Event Report

ブランドに愛着ある顧客から学び、サイトを改善。三陽商会が実践するKARTE Blocks活用

2023年7月、「事業成長をCXのデジタル変革で牽引する」をテーマに開催したカンファレンス「KARTE CX Conference 2023」に株式会社三陽商会の黒澤氏と株式会社プレイドの中井が登壇。2部構成のセッションでは、前半は黒澤氏よりアパレル業界における「ブランド体験の重要性」と三陽商会のKARTE Blocks活用について、後半は中井からアパレルECサイト運営によくある困りごとと、それらを解決するKARTE Blocksの活用方法が紹介されました。

消費者の生活スタイルや購買行動は移り変わり、アパレル業界は大きな変化を求められています。今秋にはECプラットフォームを刷新し、更なる売上の拡大を目指す、総合ファッションアパレル企業の株式会社 三陽商会です。

2023年7月に「事業成長をCXのデジタル変革で牽引する」をテーマに開催された「KARTE CX Conference 2023」にて、三陽商会 マーケティング&デジタル戦略本部 ウェブビジネス部 EC運営第二課の黒澤 和彦氏と、株式会社プレイド KARTE Blocks 事業推進担当の中井 真実が登壇しました。

セッションの前半は黒澤氏から、アパレル業界における「ブランド体験の重要性」と三陽商会のKARTE Blocks活用について、後半は中井からアパレル業界のECサイト運営によくある困りごとと、それらを解決するKARTE Blocksの活用方法が紹介されました。

先読みの難しいアパレル業界には「ブランドへの愛着」が不可欠

三陽商会は自社ブランドと、ライセンス契約を結んだ海外ブランドを国内で展開する総合アパレル企業です。

自社ブランドとして、レディースブランドの「BLUE LABEL CRESTBRIDGE」、メンズブランドの「BLACK LABEL CRESTBRIDGE」、そして2022年にこれらの新ラインとして「CB CRESTBRIDGE」というブランドをローンチしました。これら3つのブランドを実店舗と自社のECサイト「CRESTBRIDGE ONLINESTORE」にて販売しています。

黒澤氏は、アパレル業界の最大の課題について、「他の業界と比較すると、トレンドや季節ごとに商品が入れ替わりなど、先読みしづらい外部要因から受けるインパクトが大きい。また、これらの要因に対応しようとしすぎると、商品がお客様に受け入れられる期間が短くなってしまうこと」だと語ります。

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黒澤 和彦氏(右)

黒澤氏「こうした業界課題を踏まえて重要になるのが、商品に愛着を持ってもらうのと同じくらい、ブランド自体に愛着を持ってもらうこと。長く愛用してもらえる関係性を築くことが不可欠です。

では、ブランドへの愛着が高い、つまりロイヤリティが高いお客様とは、どのような人なのか。その方はブランドになにを求めていて、どのような購買行動をしているのかを理解すること。それが、アパレル業界の課題を解決するための第一歩です」

黒澤氏が顧客のブランドへの愛着について考えるきっかけとなったのが、Webサイトのリニューアルと新ブランドのローンチだったそうです。

黒澤氏「2019年にWebサイトをリニューアルしました。当社のWebサイトは、ブランドサイトとECサイトの2つの機能を持っています。そのため、お客様がWebサイトを訪問する際の動機も『ブランドの雰囲気が知りたい』『商品を購入したい』という2つに大きく分かれます。

加えて、2022年からは展開するブランドが3つになりました。それぞれのブランドごとにお客様のWebサイト訪問の動機が2つに分かれるため、動機は合計で6パターンに分かれることになります。各パターンに対応しようとした結果、Webサイトの内容はどうしても複雑になってしまっていました。

お客様の求めている体験に合わせて、Webサイトの情報を整理する必要性が生じていたのです。お客様はどんな体験を求めているのかを考えるにあたり、ブランドへの愛着が高いお客様のことを知ることにしました」

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予想していなかった顧客行動を発見し、素早く改修

黒澤氏は、ロイヤリティの高い顧客について理解するために、KARTEのユーザーストーリー機能を用いて、n1分析を行いました。

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黒澤氏「n1分析を実施し、ブランドに愛着を持っているお客様と、まだそこまでには至っていないお客様との違いを調べたところ、『訪問頻度の高さ』が圧倒的に違うことがわかりました。また、訪問頻度の高いお客様は、滞在時間が長いわけではなく、短いときには数十秒で離脱していることも判明したのです。

私自身、隙間時間に何度も、好きなブランドのECサイトを確認します。隅々まで見るわけではなく、チェックしたい部分の更新情報がなければ、すぐに離脱するんです。n1分析の結果は、自分の体験と照らし合わせてもしっくりくるものでした」

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n1分析によって、ブランドに愛着のある顧客の行動が見えてきた黒澤氏は、KARTE Blocksによるサイトの改善に着手しました。まず、改善の対象となったのは、Webサイト訪問時に表示されるトップページのファーストビューに含まれる箇所です。

以前、Webサイトのトップページでは商品軸での更新情報は表示していなかったものの、頻度高くWebサイトを訪問するお客様であれば、商品の更新情報も知りたいのではないかと仮説を立て、施策を検討したといいます。

黒澤氏「最初は、KARTEの施策を用いてお客様に訴求をしていたのですが、表示までには若干のタイムラグがありました。遅延なく商品の更新情報をお知らせできるように、KARTE Blocksを導入してWebサイトのファーストビューに商品の更新情報を伝えるブロックを設置しました。

KARTEの施策で画像リンクを表示するだけでもクリック率は7%上昇。その後、KARTE Blocksのテンプレートを用いてカルーセルを設置すると、クリック率はさらに倍以上になりました」

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黒澤氏は、Webサイトを改善するにあたり、ユーザーストーリー機能を用いたn1分析に加えて「KARTE Live」を活用した顧客分析も実施。KARTE Liveは、録画された顧客の操作画面を見ながら、どう遷移しているのか、どこでつまづいているのかを把握できる機能です。分析の結果、ブランド側が想定していた行動と、実際の行動には大きなギャップがあることがわかりました。

黒澤氏「KARTE Liveを活用することで、私たちが想定していたWebサイト内の導線の利用方法と、実際にお客様の行動に乖離があることがわかりました。

例えば、私たちは、ほとんどのお客様がブランドサイトのハンバーガーメニューからECサイトにアクセスするという導線を想定していました。実際には、お客様はまずブランドサイトの一番下までスクロールし、『今週のTOP10』エリアに掲載されている商品の詳細ページへ飛び、そこからECサイトの商品一覧ページへアクセスすることがわかったんです。

ここから予想されるお客様のニーズは『商品の一覧ページが見たい』というもの。それなのに、そこに辿り着くまでのステップが煩雑になっていることが判明しました。これは、アクセスログを閲覧しているだけでは気づけなかったことだと思います」

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想定していた体験と、実際の行動にギャップがあるとわかった黒澤氏は、KARTE Blocksを用いてWebサイトの導線を改善しました。

黒澤氏「KARTE Blocksを活用して、トップページのファーストビューに、わかりやすいECサイトへの導線を設置しました。これにより、商品一覧ページへの遷移率が8.5%向上しました。また、その導線の下部にキャンペーン情報バナーなども合わせて掲載することで、さらに遷移率を10.3%まで高められました」

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KARTE Blocksを用いたこれら2つのトップページの改善施策について、黒澤氏は以下のように振り返ります。

黒澤氏「1つ目の施策は、ブランドに愛着を持ってくださっているお客様の行動を、他のお客様にも波及させたいという狙いもありました。2つ目の施策は、ブランドに愛着を持ってくださっているお客様の困りごとを解決することで、他のお客様の困りごとも合わせて解決できたと感じています」

顧客が「ほしいもの」だけに、純粋に向き合えるWebサイトを目指して

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黒澤氏によるセッションの後半では、三陽商会が目指しているという「よりパーソナルな接客の実現」について語られました。

黒澤氏「私が好きな言葉に、糸井重里さんの『ほしいものが、ほしいわ。』という百貨店のコピーがあります。ほしいものがほしい、とは裏を返せば、いらないものはいらない、と解釈できる。お客様にとってマイナスの体験を排除し、純粋にほしいものだけと向き合えるECサイトを作りたいと思います。

それを目指して、今年の秋には自社ECサイトの刷新を予定しています。Webサイトが入れ替わるタイミングではきっと新しいお客様の困りごとが生じるはず。私たちは、困りごとの兆候を見逃すコトなく、常に改善していくことを目指してKARTE Blocksの活用を前提としたサイトの構築を進めています」

事業者目線に寄り過ぎず、心地よい距離感のコミュニケーションを

続いて、プレイドの中井から黒澤氏に質問を行い、どのように三陽商会がWebサイトでの顧客体験を向上させているかをお聞きする時間に。

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まず、中井が問いかけたのは、よりパーソナルな接客を行うために、どのようなデータを活用したコミュニケーションを実施していく想定か、というもの。

黒澤氏「当然、Webサイトでのお客様の行動データや購買データを踏まえてコミュニケーションをとります。それに加えて、実店舗の購買データも参照し、よりお客様を理解したうえでコミュニケーションを取るようにしていきたいと考えています。そのために、今後はKARTE Datahubの活用も行っていく予定です」

実店舗のデータについての言及を受け、中井は「ECサイトと実店舗のデータの活用を進める上で気をつけていることはありますか?」と質問を続けます。

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黒澤氏「大きく2つあります。1つは、事業者目線になりすぎないこと。大切なのは、ECサイトと実店舗、どちらでもお客様に心地よくお買い物を楽しんでいただくことです。お客様のなかには、実店舗でチェックした商品をECサイトで購入したり、Webサイトで気になった商品を実店舗で手にとったりと、両者を併用してお買い物をされる方も多い。実店舗のほうを好んでいるお客様を、むやみにECサイトへ誘導するような施策はしないようにしています。

もう1つは、パーソナルな情報の取得がお客様にとって違和感のあるものにならないこと。店舗で買い物をしていて、店員からおすすめ商品や組み合わせを提案されることがよくあります。しかし、ECサイトで商品ページから離脱した直後に、ポップアップなどで関連する商品や組み合わせを提案されると、『情報収集されている』『行動を読まれている』と感じて、ちょっと怖いですよね。ECサイトと実店舗、それぞれの接点に適した距離感があるはずなので、距離感の測り方は気をつけています」

黒澤氏の話を受けて、中井は「ブランドに愛着を持つお客様と、新規のお客様への施策を考える上で、どのようにバランスをとって施策を考えていますか?」と問いかけました。

黒澤氏「基本的なことではありますが、定量と定性の分析を行って、改善サイクルを実現しています。先程はn1分析や実際の顧客行動の分析について触れましたが、定量の分析も重要です。三陽商会では、健康診断のようなつもりで、Google AnalyticsでWebサイト全体の状態をチェックしています。改善点が見つかれば、より重点的にKARTEのデータを使って分析し、施策を組み立てます。

例えば、ECサイトでセールを行うタイミングでは、デジタル広告、メルマガ、アプリなどでセール情報をお伝えするので、普段は訪れないお客様も数多くいらっしゃいます。こうしたタイミングでは、お客様の行動データをより細かくチェックします。

数多くの定量データを分析しつつ、n1分析などを交えて、定性面での深掘りも行います。数値で得られているデータを肉付けするようなイメージで、お客様のことを考えていきます。とはいえ、アパレル商品は最終的には好き嫌いで判断されるものでもある。そのため、自分自身の顧客の立場としての経験なども踏まえて、施策を立案することも大切にしています」

アパレル業界のブランド体験向上を後押しするKARTE Blocks

黒澤氏への質問の後には、プレイドの中井がアパレル業界のEC運営においてよく聞かれる3つのお悩みと、それに対してKARTE Blocksが起こす変化、実際のユースケースについて紹介しました。

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よくある3つのお悩みの1つに、中井は「サイトの更新には手間とお金がかかる」ことを挙げます。

中井「アパレル企業でサイト運営を担当する方々は、他業務を兼務していることも多いため、なかなかサイト運営に時間を使うことができません。外部ベンダーに依頼したくとも予算の都合上難しかったり、内製しようにも社内のエンジニアが忙しく、対応に時間がかかってしまうケースがあるようです。

KARTE Blocksを活用すれば、ブランドのバナーを更新するのも、サイト内の要素をクリックして画像をアップロードするだけで、わずか5分で完了します。カルーセルやアコーディオンなどの豊富なテンプレートも用意してあるので、特別なスキルがなくてもサイト改善が可能です」

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続いて、よくあるお悩みの2つ目は「A/Bテストをしてもなぜ良かったかわからない」ことだと言います。

中井「A/Bテストによって、数値が向上したという効果が出たとしても、その背後にある要因がわからないという声をよく聞きます。要因を深堀りできていなければ、なぜその施策がよかったのか、より良くするためにはどうしたらいいのかを考えることはできません。

KARTE Blocksなら、セグメント別の深い分析が可能です。例えば、スマートフォン利用者とPC利用者の行動がどのように異なるかを知ることもできます。また、動画でユーザーの行動を追体験をするKARTE Liveという機能もあるので、結果の要因が見つかりやすくなります。

これらの機能によって、施策の実施からA/Bテスト、そして効果検証までの一連のサイクルをKARTE Blocks上で完結でき、新たな学びや発見を、次の改善に活かせます」

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最後に、よくあるお悩みの3つ目は、「パーソナライズまで手が回らない」ことだといいます。
中井「アパレル企業は複数のブランドを扱うがゆえに、多種多様なお客様が、それぞれの動機を持ち、それぞれのチャネルから訪れると思います。

こうした状況に対応するために、お客様一人ひとりに合わせたパーソナライゼーションを行うことが重要だと理解しているものの、『データ連携のやり方がわからない』『そもそも適切なツールがない』というお悩みをよく聞きます。

KARTE Blocksであれば、店頭での個別接客のように、ECサイト上の顧客体験をお客様ごとに最適化できます。極論を言えば、お客様一人ひとりに対して、まるで別のサイトを表示することも可能です」

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よく聞く3つのお悩みの紹介に続けて、中井はKARTE Blocksを用いた顧客体験向上の事例を4つ紹介しました。「5W1Hで体験を設計すること」の大切さを述べ、そのなかでも「誰に(WHO)なにを(WHAT)したのか」に絞って語りました。

中井「1つ目は、新規のお客様に向けた、広告とKARTE Blocksの連動施策の事例です。セール情報を訴求した広告から来訪したお客様には、トップページのバナーをセール情報に関するバナーを表示することで、迷わずセール会場に向かえるスムーズな体験を実現しました」

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中井「2つ目の事例では、ある下着販売の会社様が、初回訪問のお客様に限定して『適正下着診断』のコンテンツに誘導したことで、商品の購入率を42%も改善しました。下着のサイズ感やフィット感が不安だというお客さまの悩みを解決することができたようです」

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中井「3つ目は、ECサイトのカートページに、いくら以上なら送料が無料になるかを明示したことで、購入率が16.3%アップした事例です。購入直前にヘルプページの送料の欄を閲覧するお客様が多いことに気づいた担当者は、KARTE Blocksを用いてカートページのA/Bテストを実施しました」

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中井「最後に紹介するのは、ECサイトのトップにブランドロゴの一覧を表示し、購入率を31%アップした事例です。KARTE Blocksを用いて、わずか10日間で4種類ものパターンを試し、もっとも効果の出る表示方法を見つけ出しました」

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本セッションでは、アパレル業界におけるブランド体験の重要性と実践例の紹介から、アパレルにおけるECサイトのお悩みの共有、KARTE Blocksの活用事例まで、盛りだくさんの情報が共有されました。アパレル業界におけるCXのデジタル変革の取り組みは、今後も増加するはず。こうして、知見が共有されていくことでさらに変化は加速していくのではないでしょうか。

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