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全国のユーザーからの情報を「天気のビッグデータ」化して還元する。生活者とともに価値をつくるウェザーニューズの取り組み|Data for Experience #5

全国のユーザーからの情報を「天気のビッグデータ」化して還元する。生活者とともに価値をつくるウェザーニューズの取り組み|Data for Experience #5

13th Jan, 2022

「いざというときに人の役に立ちたい」と、生活者そして企業に気象情報を提供し続けているウェザーニューズ。高精度な気象情報の提供を可能にしているのは、全国1.3万箇所に及ぶ観測網と、毎日約18万通も届くユーザーからのリポートです。

同社の天気予報アプリ「ウェザーニュース」は、累計3,000万ダウンロードを突破。この3年で、月額330円の有料会員数はおよそ4倍になり、個人向け事業の売上高は35億円から61億円へと成長しています。

現在では企業へのデータ提供の事例も多く、生活者に対する新しい価値の提案につながっています。各種コンテンツ企画やデザインを担当する磯谷英志さんは、「企業のデータ活用が進み、データの提携がしやすくなったので、天気情報を生かしてもらいやすくなりました」と話します。

全国津々浦々の気象データは、どのように集められ、顧客への還元につながっているのでしょうか。ウェザーニューズのデータ活用と顧客との価値共創について、磯谷さんと、マーケティング全般を担当する上山亮佑さんにお話を聞きました。

ユーザーから提供されるデータをまとめ上げ、還元する

まず、そもそもの事業の成り立ちについてうかがえますか?

磯谷:きっかけは1970年、創業者である石橋博良が当時携わっていた商社の事業において、担当していた船が海難事故に遭遇したことです。急激な低気圧を予測できずに事故につながってしまったため、「船乗りの命を守りたい」ひいては「いざというとき、人の役に立ちたい」と考え、米法人の気象会社に転職しました。その後、オーナー経営者として独立する形でウェザーニューズが誕生しました。

気象は海だけでなく、陸・空などいずれの場所でも「いざというとき」の要因になりやすいんです。気象情報を使って、船乗りに限らず人の命と財産を守り、人を幸せにするという思いが今も根付いています。

2000年に私が入社した際は、個人が携帯電話を持ち始め、どこからでもネットに接続できるようになりつつありました。そのころから、当時の携帯の主流だったガラケー向けのコンテンツをつくり始めました。

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磯谷英志 ウェザーニューズ モバイル・インターネット事業部
大学で気象について学んだ後、創業者の思いに共感し2000年に入社。PCサイトやモバイル向けコンテンツの企画制作に従事。現在は天気アプリ「ウェザーニュース」における、さまざまなコンテンツ企画やデザインを統括。

当時、ほかにネットで天気予報を配信するメディアはあったのでしょうか?

磯谷:正確性とネットでの強みという点では、我々のみだったのではないかと捉えています。1999年にNTTドコモでiモードが開始した際、ブレのない気象情報という点で当社と組ませてもらったことは、業界の内外に一定のインパクトがあったと思います。

創業時からこれまで、相当量のデータを集めていると思いますが、当初からデータの重要性を踏まえて意図的に集めていたのですか?

磯谷:いえ、どちらかというと、事業を推進するなかでデータ活用の重要性に気づいていった、という感じです。大きなきっかけが、2005年にスタートした「ウェザーリポート」です。 今も当社の大きな強みになっている、全国各地の「サポーター」の方々に最新の天気情報を投稿してもらい、シェアする仕組みですね。

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磯谷:この仕組みが生まれたのも、戦略的にというよりは、携帯で簡単に写真を送れるインフラが整ったから。写真の送信や位置情報を、何らかのコンテンツに生かせないかと考え、桜前線の投稿から始めて、天気にも広げました。「今」の情報がわかることは、その後の正確な予測のために、とても重要なんです。

協力いただけるユーザーの数が多いほど、またお住まいのエリアが広がるほど、当社に集約される「天気のビッグデータ」の厚みが増します。そうすると我々もより深く分析でき、ユーザーに提供できる予報の精度が高まる。つまり、より価値ある情報をお返しできるわけです。

ユーザーがいなければ、我々のこの仕組みは成り立ちません。またユーザーにとっても、個々人が「自分のエリアの天気情報」を有しているだけでは天気の予測は難しい。まさに、全国のみなさんと「精度の高い天気予報」という価値を日々つくり、還元していると考えています。

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データの価値が循環しているのですね。なぜ、多くのユーザーが気象情報を自分から投稿し、継続しているとお考えですか?

磯谷:人によって参加のきっかけやモチベーションは違うでしょうが、ひとつは ゲーム感覚で参加できること が挙げられると思います。たとえばリポートすると回数に応じてアプリ上のバッジを差し上げたり、当社のお天気ニュース記事のなかに皆さんからの投稿写真を入れたりしています。今では1日18万通の投稿があり、そのうち写真付きは2万通あります。

桜前線のほか、紅葉やホタル出現の前線などを企画しているのも、天気以外の興味関心からも入ってもらえるようにという意図がありますね。

もうひとつは、やはりコミュニティの要素が大きいと思います。 個々の投稿に「いいね」やコメントができるので、ユーザー同士のつながりができていきます。我々としても、日々のコミュニティ管理に気を配り、コミュニティを活性化しながら「リポートするのが楽しい」と思ってもらえる環境の整備にも配慮しています。

また、今はコロナ禍の影響で休止していますが、たとえばウェザーリポーターを主役とするイベントや、お子さんを対象に気象の楽しさを伝えるイベントを主催したりしています。

直接リポーターの方々とお会いすると、「こんなこともしたらいいのでは」とたくさんアイデアをいただくんです。みなさん、根底に「空が好き」「きれいなものが見たい」という気持ちがあるのだなと思いますし、参加することで精度の高い予報に役立っていると実感してくださっていると感じますね。

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理科教育を広めることを目的とした「そら博」。主に小学校で学ぶ空や天気に関するテーマで、ワークショップを提供している。写真は元南極観測船SHIRASE内での実験の模様

今はリアルイベントは難しいですが、オンラインで複数の企画を展開中です。ゲーミフィケーション要素を盛り込んだ「ソラミッション」では、テーマにそって写真を投稿してもらうなかで、私の知っている○○さんだ、といった形でコミュニケーションが生まれています。

緻密な気象データを徹底的に生かすための体制

では、データを生かす体制構築についてうかがいます。現在の体制は、データ活用に力を入れる前提で組まれているのですか?

磯谷:そうですね。気象はとても科学的で、“データがすべて” だと言えます。今、当社は世界21ヶ国、32拠点でサービスを展開していますが、世界での事業展開では各国の予報を全部把握している必要がありますし、「今どうなのか」の観測値も持たないといけない。

なのでデータの扱いも一緒くたではなく、たとえば各国の気象庁からデータを購入してラインナップを拡充するとか、加工して外部に出せる形にするなど、それぞれ部署を設けて緻密に推進しています。陸・海・空のニーズ以外にも、鉄道や車といった領域ごとで求められるデータの種類も細かく把握し、予報精度の向上に努めています。

予報精度の向上は、予報部が気象庁との予報精度を比較して、その数字を隠さず当社のニュース記事として公開しています。 予報が外れたら教えてもらえるよう呼びかけもしており、その改善状況も伝えています。オープンにしていくほうが、信頼してもらえます。社内全体に、外部の意見をどんどん受け付けるマインドがありますね。

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上山亮佑 ウェザーニューズ モバイル・インターネット事業部
現在はアプリの事業も包括するモバイルインターネット事業部において、マーケティング全般を担当。

そうなんですね。ただ、どの意見をサービス改善に生かすのかは、難しいところでは。どういった観点を重視していますか?

上山:まず、デジタル化できる意見はすべてデジタル化して、取り込みます。たとえば今年無料化した「5分ごとの天気予報」だと、晴れという予報に対して「雨だった」という声があったら、それはゼロイチのフィードバックなので、反映する。虚偽を防止するフィルタリングはかけていますが、基本的に予報部がユーザーの声を直接受け、対応しています。

フィードバック以外に、アプリ内のユーザーの行動を数値化した分析も重要です。 たとえば以前は「雨雲レーダー」で雨雲の動きを1時間ごとに予測していましたが、かなりの頻度で閲覧されていたので、27時間後まで10分刻みで雨雲の動きがわかるようにしました。

またデータに忠実である一方で、極めて定性的な意見の裏側にも何らかのヒントがないか、汲み取るようにしていますね。ときにはクレームに近い意見もありますが、ピンチをチャンスに変えられないか、いつも思考を巡らせています。

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全国のリアルタイムな雨雲の動きを5分ごとに確認できる「雨雲レーダー」

企業が気象データを生かせる素地が整った

気象以外に活用しているデータには、どういったものがあるのでしょうか?

磯谷:ウェザーニューズ=気象情報の会社、というイメージがあると思いますが、実は気象もある意味で予測のための変数のひとつで、その取得が唯一の目的ではありません。

たとえば町のお弁当屋さんだと、同じ町の野球の試合が雨で中止になると、それを見越して数を用意していたら廃棄が増えてしまいますよね。天気が事前にわかれば、そうした事態を防げます。コンビニなら、各店舗が商品を店頭に並べるときに、販売予測が立つといいですよね。肉まんなど、温めてしまうと売れない場合に廃棄するしかないような商品は、予測を見誤ると特にロスが大きい。そこに、気象データが役立ちます。販売を予測する手前に、気温だったり雨だったりのデータが必要だ、ということなんです。

なるほど…! 気象データを企業にも提供されていますが、ビジネス成果のための変数を提供しているわけですね。

磯谷:その通りです。あわせて、今まで「雨が降ると気温が下がって売れる」といった肌感はあったと思いますが、気象のデータと突き合わせることで、肌感の精度がたしかめられたり逆に誤りに気づいたりします。するとこれも肌感だった人員配置なども、データに基づいて改善できます。

我々の気象データと、たとえばコンビニが持つ購買データを組み合わせて販売予測が当たり、売上が上がったなら、顧客の需要に対して十分に供給できたということですよね。つまり、顧客に喜ばれたということ。ビジネスに限らず、企業活動を介して防災や生活そのものに寄与することも多いです。このように、気象データを顧客の生活に生かすテクノロジーを「ウェザーテック」と呼び、生活者の体験に還元することに取り組んでいます。

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具体的に企業では、気象データはどのように活用されているのですか?

上山:たとえば日本コカ・コーラのアプリ「Coke ON」では、当社の提供する熱中症情報を使って、熱中症の危険性が高いときはクーポンを出しています(事例)。単に「クーポンでポイント2倍」のプッシュプロモーションと、「このエリアで熱中症に注意」という情報とともにクーポンを発行したときとではタップ率が全然違って、後者は売上が20%向上したそうです。広告的なプッシュか、情報的なプッシュかの違いですね。

熱中症の注意喚起は、ユーザー自身の今そのタイミングに関係がある、ユーザーにとって有益な情報です。こうした情報を介して、ユーザーは「お得にドリンクを買えて熱中症の予防もできた」というメリットを受け取れて、企業は売上につなげることができます。

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こうした取り組みは、以前から?

上山:そうですね、当社サイトに記事として紹介し始めたのは最近ですが、外部へのデータ提供は創業時からです。

最近ようやく、企業が気象データを活用できるようにデータ活用が進んできた背景があります。我々はずっと気象というビッグデータを扱ってきたので、データの扱いは容易でしたが、外部提供時には先方でのノウハウや環境整備が課題になることが多くて。いまはテクノロジーの壁もなくなり、APIなどを介した気象データ連携がとてもしやすくなりました。

日本コカ・コーラのようなマーケティング利用のほかに、厳選されたホテル予約をできるサイト「一休.com」では、予約した日の天気を直前に顧客に知らせるといった活用がなされています。〇〇県、などのおおまかな範囲ではなく、行き先エリアの気候や気温がピンポイントでわかると、持ち物が変わったりしますから。こういった形で、天気予報を顧客への付加価値として提案できるようにもなりました。それが広がりつつあります。これまで限られた人しか扱えなかった気象データを、さまざまな企業が使える時代になったと実感しています。

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平常時から関係性があるから、いざというときにも力になる

企業での気象データの活用がよくわかりました。ほかに、こんなことに企業が使えそうだ、というアイデアはありますか?

上山:「ウェザーテック」では、たとえば停電のリスクを予測する情報も出しています。これは国内で当社だけで、全国各地にサポーターがいるから実現できるソリューションです。そのリポートに基づき、こういう気象なら停電リスクが高い、というのを分析してAPIなどで提供するため、企業システムと容易に連携できます。

停電予測などの情報は、自社アプリでどんどん出していますが、企業からの提供希望もとても多くなっています。サポーターと一緒につくったコンテンツを、自社だけでなくさまざまな場で使ってもらうのは可能性があると思っています。

サポーターの存在があるからこそ、という幅の広がりがあるのですね。

磯谷:全国のサポーターは、他の天気サイトにはない、当社ならではの財産です。気象庁の雨雲レーダーのメンテナンス中でも、我々にはウェザーリポーターが「今」の情報を助けてくれます。たくさんの方が協力してくれるほど、我々はそれを価値化して還元でき、我々のコンテンツを利用しているユーザーが助かる。この“善い”行いの循環ができているのは、リポーターがいる仕組みならではだと自負しています。

その循環がうまく運んでいる要因は、何なのでしょうか?

磯谷平常時から、というのが大きなポイントだと思います。 ちょっとした雨でも、また晴れていても青空や雲や虹をリポートしてもらえる関係性があるからこそ、有事の際にも冷静に状況を知らせてもらえます。

記録的な豪雨のような災害時に、急に「みなさんのエリアの天気を教えて」と言われても戸惑いますし、我々もどのくらい情報が集まるかわからないから、役に立つビッグデータにはなりません。それを考えると、現状は平常時から「天気のリポート」をトレーニングしているような状態なので、有事にもデータが集まり、密度も高くなります。

どんなときも安定的に一定の量が集まる気象データだからこそ、さまざまな企業や事業と掛け合わせる可能性があるとも思います。相手が自然なので一筋縄ではいきませんが、それが気象データ活用のやりがいでもありますね。

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