「自分がユーザーになる」エン・ジャパンの三島さんがユーザーを知るために大事にしていること

エン・ジャパン株式会社で、エンジニア専門の求人サイト「エンジニアHub」の立ち上げ責任者を務めた三島 貴志さん。三島さんの今までのキャリアとユーザーを知るために大事にしていることをお伺いしました。

エン・ジャパン株式会社(以下、エン・ジャパン)で、エンジニア専門の求人サイト「エンジニアHub」の立ち上げ責任者を務めた三島 貴志さん。新卒で入社した1年目の終わりに、サービスの立ち上げ責任者に抜擢されました。なぜ、それほど早くに大きな仕事を任されたのでしょうか。その理由は、三島さんの努力とKARTEの運用によって得られた「信頼貯蓄」にありました。

三島さんにエン・ジャパンに入社する前の話から、エン・ジャパンでのキャリア、これからやりたいことについて伺いました。

大学生時代に気づいた「好きなこと、向いていること」

エン・ジャパンに入社される前はどのようなことをされていましたか?

大学時代は学生団体でイベントを開催していたり、フットサル大会の運営のアルバイトなどをしていました。

リアルな場や人が集まる場が特別好きだったわけではないのですが、こういう活動をやっていくうちに「ああ、こういうのが好きかもな、こういうのが自分に向いているかもな」と思い始めたことを覚えています。その後、1年間は個人事業主として活動していました。

どうして個人事業主を1年で区切ってエン・ジャパンさんに入社されたのでしょうか。

もともとは、就職するつもりはなかったんですけどね。とある会社でインターンをしていたときに知り合った方が、エン・ジャパンの新卒学生向けスカウトサイト「iroots(アイルーツ)」の責任者をやっていたんです。その方に自分の状況を話したら、「エン・ジャパンを受けてみれば」と言ってくれたので、受けてみました。

最終面接で「自分で何かを考えてやりたい」と話したところ、「エン・ジャパンの中で、会社のお金や人など、いろいろなリソースを使ってやってみたらどうでしょう。エン・ジャパンはいろいろな事業が既にあります。少しずつ広げていくのもいいけど、1回大きくなった形がどういうものなのか、中に入って見てからそこを目指してもいいと思う」といったコメントをもらいました。

それも確かになと思い、入社を決めました。

知識のない1年目からKARTEの運用を任され、使いながら学んでいった

エン・ジャパンに入社後は、どこの部署に配属されたのでしょうか。

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デジタルプロダクト開発本部に配属されました。エン・ジャパンではサービスごとに事業部があるのですが、デジタルプロダクト開発本部は全体の開発部分を担っている部署です。プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニア、企画職、ウェブ広告運用担当などの職種の人たちが集まっています。

配属されて最初の業務は、若手ハイキャリア向けのスカウト転職サービス「AMBI」のディレクションでした。入社直後の4月から6月まではユーザー向けに求人情報を届けるメールマガジンを書いたり、データの集計業務やユーザーの問い合わせ対応などをしていました。

7月くらいに、チームのプロダクトマネージャーの1人がKARTEの導入を決定しました。それ以外は特にやることが明確に決まっていなかったので、そこは自由にやっていいよ、と任せてもらえたんです。それが入社1年目の8月くらいですかね。

導入当時の三島さんは、テクノロジーやウェブ界隈などの知識はあったのでしょうか。

まったくないです。でも、テクノロジーへの興味はありました。

なので、知識はKARTEを使っていく中で身につけていきました。最初はKARTEをポップアップを出すためのものとして使っていたんです。そこから接客をカスタマイズするためにHTML、CSS、JavaScriptを勉強していきましたね。

プレイドさんが開催するイベントに参加すると、UXやCXって言葉が聞こえてくるじゃないですか。当時はあまり知らない言葉でしたが、そこからUXやCXに興味を持って関連する本やメディア記事を読んだり、イベントに参加して詳しい人に話を聞いたりしました。

使いながら学ばれたということですね。KARTEを使っていて苦労したことを教えてください。

設定の部分で苦労はしませんでしたが、誰にどういうメッセージを出すかを考えるところは苦労しました。これはKARTEの使い方というより、AMBIを利用してくれるユーザーの知識がなかったからです。

そこに関しては、AMBIのメールマガジンを立ち上げた先輩社員にアドバイスをもらいながら進めました。例えばトップページでポップアップバナーを出すとしたら、どういう人に、どういう内容のものを出したら注目してもらえるかといったことです。

社内の「KARTEエバンジェリスト」という役割ができて、貢献できる嬉しさを得られた

三島さんはKARTEを使い始めてから、KARTE Friends Meetupによく来てくれていましたよね。それは、社内でKARTEを使う人がいなかったから外の人たちと交流して学ぼうという考えだったのでしょうか。

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そこまで真面目じゃなかったと思いますよ。もともと、リアルで様々な人と交流できる場が好きなので参加しました。そういうリアルの場が好きというのがありますね。

参加していろいろな方の取り組みなどを聞いて、自分の中でできそうなことの選択肢が広がりました。それは施策内容だけではなく、社内にKARTEを広げるという意味もあります。

あるとき、エン・ジャパン内でKARTEの担当者を置こうという話があったんです。それで僕が担当者に選ばれて、社内における「KARTEエバンジェリスト」という役割ができました。そこからやる気になり、積極的に社内の人を連れてイベントに行くようになった記憶があります。

エバンジェリストの活動としては、社内Slackに相談チャンネルを作って相談に乗ったり、月に1回くらいの頻度で社内勉強会を始めました。プレイドさんを招いて勉強会をしたこともあります。事例共有の勉強会が多かったですね。

エバンジェリストという「役割」ができたのは、大きかったんだろうなと思いますね。会社に入って1年目は、できないことが多くて教わることばかりの毎日の中、自分がようやく他人に貢献できる何かができたという感じです。貢献による嬉しさを得られましたね。

KARTE Friends Meetupでは同業の方と意見交換をされていたのでしょうか。

同業の方もですけど、同業以外の方と話せるのもすごく面白いなと思っています。同じようにKARTEを使っていても、こういう発想になるんだとか、そういうところでつまずくんだといったことがわかりました。

普段、同業の方と情報交換する機会はありませんので、同業者の方と話す機会もMeeutpくらいです。社内でKARTEをどうやって展開するかとか、社内でうまくいかない話の共有などを赤裸々に共有できるのはいい機会だなと思います。

KARTE Friends Meetupで印象に残っている人や事例はありますか。

特定の個人だと、JTBの小野さんは強烈に印象に残っています。事例でいうと、ある会社の方がKARTEの社内共有会を紹介していただいていて、それはいいなと思って実際に僕も実践しました。他にもマイページをほぼKARTEだけで作ったという事例を紹介されていた話も記憶に残っていますね。KARTEの使い方の限界を超えてきた事例紹介だったので、覚えています。

KARTEは「インフラ」だ——日常的なサイト改善から、「リアルタイム開発」まで。JTBに学ぶ、広範なKARTE活用術

未経験からKARTEを使いこなすには?新卒・知識ゼロから2年間でKARTE運用の成果を出した道のり|KARTE Friends Meetup vol.22

信頼貯蓄によって入社1年目の終わりにプロダクトの責任者に抜擢

こちらが想定している以上の活用をされる方もたまにいらっしゃいますね。現在担当されているエンジニアHubの担当になったのは、いつからでしょうか。

入社して1年目の終わりから、「エンジニアHub」の責任者になりました。自分から手を挙げて、任せてもらえることになりました。2年目に準備を進めて、3年目の夏にリリースしています。

入社1年目から任せてもらえた理由の1つに、KARTEを触っていた経験があったと思います。KARTEの運用成果もあって、社内の新人賞に選ばれたんです。新人賞という成果をあげたことで、一定の信頼貯蓄ができていました。一度成果を出したことで、任せてもらえました。

KARTEの成果で新人賞ですか。どのような点が評価されたのでしょうか。

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1年目の8月くらいからKARTEを触り始めて、12月くらいにはKARTEが存在する前提での開発案件をおこないました。そこで成果が出たのです。ちょうど社内では、勉強してスキルを高めることが重視される時期だったと思います。誰も教えてくれる人がいない中でMeetupに参加したり勉強して使えるようになり、成果を出したことを評価してもらえました。

部署としては初めて社内の社長賞・新人賞に選ばれたんですよ。僕たちの部署は施策の成果が出るのが遅いから、新人賞に選ばれるのは難しいとされていました。

エンジニアHubを準備している間は、KARTEを使う機会は減っていたのでしょうか。

いえ、KARTEも継続的に触っていました。ちょうどそのころ、エン・ジャパンのいろいろなサービスにKARTEが導入されたんです。僕がKARTEエバンジェリストをしていた時期だったので、社内のいろいろな人から相談を受けていました。

まだエンジニアHubが世に出ていない状態で、日々の企画業務をしていてもフィードバックがないつらい状況の中、KARTEを触ることでリフレッシュになりました。

エン・ジャパンの採用サイトのインタビューで、「ターゲットであるエンジニアについて何も知らなかったことに危機感を覚えた」とお話されていました。相手を知らないとサービスを作りづらいと、その時に痛感されたそうですね。

自身も新卒2年目ですし、エンジニアの方のキャリア観や働き方についてはイメージできないことが多くて、営業の人からいろいろな質問をされてもフワッとしたことしか返せない状態でした。

このままではヤバいと思い、自分が得意なリアルの場に行きました。PHPカンファレンスやPWA Nightなど、エンジニア向けのイベントに参加したんです。話の8割くらいわからないですけど、わかるところを頑張って聞きました。

そこでは情報というよりも、いわばエンジニアの好きな「ノリ」を知っていきました。例えば、こういう言い回しとか、こういう表現が嫌いなんだとか、こういうのがネタにされやすいんだとか。エンジニアの雰囲気を感じられたので、本当にやってよかったです。

事例を中心にウェブメディアから情報を収集

普段の情報収集について伺います。テクノロジー周りなど、情報のキャッチアップはどうされていますか?

ログミーTechCodeZineIDEAS FOR GOODXDなどのメディアを見ています。
他にもメジャーどころのサイトをRSSで集めて、タイトルを見て興味あったら開いています。最新のテクノロジー情報というよりは、実際の事例系がメインですね。

IDEAS FOR GOODやXDは、テクノロジーの活用やデザインの力などで社会課題の解決や、新しい視点から何かをするという事例があるので好きです。仕事のためというよりは、半分趣味で見ているかもしれません。

テクノロジー以外だと、リディラバジャーナルやNHKも見ています。大学時代に学生団体にいたことで、社会問題に関心を持ちました。社会問題に向き合っている人たちが周りにたくさんいて、その分野で起業した人もいます。そういう人たちと触れ合う中で、関心を持つようになりました。

将来的には社会問題に関する分野で起業したり、事業をつくることも考えているのでしょうか?

どうですかね……。じつは、大学生時代にすごく後悔したことがあるんです。周りに素敵な活動をしている人がいっぱいいるのに、僕ができることは何もありませんでした。応援したいのに、いてもいなくても変わらない存在でした。

ただ、今の僕にはさまざまなスキルがあります。そういう素敵なことを考えている人が周りにいたときに、自分が加わることで何か貢献できるのではないかと思うんです。昔は何もできなかったけど、今ならできます。

ユーザーを知るために自分がユーザーになる

三島さんがCXやオンラインの体験を良くしていく中で、普段意識されていることや実行していることを教えてください。

自分自身が転職者になりきったつもりで自分の運営しているサイトを触ってみることは多いです。それと今、社内のエンジニア採用にも関わって実際にスカウトメールを送ったり、媒体を利用したりしているんです。人事側の気持ちに立ってエンジニアHubを使っていると「ちょっとこれは使いにくいな」といったことに気づけて、すぐにそれを改善できます。

僕の場合の「ユーザーを知る」は、ユーザーに聞くというよりは「自分がユーザーになる」ことです。これを大事にしています。

これから新しくウェブやデジタルマーケティングを担当する方に向けて、アドバイスをください。

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何かしらの強みを持ってほしいです。何かにおける第一人者になると、それに関する情報がほしい人から情報をもらえるようになったり、成果を残しやすくなります。成果を残すと、他のプロジェクトにアサインをされやすくなります。

大きな組織だと、どうしても埋もれていきがちです。でも、何かのツールであったり、スキルがずば抜けていれば、やりやすいうえに手に入るものも大きいと思います。ツールやスキルはメジャーなものでなくてもいいです。特定のところだけでも頼られるので、そこを目指していけるといいのではないでしょうか。

例えばTikTokに詳しいとか、最近だとThreadsに詳しいとかです。Threadsはリリースされたばかりのサービスなので、他の人たちは知識がありません。そうすれば、1年目の人であっても何十年もマーケティングの仕事をしている人に対して語れます。

今後、三島さんのキャリアとしてどのようなキャリアを考えていますか。今後のやりたいことや野望を教えてください。

プロダクトマネジメントスキルを含め、専門性を伸ばしていきたいです。そのうえで、何でもできるようになっていきたいですね。

まずは目の前の業務に向き合いつつ自分がいいなと思う人が現れたときに、しっかりと貢献できる人になりたいです。

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