「KARTEは最強の人材育成ツール」。社内で”魔法使い”と呼ばれるJTB小野さんに聞く成長のコツ
自分自身で試行錯誤をしながら成長を続け、中途入社したJTBでは何でもできることから"魔法使い"と呼ばれるほどの存在になった小野さん。人に向き合うことになった原体験やキャリアなどのお話を伺いました。
株式会社JTB(以下、JTB)でホームページ戦略部のグループリーダーを務める小野 道隆さん。ウェブに関するバックグラウンドがない状態からキャリアをスタートしました。自分自身で試行錯誤をしながら成長を続け、中途入社したJTBでは何でもできることから"魔法使い"と呼ばれるほどの存在に。
そんな小野さんに、人に向き合うことになった原体験やキャリアなどのお話を伺いました。
何をしたいのかを考え、模索した学生時代
小野さんの学生時代は、どのようなことをされていましたか?
大学生時代は、理学部で化学を学んでいました。研究室で真面目に実験をして、失敗ばかりしていましたね。ただ、それがあまり肌に合わなかったというのもあって、あまり真面目に勉強した記憶がありません。好きな本をがむしゃらに読んだり、友だちと遊んだりしていました。
学生時代は自分が一体何をしたいのかを考え、いろいろと模索していました。中二病の延長線上の自分探しに近いと思います。大学3年生になると、就職活動を始めるじゃないですか。一般的に理系の学生が行くような会社には興味がなくて、教育系の会社がたまたまピンと来ました。これを追求していけば、何かヒントがあるのではと思って教育系の会社に入社しました。
教育系の会社にピンと来たそうですが、それまでは教育に関することをしていたのでしょうか?
家庭教師のアルバイトを大学1年生の頃から卒業するまでずっとやっていました。家庭教師は時給が高いからという理由で始めたのですが、やっている間に楽しくなってきました。そこから教育系が自分に合っているのかなと多少感じていた気がしますね。
なるほど、家庭教師が楽しいと思うようになったのはどのようなきっかけからですか?
指導している中で、ある子が変わっていくのが見えたことですね。最初はあまり勉強に興味がなかったのですが、火がついて自分で勉強するようになりました。質問の質も変わりました。
「何かがきっかけで火がつくことってあるのだな。どうやったらそうなるのだろう?」と興味を持ち始めて、自分なりに試行錯誤してやってみました。人に向き合って、その人に何をしたらはまってくれるのかを考えるのがすごく楽しかったですね。
その他にもアルバイトなどをされていましたか?
個人でやっているような小規模な飲食店でのアルバイトをやっていました。この時に、お客さんと関わって楽しんでもらえるようなサービスは、面白そうだなと思ったのです。人と関わるのが割と好きなのですよ。人と関わるという面で、教育系と多少つながりがあったのかもしれませんね。
理系の実験よりも、人と向き合ってコミュニケーションを取るほうが自分に合っていると感じたことが、今のキャリアにつながっている気がしますね。
ウェブの黎明期にウェブ担当に
人に向き合うという点で、そうした原体験があったわけですね。大学卒業後に教育系の会社に入社してからは、どのようなキャリアを歩んできたのでしょうか?
入社してすぐにウェブ系の仕事を任されました。2007年に入社したので、まだウェブの黎明期みたいな感じです。ホームページはあるけど集客方法もわからないし、サイトのUI・UXといった考え方もない時代でした。
いきなりウェブ担当と言われて、どうしたものかという感じでしたけど、とりあえずやるしかありません。そうして任されたのが、ある意味よかった気がします。新入社員という短いキャリアでも、重要な仕事を任されました。タイミングがよかったのでしょうね。
新入社員でいきなりウェブ担当はすごいですね。ウェブ関連のバックグラウンドがない中でいきなり担当するように言われて、どう学んでいきましたか?
社内に詳しい方もいなかったので、自分で試行錯誤しながら進めていました。業務内容は外部の協力会社への依頼をディレクションしたり、たまにコードを触ったりするウェブの何でも屋みたいな感じです。でも、あまり専門的なことだとわからないから、協力会社の方とコミュニケーションしたり、プロジェクトを組んだりと試行錯誤してやっていました。炎上したこともあったのですけど、とりあえずなんとかやっていきました。
JTBへ入社し、旅行商品の販売数を増やす仕事をすることに
その経験を活かしてJTBへ転職されたのでしょうか?
その後、商社でウェブ関連の経験を経て、株式会社i.JTBに入社しました。当時JTBは分社化していて、ウェブ関連の事業は株式会社i.JTBがおこなっていました。
そうなのですね。入社当時の役割とチーム体制を教えてください。
入社した2016年からの約2年間、国内向けの旅行商品をサイトで販売する役割でした。JTBには「商品」という考え方があって、旅行のことを旅行商品と呼びます。旅行商品の仕入れ担当者とコミュニケーションして、サイト上でアピールして販売数を増やしていました。当時のチームは、私と上司と派遣社員の方の3名体制でしたね。上司がある程度の権限を持っていたのですが、私が入社してから1年くらいで退職しました。その後は私のやりたいようにやっていましたね(笑)。
当時、JTBのウェブサイトにはどのような課題がありましたか?
山ほどありすぎて語り尽くせないです。代表的なことでいうと、UIやUX、CXという概念は、ほぼありませんでした。課題があるという認識はあるのですけど、どこから手をつけるかは決まっていませんでした。とりあえずA/Bテストをしてみて、有意差のあるものを配信していこうくらいの感覚しかなかったですね。
ユーザー体験をどうやって良くしていくとか、デザイン性の統一といった考え方がなかったので、自由にやっていました。
そのときおこなったA/Bテストはどのようなことでしょうか? 既に利用していたツールやサービスもありましたか?
GoogleオプティマイズでできるレベルのA/Bテストをしていましたが、他に何かSaaSを使っていた記憶は、ほぼありません。Googleアナリティクスを使って分析して、GoogleオプティマイズでA/Bテストをしてという感じです。SEOを多少かじって、SEO系のツールを見たりしたくらいですかね。
上司が決めたKARTE導入。推進担当として導入を進めることに
KARTEを導入したのはいつ頃ですか?
2019年の3月です。当時の上司が結構イケイケの人で、「KARTE導入するから、頼むよ」と言われました。上司がほぼ導入を決めた状態で、私が推進担当といった感じです。最初は「マジか!」と思いましたが、とりあえずやるしかないかと思い進めました。
上司の方に導入を決められた状態だったのですね。そこからオフィスに来ていただいたり、イベントに参加していただいたりしました。そのときのプレイドの印象はいかがでしたか?
みなさんすごく気さくな印象でした。Meetupにも呼んでいただいて、ビールも美味しかったです(笑)。プレイドさんのオフィスに行くのが楽しみでした。
Meetupでは、他社さんの細かいノウハウというよりも、どういうモチベーションでやられているのかに興味がありました。「この会社さんは何をやろうとしているんだろう?」「その根幹や熱量は何だろう?」といったことを見ていました。
個人としてではなく、チームとして連携してKARTEを使っている会社さんは特に印象に残っています。チームのみんなが一体感を持ってやっていくためにはどうしたらいいんだろうと考えるきっかけになりました。
Meetupに参加し、他企業の方々と交流する様子(2019年)
Meetupに参加し、他企業の方々と交流する様子(2019年)
小野さんがKARTEを利用して感じた最初の印象を教えてください。
KARTEを知るにつれて、奥が深くて難しいと思いました。カスタムイベントタグや埋め込みなどは、JavaScriptがわからないとできません。最初の印象として、これができたら世界が広がるのだろうなと思いました。
そこからいろいろなことを学びましたね。たとえば、カスタムイベントタグでコンバージョンタグを設定するために、Googleタグマネージャーを学びました。ウェブで検索したり、勉強をしながら自分で設定していく中で身につけていきましたね。
ポップアップの乱立が起き、ルールを作る
小野さんがKARTEを使い始めた頃に苦労した点を教えてください。
チームメンバーが増えて、5-6人がKARTEを使っていたんですけど、みんなポップアップを使いまくるんですよね。簡単にポップアップができるからそれが楽しいみたいで、気づいたらポップアップだらけになってしまったんです。KARTEを推進する立場にある自分としては、みんなが使ってくれてうれしいけど、ルール作りをしないとマズいなと思いました。
ルール作りのために社内で打ち合わせをしましたし、プレイドのみなさんに相談をして一緒に考えていただきました。
今はどのようなルールになっているのでしょうか?
試行錯誤を経て、今はポップアップを乱立しないのと、どこに出すかを関係者で同意を得てからするようにしています。あとは、ポップアップを同時配信しないとかですね。それだけでも、だいぶ違います。
KARTEを使い慣れてきた人が社内に多くいるので、最近ではポップアップというよりは開発で使うケースのほうがインパクトを出せるようになってきました。
開発で使うケースもあるのですね。具体的にはどのような使い方をされていますか。
ちょっとした機能開発ですと、ワンクリックでクーポンが使えるようにするような開発をKARTEを利用してやっています。
最近ですと全国旅行支援の大型キャンペーンに急遽対応する必要が出てきたのですが、KARTEを使うことで機能追加して対応しています。急ぎで対応しないといけない時に、システム自体をリアルタイムに開発することはどうしても難しいのです。
実例でいうと、お客様からの申請を受け付ける機能をKARTEで実装した経緯があります。KARTEで申請ボタンを表示し、それをクリックしてもらうことで「KARTE Datahub」のアクションテーブルにデータが入り、申請対象として認識できます。そのリストを活用したり、CSVをダウンロードして申請された方の照合も可能です。そういった仕組みの構築にKARTEを活用しています。
複数人でKARTEを活用されていますが、KARTEを触るメンバー同士で定例会議があるのでしょうか?
最初のころは定例会議をしていたのですが、今はほぼしていません。メンバーがKARTEに馴染んだのでトラブルがなくなってきていますし、トラブルがあった時点で検知して止めるようになっています。定例会議をする必要がないレベルまで習熟してきたと思います。
社内の情報共有としてはSlack内にKARTEチャンネルがあり、そこにはKARTEを利用する関係者が入っています。KARTEに関する社内ドキュメントもまとめており、ルールやセグメントの設定についてなどの最低限のルールはKARTEを利用する前に見る流れになっています。
KARTEのイベントで名刺交換をした方と一緒に仕事をすることも
副業も始められたと伺いました。どのようなことをされているのでしょうか。
まずはGoogleアナリティクスを使った分析から始め、今ではフロントエンドの知識をかけ合わせて一気通貫での課題解決のお手伝いをやっています。KARTEによってフロントエンドの知識を身につけられたことで、副業の範囲を拡張させています。
副業のクライアントさんとは、どこで出会うのでしょうか?
以前所属していた会社から声をかけてもらったり、KARTEのイベントで名刺交換をした方からご相談をいただいたこともあります。とはいえ、本業が終わってから副業をするので、積極的に営業はしていません。本業8割、副業2割くらいの割合です。
KARTEのイベントもお役に立っているのですね。副業を始めて、キャリアに変化はありましたか?
本業だけだと、どうしても自分の領域を意識しがちになります。フロントエンドエンジニアなら、それが自分の仕事領域となりがちです。でも、副業でクライアントさんとやり取りをすると、1つの領域を求めているというよりは、課題を解決したいわけです。その課題を解決するために何をすべきかを総合的に考える必要があります。この視点は本業にも生きている気がしますね。
新しいツールや知識をキャッチアップしないと、クライアントさんにコンサルティングできないことがあるので、学ぶようになりました。そういう意味でもプラスの部分は多いです。
本業が忙しい中で副業を両立するために、何がエネルギーになっているのでしょうか?
相手に満足してほしい、自分の力でどこまでできるのかという気持ちがあります。縁があってお仕事をいただいているわけなので、最大限何とかしたいという想いが強いです。終わった後の達成感もありますし、喜んでいただけて「また次のお仕事をお願いしたい」と言われると非常にうれしいですね。自分自身の生きがいに近いです。
考える習慣をつけてもらうため、答えは教えない
今はチームの体制がしっかりしてきていると思うのですが、小野さん以外にもKARTEを使いこなせる人が増えてきているのでしょうか?
そうですね。現在、私はエンジニア寄りの仕事をしていて、フロントエンドグループのグループリーダーをしています。今、ちょうど新しいメンバーが入って半年くらい経ちました。最初はJavaScriptも触れなかったのに、最近では自由にA/Bテストもスクリプトでできるようになってきています。少しずつ高度な開発案件もお願いできると思います。
教育に関してはほとんど放置していますね。業務では自分でガンガン開発せざるを得ない状況です。「こんなのできるわけない」という感じになるのですけど、やらざるを得ません。そうすると、めちゃめちゃ勉強するんですよ。わからないことはSlackで聞いてもらったり、打ち合わせをするのですが、答えは教えません。ヒントだけ出して、自分で考える習慣をつけてもらいます。自分で考えたほうが楽しいじゃないですか。
KARTEは他人のコードを見やすいので、私のコードを見てもらって参考にしてもらいつつ、自分で考えながら少しずつスキルを上げてもらうこともあります。
ウェブ、テクノロジー周りの進化のスピードはとても早いと思いますが、どのように最新のキャッチアップをされていますか?
網羅的ではなく、必要なときに情報を取りに行きます。先回りしてやらないといけないことを学んでおいて、機会があればアウトプットしまくる習慣を作っていますね。
こうした情報源はウェブを検索するところから始めて、深い情報がないときはオンライン学習サービスを利用します。それをひたすらインプットして、可能な限りアウトプットする感じです。
小野さんが仕事以外で意識してやっていることを教えてください。
コーヒー豆の焙煎を10年くらいしています。週末の朝は、大体焙煎から始まりますね。まとめて1週間分のコーヒー豆を焙煎しています。焙煎するだけで気持ちが変わっていくんです。香りによってリフレッシュされるので、週末の朝にリセットされてオンからオフに切り替わります。そのコーヒーを毎朝飲むことで気持ちが切り替わるので、大事にしている習慣です。
自分でお客様の声を拾って、分析して、実装したい
小野さんが普段CXやオンラインの体験を良くしていくために考えていることを教えてください。
社内のメンバーやプレイドさんとコミュニケーションする中で得られることが多いです。うちの課長が情報設計のプロなので、いろいろなサイトの特徴を知っています。課長とコミュニケーションする機会が多いので、そこからインスピレーションを得られる機会が多いです。プレイドさんとの定例会議でも、そういう機会が多いですね。
最近「Moment Reaction」を使わせてもらっていますが、お客様の声を起点にサイト改善のPDCAの起点とすることができたらいいなと社内でも話してます。すべての声に反応するのではなく、同じようなリアクションが10件来たらSlackに通知を送り、そこでお客様の声を拾ってみるみたいなことを話しています。こういう仕組みができたら面白いですよね。
結局CXを考えるというのは、お客様の視点にどれだけリアルタイムに立てるかということだと思っているので、社内やプレイドの方と会話しながらお客様について考える機会というのは、すごく大事なんだなというのを最近改めて思いました。
やっぱり開発者がお客様の声をキャッチする機会ってなかなか少ないと思うのです。別の部門からお客様の声を聞く機会はあるんですけど、直接拾いに行って活用する機会はなかなかありません。
私は自分でお客様の声を拾いに行って、分析して、実装したいのです。そのほうが成果が出ると思います。数字にコミットしたくなるし、PDCAがうまく回って成果も出やすいし、結果としてCX向上につながる気がしています。
これから新しくウェブやデジタルマーケティングを担当する方、KARTEの担当になる方に向けてアドバイスをください。
あまり自分の役割に縛られずにどんどんKARTEを使ってみると、面白いと感じる方がたくさんいるはずです。やっていくうちに違う世界が見えたり、奥深さを知って感動も生まれます。KARTEを使えば、成果を出すのはそんなに難しくないと思います。
今後、小野さんのキャリアとしてどのようなキャリアを考えていますか。今後のやりたいことや野望を教えてください。
KARTEを使って副業をする人が増えてほしいです。私のように、会社に所属しながら個人で事業をするパターンでもいいでしょうし、独立してもいいと思うんです。それでプロとしてお互い仕事しあえたら面白いでしょうね。
私はKARTEを「最強の人材育成ツール」だと思っているのです。JTBの中でも人材育成のツールとして使わせてもらっている部分もあります。そうして育った方が増えて、一緒にお仕事できたらうれしいですね。