お客様のためにやりたかったことを実行できる!ワコールのCXデザイン部が語るKARTEの楽しさ

今回スタートするコーナー「KARTE部おじゃまします!」では、KARTEを活用するチームや部署の方々が、顧客理解を深めたり、施策を展開したり、メンバー同士で議論したりする際の「楽しさ」にフォーカスし、よりよい顧客体験の創出を図る取り組みをご紹介します。第一回はワコールでKARTE活用を率いる3人に、顧客への向き合い方やKARTEを活用する楽しさや達成感、導入によるチーム内外の変化について語り合ってもらいました。

1946年に創業した国内大手下着メーカー、株式会社ワコール。近年はデジタルを活用したCX向上にも力を入れ、実店舗とECの顧客データ統合や分析、サイトやアプリなど顧客接点の拡充を進めてきました。

取り組みを推進するCXデザイン部では、2021年7月からKARTEを導入。ワコールの運営する複数のWebサイトにて様々な施策を実行しています。

KARTEの活用を率いるのは、CXデザイン部の川勝和美さん、諸岡千月さん、武村美岐さん。ワコールにて10年以上デジタルコンテンツの企画・開発に携わってきました。
ワコールの展開するサービスや商品は多種多様で、サイト数は60個にもわたります。担当する部署によって立場や利害の観点も異なるため、一つの施策にも慎重な社内調整が必要になる場面もあります。その中でも、KARTEを活用することによって、素早く小さく、何より楽しく、サイトでの施策を試せるようになったと言います。

今回、新たにスタートするコーナー「KARTE部おじゃまします!」では、KARTEを活用するチームや部署の方々が、顧客理解を深めたり、施策を展開したり、メンバー同士で議論したりする際の「楽しさ」にフォーカスし、よりよい顧客体験の創出を図る取り組みをご紹介します。

第一回はワコールでKARTE活用を率いる3人に、顧客への向き合い方やKARTEを活用する楽しさや達成感、導入によるチーム内外の変化について語り合ってもらいました。

「お客様はどう感じるのか?」を考えるのが私たちの役割

はじめに、皆さんのご経歴を教えてください。

川勝:お客様センターで顧客対応を8年ほど担当した後、2003年にWeb関連の部署に移りました。それから20年近く、Webサイトの管理や広報・ブランディングを目的としたサイトコンテンツの企画に関わってきました。

直近の2年間はCXデザイン部でECや量販店、直営店の顧客データを統合するプロジェクトに参加し、2022年にWebの部門に戻ってきて、今はワコールの持つサイトの管理運営やWeb接客を担当しています。

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株式会社ワコール CXデザイン部 デジタルマーケティング担当 川勝和美

武村:私はもともと別の会社でWebのシステム構築に携わっていました。ワコールに入社してからは、CMSの導入やログ管理などの業務を担当し、今はWeb接客やメールマーケティングに関わっています。

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株式会社ワコール CXデザイン部 デジタルマーケティング担当 武村美岐

諸岡:紙メディアの編集からWebディレクションや企画・マーケティング・プロデュースなどを経て、2011年から現在まで、ワコールでWebやCRM全般に関わっています。Webやプロモーション、オウンドメディアやSNSの運営、全社Web管理やブランド支援など業務は多岐に渡ります。今は、Web接客も担当しています。

川勝さんや武村さんとは、長らく同じチームです。今まで一緒に色々なコンテンツの企画・開発に携わってきました。

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株式会社ワコール CXデザイン部 デジタルマーケティング担当 諸岡千月

過去の企画で特に印象深いコンテンツはありますか?

諸岡:ワコールに入った当初「先進的なことに取り組んでいるなぁ~」と感動していた一つは『スタスタ部』というコミュニティサイトですね。はいて歩いて、カロリー消費アップを目指すという下着商品と連動した企画です。歩くのが楽しみになるようなコラムをお届けしたり、購入したユーザー同士が掲示板で励まし合ったりできる企業主導のコミュニティサイトでした。今も、検索すると当時の記事が出てくると思います。

企画の発起人は川勝さん達でしたよね?

川勝:そうですね。日常の中で毎日6000歩も歩くのって大変じゃないですか。だから、購入ユーザーをサポートするWebコンテンツが必要だと思ったんです。どれだけ良い商品でも、お客様が効果を感じられなければ、当然「ハズレだったな」と思われてしまう。売って終わりではいけない、使い続けてもらうために何かしなければと。上層部に訴えて予算を確保し、弊社で初めての会員サイトを作りました。

10年以上前から、購入した後もデジタルで顧客とつながる取り組みをされていたのですね。

武村:たしかに、当時は新しい取り組みをどんどん仕掛けていた記憶がありますね。

川勝:デジタル施策への社内からの注目度もまだ低かったので、色々なトライをしました。「これええと思うし、とりあえず試してみよか」って感じ(笑)

今は状況が変わってきた?

川勝:そうですね。今は当たり前ですが、デジタル活用の重要度が認識されるようになって、一つの施策を動かすにも他部署への影響を説明し、納得してもらわないといけない場面が増えました。私たちの考え方や立ち位置自体は変わっていないのですが、置かれている環境が変わっている。デジタル施策に注力する流れ自体は喜ばしい一方、もう少し素早く動きたいと、もどかしく感じる瞬間も正直あります。

CXデザイン部の設立背景には、デジタル活用に向けた社内連携をスムーズに進める狙いもあるかと思います。改めて役割を詳しく伺えますか。

川勝:一言で言うなら、顧客の体験と従業員の体験を向上させるために、デジタル化を推進すること。デジタルマーケティングの領域では、顧客の「ロイヤル化」「OMO推進」に向けた施策の立案と実施、各部門のデジタル化支援やMAやアプリの運用、全社のWebサイトやコンテンツの管理・企画・運用・改善などを幅広く担っています。

部を立ち上げた当初は、CX向上に向けた取り組みの前提として「顧客データの全社での統合」に向けて、「ワコールファンとは誰か」といった定義、顧客ピラミッドの整理、会員ステージのロジック設計などもCXデザイン部が主となって進めました。

リアル店舗では卸売である百貨店や量販店、下着専門店、弊社の直営店、直営通販と、お客様との接点があり、接点ごとに、商品単価、売り方も違う中、共通の定義やロジックを取りまとめていくのは大変でしたが、会社全体で「顧客視点」に立った商品・サービスづくりを推進するためには欠かせないステップだったと捉えています。

複数グループの意見を取りまとめる上で、大事にしていたことはありますか?

川勝:企業側の立場からの意見は沢山挙がるので、「お客様がどのように感じるか」という視点から意見を出すように意識していました。販売を担当する部門は、それぞれの販売目標の数値を追っていますから、どうしても売る側の意見、立場になる。それはそれで当然なんですよね。

武村:CXデザイン部のメンバーは、販売の立場も理解しつつ、発言は「お客様がどのように感じるか」を大事にしてましたよね。

諸岡:とくに私たち3人は、長くデジタルコンテンツの企画・開発に関わる中で、デジタルの向こうにいらっしゃるお客様の視点で考えることを常に大事にしてきました。それが当たり前の感覚だったので、会議でギャップを感じてしまう瞬間も正直ありました。

川勝:言い換えれば社内では、「売る側の立場の視点」は十分に備えてくれているということですよね。そこがブレることはないから、「CXデザイン部の私たちは顧客視点を担うのだ」という気持ちで業務に臨んでいます。

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仮説が正しかったかは、お客様が答えを出してくれる

CXデザイン部にKARTEを導入した経緯は?

諸岡:たしか2019年のCX DIVE(プレイドの主催するCXを学び、体験できるカンファレンス)に参加して、プレイドさんやKARTEの存在を知ったんです。顧客視点を大切にする考え方に共感しましたし、KARTEを使って顧客の興味関心や行動をデータで深く知ることができたらいいな、とも思っていました。

川勝:私も福岡のイベントで、プレイド社代表の倉橋さんとお話する機会があって、KARTEを知りました。当時のワコールは、顧客データもバラバラで履歴も残せていない状態だったので、サイトでお客様に合わせた様々な施策を実現できるという話を聞き、“夢のようだ”と思いましたね。その時、倉橋さんが着ていらっしゃったKARTEのTシャツも欲しくなって、ご本人にお願いしたことも覚えています(笑)

諸岡:ただ、当時は社内システムの環境や予算的にKARTEの導入には至らず、数年後にワコールのアプリ『WACOAL CARNET(ワコール カルネ)』に導入する話が挙がりました。ちょうどECや量販店、直営店など各接点のデータを統合するプロジェクトが動いており、複数の接点から得たデータをもとにアプリのプッシュ通知を最適化したいと考えていたんです。

ですので、データ統合を待ってから導入を予定していましたが、プレイドの担当者の方から活用範囲を絞って導入できるプランを提案いただき、部分的に導入をすすめました。大々的に導入する前に、ツールの使いやすさも判断できるのではとのことでした。

今は顧客のデータ統合も完了しており、アプリでのKARTE活用も進んでいます。

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サイト数も多い中、どのようにKARTEの導入を進めましたか?

諸岡:おっしゃる通り、前提としてワコールはECサイト以外に、50から60のブランドサイトやオウンドメディアを運営しています。CXデザイン部が管理しているものもありますが、別部署の担当者が管理しており、プロモーション施策やサイト改善などを必要に応じて私達CXデザイン部が支援するものもあります。後者の場合、私たちだけで意思決定して手を入れるのは難しくなってしまう。

ですから、まずは自分たちの責任で自由に動きやすく、ECサイトへの誘導など売上に繋がりやすそうなサイトやページを絞り込み、KARTEのタグを設定していきました。具体的には、当課で管理運営しているページ、たとえばワコール公式サイトのトップページや『下着の基礎知識』、『店舗検索』などから着手しました。

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KARTEを使って、自分たちで素早く改善を行える環境を整えたのですね。

諸岡:そうですね。そして、やっぱり一回やってみたらお客様が答えを出してくれるんですよね。

たとえば、ブランドの担当者から「目立つようにバナーはとにかく大きくしたい」と依頼を受けたとき「このバナーはダメだろうな」と内心思っても、それを相手に伝えて説得するよりも、一回A/Bテストで短時間でも試してみれば、お客様が答えを出してくれる。「70%のユーザーが閉じているのだからやめましょう」と明確に伝えられる。これってめちゃくちゃ説得力あるんですよね。

実際にKARTEで行った施策については、お客様の反応に応じて、24時間以内に公開を止めたり、改善したりすることも珍しくありません。

これまで具体的にどのような施策を?

諸岡:例えば、ワコールのパーソナルウェアのブランドが新たなマットレスを販売した際、長年運営している睡眠関連のポータルサイトから、マットレスの新商品ページを案内するバナーを設置しました。睡眠に課題を感じて記事を見に来られたお客様に、関連商品を紹介できました。広告費やサイト制作費に予算を割くことなく、自社のコンテンツ資産を使って、多くの方に商品を知っていただき、結果、商品売上目標を達成という成果につながりました。

この睡眠関連のポータルサイトのように、一定の検索流入があるものの、商品ページへの誘導などをやりきれていないサイトは少なくありません。ちゃんとお客様に役立つ形で活かしていきたいですね。

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武村:お客様の関心に合わせたコンテンツを表示するメルマガ施策も行っています。メルマガを購読している方は会員登録を済ませていますから。サイトで会員の方がどのように行動しているのかをKARTEで確認できるようになり、顧客理解も深まりました。

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「KARTEで何か新しいことをできないか?」を考えるのが楽しい

施策のアイデアはどのように発想していますか?

武村:日頃から「KARTEで何か新しいことをできないかな」と考えたり、過去の施策の反応を見ながら2人と喋ったりします。やりたいことは沢山あるのでアイデアは尽きません。

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諸岡:細かい部分を変えて、一番効果の出る改善箇所はどこなのか、議論している時間が楽しいですよね。前向きに取り組めるからこそ、色々とアイデアが出てくるのかもしれない。

武村:次はね、アンケート施策を出したい。

諸岡:プレゼント応募をしてくれた人に出したいね。応募完了ページにタグを埋め込んだから。

川勝:「最近のプレゼントの内容はどうですか?」とか聞けるね。

武村:欲しいものありますか?って聞いてみたりしてね。

チームの議論が一層活発になったのですね。チーム外の変化は感じますか?

諸岡:KARTEで施策を行う中で、社員がお客様の声に触れる機会を増やせていると感じます。

たとえばメルマガ経由のお客様にCMの認知調査のアンケートを出したとき。「CMを知っている」と答えた方が、CM担当者の想像よりも多く、かつ追加でメッセージを送ってくださる方もいたんです。「登場するキャラクターが可愛い」といった声もあり、CM担当者も喜んでいました。

川勝:そのおかげもあり、サイトでの施策において「本当にお客様のためになるか?」を考える意識が、少しずつ浸透していると感じます。

「買う」以外の接点でもお客様と関わりを持ちたい

「顧客はどう感じるのか?」という視点がチーム外にも広がりつつあるのですね。最後に、チームの今後の展望を教えてください。

川勝:「買う」以外のアクションもデータで把握し、施策に活かせるようにしたいです。店舗とECの購買データは統合できましたが、お客様とブランドの接点は購買だけではありません。会員ステージも、現状は購買だけで決定するわけですが、それだけでいいのか?という気持ちもあるんです。

たとえば毎週のようにお店を訪れてくれるお客様が、アプリで店舗にチェックインした記録を残せたり、その記録をもとに商品やお役立ち情報を提案したりといったアクションも実現したいです。

武村:ありがたいことに、アプリのダウンロード数も伸び、配信するメールの数も増えています。より多くのお客様と関わりを持つことができているからこそ、デジタルだけではなくリアルの場での施策も拡充して、よりよい体験を届けられるようにしたいです。

諸岡:お客様のなかには、実店舗とECを行き来してお買い物を楽しまれている方も多いですし、それぞれの接点をまたいで行動を把握できるようにしたいですよね。

店舗を訪れた方のアンケートでは「BAさんの接客がとても親切でまた来たくなった」という声がとても多いんです。丁寧な接客はワコールの体験価値の一つですので、普段ECだけを利用されてる方にも、体感してほしいです。

川勝:そういう声を集めてBAさんに届けたいですよね!モチベーションが上がると接客の質も高まり、それがお客様の体験にも還元されるはずですから。

日頃から「お客様のために」を考え、議論するチームの様子が伝わってきました。皆さん今日はありがとうございました!

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