「EC」という言葉すら知らない状態でEC担当への配属。パル名嶋さんに聞くEC担当としての成長の軌跡

パルに新卒入社した名嶋 恵佑さんは、ECという言葉すら知らない状態でECを担当する部署へ配属されました。いまではKARTEを使いこなし、自社ECサイト / アプリの「PAL CLOSET(パルクローゼット)」を担当。これまでの個人のキャリアや成長について、名嶋さんにお話を伺いました。

「CIAOPANIC(チャオパニック)」「Kastane(カスタネ)」など40以上のブランドの製造や販売、卸をおこなう株式会社パル(以下、パル)。
パルに新卒入社した名嶋 恵佑さんは、ECという言葉すら知らない状態でECを担当する部署へ配属されました。いまではKARTEを使いこなし、自社ECサイト / アプリの「PAL CLOSET(パルクローゼット)」を担当。2022年2月期におけるPAL CLOSETの売上高は、前年比で55.3%増の115億5400万円と成長を続けています。

これまでの個人のキャリアや成長について、名嶋さんにお話を伺いました。

アルバイトに明け暮れた学生時代

パルに入社される前はどのようなことをされていましたか?

地元の福岡で大学生をしながら、アルバイトに明け暮れていました。勉強はほとんどしていなかったですね。2つの居酒屋を掛け持ちして、どちらもホールの仕事をしていました。それぞれに特徴が違っていて、1店舗は400席くらいの大きな居酒屋で、店内で釣りができるんですよ。もう1店舗は、10席しかない和食のお店でした。

同じ居酒屋でも、ホールスタッフとしての接客方法が違っていて面白かったです。大きな居酒屋では、客席全体を見渡していろいろな席を回らないといけないので、1回の接客でどれだけお客さんに溶け込めるかが大事です。小さな居酒屋では、目の前のお客さんにじっくり向き合っていました。お客さんと話す機会が多いので、話をたくさんしていましたね。

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規模の違う2つの店舗で接客の経験をするのは貴重ですね。1つの店舗だけではなく、2つの店舗でアルバイトしたのはなぜですか?

大きな店舗で働いていたときに、友人から小さいほうの店舗で一緒に働こうと誘われました。2店舗は忙しいだろうから大きいほうは辞めようかなと思いましたが、実際に働いてみたら意外と忙しくなかったんです。それで両方で働くことにしました。どちらの居酒屋も、働いていて面白いポイントが違ったので続けましたね。どちらも楽しかったです。

居酒屋でのアルバイト経験が現在の接客スキルにつながっているのかもしれませんね。新卒でパルに入社されていますが、就職活動はどのように進めましたか?

アルバイト以外に興味を持っていたのが洋服だったので、アパレル業界で働きたいなと思って就活をしました。ただ、アルバイトのしすぎで、卒業できるかどうかという状態だったんです。まずは卒業しないといけないので、就活しないで学校に通っていました。それで就活に出遅れてしまい、大学4年生の6月くらいからはじめましたね。もうその時点で新卒採用を終了している企業も多かったです。

そんな中、パルはまだ新卒採用をしていました。実を言うと、パルのブランド「CIAOPANIC(チャオパニック)」は知っていましたが、面接するまではこれほど多くのブランドを抱えているとは知りませんでした。
最終面接を大阪本社でおこなったのですが、あまりうまくいかなかったので「絶対落ちた」と思いました。ヤケクソになって、甲子園球場で夏の全国高等学校野球選手権大会を見て帰ったのを覚えています。でも結果は合格で、パルで働くようになりました。

「EC」という言葉すら知らずにEC担当部署へ配属

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パル入社後、EC担当になるまでの経緯を教えてください。

新卒で採用されて、最初からECを担当するWEB事業推進室に配属されました。基本的に新卒入社する人は店舗への配属となりますが、同期が270人いる中で、なぜか僕だけが店舗ではなく本部に配属でした。
もともとウェブに詳しいわけでもなく、「EC」という言葉すら知らない状態でした。パソコンにもそれほど触ったことがなくて、エクセルすらわからないレベルです。EC運営に必要なスキルはまったくありませんでした。
そんな僕がどうしていきなりWEB事業推進室に配属になったのかは、未だによくわかっていません。

配属後、3か月間は店舗で研修として働いていました。当時は洋服店での接客をしたことはありませんでしたが、やっているうちに楽しくなりましたね。

お店での研修を終えて、WEB事業推進室に戻りました。ECについての知識やバックグラウンドがない状況で、どのように仕事を覚えていったのでしょうか?

最初の約半年は、ECサイトの運用チームがおこなっている商品登録の仕事からはじめました。商品の撮影からはじまり、商品登録をして商品ページを作るといったECの基礎となる仕事です。その後に2-3か月の間、売上管理の仕事をしました。そこでエクセルを覚えました。この頃は慣れない仕事に必死で、お客さんのことを考える余裕はなかったです。お客さんに向き合うというよりは、パソコンと向き合っている感じでした。

KARTEを使い始めたのは、入社して2年目になってからですね。

ECサイトの仕事を始めてから最初におこなったのは、会員登録を促す施策です。上司から「名嶋君がPAL CLOSETに初めて来て、会員登録しようと思うタイミングを考えてみて」と言われました。サイトを隅々まで触ってみて、会員登録のタイミングについて考えました。

商品を買い物かごに入れて、買おうと思ったタイミングで会員登録しないといけない場合、「面倒くさい」と感じると思います。そのタイミングで何か一言あったらいいのでは? と考えました。そこで、クーポンをポップアップで表示して、会員登録するメリットを加えたんです。これが自分でおこなった初めての施策で、上司から「いいね」と言ってもらえたことを覚えています。

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そこからセグメントの幅を広げ施策を試していきました。週に3回サイトに来たけど何も買っていない人にクーポン表示したり、クーポンの金額を500円と1000円でABテストをしてみたり。1000円のほうが効果は高いと思っていましたが、実際はそれほど変わらず、なぜだろうと考えました。
顧客の気持ちで考えてみると、買いたいときにクーポンをもらえたら500円でも1000円でも嬉しいのではないかと思ったのですね。そこでクーポンの金額ではなくてタイミングが大事なのかもしれないと考え、次の施策ではより伝わりやすい方法とタイミングを模索し始めました。

ウェブ接客も店舗の接客と同じです。店舗の接客でお客さんがお店に足を一歩踏み入れた瞬間に「何かお探しですか?」とは言いません。もし、そのタイミングで声をかけられたら、お客さんは嫌になってしまいますよね。そのままお店を出てしまうかもしれません。

お客さんが店内を回っていて、同じところを何度か見ているときが気になっているタイミングです。そのときにアクションをするのがいいと思います。ECサイトでも同じで、ポップアップを出すタイミングがあります。表示の仕方もいろいろ考えました。スマホ画面のすべてを覆うポップアップはやめようとか、指が触れて誤タップしない位置にしようとか。
ノイズにならない「さりげなく」が大事です。サイト上でも、店舗で接客するような意識でいます。これは店舗で働いた3か月の経験が活きています。

思想のベースは学生時代のアルバイト経験、ECやウェブの知識のベースはKARTE

名嶋さんがKARTEを触り出したのは、入社して2年目の早い段階からです。KARTEや当社の印象について教えてください。

2016年のKARTEの1周年パーティーに参加したので、ほぼ初期の頃から触っています。もう6年くらい触っていることになりますね。「KARTEを使えば何でもできる」と教えてもらいました。すべてを試したわけではありませんが、実際にやりたいと思ったことはできています。プレイドさんの社員のみなさんは、本当に全員がポジティブです。なんでこんなに明るい人ばかりなんだろうって思いますね。
最初は私たちの担当の方だけがそうなのかなと思ったのですが、ほかの方を紹介していただいても、みなさんポジティブで熱量が高いという印象です。

名嶋さんには長年にわたってKARTEをご利用いただいていますが、名嶋さんの成長にKARTEは役立っていますか?

めっちゃ役に立っています! お世辞ではなく、ECの知識はすべてKARTEがベースになっています。思想のベースは学生時代のアルバイト経験で、ECやウェブの知識のベースはKARTEです。
KARTEを使えるようになったことで、他のツールに対する理解度も高まりました。ツールの仕組みがわかったので、新しいツールを使うときでもすんなりと使えるようになりましたね。

課題解決を繰り返すことで、いつの間にか理解できるようになっていた

KARTEを含めて、ECサイトの運営に必要な知識をどのように学びましたか?

KARTEで自分がやりたいことを実現するためにベーシックな機能だけでは満足いかず、HTMLやCSSを触りカスタマイズするようになりました。ただ、変数のところで壁に当たり、ユーザー変数やスクリプトのところでさらにつまずきました。
そうしたわからないポイントを調べてリリースすることで、次からはクリアになっていきます。でもそうすると、新しくつまずくポイントが出てきます。それをまた調べて解決することを繰り返していきました。

つまずいたポイントに、データの可視化があります。データの可視化に部署で取り組むことになり、KARTEのデータを活用しようということになりました。

KARTEのデータをBIツールにつないで可視化しようとしてみたのですが、自力でデータを扱えずうまくできなかったんです。できるようにするために自分でSQLの基礎を覚え、「KARTE Datahub」での可視化のしやすいデータの持ち方やシステムの都合に合わせたデータの持ち方なども一緒にアドバイスしてもらいました。知識を得てシステムとフロントが連携していく様子が見えてきたことで、これまで作ってきたセグメントやトリガーの設定が間違っていたことに気がつきました。理解していないままやってしまっていたんですよね。でも、出発点であるサイトの課題解決を繰り返しているうちに、いつの間にか理解できるようになっていました。

その後、価格変動通知なども実装してもらい、運用している中で困ったことも何回かありましたが、自力で修正できたので覚えておいて良かったです。知識が自分を助けてくれました。

他社のサービスを利用して気づくことがある

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ウェブやECの世界は、どんどん進化しています。最新の情報をキャッチアップするために気をつけていることを教えてください。

正直言うと、あまりないんですよね。EC関連の記事を読んだり、イベントに行くこともありますが、頻繁にではありません。言い方は悪いかもしれませんが、あまり関心がないです。

ただ、プライベートな時間に他社のサービスを利用してみて「なんだろうこれ?」と気づくことは多いですかね。「これ、必要だな」と思うタイミングで聞いたり、調べたりすることが多いです。

アパレル業界のみなさんで集まったり意見交換をする機会はありますか?

それがまったくないんです。私も業界に入る前は、アパレル業界の人同士でつながっているんだろうなと思っていましたが、意外とそうではありませんでした。店舗であれば、同じショッピングモールに出店している別店舗とのコミュニティはあります。でも、本部だとほとんどないですね。

他社を知ることで自社の取り組みにも活きると思うので、機会があったら交流していきたいと思っています。

ウェブやEC以外の情報収集はどうされていますか?

ファッションについては、InstagramやZOZOTOWNをスマホで見て情報収集をしています。
昔はファッション雑誌が好きでよく読んでいましたが、紙媒体は読まなくなりました。気づけばそうなっていましたね。
それ以外は朝に少しテレビをつけておいたり、電車でLINE NEWSを読むくらいです。Twitterも見ることはありますが、圧倒的にInstagramを見る機会が多いです。

CXのことは気づいたら無意識に考えている

仕事以外だと、普段は何に時間を使うことが多いですか?

野球が好きで、土曜日の朝に草野球をして、帰ったらプロ野球を見ています。福岡出身なので、もちろん福岡ソフトバンクホークスファンです。土曜日は大体、野球漬けですね。日曜日はゆっくりとテレビを見たり、サウナに行ったりしてリラックスして過ごしています。

休日は仕事のことを全然考えないように意識しています。でも普段の生活でECを利用すると、つい仕事モードになってしまいますね。ホークスのECサイトでよく買い物するんですけど、買い物を楽しみつつ仕事の視点で見てしまいます。これは他のECサイトでも同じですね。いつ、どこにヒントがあるかわかりませんから。

普段CXを考えたり、ECサイトの体験を良くしていく中で考えていることを教えてください。

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気づいたら無意識に考えています。普段の生活の中で、自分がお客さんの立場になったときに困るタイミングがあるんですよね。それが自社のECサイトでも同じ状況になっていないかな、と心配になります。実際、その心配が当たっていることも多々あります。

これから新しくウェブ、EC担当、デジタルマーケティングを担当することになる方に向けてのアドバイスをください。

サイト上の何が問題なのかを見つけて、それをどう解決していくかが先にあります。解決するための方法としてKARTEのようなツールの使い方を覚えて、繰り返し対応していくことが大事です。
お客さんが困っていないのであれば、ツールを使う必要はありません。でも、そういうケースはほとんどないので、やることは無数にあります。お客さんのためにやったほうがいいことをピックアップして、改善し続けなければいけません。こういうマインドが大事だと思います。

今後、名嶋さんとしてどのようなキャリアを考えていますか。今後のやりたいことや野望を教えてください。

これまでは、先のことは考えず成り行きでやってきましたが、いままでやってきたことは間違っていないと思います。
課題として、いまのチームではツールごとに担当が決まっているので、KARTEについて知識を持っているのは自分だけの状態です。やったほうがいいと思うことや幅広く使える機能は、別の担当者でもコピーすれば使えるようにしていますが、まだKARTEの良さや使い方を伝えきれていません。

KARTEを使い始めて2年目に、マニュアルを作って部署内で勉強会をしました。ただ、1回きりで終わってしまいました。CXを良くするため、どうしたら部署としてKARTEを使いこなせるようになるかを考えています。相当な可能性を秘めているはずですけど、なかなかそこを切り開けていません。

自分1人でやるよりもチームみんなでやったほうが、圧倒的に成長速度が早くなると思うので、今後は取り組みをチームに広げていきたいです。

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