Event Report

Vポイントは「還元」から「価値創造装置」へ。1.3億人超の暮らしのデータから描く共創プラットフォーム

膨大かつ広範に及ぶVポイントのデータは、BtoC/BtoBの両領域において、どのように人の生活を豊かにできるのか。Vポイントマーケティングの廣田氏と高山氏が、「X DIVE2026」にて1億3,000万人を超える会員と16万店舗の提携先を抱えるVポイントの最新の取り組みと目指す未来を語った。

 1億3,000万人を超える会員と16万店舗の提携先を抱えるVポイント。生活者の日常に深く根付くと同時に、多くの企業に向けたマーケティング支援ソリューションとしても機能している。膨大かつ広範に及ぶデータは、BtoC/BtoBの両領域において、どのように人の生活を豊かにできるのか。2026年7月に開催されたイベント「X DIVE」では、Vポイントマーケティングの廣田氏と高山氏が登壇。プレイドの門口氏をモデレーターとして、同社の最新の取り組みと目指す未来が語られた。

(この記事は、翔泳社「MarkeZine」で2026年9月14日に公開された記事を転載しています)

1.3億人超の「暮らしのデータ」を共創に活かす

 Vポイントマーケティングは、CCCMKホールディングスにおける2026年3月の資本再編を経て、2026年4月より現在の社名へと変更した。SMBCグループとの連携を強め、新たな事業フェーズへと足を踏み入れている。

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 同社のVポイント事業は、前身のTポイントから通算して、会員数(有効ID数)1億3,000万人以上、提携店舗数約16万店という膨大な基盤を誇る。

 「カードを複数枚発行している会員は名寄せしていますが、それでも日本人口の半数程度を網羅し、年代の偏りもなく均等に分布しています。統計的にも極めて精度の高い数値と捉えています」(廣田氏)

廣田様

Vポイントマーケティング株式会社 代表取締役 社⻑執⾏役員 廣⽥ 精吾氏

 V会員が提携先で購買やサービス利用を行い、Vポイントが付与される際、その背後ではVポイントマーケティングのシステム内に購買データが蓄積されていく。購買した商品名や点数といったレシート単位の詳細な内容から、業態や店舗を横断した購買行動を可視化できる点が特徴だ。

 これは生活者の日常を立体的に、かつ高解像度で捉える「暮らしのデータ」だと廣田氏。同社は、このデータを活用することで、V会員という生活者と提携企業をつなぐ「共創プラットフォーム」の構築を目指している。

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生活者のLX(生活体験)変革に挑む

 この共創プラットフォームは、具体的にどのような価値をもたらすのか。

 提携先に対しては、個社単独のデータでは見えてこない広範な行動変容データを基に、V会員の動きを分析。顧客理解の深化やCRMの精度向上を促し、新規顧客の送客や既存顧客の離脱防止といった課題解決を支援している。

 一方で、同社はV会員の体験設計にも着手している。モデレーターの門口氏からその背景を問われた廣田氏は、Vポイントを取り巻く外部環境の変化を挙げた。

門口様

株式会社プレイド Business Growth Dept Account Director ⾨⼝ 真⼠氏

 「Tポイントは共通ポイント事業のパイオニアであり、発足当初は競合が存在しませんでした。しかし現在では多種多様なポイントサービスが存在し、生活者の選択肢は大きく広がっています。レジ前で『どのポイントを貯めようか』『どのバーコードを提示しようか』と選択する主導権は生活者にあります。このような市場環境において選ばれ続けるためには、ユーザー像をより深く理解することが不可欠なのです」(廣田氏)

 たとえば、何ポイント貯まればVポイントを利用し続けようと思うのかといった感覚は、ユーザーごとに大きく異なる。ポイントを付与する施策一つを取っても、会員一人ひとりのポイント保有数や利用状況を見極めたうえで調整を行う必要がある。

 そこで同社は2024年10月にカスタマーバリューの専門部署を立ち上げ、これまで提携企業向けに提供してきたデジタルマーケティングのノウハウを、V会員の体験向上へと還元する取り組みを本格化させた。BtoC/BtoB両軸の施策で共創プラットフォームを築くことで、「CX(顧客体験)」という枠組みを超え、V会員の生活そのものを豊かにする「LX(生活体験、Life Experience)」の再設計に着手したのだ。

サポーターの課題を旅行体験へ。Airbnb×ガンバ大阪の共創事例

 V会員と提携企業を結びつけ、相互に価値を生み出す施策の具体例として、スポーツエンターテインメントと旅行体験を掛け合わせた事例が紹介された。

 具体事例として挙げられたのが、Vポイント、Airbnb、そしてJリーグのガンバ大阪が連携した、サポーターの応援・遠征体験を広げる新施策だ。

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 この取り組みは、ガンバ大阪サポーターが抱える「アウェイ戦の応援に行く際、適切な宿泊地が見つからない」という課題と、Airbnbが目指す「推し活に伴う旅行需要を確実に取り込みたい」というニーズを合致させたものとなっている。

 施策の設計としては、ガンバ大阪のアウェイ戦の機会にAirbnbを利用した際、Vポイントの還元率を引き上げたり、抽選でサイン入りユニフォームをプレゼントしたりといった、ファン心を捉える体験を用意した。

 カルチュア・コンビニエンス・クラブ時代から得意としてきたエンタメ領域の深い知見とアセットを活用することで、V会員であるサポーターに対して特別な体験を提供すると同時に、提携企業であるAirbnbおよびガンバ大阪に対しても明確なビジネス価値を提供できた好例と言える。

「暮らしのデータ」を循環させる4つのステップ

 今後もV会員と提携企業に対する価値提供を持続的に実現していくにあたり、同社の廣田氏は、Vポイントマーケティングが鍵として位置付ける4つのステップを提示した。

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 一つ目が「データ」だ。従来の購買データの取得にとどまらず、V会員自身が購入時のレシートをスマートフォンで撮影し、アプリへ投稿する仕組みなどを展開。これにより、データの絶対量を増やすとともに、その質と多様性を高める取り組みを進めている。

 二つ目の「分析・AI」では、「外食が好き」「肉料理が好き」といった会員一人ひとりの志向性を推計し、高度な分析エージェントを構築。個々のユーザーに最適化されたパーソナライズ体験を実現するための基盤とする。

 三つ目は「メディア」だ。現在、数千万人規模のユーザーを抱えるLINE公式アカウントと連携しており、今後は複数のアプリとも連携を予定している。ターゲットとなる層に対して、タイムリーかつスピーディーに施策を届ける狙いがある。

 そして四つ目が「ポイント」。生活者の次の行動を促すトリガーとして、ポイントの発行量の増大を重視している。2026年3月にはPayPayポイントとの交換を開始したほか、東京都や横浜市をはじめとする地方自治体との連携も強化。さらに、TポイントとSMBCグループのVポイントとの統合効果や、SMBCグループが提供するデジタル金融サービス「Olive」との連携も順調に推移している。

 ユニークな試みとしては、SMBCグループの株主優待としてVポイントを付与する施策も実施。これらの取り組みが結実し、2023年から2025年にかけてのポイント発行数は二倍以上に拡大している。

 この4つのステップを実行するうえで、Vポイントには多様な展開の可能性が広がっており、今後の成長にも手応えがあると廣田氏。暮らしのデータを起点としてV会員と提携企業の間にポジティブな好循環を生み出し続けることこそが、持続的な成長を実現する道筋であると締めくくった。

 では、データに基づいた体験設計の具体的なアプローチとはどのようなものか?

 続いて、V会員向けのカスタマーバリュー領域を管轄する高山氏より、Vポイントが目指す将来像を含むプロジェクトストーリーが語られた。

アプリを軸に加速する「個客体験」の再設計

 高山氏が最も強調したのは、「データを基にした心地良い体験設計」の重要性だ。

高山様

Vポイントマーケティング株式会社 カスタマーバリュー・マーケティング本部 本部⻑ ⾼⼭ 匡⾏氏

 かつての共通ポイント事業においては、自社サービスの規模やポイント還元率といった「競争優位性」が最優先される傾向にあった。

 しかし現在では、一人ひとりの生活者の暮らしを高解像度で理解し、それに基づいて日常の体験そのものをアップデートすることが求められている。体験価値が向上すれば、ユーザーによるポイントの利用機会が自然と広がり、それによってさらなる顧客理解が深まるという循環が生まれるからだ。

 しかし現状では、支払いの瞬間やポイント保有数を確認するタイミングでしかアプリが開かれず、企業側からユーザーへの一方通行な関係性に留まっている。体験価値の向上と顧客理解の深化という好循環を生み出すため、同社ではアプリをコミュニケーションの中心に据え、日常的な接点を強化することによるCXの再設計に着手。その伴走パートナーとしてプレイドを選定した。

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 アプリにおけるCXの現状把握から詳細な顧客分析、そして具体的な施策の具現化までを一貫して実行する中で、高山氏は、重視している3つのポイントを挙げた。

1. 日常行動の価値が生まれる体験

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 会員との最大の接点である「購買」は瞬間的なイベントだが、非常に身近で発生頻度の高い顧客接点でもある。コンビニやスーパーでの買い物に限らず、各種サービスの利用や資産形成といった多様な購買シーンに溶け込む存在へとVポイントアプリを進化させ、常に価値を感じられる体験を提供する。

2. 継続する体験設計(体験メディア化)

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 Vポイントアプリでは、一人ひとりの会員の多種多様な行動や興味関心に合わせて機能やコンテンツの拡充(リッチ化)を進めている。会員の生活リズムや日常の文脈に合わせた最適なコンテンツを提供し、意識せずとも日常的に利用したくなるような体験を設計することで、「自然と開きたくなるアプリ」への進化を図っている。

3. 「個客体験」へのシフト

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 従来は、同一のクーポンやキャンペーンを一律で幅広い会員へ一斉配信するなど、平均化された最適化にとどまっていた。今後は、性別や年代といった基本属性情報だけでなく、日々の行動データや興味関心、その時々の状況や文脈を踏まえ、一人ひとりに最適化された「個客体験」の提供を加速させていく

「還元」から「価値創造」へ。Vポイントが描く個客体験の未来

 こうした一連の取り組みにおいて、ポイントが果たす役割が再定義されようとしている。高山氏は、ポイントの進化を次のように語る。

 「これまでのポイントは、ユーザーに経済的メリットを返す『還元装置』でした。しかしこれからは、人とサービスを滑らかにつなぐ『回遊装置』であり、日常に最適な提案を届ける『体験装置』、そしてデータと共創によって新しい価値を生み出す『価値創造装置』へと進化させていきます

 Vポイントが生活者の体験を豊かにし、企業とユーザーの新しい関係性を構築する触媒へと変わる。この経済的価値から「体験価値」へのシフトこそが、同社が目指すCX・LX再設計の本質と言えるだろう。

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 セッションの締めくくりとして両氏は、「今まさに足元で取り組んでいる施策はあるものの、まだ生活者の皆様の手元まで届ききっていない部分も多い。お客様の日常をより良くするために、これからのVポイントの進化にぜひ期待してほしい」と語り、生活者と提携企業双方に向けた意欲を示して講演を終えた。

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