事業と当社の節電キャンペーンのスケジュールを合わせる必要があり、その調整が非常に困難でした。

自社だけの問題ではなかったことから、不確定要素が大きいなか、スピード感を持って対応するためにKARTEを活用することにしました。

桑田:受け付けるエントリー数の規模も大きい節電キャンペーンでした。スピード感を大事にしながらも慎重に進める必要があり、不安な面も多々ありましたが、プレイドの担当の方から丁寧にサポートをしていただき、KARTEのエントリーフォームを無事公開できました。

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顧客のエントリー状況に合わせたポップアップを表示する「Thanks KARTE」

キャンペーンの中で、具体的にKARTEをどう活用したのかをお伺いできますか?

熊谷:日本全体で節電を進めるということで、国によるプロモーションも展開されたことから、普段よりも多くのお客様からのエントリーが予想されました。エントリーしやすい仕様にしておかないと、問い合わせ数が膨れ上がってしまいかねません。フォームは見やすく、エントリーが簡単である必要がありました。従来サイトのエントリーフォームには柔軟性に課題があったので、KARTEのアンケートフォーム機能で代替して実施しました。

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熊谷 貴大さん

桑田:お客様さまの中にはご自身がエントリーしたことを忘れてしまう方もいらっしゃいました。キャンペーンをリリースした後、そういったお問い合わせもありました。

電気は世帯で一つのアカウントを共有しているケースもあります。例えば、すでにご主人がエントリー済みの状況で、節電キャンペーンのメールや広告を見た奥さまがエントリーしようとして「申し込みができない」と問い合わせるケースも多々ありました。

こうしたお問い合わせの件数を減らすために、エントリー済みの場合にはKARTEを使って「すでにエントリーしてますよ!」というポップアップを表示する「Thanks KARTE」施策を行いました。

「Thanks KARTE」ポップアップのイメージ(※本記事用に作成したイメージであり、実際に掲出されたページ等は異なります)

熊谷:加えて、KARTEのユーザーストーリーの機能も活用しました。この機能でお客さまの行動を確認することで、お問い合わせのあったお客さまがエントリー済みかどうかがわかるようになり、非常に助かりました。

従来のシステムにある会員データでログイン履歴はわかります。ただ、どのページを閲覧したのかというデータはなく、お客様がいつどのような行動をしているかまではわかりませんでした。

KARTEを導入したことでお客さまの動きが秒単位でわかるようになり、推測ではなく、事実ベースでお客さまからのお問い合わせに回答可能になりました。コールセンターのスタッフからも「お客さまに事実ベースで回答ができるようになってよかった」という声もありました。

顧客のセグメントに合わせてさまざまなお知らせを可能に

キャンペーンのエントリー以外ではどのようにKARTEを活用されましたか?

桑田:節電キャンペーンの中で、弊社が指定した時間でお客さまに節電アクションを行っていただく「デマンドレスポンス」の呼びかけも行いました。参加にはアプリのダウンロードが必要だったので、KARTEでポップアップを出してアプリのダウンロードを促進するようにしました。ダウンロードの目標数の達成にも、KARTEが寄与できたと思います。

アプリダウンロードをご案内するポップアップのイメージ(※本記事用に作成したイメージであり、実際に掲出さたページ等は異なります)

熊谷:他にも2点、KARTEを活用しました。ひとつは、受付期間の最後の追い込みにKARTEのテンプレートを使って、エントリーを促すカウントダウンを実施。最後までエントリー数を伸ばすことができました。

もうひとつは、対象が限定的なデマンドレスポンスの施策での活用です。特定のメーカーの機器を持っているお客さまに対して、呼びかけを行うことを目的とした施策だったのですが、そもそも特定の機器を所持している人が少ない。そのため、特定の機器を所持している方に向けたLPをつくり、そのLPから遷移した人にだけ会員サイトのマイページのトップにポップアップを出して、エントリーを促しました。

特定のメーカーの機器をお持ちのお客様だけにご案内するポップアップのイメージ(※本記事用に作成したイメージであり、実際に掲出さたページ等は異なります)

お客さまの電気の契約状況に合わせてエントリーを促す施策だったので、フォームを作成できるならどの外部ツールでも良いというわけではありません。会員データとの紐づけもでき、セグメントも区切ってコミュニケーションが可能なKARTEだからこそ実現できた施策でした。結果、関係者全体のオペレーションの負荷を下げられ、社内や取引先のメーカーからも「こんな対応ができるんだ」と好評でしたね。

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その他にKARTEを活用いただいた場面はありますか?

桑田:提供している生活関連サービスのご案内を行うポップアップを恒常的に実施しています。また、「よりそうeねっと」の会員登録時には、メールアドレスの登録と、電気の契約情報との紐付けの二段階の設定が必要になっているので、設定が途中のお客さま向けのリマインドでもKARTEを利用しています。

熊谷:あとは、料金プランについてのご提案でもKARTEを活用しています。これまで電気という事業の性質上、「平等に、安定して、安価に」というのが私たちの基本的なマインドセットでした。料金についても等しくみなさまにお伝えするというのが基本で、One to Oneで最適な料金プランをご提案するという施策展開を行っておりませんでした。

とはいえ、ご希望をいただければ、料金の試算をしてお伝えするシステムはあるため、KARTEを活用してお客さまごとに最適な料金プランをプッシュでお伝えするということにも取り組んでいます。

桑田:いわゆる1st Party Dataの活用ができるようになったのも大きいですね。KARTE Datahubにデータをインポートして、KARTEの行動データと会員IDを紐付けたことで、以前はできなかったお客様へのマーケティング活動もできるようになりました。

KARTEの導入によって前向きな気持ちで課題に向き合えるように

KARTEを使うことで社内に変化はありましたか?

熊谷:私たちは本当にKARTEを毎日利用するようになりました。日常的に社内でKARTEについて言及していますし、社内での資料にもKARTEを載せています。その結果、社内でのKARTEの認知は少しずつ進んでいると感じます。

桑田:最近では、グループの別のチームから新しく作ったページに訪れるお客さまへの接客や、データを分析する際に「KARTEでなにかできることはないか」という相談がありました。社内で相談を受けたら、プレイドの担当の方にも相談していますね。

熊谷:また、これまでは課題が生じた際、マンパワーをかけて解決しようとする傾向もありました。KARTEを使って実現可能なことが理解できてきたことで、まず効率かつスピード感のある解決策を検討するようになりました。デジタルを活用して顧客の体験に向き合おうというマインドセットになってきたのは、大きな変化だと思います。

桑田:今や、KARTEはデジタルの施策について考える際の重要なプラットフォームになっています。最初から解決策が見えていることばかりではありませんが、プレイドの担当の福澤さんに相談するうちにやり方を見出せるようになってきています。最近では、何か課題があったとしても、「なんとかできるんじゃないか」という前向きな気持ちで向き合えるようになってきていますね。

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活用を進める中で見えてきた次の課題はありますか?

桑田:最近は、KARTE BlocksやKARTE Signalsなど新しいプロダクトについて教えてもらっているので、今後はそれらも使えるようにしていきたいですね。特に現状はサイトの更新に日数や手間もかかってしまっているので、KARTE Blocksはぜひ使えるようにしたいと思っています。これまでは足元の課題に対処することが主だったのですが、少しずつ中長期のことを話し始めています。

熊谷:桑田のように知識のあるメンバーばかりではなく、新たにKARTEを担当する人も出てくると予想できるので、KARTEの入門や研修のトレーニングをプレイドさんにサポートしてもらいながら一緒に進めたいという気持ちがあります。デジタルマーケティングの素人にもわかるように、映像や教材があるだけではなく講座のような形で進めたいと思っています。

:私たちのようにデジタルについて詳しいものが少ない会社では、担当者が交代する際にいかに引き継ぐか?というのは大きな課題ですね。担当者が変わってレベルが下がってしまわないように、桑田と熊谷が作った財産をしっかり残していけるようにしないといけないという課題を感じています。

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最後に、これからKARTEを使ってやりたいことはなにかありますか?

桑田:まずは、KARTE Blocksでサイトの最適化に取り組みたいですね。また、KARTEに行動データが蓄積してきているので、お客さまごとの行動特性を踏まえたアプローチやシナリオ設計も検討していきたいと思います。あとはオフラインと連動した取り組みも検討していきたいので、いいKARTEの活用アイデアがあれば教えていただきつつ、活かし方を検討していきたいですね。

熊谷:キャンペーン以外にも、KARTEをつかって基幹システムである「よりそうeねっと」を、よりわかりやすい会員サービスにしていきたいと考えています。KARTEをつかってどんなことができるか?を考え、試していきたいと思います。

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