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自分の“ふつう”は、顧客の“ふつう”ではない。家計簿プリカ「B/43」にみる人の欲しがるモノを生み出すヒント|Experience insights #19

自分の“ふつう”は、顧客の“ふつう”ではない。家計簿プリカ「B/43」にみる人の欲しがるモノを生み出すヒント|Experience insights #19

7th Jan, 2022

「誰でも使えて、継続しやすく、リアルタイムなお金管理の方法」として、2021年1月にローンチした支出管理サービス「B/43(ビーヨンサン)」。一風変わった名前には、「Balance(残高)/43(予算)」 や「Budget(予算)/43(資産)」 を意識して生活できるように、という願いが込められています。

B/43はプリペイドカードと家計簿アプリがセットになった「家計簿プリカ」サービス。ユーザーがお金をカードにチャージして買い物をすると、支出がアプリに自動で登録されます。多くの家計簿サービスにある口座連携や明細登録の機能を、あえて削ぎ落とした仕組みが特徴です。

2021年12月時点でAppStoreにおける評価は5点中4.5点。レビューには「入金した分しか使えないため使いすぎ防止になる」や「現金派の自分にぴったり」「アプリが見やすく、操作がスムーズ」などの声が並び、ユーザーのニーズを的確に満たしている様子が伺えます。

B/43を開発・運営するのは株式会社スマートバンク。国内初のフリマアプリ「フリル」を立ち上げたメンバーが「人が欲しがるモノをつくる」を掲げ、2019年に創業しました。B/43を作るにあたって、彼らはどのようにユーザーの課題やニーズを発見し「欲しがるモノ」を作り上げていったのか。サービスデザインやプロダクトマネジメントを担うCXOのtakejuneさんに伺いました。

誰でも支出を管理できる、“かんたんさ”を追求したサービス

はじめに、B/43がどのようなサービスなのか、特徴を教えてください。

B/43は 誰もが支出を管理できるようになり、経済的に安定した状態に近づく手助けをする サービスです。毎月の生活に困っている、あるいは金融リテラシーが高くない人も、予算の範囲内で暮らし、一定の貯蓄や投資ができるようになるまでサポートします。

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特徴は、誰でも簡単に使えて、管理を続けやすい機能やUI です。利用を始めるには、コンビニのレジやATM、銀行やクレジットカードから、使いたい分のお金をカードにチャージし、買い物するだけ。リアルタイムかつ自動でアプリに支出が記録され「いつ、どこで、いくら使ったのか?」を把握できます。明細を手入力したり口座連携を設定したりする必要はありません。

また、お金を「ポケット」に分けて管理する機能もあります。例えば1ヶ月分の予算をチャージして「食費」や「家賃」などのポケットに分ければ、今月は何にいくら使ったのか、残りいくら使えるかをひと目で確認できます。事前に貯金する分のお金を分けておいて、使いすぎを防ぐこともできます。

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アプリで用いる言葉やUIのわかりやすさもこだわっています。支出の管理や金融系のサービスに馴染みのないユーザーにとっても理解しやすい言葉を用いて、一画面あたりの情報量も増やしすぎないようにしています。

そもそも「B/43」を作ろうと考えた背景は?

一つはフリルを作っていた際の経験があります。ユーザーにインタビューをしていると、家計が苦しく「手っ取り早くモノをお金に換える手段」としてアプリを活用している方が大勢いらっしゃったんです。ヘビーユーザーにはポイ活(簡単なアンケートに答えてポイント報酬を得ること)に取り組んでいる方も少なくありませんでした。

そうした方は収入を増やす手段にも困っていましたが、日々どのくらいお金を使っているのかを把握できていないなど支出の管理にも苦労されていました。 もっと管理しやすい手段があれば支出を抑えられるし、収入を増やすよりも効果的に家計を改善できるのではと思っていました。

もう一つは、欧州のキャッシュレス化のトレンドです。特にイギリスでは、2010年中頃からデジタル技術を活用して、既存の銀行よりも利便性の高いサービスを提案する事業者が登場。「チャレンジャーバンク」と呼ばれ、注目を浴びていました。

各社の特徴は様々ですが、アプリのみでサービスが完結する手軽さや、口座開設が完了するまでのスピードや手続きの簡単さを強みとするプレイヤーが多く、経済的に不利な状況に置かれている若者や移民に支持されていると知りました。ここに日本でお金に困っている人の課題解決にも活かせるヒントがあるのではと思ったんです。

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イギリスと日本、どちらも話を聞くからこそ浮かび上がった差異

その後、実際にイギリスでリサーチをされたと自身のブログにも書かれていましたね。

共同創業者二人とロンドンに1ヶ月ほど滞在しました。フィンテック関連のカンファレンスやスタートアップを訪問するだけでなく、チャレンジャーバンクの現地ユーザーにもインタビューしました。イギリス人と日本人を合わせて20人近くに話を聞いています。

なぜ、現地のユーザーにも話を聞いたのでしょうか?

チャレンジャーバンクのユーザーがどのような社会で暮らし、どのような課題やニーズを抱えているのか。それらを理解せずに機能だけを持ち込んでも、日本でお金に困っているユーザーの求めるサービスにはならないと考えていたからです。 支持されている背景について理解を深めたうえでどの部分を参考にするかを検討しました。実際、現地で話を聞いてみると、イギリスのユーザーが抱える課題やニーズには、必ずしも日本のユーザーに当てはまらないものもありました。

例えば、イギリスのメガバンクへの不満として接客の質や手続きにかかる手間が挙がっていました。口座を開設するだけでも支店に事前予約を入れるのが一般的だそうです。日本の銀行は予約なしでも支店さえ行けば対応してもらえますし、接客も非常に親切ですよね。おそらく強い不満を感じている人もそこまで多くはない。イギリスほど、代替となるサービスへのニーズは強くないだろうと思いました。

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一方、日本でも共通しそうなニーズもみえてきました。若者のユーザーにはメインの銀行から生活費のみチャレンジャーバンクに移し、支出を管理している人が多くいたんです。チャレンジャーバンクのほうが、キャッシュレス決済や個人間送金サービスに幅広く対応していて、利便性が高いというのが主な理由でした。

ここ数年、日本でもキャッシュレス決済のサービスが多様化していますし、利用者も伸びています。近い将来、決済や送金のサービスをより便利に使える選択肢があれば、メインの銀行から生活費のみを分けて管理する人は増えていくかもしれないと感じました。ここでの気づきは、必要な予算のみを現金でチャージして使うというB/43の基本の機能にも活かされています。

国内ではどのようなリサーチやインタビューを行ったのでしょう?

最初はサービスの可能性を広く探索したかったので、複数のグループに分けて、お金にまつわる困りごとや課題を聞いていきました。具体的には、10代から20代前半で経済状況が厳しく支出管理の必要性が高い人、夫婦や家族での支出管理に困っている人、金融資産を持っているハイリテラシーな人などです。合わせて計100人近くに、一対一で課題を深く掘り下げるN1インタビューを行いました。

しばらくして、1つ目のグループに属する人の課題が解決の余地も大きく、筋の良い仮説もみえてきたので、そこに絞ってインタビューを重ねました。

どのような課題がみえてきたのでしょう?

一言で言うと、現金派は管理が煩雑になってしまう、クレジットカード派は使いすぎてしまう という課題を抱えていました。

前者については、そもそも想像以上に現金のまま支出を管理している人が多いことに驚きました。なかでも、毎月の予算を目的ごとに分け、紙の封筒やクリアケースなどに入れて管理する方法をとっている人が沢山いたんです。食費や交通費などの種類で分けている人もいれば、「1週間目の食費」や「2週間目の食費」など時期で分けている人など様々でした。

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Instagramにも現金での管理方法を紹介する投稿は多い

理由を聞いてみると「家計簿アプリも試したが、現金の会計は手入力が必要で、続かなかった」や「後払いだと使いすぎが心配なのでクレジットカードではなく現金で管理したい」などが挙がっていて。「いくら使ったか」や「今月残りいくらなのか」をわかりやすく把握したい、節度を持ってお金を使いたいと考えている人ほど、他の管理方法に課題を感じ、現金に行き着いている状態があることがわかりました。

後者のクレジットカード派については、分割払いやリボ払いを利用しすぎて、支払いに困っている。支払いのために更にキャッシング枠を利用するなど、自転車操業から抜け出せないという課題を抱えた人が多くいました。

こうした気づきや課題から、誰でも簡単に使えて、管理を続けやすい機能のアイデアが生まれました。 例えば、ポケット機能は封筒やクリアケースでの管理をデジタルでより便利に再現したもの。事前に入金する仕組みで、あえてリボ払い・分割払いを用意していないのも、使いすぎていないかを事前に気づきやすくなればと考えたからです。

自分にとっての“ふつう”は、ユーザーの“ふつう”ではなかった

話を聞いていて、チャレンジャーバンクのユーザーにも話を聞いたり、100人以上にN1インタビューを実施したりと、ユーザーを知ろうとする姿勢を強く感じます。

昔、ユーザーの話をちゃんと聞かずにサービスを作った結果、全然使われなかった経験があるんですよね。 反省してN1インタビューを行うようになった結果、出来上がったのがフリルで、沢山の人に使っていただきました。以降はサービスを作るにあたって必ずN1インタビューを行っています。

あとは、フリルを作っていたときに地方に住むユーザーにインタビューをした経験も影響しているかもしれません。話を聞いていると、私も含む東京都内でWebサービスやアプリを作っている人の考える“ふつう”は、狭く偏ったものだと痛感したんですよね。

先ほども話しましたが、私は現金で管理する人の多さも想像できていませんでした。「キャッシュレスのほうが便利」と当然のように考えていたんです。でも実際は現金に一定の利便性を見出している人がいたわけで。そこに気づけたからこそB/43が生まれました。

顧客に使ってもらいたいならば、直接声を聞いて、自らの幻想を打ち砕かれにいくのが大事なのだと思います。

B/43の開発にあたって、他に幻想を打ち砕かれるような瞬間はありましたか?

利用前の本人確認の仕組みですかね。政府は事業者がオンラインで本人確認をする際、身分証の厚みがわかる画像を用いるよう定めています。そのためB/43でも会員登録時に、ユーザーが身分証を表と裏、斜めから撮影する必要があるんです。

その操作をユーザーに目の前で試してもらったところ「ななめから撮影して」という画面の指示に対し、どのように撮影したらいいかわからず戸惑っているようでした。あるいは撮影した画像では厚みが十分だと判定されず、やり直しが必要になっている方もいました。

私は何度も検証しているうちにすっかり慣れていたため、試してもらって初めて、操作の難しさに気づきました。本人確認の方法は今もユーザーに触ってもらいながら改善を続けています。

ユーザーにアプリを触ってもらいながら話を聞くことも多いのですか?

そうですね。触ってみての反応や感想を確かめながら作っていくことは強く意識しています。 例えば、数年前に画面を下方向にスクロールしてタイムラインを更新する機能をアプリに実装したことがあって。当時は参考にできる情報もそこまで多くはなかったため、自分たちなりに一から作ってみたんですね。

それをユーザーに試してもらうと、更新するのに必要なスクロール幅が長く、手の小さめな方だと片手で操作するのに苦労されていました。そもそも「スクロールして更新する」と説明するテキストが小さかったため機能の存在自体に気づかない方もいました。ユーザーの立場ではなく自分の“ふつう”に沿って設計してしまっていたと反省しましたね。

「人が欲しがるモノをつくる」にあたって、ユーザーの話を聞くのと同じくらい、見せて、触ってもらって改善することも大切だと感じます。

「最低限の貯金」の先まで、長期的にユーザーの人生を支えたい

直近は新機能として、二人で共通の口座を作成して支出を管理する「ペア口座」を発表されていました。これもユーザーの話を聞くなかで生まれたのでしょうか?

そうですね。「複数人で支出管理をする際にも使えたら嬉しい」という声は、ユーザーから届いており、いつか作ろうと思っていました。加えて、今回は私自身が「家庭の支出管理を改善したい」ユーザーだったので個人の経験も大いにヒントになっています。

もともと、家庭の支出は共通の口座に紐づく2枚の家族カードで管理していたのですが、カードと紐づく銀行口座の名義は一人です。名義人ではない人が明細を確認しようとすると、いちいちログイン情報を共有するなど、ひと手間が必要でした。共通でいつでも支出を見られる場所がなかった。

そこで、現在のペア口座のプロトタイプとして、個人の口座に紐づくプリペイドカードを2枚発行して一緒に使ってみたら、ものすごく便利だったんです。どちらがいくら使ったのかリアルタイムに通知されるので、「何々にいくら使った」と報告したり「先に払っておいたから割り勘したい」と聞いたりする必要がなくなる。パートナーとお金について話すストレスが減りました。

また、二人がいつでも支出についての情報を閲覧できる状態になったことで、「平等にお金を使う権利を持っている」という感覚を得られるのも、個人的にはとても心地よかった。これはいいぞと手応えを感じ、新機能として開発することにしました。

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リリースしてからは「これまで把握できなかった家計がわかりやすくなった」「二人でお金について話し合えるようになった」と好評をいただいています。数値をみても「ペア口座」を利用しているユーザーは、個人で利用しているユーザーに比べてリテンション率も圧倒的に高く、ニーズに応えられている実感があります。

ペア口座以外でも、ユーザーの課題を解決できている、ニーズに応えられているといった実感はありますか?

「支出を管理できるようになりました」といったレビューなどを見て、一定の手応えは得られていますね。また「スーパーで使おうとしたら店員さんが見慣れないカードだったようで少し戸惑っていた」といった声もありました。もちろんカードの改善も検討しますが、日常生活のなかで本当に使ってもらえているのだと嬉しく感じました。

また、ポケット機能はディズニーランドに行く資金を貯めたり、兄弟ごとに支出を管理したりと、こちらが想像していなかった多様な使い方を発明してくださっています。

ユーザーが使い方の幅を広げてくれているのですね。最後にB/43の展望を教えてください。

今のB/43は、家計が赤字状態の人が毎月の予算内で暮らせるようになり、少しずつ貯金ができ、経済的に安定するまでをサポートしています。ですが、その後もユーザーの人生は続いていきます。最低限の貯金以上のお金を貯めたり、あるいは投資したりして、よりよい人生を送れるまでを支えていけたらと思います。

また、家族の支出管理や子供のお小遣い管理など、より幅広い層のユーザーに使われるサービスを目指しています。 今後、イギリスのように日本でもキャッシュレス決済は広がっていくはずです。そうなったときに、現在のメインユーザーであるお金に困っている人以外でも、現金での管理がしづらいといった課題や、いつどれくらい使ったかをわかりやすく把握したいといったニーズは出てくると考えています。そうした長期間での変化も見据えて、誰でもデジタルで簡単にお金を管理できるような仕組みを整え、より多くの人に使われるサービスになっていきたいですね。

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