質の高いユーザー体験と収益性を両立する——レシート買取&お買い物アプリ「ONE」を展開するWEDのエンゲージメント向上術
WED株式会社が開発・運営するレシート買取・お買い物アプリ「ONE」は、レシート撮影やオンラインショッピングをするとお金がもらえるなど、楽しい消費体験をユーザーに提供しています。同社におけるKARTEシリーズの活用について、プロダクトマネージャーを務める麻原彪史さんに伺いました。
WED株式会社が開発・運営するレシート買取・お買い物アプリ「ONE」は、レシート撮影やオンラインショッピングをするとお金がもらえるなど、楽しい消費体験をユーザーに提供しています。
同アプリのプロダクトマネージャーを務める麻原彪史さんは、アプリ運営におけるこだわりを「質の高いユーザー体験を提供すること」だと語ります。そんなこだわりを形にするため、KARTE for Appを導入しました。以来、さまざまな部署を巻き込みながら、同社におけるKARTEシリーズの活用を牽引し続けています。
そんな麻原さんが目指すのは、質の高いユーザー体験の提供と収益性の両立です。理想を実現するために、麻原さんはいかにKARTEシリーズを活用しているのでしょうか。
質の高いユーザー体験を届けるために、情報を届けるタイミングにもこだわり抜く
WEDが開発・運営するアプリ「ONE」のミッションを教えてください。
「ONE」のサービス画像
麻原:「ONE」のミッションは、楽しい消費体験をユーザーに届けることです。レシートの写真を撮ると、どんなレシートでも瞬時に1円から10円で買い取られる「ONEレシート」や、「ONE」に並ぶショップでオンラインショッピングをするとお金がもらえる「ONEモール」など、いつものお買い物が楽しくお得になる体験をユーザーに提供しています。
麻原:不景気が続く昨今、多くの方が節約を余儀なくされて、楽しい消費を満足にできないケースも多いのではないかと思っています。もちろん、節約自体を否定するつもりはありません。ただ、たとえば音楽フェスに出かけて会場限定のTシャツを買ったり、僕はグミが好きなのですが1日のご褒美にグミを買ったり、それぞれにとっての楽しい消費体験は存在しますよね。「ONE」のサービスとしてのミッションは、そういったワクワクする消費体験を増やすことです。
ミッションを果たすために、麻原さんはどのような役割を担っているのでしょうか。
麻原:「ONE」のプロダクトチーム全体をマネジメントしています。プロダクトチームは、エンジニアチーム/グロースチーム/デザインチーム/ユーザーケアチームで構成されており、KARTE for Appを活用しながらアプリのグロースやマーケティングを推進しています。
アプリを運営するうえでのこだわりや、特に重視していることを教えてください。
麻原:質の高いユーザー体験を提供することです。僕たちはユーザーとのインタラクションを重視していて、アプリ上で何らかの情報を発信するにしても、ユーザーが情報の「押しつけ」だと感じるようなポップアップやバナーを出さないよう気を配っています。
ユーザー体験を損なわないためには、情報を届けるタイミングも重要です。インターネット広告配信における一般論として「CTRが高くなるのは、ユーザーが目的を遂げた後」だといわれています。たとえば、Web記事に広告を掲載する場合、記事の途中ではなく記事の下、つまり「読み終わったタイミング」で見られる広告の方が、CTRが高くなるとされているんです。
この原則は「ONE」にも適用できると考えています。現状「ONE」のユーザーの多くは、レシート買取を目的にアプリを開くのでレシート買取が完了する前、たとえばアプリを開いた瞬間にポップアップなどが出てくると、体験を損ねてしまうわけです。
アプリを開きレシートの買取を済ませたあと、ほとんどのユーザーは報酬を得たことを確認するためにアプリ内のウォレットタブに遷移します。このときにポップアップを出すことで、ユーザーが求めている情報を欲しいタイミングで届けることができるのです。
大事なことは「ユーザーの邪魔をしないこと」。どのような情報を届けるかも大事ですが、タイミングを間違えてしまうとユーザーが求めている情報だとしても、しっかりと届かない可能性があります。僕たちは「必要な情報を、適切なタイミングで届けること」にこだわり、試行錯誤を重ねてきました。
導入の決め手は「データ連携のしやすさ」と「拡張性」
KARTE for Appを導入した経緯を教えてください。
麻原:WEDでの最初のミッションはグロースチームの立ち上げだったので、CXツールの情報収集をするためKARTE CX Conference 2022に参加したことがきっかけです。そこで初めて、KARTE for Appの存在を知りました。
導入の決め手となったポイントはなんですか?
麻原:決め手としては、「データ連携のしやすさ」と「プロダクトの拡張性」が挙げられます。
「ONE」は、ユーザー情報やレシート情報などの膨大なデータを保有しているので、CXツールとデータ連携できるかどうかは、事業にとって非常に重要な要素だと考えていました。さらに、今後「ONE」のデータ活用の幅が広がった際に、ひとつのツール上で完結できるかどうかも見ていて。活用方法が増えるたびに新たなツールを導入すると、あらゆるコストがかかってしまうため、プロダクトの拡張性も重要視していたポイントでした。
これらの点で、KARTE for Appは打ってつけのサービスだと思いました。データ連携はもちろんのこと、必要に応じてKARTE LiveやKARTE Datahub、KARTE Craft(※導入時はリリース前)など、柔軟に機能を拡張できる点に惹かれて導入を決めたんです。
導入後、まずはどのような施策を実施したのでしょうか?
麻原:KARTE for Appを活用して、主にアプリ内にメッセージを表示するポップアップを使い、ユーザーにさまざまな情報を提供する施策を実施しました。
というのも、僕たちは「ユーザーの好きなタイミングで、好きなようにアプリを使ってもらいたい」と考えていて。そのため、KARTE for App導入前はポップアップをほとんど出すことはしておらず、出すとしても新サービスや新機能などの大きなアップデートがあった時くらいでした。
その考え自体は現在も変わっていませんが、「ポップアップやバナーが少なすぎるが故に、ユーザーが必要としている情報すらも届けられていないのではないか」と思い始めたんです。そこで、さまざまなポップアップを掲出する施策を試してみることにしました。
導入直後から他部署も巻き込み、ユーザーのための情報提供を徹底
どれくらいのペースで施策を実施していきましたか?
麻原:導入直後は1週間で4つの施策を実施し、その後月に60個のペースで施策を走らせました。念頭にあったのはアーリー・スモール・ウィンという考え方です。何か新たなことを始める際は、とにかく小さな挑戦をスピーディーに繰り返し、一つでも多くの成功を収める。そうすることによって勢いに乗ることが大事だと考えていました。
初期設定にはやや手こずりましたが、スタートダッシュに成功できたのは、プレイドのカスタマーサクセスチームの皆さんのおかげだと思っています。KPIの設定や施策ごとの目的、期待効果の確認などを細かく連携を取りながら一緒に進めていただけたのが大きかったです。
KARTE for Appを利用してみて感じたのは、アプリの世界観に即したクリエイティブを簡単に作成できるため、施策を「小さく早く」実行するのに適しているということです。だからこそ、大きな人的コストを割くことなく、高速でPDCAサイクルを回すことができたと考えています。
月に60個は、かなりのハイペースですよね。たくさんのアイデアを出すコツなどはあるのでしょうか?
麻原:切り口をできるだけ具体的にすることです。たとえば、あるミネラルウォーターの広告コピーを書くとしましょう。そのとき「このミネラルウォーターに関するコピーを60個書こう」と思うと筆は進みませんし、アイデアも出てきづらいと思うんです。しかし、「味」や「パッケージ」「安全性」などと切り口を絞ったうえで、それぞれ数個ずつのアイデアであれば出しやすいはず。
「ONE」でも同じことが言えると思います。「ONE」をグロースさせるための施策といった抽象的なテーマではなく、「○○というお店のレシート買取を促進するため」「レシート買取から『ONEモール』に遷移してもらうため」と切り口を具体化すれば、考えやすい。そうやって次々にアイデアを出しながら、施策の実行を繰り返していきました。
施策を実施する中で、成果を出すために気をつけていたポイントがあれば教えてください。
麻原:アプリの世界観にそぐわないクリエイティブを配信しないことです。そのためには、他部署や他職種のメンバーを巻き込みながら、ユーザーが求めている情報の仮説を立てたり、情報を適切に届けるためのクリエイティブを模索したりなど、複眼的に判断する必要があると考えました。
そこで、KARTE for App導入直後からエンジニアやデザイナー、PdMなども交えて施策の内容やクリエイティブを決定する体制を整えました。その結果、着実にレシート買取率やONEモール利用率が向上していったんです。
ポップアップの一例
ユーザー体験を向上させながら、事業にインパクトを与える
そのような試行錯誤の結果、どのような成果が得られたのでしょうか。
麻原:新規ユーザーのリテンションレート(再訪率)が大きく向上しました。KARTE for App導入前と比較すると、インストール1週間後のリテンションレートが約7%伸びたのです。
KARTE for Appでの施策が功を奏したのは、「ONEモール」への遷移率向上施策が大きく影響していると思います。「ONEモール」はモールタブ(以下添付画像参照)への遷移が必要なため、アプリ起動後すぐに表示されるレシートタブと比較すると、利用ユーザーがまだまだ少ない状況です。しかし、施策結果を分析したところ「ONEモール」の利用ユーザーは、未利用ユーザーに比べてリテンションレートが高いことがわかりました。
「ONE」アプリを開いた際の画面。右下に「モール」タブがある
そこで、アプリ全体のリテンションレート向上を目的に、レシート買取のみを利用しているユーザーに対して「ONEモール」の利用を促進するような複数の施策を実行。
たとえば、KARTE for Appを活用した「ワンくんを探せ!」キャンペーンです。これは「ONEモール」上の特定ショップの詳細画面に、オリジナルキャラクターのワンくんが出現するギミックをKARTE for Appで実装し、ユーザーにワンくんを探してもらうというもの。ワンくんを見つけ、キャプチャを送っていただいたユーザーの中から、抽選でオリジナルグッズをプレゼントしました。
KARTEを活用してキャラクターを探すキャンペーンを実施。モールからのサイト遷移数が3倍以上に
さらに、レシートタブやウォレットタブなどアプリ全体にも「ONEモール」のキャンペーンに関するポップアップを表示することで、「ONEモール」タブへの遷移を促進。これらの施策を通して、アプリ全体のリテンションレート向上という、事業にとって大きなインパクトを生み出すことができました。
とてもユニークな施策ですね。いかにしてこのアイデアに至ったのでしょうか?
麻原:とにかくユーザーに楽しんでもらいたいという一心で、さまざまなディスカッションを重ねる中で今回のアイデアに辿り着きました。
事業者としての狙いって、正直ユーザーにとっては重要ではないと思っていて。ユーザーの立場からすると、いきなり「ONEモール」に並ぶショップを紹介されたところで、楽しい体験とは言い難いし、積極的な行動には繋がりにくいと考えています。
それならば、「ワンくんを探せ!」キャンペーンのような非日常体験を楽しんでもらいながら、「ONEモール」を触ってみてほしいなと思ったんです。
KARTE for Appの中で、特に活用シーンが多い機能はありますか?
麻原:カスタマージャーニー設計の機能である「Journey」は、特に活用しています。ユーザーとのコミュニケーションの難しいポイントの1つは、「同じメッセージであっても、ユーザーがそのメッセージを受け取るタイミングによって、受け取り方が変わること」だと思っています。
たとえば、あるユーザーに特定の行動を喚起するメッセージを送るとしましょう。そのメッセージを受け取るのが仕事終わりなら行動するかもしれないけれど、仕事中だと行動しないといった状況は往々にして起こり得ますよね。
「Journey」を利用すれば、ユーザー毎にメッセージの最適な送付タイミングが分かるので、効果を最大化することができる便利な機能だと感じています。
ジャーニー機能で、段階的にキャンペーンのリマインドを実施。LP閲覧者の参加率が約2.8倍に。
KARTE for Appを活用した施策を販売し、売り上げをつくる
KARTE for Appの活用を進める中で、事業成長に繋がる気づきや変化はありましたか?
麻原:成果が出るにつれて、デザイナーやエンジニアにとどまらず、セールスチームのメンバーもKARTE for Appに興味を持ってくれるようになりました。そして次第に、チームや職種を横断してKARTE for App活用についてディスカッションすることが当たり前になっていったんです。
そんな中で、ある時セールスのメンバーから「既存のソリューションにKARTE for Appを用いたメニューを追加できないか」という声が挙がりました。
具体的にどのようなものなのでしょうか?
麻原:KARTE for Appのポップアップ機能などを活用した施策を、「ONE」の広告メニューの一部としてクライアントに販売するというものです。
「ONE」は、toB事業としてアプリを活用した販売促進や広告などのマーケティング支援を行っており、多数のクライアントから「ONE」上でのブランド・商品訴求を強化したいといった声をいただいています。KARTE for Appは、こういった要望に対して複数の施策が打てるため、toB事業への売上にも貢献できるのではと考えたんです。実際に、2023年5月頃からtoB事業の新しいメニューとして販売を開始しています。
先ほど話に挙がった「Journey」は、実はクライアントへの提案時にも積極的に利用していて。ポップアップの最適なタイミングを「Journey」を使って説明することで、クライアントとのコミュニケーションの質を高めることができました。
KARTE for Appで、さまざまな成果を出せているのはなぜですか?
麻原:グロースチームとして成果を出しKARTE for Appの有用性を示すことで、他チームを巻き込んでKARTE for Appを活用できているからだと考えています。あらゆる立場のメンバーたちがKARTE for Appに触れることによって、グロースチームだけでは生まれなかったアイデアや事業成果に繋がる施策を実現することができました。
現在は週に1回の定例ミーティングを設けて、グロースチームをはじめ、セールスやデザイナー、エンジニアなどのメンバーと共に、KARTE for Appの施策内容や効果などを共有し、ディスカッションを行っています。
コミュニケーション、売上の向上、データ分析、プロトタイピング……さまざまな局面でKARTEシリーズを活用
2023年秋にはKARTE Datahubも導入いただきましたが、どのように活用されていますか?
麻原:分析の幅が大きく広がりました。KARTE Datahubは、さまざまなデータベースを統合できるので、買取レシートデータとKARTE for Appで収集した顧客行動データを突合し、分析結果をもとに仮説を立てながら検証を繰り返しています。
最近ではKARTE Datahubの活用を通して、アプリインストール後、何日以内にいくらお金をもらえるかでリテンションレートが大きく変わる、ということが分かりました。そこで、分析結果に応じた改善施策を実行したところ、約10%のリテンションレート向上につなげることができました。単独のデータベースだけでは知り得なかった情報なので、KARTE Datahubを導入して良かったです。
そのほかに、KARTEを活用した施策はありますか?
麻原:買取レシートデータを機械学習させてKARTEと連携することで、レコメンドのタイミングやレコメンドするミッションを自動判定するスコアを算出しました。現在は、「ONEモール」にも同様の仕組みを導入するための取り組みを進めています。
ユーザーやクライアントとのコミュニケーション、売り上げ向上、データ分析、新機能のプロトタイピング……さまざまな用途で活用しているので、今や僕たちにとってKARTEは無くてはならない存在です。
ONEモールのお知らせ機能をKARTE for Appでテスト。機能開発の前にKARTE for Appを活用してユーザーの反応を確かめた後に、機能実装するか判断する。
KARTEを活用して「収益性」と「質の高いユーザー体験」を両立させる
今後KARTEを活用して挑戦したい取り組みを教えてください。
麻原:大きく2つあって、1つはユーザーが自分だけの「ONE」を楽しめるようにすることです。現時点で「ONE」がユーザーに提供できる直接的なインセンティブは「お金」ですが、それ以外にも提供できることはあると考えています。
たとえば「思い出」です。レシートにはさまざまな思い出が詰まっていると思っていて。「ONE」で購買記録を振り返って、「この時期、やたらグミを買っていたな」と過去の行動に思いを馳せるだけでもおもしろいと思いますし、人生の転機を記録することもできる気がしています。実際、僕は妻にプロポーズをしたレストランでもらったレシートをずっと財布に入れて持ち歩いているんです。
音楽ストリーミングアプリの「Spotify」は、年末に「今年のまとめ」コンテンツをパーソナライズして提供していますが、これも1年の振り返りとして素晴らしい体験だと感じています。「ONE」は音楽ではなく購買の観点でこのような体験を届けたいですし、KARTE Datahubのデータを活用すれば実現できるのではないかと思っています。
2つ目は「再現性のある偶発的な出会い」を生み出すことです。自分が欲しいものを欲しいタイミングで買うのも、もちろん良い体験ですが、たとえば暇つぶしに入った本屋でなにげなく手にとった本が忘れられない一冊になったり、たまたま立ち寄ったコンビニで見つけた新商品の味に魅了されたり……。そんな、偶発的な出会いを「ONE」で生み出し続けていきたいです。
「ONE」が収集するレシート購買データを活用することで、ユーザーの潜在的な欲求やニーズを満たすような出会いを生み出したい。そういった出会いこそが、「ONE」が目指す楽しい消費体験につながるはずだと強く思っています。
最後に、今後の「ONE」が目指す姿を教えてください。
麻原:質の高いユーザー体験と収益性を両立するプロダクトにしていきたいです。一般的にこの2つは相反するものとして語られることが多いと思うのですが、本来はそうではないはず。ユーザー体験を突き詰めれば美しいプロダクトになり、美しいプロダクトには必ず収益がついてくると信じています。
理想を叶えるために、これからもKARTEシリーズをフルに活用して、ユーザーやクライアント、そして自社にとって理想的なプロダクトづくりを進めていきたいですね。
記事内でご紹介した施策以外に「ONE」で実施している施策事例は下記よりご確認いただけます。
KARTEで診断コンテンツを実施。最小限のコストでキャンペーン参加者数を最大化でき、周年イベントの盛り上げに成功。