KARTE STAR 2023 「GOLD STAR」受賞インタビュー:株式会社雨風太陽

KARTE STAR 2023 「GOLD STAR」を受賞した、旬の食材を購入できる産直アプリ「ポケットマルシェ」を提供する株式会社雨風太陽のインタビューをお届けします。

2023年3月に開催した「KARTE Friends THANKS DAY 2023」では、KARTE活用企業(KARTE Friends)のチャレンジを表彰する年に一度のアワード「KARTE STAR 2023」の授賞式を行いました。

顧客体験向上(CX)、デジタルによる事業変革(DX)、従業員およびチーム変革(EX)に取り組み、KARTE STAR 2023 「GOLD STAR」を受賞した株式会社雨風太陽のC2Cコマース部門 マーケティング部 小林工馬さんに、お取り組み内容についてお話を伺いました。

KARTEに蓄積された「顧客データ」を活かす

授賞式、おつかれさまでした!改めて、受賞を振り返っていかがですか?

image4

株式会社雨風太陽 マーケティング部 部長 小林 工馬氏

小林:実は、アワードに応募する際はちょっと不安だったんですよ。ですが、こうして「GOLD STAR」をいただけたことは嬉しかったですし、社内でも「え、金賞とったの!」という好反応でした。

今回の授賞式には、私は参加できなくて、一緒にKARTEを活用している名雪が参加しました。ずっと私がメインでKARTEを活用していたのですが、そこに名雪が加わり、一緒にKARTEを使った取り組みに伴走してくれています。社内でKARTEを任せられるメンバーが出てきたということを象徴した受賞式でもあったと考えてます。

image3

当日受賞式に参加した名雪さん

授賞式では緊張もしていたようでしたが、当日はいろいろなKARTE Friendsとお話できて、刺激になったようでした。弊社は他のKARTE Friendsとも異なったKARTEの使い方をしていると思うので、多様な方々と話す中で自分の立場が相対化されて、自信にもつながったようです。

よい機会になったようで嬉しく思います。改めて、実際に受賞につながったユーザー分析を始めたきっかけについてお話をお伺いできればと思います。

小林:私たちは、KARTEを利用している食材の産直EC「ポケットマルシェ(ポケマル)」のユーザー分析と、それに伴うCX戦略を考えるプロジェクトを実施しました。数万の顧客のプロセスデータをベースに、LTVの高いユーザーとその他のユーザーの行動を分析し、CX戦略の元になるインサイトを探索したんです。

2020年からKARTEを使い始めて、最初の1年はKARTE for Appの利用のみ。その翌年からはウェブも導入して、KARTEの活用を広げました。ただ、施策を打つばかりで、しっかりとユーザーのデータを深堀りして分析できていませんでした。ここをしっかりと分析して、戦略に活かしていきたいという話をプレイドさんにご相談したのが、ユーザー分析に着手したきっかけでした。

「KARTEは顧客データの宝庫です。もっと使いこなせるはず」という話をカスタマーサクセスの方と話したことが始まりですね。

瞬間的な顧客の気持ちを知る。小さなコミュニケーションから始める関係づくり(ポケットマルシェ様)

直観的に捉えていた顧客の行動理由をデータで裏付け

ユーザー分析ができていないことで、どのような課題があったのでしょうか?

小林:ありがたいことに「ポケマル」にはファンユーザーの方が数多くいらっしゃって、何度も購入いただいているという数字は取得できています。ただ、「なぜ、ファンになったのかがわからない」という状態でした。

リテンション率はわかっても、どのようなプロセスを経てリテンションするに至ったのかはわからない。私たちにも直観的な仮説はあったものの、それをデータで裏付ける必要がありました。

どのように分析を進めていったのでしょうか。

小林:ユーザーがファンになるプロセスをはっきりさせるために、一定のユーザーをまとめて動きを定量的に分析するというのと、一人ひとりのユーザーの行動を分析するというのと、両方を実施しました。後者では、20人の行動を3000日分見るという、少々ハードな分析をやりました(笑)

image6

以前もユーザー調査は実施はしていたのですが、対象が偏るという課題がありました。ずっと「ポケマル」のファンだという方にお話を伺っても、サービスが好きなのでなかなか課題を言ってもらえなかったのです。ありがたいことではあるのですが、本当は厳しいご意見もいただきたい。今回はヒアリングというより、気持ちや感情は掘り下げずにユーザーの行動にフォーカスしました。

やり方としては、KARTE Liveやユーザーストーリーをひたすら見る。ユーザーはどういうページにいって、どこで離脱したのか。どこのページがきっかけで来る頻度が減ったのか、どのページがきっかけで頻繁に来るようになったのか、などをチェックしていきました。

かなりハードにユーザーを分析してみてどんなことがわかりましたか?

小林:LTVの高いユーザーとその他のユーザーでは、購入回数などの結果だけでなく、行動プロセスの明確な違いが見えてきました。一つは商品との出会い方。LTVの高いユーザーは生産者さんの情報をよく見て購入する。一方で、利用頻度が少ないユーザーは生産者さんの情報を見ずに商品を選ぶ傾向がありました。

LTVの高いユーザーは「何を買うか」ではなく「誰から買うか」を重視している、ということがわかりました。そこをさらに深掘りした結果生産者の情報を見るユーザーの方が購入率が5倍近く高いことがわかりました。

モノを買う売店ではなく、売り手との交流を求めるマルシェとして利用している。これは都市と地方をかきまぜて、人をつなぎ感謝や喜びを感じられる社会を作るという自社のフィロソフィーとも合致する部分でもあったので、非常に嬉しい発見でもありましたね。

分析結果を知った弊社の代表も「ポケマルでやってきたことは間違っていなかった」と言っていました。私たちが進んでいる方向は間違っていなかった、そのことが数値で裏付けられたのは大きな発見でしたね。

image1 1

KARTE STAR 2023に合わせて撮影した法被姿の小林さんの写真

ユーザーの分析結果を生産者にも共有

分析した結果はどのように活用されたのでしょうか?

小林:ユーザーに関わる情報は、マーケティング部がユーザーに届ける施策で活用するだけの話ではなく、全てのステークホルダーにとって重要な情報です。そのため、分析結果をマーケティング部に閉じることなく、全社にも展開しました。

その過程で、「この情報は生産者に伝えたほうがインパクトが大きいのでは?」という話になりました。ユーザー向けのメッセージを改善するのも大切ですが、そもそも生産者からユーザーに向けてのメッセージが変わるほうがインパクトは大きい。

そこを変えるためにも、調査結果を共有することにしました。ポケマルで商品を出品する生産者さん向けのセミナー「お客さん目線で考えるまた買いたくなる商品の届け方」を開催し、CXを高める商品の届け方についての共有も行いました。

例えば、「生産者の情報を見るユーザーの方が購入率が5倍近く高い。」ことを伝え、どのような生産者情報を掲載すると良いかケースを話し、逆に生産者さんからの意見を募り、議論をする場を開きました。

セミナーは反響もよく、満足度も高いものでした。どれだけセミナーが影響したかはわかりませんが、徐々に「ポケマル」の売り場に出てくる商品のクオリティや説明の質が変わってきたように感じられています。

pokemaru03

その他、ユーザーの分析内容を共有して生まれた変化はありましたか?

小林:全社員向けに顧客分析の内容を共有して、今後のアクションを議論するCXワークショップを開催しました。この機会には弊社の代表も参加して、会社全体で顧客体験のあり方を考えました。結果として、社内の中のCX向上に関するさまざまな動きが活性化されることにもつながりました。

ワークショップを経て、なにか具体の施策につながったものはありますか?

小林:分析してわかったことに、行動「頻度」の違いがあります。「ポケマル」は嗜好性が高いサイトのため、何かいいものがないかと楽しみに来訪するユーザーが多く、購入せずともサイト来訪するユーザーが多い。

ユーザーを継続期間別に分類して分析したところ、一定の日数の間にサイト来訪が発生しないと、その後の利用がなくなる限界来訪日数と、ある日数購入しないと購入が発生しなくなる限界リピートの数字がわかりました。分析から、何日以内にユーザーに次のアクションをご案内すればいいか、何をご案内すれば良いかを発見できていました。

この分析結果と、社内ワークショップから生まれたのが、年に4回開催する「ポケマル収穫祭」や毎月3回開催する「ポケマルの日」です。

image2

春夏秋冬のサイクルが途切れてしまうと習慣的な購入を作りにくくなります。ポケマル収穫祭は、春に商品を購入したユーザーが、夏の味覚を購入するような、季節ごとの旬の味覚をポケマルを通して感じてもらえたらと思い、はじめました。

来訪の頻度も大事なので、分析の結果わかった限界日数をベースに、毎月10日、20日、30日には「ポケマルの日」のキャンペーンを開催するようになりました。わかりやすい施策として、ユーザーの定期的な利用促進を進めています。

また、以前は買っていただくためにKARTEで接客することが多かったのですが、最近では買っていただく前のステップでの接客を重視する考え方にシフトしました。施策において接客を設定する時間は長くなりましたが、その分一つひとつの施策に関してじっくり考えるようになりました。

KARTE導入からの約2年で数百回は接客施策を試していたので、その引き出しを活かして、時間をかけてでもユーザー体験を良くしていこうと取り組んでいます。

社内に共通の顧客理解を育む

社内で共通の顧客理解が進んだ手応えはありますか?

image7

小林:手応えはありますね。実際に社内に分析結果を共有したときにもユーザーの理解は進んだと思いますし、社内での会話の質も向上したように感じられます。もともと、生産者のために活動したいメンバーが多い会社なのですが、それって本当に「生産者のため」「ユーザーのため」なんだっけ?というコミュニケーションが増えたと感じます。

最後に、今後実現していきたいことについて教えてください。

小林:今回の調査でユーザーがどうやって「ポケマル」のサイトで遊んでいるのかがわかりました。私たちが食のECとして提供する価値の本質は、「エンタメ」だと考えています。

楽しい体験ができる、新しい知識に出会えるといったエンターテイメント性がないと、サービスを使い続けてもらえません。スマホのゲーム、音楽アプリ、小説など、手のひらのなかで楽しめる他のエンターテイメントとの時間の奪い合いに敗れてしまう。次の課題はいかに楽しめるサイトにしていくか、ですね。

今回の分析で、行動軸での顧客理解は進みました。まだ、感情軸での分析は足りていません。楽しめるサービスになるためにも、次は感情軸を補完するための動きを進めていきたいと思います。ユーザーが何に価値を感じてくださっているのかをデータで分析しつつも、ユーザーに直接聞いて、KARTEを通じて実際に施策に落として検証する。そんなことに挑戦しようと思います。

image5

7月12日(水)に開催される「KARTE CX Confrrence 2023」において、GOLD STARを授賞した3社の担当者によるパネルディスカッションを実施します。3社の取り組みについて、より深く知りたい方は是非イベントにご参加ください。

KARTE CX Conference 2023 イベントページ

KARTE STAR 2023 「GOLD STAR」受賞インタビュー:エン・ジャパン株式会社

「KARTE Friends THANKS DAY 2023」を4年ぶりにオフラインで開催。KARTE STAR 2023の授賞式も実施しました。#KARTE_Friends

KARTE STAR の取り組みについてはこちらの動画をご覧ください。

SHARE