大学生活もCXが大切。入学~卒業をデジタルでサポートする京都芸術大学

京都芸術大学が重視する、社会人学生一人ひとりに寄り添ったオンラインコミュニケーションとは。学校法人 瓜生山学園 京都芸術大学では、日本全国の18歳から96歳まで、7,000人以上が学ぶ通信教育部の公式サイトにてKARTEをご利用いただいています。今回は、KARTEを導入した背景や導入後の施策、大学ならではの顧客体験について、同大学の通信教育部 入学・教育開発課 課長の作山朋之様にお話をお伺いしました。

京都芸術大学が重視する、社会人学生一人ひとりに寄り添ったオンラインコミュニケーションとは。

学校法人 瓜生山学園 京都芸術大学では、日本全国の18歳から96歳まで、7,000人以上が学ぶ通信教育部の公式サイトにてKARTEをご利用いただいています。

今回は、KARTEを導入した背景や導入後の施策、大学ならではの顧客体験について、同大学の通信教育部 入学・教育開発課 課長の作山朋之様にお話をお伺いしました。

顧客の年齢層が広く、全体最適のWebでの対応に限界を感じる

—京都芸術大学について教えてください。

京都芸術大学は「藝術立国(芸術と文化による人間精神の復興と世界平和をめざす)」を建学の理念に掲げ、1991年に設立されました。通学課程と通信教育課程を併せ持つ私立大学で、在学生数は日本最大級の約1万人。4年制芸術系大学として日本で初めて設置した通信教育課程では、年齢や職業、生きてきた世界もさまざまな方々が日本全国から集い、学んでいます。

—作山様が所属する入学・教育開発課は、何を行うところでしょうか?

通信教育部の入学募集に始まり、教育カリキュラムの構築や授業開発、授業で使う映像教材や教科書などのコンテンツ開発を担当しています。以前は「入学課」として高校生と社会人両方の入学募集を担当していましたが、部署を整理し、現在は通信教育部に入学する社会人にフォーカスして戦略を考えています。

社会人向けの入学募集戦略の一環として、KARTEを導入しました。現在はサイト訪問者一人ひとりに合わせた入学案内や願書受付、入学手続きのアプローチを促しています。

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京都芸術大学 通信教育部 入学・教育開発課 課長 作山朋之様

—個人に最適化したオンラインコミュニケーションを意識するようになった理由はなんだったのでしょうか?

社会人である顧客とのオンラインコミュニケーションを強化したかったからです。高校生に比べて、社会人は仕事や育児、地理的な影響もあり、オープンキャンパスや入学説明会といったイベントに参加するのも一苦労で……。オフラインでの交流が難しいなら、オンラインでのコミュニケーションの質を高めるしかないと思いました。

—オンラインコミュニケーションの質を向上するためには、従来の全体最適なオンラインコミュニケーションでは不十分だと。

はい。全国各地の18歳〜90歳以上のさまざまな社会人が応募することを考慮しても、全体最適なコミュニケーションでは誰にも満足してもらえない。まずはCRMを導入して顧客を“個人”として捉え直し、一人ひとりに合ったコミュニケーションを実現しようと考えました。

セグメントをしつつ、リーチする母数も担保できるチャネルを

—個人に最適化したオンラインコミュニケーションを目指すなかで、KARTEを導入しようと思ったきっかけは何でしょう?

個人に最適化するために、CRMを導入し、顧客のセグメントに応じたアプローチがメールでできるようになったものの、途中で限界を感じるようになったことです。セグメントすればするほど、開封率やクリック率は上がるのですが、その分リーチできる母数はどんどん減ります。

リーチする母数を増やすために新しいチャネルが必要だと思い、なかでも自社サイトを起点に顧客一人ひとりに合わせた“動的”な接客サービスが設計できるKARTEに魅力を感じて、問い合わせたのが始まりです。

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—広くリーチするという意味では、CRMと連携したウェブ広告も有効に思います。

私たちも一度はその手を考え、実行しましたが、一定量の情報を持ってオファーができるメールに対し、広告では伝えられることが限られてきます。結局、顧客をセグメントして広告を配信するのでは、ターゲットも狭くなってしまう。個人の特性に応じたアプローチをしつつ、リーチする母数を減らさないようにするには、KARTEが一番有効だと思ったんです。KARTEならしっかりしたオファーが自社サイト内でできるし、何より顧客一人ひとりのタイミングに合わせた訴求ができる。

—ほかの媒体で広告を出す場合、注視されないどころか、毛嫌いされがちなように思います。それに対し、自社メディアに載せるコンテンツは“広告”として見なされにくいですよね。

同感です。あとは、KARTEのCX(顧客体験)に対する考え方に共感を覚えたことも後押しとなりましたね。これまでは、私たちの大学においても「入学」「在学」「卒業」といったステージごとに顧客の体験が分断されていましたが、本来は入学前から卒業後も全て一つの体験として繋がっているはずなんです。断片的な体験や情報からは、真の顧客の姿を捉えることができません。

—多様な体験、データから顧客を“ひとりの人”として捉える大切さを理解している点に親和性を感じていただいたんですね。

はい。サイトに来る人ってだいたいアノニマス(匿名)じゃないですか。彼らの輪郭をはっきりさせるにはどうすればいいかを考えたときに、Web行動を起点に輪郭をはっきりさせるのが大切だなと感じたんです。

このWebサイトでAさんはこのページを何秒見ましたとか、Bさんはこのページを1週間に3回見ましたとか、Web上における顧客の行動は嘘偽りない“真実”ですからね。この“真実”をもとに顧客の輪郭をはっきりさせるところも魅力に感じ、検討を始めてから1ヶ月足らずで導入を決めました。

CVをした人の約50%が、KARTEの接客を受けている

—導入後、どのような体制でKARTEを運用していますか?

今は、私一人で運用しています。導入後のセットアップも5分で完了し、管理画面も見やすく、クリエイティブもテンプレートを活用して楽に作れるので、一人でもスピード感を持って回せます。コミュニケーションのターゲットとタイミングを規定すれば、あとはKARTEが自動でやってくれるので、私たちはその分オファーする内容自体(コンテンツ)に注力できる。PDCAを高速に回せるため、いろんな施策にチャレンジできるのが嬉しいです。

—これまでの施策のなかで、手応えを感じた事例について教えてください。

直近7日間でサイトへの来訪回数2回以上の方達に「出願始まりました」のバナーを提示した施策は数字上の反応が良かったですが、手応えを感じたという意味では、Web上で出願手続きをする際に途中で離脱してしまった人に対するバナーのオファーが印象深いです。手続きの途中でなぜ止めてしまうのかを考えたときに、どれくらいの情報量を必要としているのか、手続き完了までのステップが見えないからだと仮説を立てたんです。そこで、手続きに関するステップを解説するブログ記事を作成し、手続きの途中で離脱してしまった人に対して、記事へ誘導するバナーを出すように設定しました。

出願手続きを途中で離脱したユーザーに、ステップ解説記事へ誘導する接客イメージ

—前回、手続きの途中で離脱してしまった人がそのバナーを目にすれば、リマインドに繋がるだけでなく、出願の意欲にも繋がりそうです。

CVR(KARTE上では「接客ゴール率」)は3.92%、その後出願の手続きを完了してくれる方も多く、KARTEで行った接客のなかで一番高い成果を出しましたね。

そのほか、出願訴求の接客をいくつか行いましたが、ラストコンバージョンでみても、Web出願手続きをした人の12.1%がKARTEの接客を経由していたんです。これまで出願手続きを促すチャネルとして最有力だったemail(23.9%)と比較しても、充分にインパクトのある数字を出しているので驚きました

動画で大学の魅力を伝える接客イメージ

—出願手続き以外の施策でも、KARTEを活用した事例はありますか?

Web上で出願手続きをしたあとの学費決済において「カゴ落ち」施策を行いました。出願手続きを完了した人のなかには、決済をしない方もいらっしゃいます。単純に忘れている場合もありますし、とりあえず出願手続きだけしてみたというケースもある。

一般的なECサイトでは「(決済を)忘れていませんか?」とアラートが来ると思いますが、それだと弱いと感じたので、代わりに“ウェルカムメール”を送るようにしました。

—“ウェルカムメール”とは?

「出願の手続きありがとうございます。春からともに学びましょう」といった雰囲気で、各学科コースの先生にそれぞれ文章を考えてもらい、自己紹介や学生に対する思い、授業にかける熱意を綴ったメールです。出願手続きをした人かつ決済が未完了の人たちをセグメントし、メールを送ったところ、開封率は一番低いものでも60%、高いものでは100%となり、決済の手続きを始めた方も続々といらっしゃいました。

—導入初年度から、効果を実感されていると。

2019年春募集において、Web上の出願手続き完了の件数は1,932件。KARTEの施策による接客経由ゴール数は888回です。つまり、Web上で出願手続きをした人々のうち約46%が、途中で何らかのKARTEの接客を経由していることになります。これは衝撃的な数字です。

Blog読了後に、LINEのともだち追加への誘導を出す接客イメージ

KARTEがあるから、思い切り“失敗”できる

—出願手続きを完了をした人の約2人に1人に影響を与えている可能性がある。数字がその効果を証明していますね。

そこもKARTEの良さですよね。どのアクションもスピード感を持って取り組め、自分たちが行った施策をすぐに数字で振り返ることができる。仮に代理店に頼んでバナー広告を10個掲載しても、ほとんど代理店側だけで施策が進んでいくため、私たちにはノウハウも貯まらず、結果的にPDCAのサイクルも長くなってしまうケースが多い。

KARTEの場合は、自分たちで手を動かしているので、アクションごとのノウハウが蓄積されるのはもちろん、PDCAが最短1日で回せるのもありがたいです。管理画面を見ればどの施策が良くて、悪かったのかが瞬時に把握できるので、チーム内で結果を共有するのも楽ですし、何より思い切り“失敗”できるのがいいです。

—思い切り“失敗”できる、ですか。

PDCAのサイクルを短く回せるから、やりたいことはどんどん行動に移せ、仮に失敗しても数字で振り返ることで後に活かすことができる。一気にホームランを狙うのではなく、小さい成功を繰り返していく大切さをひしひしと感じています。

—小さい成功を繰り返す。サイトを運用するうえで意識したいことですね。

私自身、サイト運用においては、Webの設計書を考え抜いて、システム開発をして……といった壮大なアクションを起こすことより、高速にラピッドプロトタイピング(高速試作)を繰り返すほうが大切だと思っています。

また、社会人は何よりも失敗を恐れますが、「学習」の場合はまぐれで成功したって意味がないですし、むしろ学びの機会が失われてしまいます。運良くテストで70点を取って合格するよりも、思い切り考えて50点で不合格になったほうが得るものは多いし、成功と失敗の差分を埋めていくほうが大切で、それが学びにほかならない。教育機関で働いているから、余計にそう感じるのかもしれません。

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—小さな成功を積み重ねていく大切さは、同じ部署のチーム内でも共有されているのでしょうか?

KARTEを導入してからは、その意識がより高まったと思います。実際、KARTEを活用してどんなアプローチができるのかを考える機会をチーム内で設けるようにもなりました。カスタマージャーニーのなかで、どんなタッチポイントがあり、各フェーズで顧客がどんな感情になり、どんなアプローチができるのか……。私含め4人で、KARTEでどんなアクションができるかをブレスト的に付箋で貼り出すこともしました。

—その際は、決まったペルソナを立てて?

このワークショップをやったときは、ペルソナを立てましたね。クリエイティブを尖らせるうえでは、ペルソナは重要な役割を果たしますし、ペルソナに近い人に刺さりやすくなりますから。ただ同時に、ペルソナだけを追いかけるのも良くないと思っています。KARTEを運用するなかでも感じることですが、私たちが実際にコミュニケーションをするのは“ペルソナ”ではありません。

—画面越しにいる、一人ひとりのお客様ですよね。

その通りです。なので、チームメンバーに求めることも、PCのスキルではなく、顧客の気持ちを想像する力なんですよね。多種多様なツールを使って、顧客のデータをエクスポートし、さらに分析をして……といったことに労力をかける必要はなく、みんなで一つの答えを共有できさえすればいい。だから、KARTEにアナリティクスの仕組みが組み込まれているのはとてもありがたいです。

—お話を聞く限り、作山様自身が「顧客体験」をいかに重視されているかが伝わってきます。

顧客を大切にしようとか、顧客の時代とか、最近いろんなところで言われていますが、私自身は「100年以上前からそうだったよね?」って思っています。近年のテクノロジーの発達によって、デジタルの世界でも顧客を「個人」として捉えられるようになってきたというだけの話なのかなと。高度経済成長期のときは、作れば売れる的な時代だったので、一人ひとりの顧客を意識しなくても良かったのかもしれないですけどね。今はもう違うので。

学生一人ひとりの学習状況に応じたCXの実現を

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—今後、既存の学生に対してもKARTEを活用する予定はあるのでしょうか?

もちろん検討しています。入学前の段階も大切ですが、それよりもケアすべきなのは入学後の体験です。実は、通信教育部でも入学後3ヶ月間で何も課題を提出しない学生さんが一定数いらっしゃいます。そういった方は、結果的に退学に繋がるケースも多いので、何か一つでも課題を出せるような働きかけができればなと。

—その“働きかけ”について、具体的に教えてください。

例えば、課題の提出を促すようなコンテンツを作り、学習用のサイトにKARTEを導入して課題未提出の学生さんをセグメントし、バナーを表示させるなどのアプローチができると思います。

先生方とも協同して、課題に取り組むうえでのノウハウを詰め込んだ記事や動画を作り、「まずはこんな課題に取り組んでみませんか?」といった提案をするのも良いかもしれません。

—なるほど。ターゲットを決め、タイミングはKARTEで自動化することで、最も重要であるコンテンツ内容に注力することができますね。

やりようはいくらでもあると思います。単位修得や課題提出の状況、所属する学科コースに応じて、特に入学して間もない時期の学習支援にKARTEを使いたいと考えています。仕事や家庭と学びを両立させる社会人の場合は特に、入学してからの生活に喜びや挫折がいろいろ待っているので、学生の方々一人ひとりの感情に寄り添ったオンラインコミュニケーションを継続的に提供していきたいです。代わりに課題を解くことはできないけど、伴走をすることならできますから。

—ありがとうございました。

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