「楽しい」軸で施策を考える。KARTE活用で入社1年未満のベイクルーズのUI/UXチームに生じた変化

KARTEにチームで取り組む様子を紹介するシリーズ企画「KARTE部おじゃまします!」。今回は株式会社ベイクルーズ DX統括 Creative Div Web Creation Sec.にお邪魔して、入社からわずかな期間で「楽しい」を重視して施策を考えるようになったチームの裏側を伺いました。

KARTEにチームで取り組む様子を紹介するシリーズ企画「KARTE部おじゃまします!」。

本企画では、社内でKARTEを活用する担当者の方々が、KARTEをつかって顧客理解を深めたり、施策を展開したり、チームメンバー同士で議論をしたりする際の「楽しさ」にフォーカスしています。

今回は、「自分たちからアクションを起こせるUI/UXチームへの変化」をテーマに株式会社ベイクルーズ DX統括 Creative Div Web Creation Sec.の井上 和宏さん、鶴 千紘さん、高田 侑美さんの3名にお話を伺いました。

入社一年未満のメンバーでKARTEの新しい活用を模索

DX統括 Creative Div Web Creation Sec. における業務についておしえてください。

井上 和宏(以下、井上):2023年3月まではUI/UX Sec.という名称で、ECのUI改善やKARTEの活用を含めたお客様との接点をつくる部署で活動していました。4月に組織改編があって、DX統括 Creative Div Web Creation Sec.となったばかりです。

もともと のセクションの担当業務は引き継ぎつつ、私たち3人は「定常利用とは異なるKARTEの利用方法について模索してみてほしい」ということで集められたチームです。3名とも入社から1年が経過しておらず、比較的新しい視点を持ったメンバーでした。

ベイクルーズ社内でKARTEを以前から使っていたものの、実施している施策が効果的なのかどうかもわからないまま継続しているというような状態でした。新しい利用方法の模索に加えて、定常利用の見直しも合わせて動かしていくことがミッションでした。

3人の役割はどのようになっているのでしょうか?

井上:自分は技術的な観点からディレクションを担当しています。鶴と高田の二人はこれまでお客様との接点がある仕事を担当していたので、その経験を活かしながらKARTEの運用を行っています。

みなさんがKARTEを最初に使ってみたときの印象はどのようなものでしたか?

井上:僕は、前職や前々職でもKARTEを使っていました。二人もベイクルーズの定常運用でKARTEに触ったことはありましたよね。

高田 侑美(以下、高田):少し触ったことはありました。例えば、KARTE Blocksを使って、キービジュアルの変更を担当したこともあります。「こんなに簡単にいろいろ変えられるんだ」と驚きました。

鶴 千紘(以下、鶴):最初は、「いろんなことができるツールなんだ」という印象で、しっかり理解していたわけではありませんでした。いろんな業務を引き継ぎながら、少しずつわかることは増えたものの、できることが多すぎて理解が追いつかない状態が続いていました。配属から1年ほどが経って、ようやく感覚を掴んできた感じがします。

KARTEの使い方を学びつつ、既存の利用方法の見直しとはどのようなことから進めていったのでしょうか。

井上:まずは、KARTEを使って、どんな場面で、どんな設定をしているのかを把握するところからでした。その上で定常のKARTE活用が進めやすくなるための整備を進めていきました。

例えば、施策の名前付けのルールをつくること。施策を設定する際、そのシートを参照して名前をつけられるようにするなど、地道に進めていきました。

社外の視点も取り入れ、顧客のインサイトを考える

新たなチームでのKARTE利用はどのように進めていったのでしょうか。

井上:わからないこと、できないことが生じたときには、すぐに質問して答えてもらっていました。

ただ、すべてを聞いていたわけではありません。弊社は少し変わったKARTEの使い方をしていて、KARTEでソースコードをサイトに埋め込んでいるのですが、そのコード内でJavaScriptを動かしています。KARTEの設定はシンプルだったとしても、その先が見づらい状態になっている部分もあるのです。

そうすると、不具合があったときにKARTEの問題なのか、自分たちが独自に書いているソースコードの問題なのかの判別が難しく、社内でKARTEを使っていたメンバーに確認することもありました。

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井上 和宏さん

プレイドのCX Planning Unitと一緒に活動したと伺いましたが、どのような内容でしたか?

井上:私たちのチームには、アプリのリテンション率を上げるという目標がありました。そのためには、ユーザーのインサイト仮説をつくる必要がありました。ですが、どのようなインサイトが考えられるかを自分たちだけでは考えきれていなかったので、インサイト仮説のシートを作成するワークをCX Planning Unitの方々とご一緒しました。

ワークの前に、リテンション率を上げるための鍵となるユーザー行動は、大きく以下の3つありそうだと仮説が立てられていました。

  • スタッフフォロー
  • スナップ閲覧
  • アイテムお気に入り

自分たちがファッション関連アプリを利用する際の実体験や、店舗で接客していたときの経験などを参考に、なぜお客様がそういった行動をするのかを考え、インサイトの仮説をシートに記入していきました。

実際にインサイト仮説シートを埋めるワークを経験してみてどうでしたか?

:普段、なぜユーザーにリテンションしてもらえるかを考える機会はなかなかありませんでした。新鮮な気持ちでそのことについて考えるきっかけになったのは、よかったですね。また、みんなでアイデアを出し合ったり、企画をしたりというのも、経験したことがなかったので楽しい時間でした。

高田:個人的にはインサイト仮説シートを作成するなかで、プレイドのみなさんからも仮説を共有してもらったのは学びになりました。普段は社内の人としか話していないから、視点が偏りがちなんです。社外の人の意見、アパレル外の業種の視点からの仮説を聞けたのは貴重な機会だったと思います。

井上:どうしても社内だけだと視点が固定化されてしまいますから。みんなが「良いよね」と言っていても、外部から客観的に見たら、「本当にそうなの?」となる可能性はあります。そういう気づきを得られる点でもインサイト仮説シートを埋めるワークは良い経験でした。

特に参考になった視点やヒントはありましたか?

高田:いくつかありましたが、印象に残っているのは「推しが尊い説」ですね。プレイドの方が出してくれた、「スタッフに会いたいから店頭に行く」という意見は意外なものでした。というのも、私が大学生の頃、ベイクルーズの店舗でアルバイトとして勤務していたときには、そういう理由で来店する人はいない印象だったんです。ですが、言われてみたらたしかにいるのかもしれないな、と。

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高田 侑美さん

インサイト仮説を出した後、施策のアイデアを考えていったと伺っています。アイデア出しにおける苦労はありましたか?

井上:アイデアが出ない苦労は全くありませんでした。かなりの数の施策のアイデアが出たんです。プレイドのみなさんが、僕たちが自由に発想していればいい状態を作ってくださって。僕たちは好き勝手に話して、それをうまくまとめてもらえた感じですね(笑)

施策のアイデアを実装するプロセスにおける学び

アイデアは数多く出せたとのことですが、その後のステップはいかがでしたか?

:アイデアはたくさん出たので、その中から「じゃあ、リテンションに効くのはどれ?」を考えて、絞り込んでいくのは難しかったですね。

高田:有効そうなアイデアを決めていく、というのは悩みました。一人のユーザーとしての自分は、ファッション系のアプリは勝手に見に行くタイプです。それもあって、リテンションのための働きかけが必要なユーザーが何を求めているのかを想像するのはハードルがありました。

どのように施策アイデアを絞り込んでいったのでしょうか?

井上:他で実施していたリサーチのデータで、スナップ閲覧をした後リテンションにつながっている傾向があることがわかりました。実行する施策は、そのデータを前提条件とし、どうしたらスナップ閲覧をしてもらえるかを考えることにしました。アプリ登録から3ヶ月以内の新規ユーザーにフォーカスして、施策をどう実装するかを考えていったのです。

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実装はスムーズに進んだのでしょうか。

井上:いえ、実装が一番難しかったですね。というのも、アプリでデータを取得するためには、先にイベントを設定しておかないといけません。Webと同じ感覚でデータを取得しようとして、設定ができておらずデータがとれていないことがありました。

例えば、「スタッフフォロー」がイベントとして登録できておらず、データがとれていなかったのです。どこから経由してスタッフフォローに至ったのかのデータは取れない。それがボトルネックになっていました。

データの取得が難しい中、どうやって実装を?

井上:結局、スタッフフォローのイベントは計測できなかったのです。そのため、「このページまでたどり着いたらスタッフフォローしているだろう」という仮説を立て、数値の振り返り方を工夫しました。

施策は、正月にアプリのユーザー向けに診断コンテンツを提供するというものでした。最後のページまで到達したユーザーの数は多かったので、企画は楽しんでもらえた手応えは得られました。

ただ、正確に測定はできないため、目標であるリテンションに寄与したかは見えにくい状態でした。そのため、途中で方針を修正して、診断を楽しんでもらうことにフォーカスし、リーチするユーザーの母数を広げることに専念しました。

ユーザーに楽しんでもらうことを目的にシフトしたのですね。楽しんでもらうための施策はどのように作っていったのでしょうか?

井上:インサイト仮説シートを埋めていく過程で、施策に関するクリエイティブをつくる前段階までを丁寧に準備できました。診断のクリエイティブは私たちがこだわりたいポイントだったので、ビジュアルなど社内で検討を進めました。

:いろいろな診断コンテンツを見ながら、「ベイクルーズだったらどうするか?」を考えて、社内のデザイナーさんに相談しながら取り組みました。ワイワイ楽しみながらアウトプットを考えていった結果、自分たちの納得できるものが作れましたし、ユーザーのみなさんにも楽しんでもらえたのだと思います。

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鶴 千紘さん

高田:診断のリリースは1月1日だったので、選ぶスナップの季節感をどうするかはかなり迷いました。他にも、動きや文言は細かなところまでかなりこだわりました。

井上:表現を考える議論の中で、「この言い方はかわいくない」という意見が出てきていたのはとても良い点だったと思います。二人がリードしてこだわりを詰め込んだものになった結果、「かわいい」というユーザーからの声も寄せられる結果になりました。

顧客のために自走するチームには「楽しい」が大事

改めて、一連の施策を振り返って、「これが大事だったな」というポイントはありますか?

井上:とにかく、かわいいものをつくる。そして、自分たちが楽しくやりきる。この2つでしょうか。仮に、施策から成果がうまく出なかったとしても、過程から学びが得られれば次につなげられます。

「次の成果につなげる」──そういう考えを持たないと、自走できるチームにはならないと考えています。今回は、リテンションやユーザーのインサイト仮説について知る機会であり、自走のための経験になりました。また、施策自体の反応率は良好でした。この数字も悪かったら反省しかないんですけどね(笑)

ユーザーに楽しんでもらえて、自分たちも楽しんだ。僕はアパレルECの仕事が長いのですが、自分たちもお客様も楽しむことが大事だとずっと思っているんです。自分たちがかわいくないと思っているものは、ユーザーにもかわいくないと思われてしまいますよね。アプリを開いた時に「楽しい」という体験があると、またアプリを開いてもらえるはずだと思っています。

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他に、施策を考えて実装するところまで一通り経験してみての学びはありますか?

高田:私は社会人4年目で、これまで自分がメインとなって施策を担当することはありませんでした。「PDCAが大事」というのは教わってきたことですが、最初から最後まで全て自分が関わってみて、腹落ちしました。今後は、アプリのリテンションのための施策に関わらず、PDCAを回していきたいと思います。

:これまでもアプリについて考えていなかったわけではありませんが、今回の一連の流れを経験したことで、アプリを運営する上で大事なことをいろいろと学ぶことができました。定期的に実施している施策をより効果的なものに改善していきたいと思っているので、今回の学びを活かしていきたいですね。

井上:新しい施策のトライだけでなく、既存の施策の見直しも進めていきたいですね。今、実施していることを「止める」って難しいこと。ただ、必要ないものを適切に止められたらユーザーにとってもいいはずなんです。では、なにが適切かの判断をするためには土台の整備が必要なので、時間はかかると思いますが取り組んでいきたいですね。

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