Event Report

KARTEを自由に拡張する「KARTE Craft」がもたらすCX変革

2023年7月に「事業成長をCXのデジタル変革で牽引する」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2023」にて、NRIデジタル株式会社 DX企画 プロデューサーの吉田氏と、株式会社プレイド エンジニアの矢澤が登壇。オフラインを含めた顧客体験を変革するためにはデジタル接点だけでなく、接客する人間のオペレーションも含めた変革が重要視される業態でのKARTE活用のこれまでを中心に、新たにリリースされたKARTE Craftでどのようなことができるようになるのか、デモを交えてご紹介します。

2023年7月に「事業成長をCXのデジタル変革で牽引する」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2023」にて、NRIデジタル株式会社 DX企画 プロデューサーの吉田純一氏と、株式会社プレイド エンジニアの矢澤学が登壇。

野村総合研究所の戦略子会社であるNRIデジタルとプレイドは、これまでもKARTEの機能をオフラインまで拡張した新しい顧客体験の変革に取り組んできました。

このセッションでは、オフラインを含めた顧客体験を変革するためにはデジタル接点だけでなく、接客する人間のオペレーションも含めた変革が重要視される業態でのKARTE活用のこれまでを中心に、新たにリリースされたKARTE Craftでどのようなことができるようになるのか、デモを交えてご紹介します。

顧客とのリアル接点におけるKARTE活用のこれまでの課題

NRIデジタルとプレイドは2017年より、KARTEを活用した企業のデジタルマーケティング支援を開始。KARTEの導入・運用だけでなく、機能拡張による新しい顧客体験づくりに取り組んできました。

その成果の一部が、KARTEに3DLiDARやQRリーダーを組み合わせることで、リアル空間での行動履歴に応じたマーケティングを可能にした「OMO OnBoard」や、ローコード/ノーコードでKARTEの機能が入った会員アプリを構築できる「Community OnBoard」です。

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プレイドとNRIデジタルが生み出したさまざまな機能によって、オンライン接点の顧客体験を向上させるための、KARTE活用の幅は広がりました。しかし、「顧客体験はオンライン接点だけで完結するわけではない」と吉田氏は専門である不動産業界を引き合いに出しながら、これまでの課題を指摘します。

吉田氏「不動産業界において、顧客はネットで情報収集を行うものの、購買に至るまでのプロセスのほとんどがオフライン接点になります。モデルルームへの来場、契約・引渡、そしてアフターサービスまでデジタルが介入する余地が小さい。不動産業界以外のBtoBビジネスでも、最初の引き合いだけがオンラインで、以後のヒヤリング・提案、契約・納品がリアルで行われるケースが少なくありません」

吉田氏は提供するサービスによってリアルでの接点の重要度が異なることを、「リアル接点の重要性/デジタル」と「高関与/低関与商材」の4象限マトリクスで整理します。

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今回のセッションで主に語られたのは、上のスライド内の「A」のエリア、「リアル接点の重要性が高く、高単価で購入頻度が低い」領域です。

この領域に位置する商材の例として挙げられるのが、不動産・自動車・高額家電。これらはリアル接点が重要な高関与商材のため、営業・アフターサービスなどそれぞれの接点での接客パフォーマンスによってCXが左右されます。

吉田氏「リアル接点のCX向上にもKARTEを活用することができます。アプローチとして、二つの方法が挙げられます。一つ目は、デジタル接点から得られたデータをリアル接点に活用する』。より具体的に言えば、『顧客ダッシュボードを作り、デジタル接点の行動履歴を可視化する』方法です。

もう一つは、『リアル接点の内容をデジタルに反映する』アプローチ。具体的には、『顧客のステータスによる出し分けを行い、リアル接点の状態に応じたデジタル体験の提供する』方法です」

「デジタル接点から得られたデータをリアル接点に活用する」ためには、Google AnalyticsやKARTEのデータをダッシュボード化しなければなりません。また、「リアル接点の内容をデジタルに反映する」アプローチを取る場合には、業務システムのデータを『KARTE Datahub』経由でKARTEに連携」する必要があります。

いずれのアプローチにも実行するメリットがある一方、解消できないデメリットがあると吉田氏が語ります。

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吉田氏「例えば、デジタル接点から得られたデータをリアル接点に活用するアプローチは、自由なダッシュボードが作れるメリットがありつつ、常に最新のデータが見られるわけではないというデメリットがあります。なぜなら、Google Analyticsからデータを取り込む際、数時間ほどのタイムラグが生じるからです。そのため、最新のデータを見るためには、都度BIツールの画面を見なければなりません。

一方で、KARTEの単独使用の場合、データをリアルタイムで把握することはできますが、自分の思い通りのダッシュボードをつくることは難しい。また、業務システムのデータを『KARTE Datahub』経由でKARTEに連携する方法に関しても、リアルタイムにKARTEと連携できない問題がありました」

こうしたシステム面での制約が、これまでCXの向上の妨げとなり、それによって他のツールやSaaSを探したり、プレイドに追加の機能開発の相談をしたりと、遠回りになってしまっていたと吉田氏は語ります。

こうした課題を解決するため、NRIデジタルとプレイドは新たなソリューションの提供を始めています。同ソリューションは、プレイドが新たに開発したプロダクト「KARTE Craft」を活用したものです。

リアルタイムかつ柔軟な連携機能で、システムを自由自在につなぎこむ「KARTE Craft」

続いて、プレイドのEcosystem Product Deptの矢澤が「KARTE Craft」について紹介していきました。

吉田氏から説明があったように、KARTEと外部サービスのデータは同期ができるものの、データ連携ジョブの実行は最短でも一時間おきになってしまうことが課題でした。「KARTE Craft」は、リアルタイムかつ柔軟な連携機能で、システムを自由自在につなぎこむことを目的に開発されました。

「KARTE Crart」で社内外のさまざまなシステムとKARTEの連携をスムーズに実現することで、KARTEの特徴である「ユーザーの状態変化をリアルタイムに捉えて、リアルの世界と同じように直ぐにアクションする」機能を最大限に生かしたシステムを、より容易に提供できるようになります。

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矢澤「KARTE Craftのコア機能として、コードの実行基盤でKARTE Friendsがコードを自由に記述し、KARTE上で動作させられる『Craft Functions』があります。要するに、KARTEにはなかった機能を新しく作ることができるのです。

KARTE Craftの特徴は大きく2つ。まずはCraft Functionsの「リアルタイム性」です。ユーザーの行動、チャット・Datahubのデータ連携ジョブ、外部からのリクエストなど、さまざまなトリガーでFunctionを実行することが可能になります。つまり、KARTE内外で発生する出来事をきっかけに、リアルタイムでプログラムを実行させられるわけです。

もう1つの特徴は、「高い柔軟性」。KARTE Friendsが自らJavaScriptを書くことで、より柔軟に機能の拡張ができ、さらにオプション機能を併用することで、より広い用途で活用が可能です」

「KARTE Craftは、KARTE FriendsがKARTEを自由自在に拡張できるプロダクト」と説明する矢澤は、このプロダクトによって実現できる世界についてこう語ります。

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矢澤「今まではKARTE Friendsが『KARTEに蓄積されているユーザー情報を⚪︎⚪︎ダッシュボードに組み込みたい!』あるいは『△△の速報をリアルタイムに接客に反映したい!』と思っても、機能がない場合は開発元であるプレイドにリクエストするしかありませんでした。

KARTE Craftがあれば、欲しい機能を自ら形にできるようになります。実装のハードルが高い場合でも、NRIデジタル様のようなデジタルに強いパートナーの力を借りれば実現が可能です」

自由な機能拡張をサポートするのは、パートナー企業だけではありません。たとえば、すでに実装されている「Craft AI Modules」は、Craft FunctionsからAIモデルを簡単に利用できる機能です。自社サービスやサイトのCX向上の施策や取り組みにおいて、GPTなどのAIモデルを簡単に組み込めるようになります。

また、2023年中には機能開発のためにコーディング・エンジニアリングを必要とする場面で、開発者を支援するAIアシスタント「Craft Assistant」の提供を開始する予定です。AIモデルを活用することで、自然言語からサンプルコードの検索や指示に基づくコードを生成するこの機能によって、さらにスムーズな機能拡張が可能になります。

Craft AI ModulesやCraft Assistantについては、こちらの記事で開発の背景などがより詳しく解説されていますので、ぜひ併せてご一読ください。

KARTE Craftで実現する、業務プロセスを起点としたCX変革

プレイド矢澤よりKARTE Craftの機能説明が行われた後、実際のデモ画面と共に、吉田氏からKARTE Craftで実現するCXが語られました。

まず、紹介されたのは「リアルタイムで更新される、業界に特化した独自のダッシュボードの構築」です。この施策によってKARTE Friendsは、「KARTEを開くことなく」ユーザーのリアルタイムな動きを把握し、その情報を接客に生かせるようになるのだと吉田氏は言います。

これまでもKARTEを活用することで、ユーザーの行動履歴をリアルタイムに把握することは可能でしたが、その情報を把握するには「KARTEを開く」という手間がかかっていました。また、業界ごとのニーズに応じたカスタマイズができないというデメリットもあります。KARTE Craftは、そんなデメリットを一挙に解消するのです。

吉田氏「たとえば、不動産サービスを展開している会社のサービスページをあるユーザーが訪れ、問い合わせのメールを送ったとしましょう。KARTE Craftを使ってKARTEとCRMを連携させ、独自のダッシュボードを構築しておけば、問い合わせメールを受けた営業パーソンは、KARTEを開くことなく、普段利用しているCRM上でユーザーが何に興味を持っているのかを把握できるようになります。

そして、その情報をもとにユーザーに返信するメールの内容を決定する。つまり、従来よりもはるかに工数を抑えながら、迅速にユーザーが求める情報を提供できるようになるんです」

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また、KARTE Craftはリアルの場での接客内容をデジタルに反映することにも寄与します。CRMを更新すると、KARTEのセグメントが更新され、それにより接客の内容が変化。つまり、業務システムを操作するだけで、KARTEの接客施策を実行できるようになるため、EXを損ねることなく、CXを向上させられるのです。

加えて、KARTE Craftをベースにしたシステム開発が可能なため、BigQueryのようなツールだけではなく、パブリッククラウド上の業務システムとのシームレスな連携も可能になります。

吉田氏「KARTE Craftを使うことで、KARTEの機能を業務システムに組み込むことが容易になります。それにより、業務の負荷を高めることなく、CXを向上させることができる。

言い換えると、KARTE Craftは業務プロセスを起点としたCX変革を起こせるのです。今後の展望としては、生成AIの活用も行いながら、さまざまな領域の営業プロセス全体のEX・CXの変革に取り組んでいきます」

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最後に、あらためて吉田氏からKARTE Craftのサービスに期待する成果やポテンシャルについて語られました。

吉田氏「KARTEは基本的にマーケターが活用するツールです。一方、KARTE Craftはエンジニアが自由に開発するためのツールなので、マーケティングの知識を持っているだけではうまく使いこなせません。

そこで、さまざまな業界や事業ドメインに関する知識と多様なお客様のDXをサポートしてきた経験を持つNRIデジタルがプレイドさんとタッグを組み、みなさんのKARTE Craftの活用をサポートしたいと考えています。

これまで語られてきたように、KARTE Craftはみなさんの業務負荷を高めることなく、CXを向上させることに寄与します。つまり、CX向上に携わる従業員の働き方も劇的に変えることになる。ぜひ一緒に、CXとEXのまだ見ぬ世界を切り拓いていきましょう」

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