顧客起点のアイデア発想とスピーディーな実装を内製化。大阪ガスマーケティングがKARTEで取り組むOne to Oneマーケティング
大阪ガスマーケティング株式会社 CX推進部は、顧客目線でのOne to Oneマーケティングの実現を掲げ、顧客体験の向上を目指しています。同社が事業成長に寄与するPDCAサイクルを内製化できるよう、プレイドではプロフェッショナルサービス「PLAID ALPHA」による伴走支援をKARTEの導入前から実施しました。伴走支援の始まりや、KARTEの導入背景、活用方法、成果、今後の展望などを伺いました。
Daigasグループは、大阪ガス株式会社を中心とするエネルギー関連企業グループで、主に都市ガス・電気などのエネルギー供給や、暮らしに関連するサービスを提供しています。同グループにおいて、主に家庭向けのエネルギー商品・サービスの販売促進や顧客サポートを担うのが大阪ガスマーケティング株式会社です。
大阪ガスマーケティングは、オンラインでの顧客接点強化に注力し、サービスサイト・会員向けサイト・アプリといったさまざまなチャネルを運営しています。同社はこれらのチャネルにおいて、顧客とのコミュニケーションをより豊かなものとするためにKARTEを導入。CX推進部は、KARTEで得た知見をチャネルごとに異なるチームの垣根を超えて共有し、効果的な施策を素早く実行しています。
今回、大阪ガスマーケティング CX推進部の堀 祐二さん、谷 祥太さん、三浦 玲子さんのお三方に、導入の背景や当初の課題、実際の施策について詳しいお話を伺いました。
「地元のインフラ」がWeb集客にも注力。もっと大きな柱に
最初に、貴社の事業内容について教えてください。
堀:大阪ガスマーケティング株式会社は、2020年の4月に大阪ガスから分社化して立ち上がった組織で、現在は家庭向けのサービスにまつわる業務一式を大阪ガス株式会社から受託しています。委託か自社かという区別は特に設けておらず、Daigasグループの一員として、ガスや電気の販売からガス器具の提供をはじめ、プロモーションなどを展開しています。
みなさんの役割を教えていただけますか。
堀:私は、CX推進部プロモーションチームのマネジャーとして、テレビCMを中心としたマス向けのプロモーションから、Webサイトの制作・運用やWeb広告運用といった業務、さらに自社SNSの運用まで、幅広い範囲を管掌しています。

大阪ガスマーケティング CX推進部 堀 祐二氏
谷:私はCX推進部の企画推進グループというチームに在籍しています。エネルギーや固定通信から幅広いジャンルのサービスを提供するご家庭向けWebサイトの運用・管理を担当しており、お客様の利便性を高めるための施策を行っています。
その中でも私は固定通信の領域を担当しており、Web広告からの受け皿となるLP(ランディングページ)の制作・運用をはじめ、Webサイトの改修を行っています。また、各種申し込みフォームの改善も担当しています。入社してまだ1年半ほどですが、前職のアパレルメーカーではECサイトやコーポレートサイトの運用を担当していた経験もあり、現在の業務を担当することになりました。
三浦:同じくCX推進部のマイ大阪ガスグループというチームに在籍しており、会員様専用サイトでお客様とのコミュニケーションを活発化するための業務を担当しています。たとえば、閲覧いただいているコンテンツからお客様のニーズを把握し、興味や関心に合わせた情報をお届けするなどの施策を行っています。
デジタルに注力するようになった背景はどのようなものだったのでしょうか。
堀:分社化を機に、従来から地元のインフラを担う企業として強みであったオフラインの営業活動だけでなく、Webを主要なチャネルに育成する方針となりました。コロナ禍の影響もあり、オフラインのみに依存した事業展開はリスクが高いと判断しました。これは多くの企業で同様の状況だったと思われます。
こうした経緯でCX推進部の各チームが「オンラインの強化」に取り組んでいます。これまで通りマス向けのプロモーションでも認知を獲得する一方で、Web上でも丁寧なコミュニケーションを追求したい、という方針からOne to Oneでのアプローチが可能なKARTEの導入に至りました。
KARTEの導入前にはどのような課題がありましたか?
谷:Webサイトに関する改善のアイデアが浮かんでも、すぐに実行に移せないことが大きな課題でした。以前は、Webサイトの運用や改善をグループ会社に依頼していたため、外部との連携が前提の体制でした。
そのため、思い浮かんだアイデアを試す、施策の結果を踏まえて改善につなげる、といったPDCAサイクルがどうしても遅くなってしまいます。試してみたい施策は多かったので、それらを素早く実行してWebサイトを改善していく必要がありました。

大阪ガスマーケティング CX推進部 谷 祥太氏
導入はどのように進んだのでしょうか?
堀:プレイドさんには、導入の前からPLAID ALPHAの方々に伴走をお願いして、KARTEの導入をはじめとする弊社のCX変革を全体計画や設計から実行まで、一気通貫で支援していただきました。
まずは、事業のボトルネックを洗い出す議論を行う段階からスタートし、事業成長に寄与できるポイントを整理し、その解消のために施策を企画し、実行していくという流れで検討を進めていきました。「PDCAサイクルを素早く回したい」というのが導入のきっかけですが、意味のないことをスピーディーに進めても仕方がありません。具体的な施策に至る前から一緒に考えてもらえて、非常に助かりました。
Webサイト改善を内製化し、顧客目線でさまざまな施策を実行
KARTEを通じて、どのような施策を実行しているのか教えてください。
谷:各商材・サービスの拡販はもちろんですが、お客様に向けて、情報をわかりやすくお伝えするための改善施策も実行しています。固定通信ジャンルで言いますとたとえば、サービス提供側として当たり前のように使っている「G(ギガ)」という言葉の見直しを行いました。
「そもそも、この “G” ってなんのこと?」とお考えになるお客様もいらっしゃるのでは、と仮説を立て、ページ内に「ギガ」を明確に理解するための埋め込みを実装したところ、しっかりと効果が見られました。

谷:また、固定通信の料金プランを掲載しているページに、KARTEを使って診断コンテンツへの遷移ボタンをポップアップで訴求してみたところ、お申し込みの数が増加したという例もあります。当社の固定通信サービスは選択肢の多さがメリットではありますが、逆にプランが多すぎてどれが自分に合っているのかわからないという課題もありました。
Webサイトを訪問するお客様は、「今より良い固定通信の回線を契約したい」というモチベーションをお持ちなので、各プランの情報を整理して、わかりやすくすることで、あとは自然にお申し込みにつながることが分かりました。
こうした考え方のもと、実行した施策が固定通信の料金プランページに来訪したお客様に対して、プランの解説バナーを「俯瞰図」として表示するというものでした。サービスページ内に固定通信の料金プランの一覧ページがあるのですが、どうしても情報量が多くなってしまい、一目でプランを比較できる状態ではありませんでした。
お客様は上に下に何度もスクロールしているうちに要点を見失ってしまいます。一目で料金プランの全体像をつかめるようにと、KARTEを使って料金プランの解説バナーをサービスページ内に表示しました。

料金のプランの比較画像を埋め込んだイメージ。赤枠内の画像をKARTEで埋め込み
谷:実はこの施策は一度、LPで試して効果があった施策でした。以前であれば、他のWebサイトで同じ施策を実行するにも時間がかかっていたのですが、KARTEのおかげでサービスページにも素早く反映させることができました。
三浦:谷さんのチームで良い結果が出たバナーは、会員様専用サイトでも活用しています。ノーコードで使えるKARTEのおかげで、専門スキルがなくてもすぐにサイト上に表示できるので助かります。チーム間で結果を連携することで、訴求軸やデザインなどを一から検討する必要がないのも、大きな変化だと感じています。

大阪ガスマーケティング CX推進部 三浦 玲子氏
三浦:KARTEは、一人ひとりのお客様に合わせた情報提供にも活用しています。たとえば、よりお得な料金プランをご案内する場合でも、料金プランを調べていらっしゃるタイミングにあわせてアプローチするなど、お客様が情報を必要とされているときに、必要な情報をお届けできるよう試行錯誤を重ねています。
他にも、ご契約いただいているサービスにあわせた情報をお伝えする施策も行っています。大阪ガスではガス・電気・固定通信などのインフラサービスを提供しており、複数のサービスをご契約いただくとお得になる料金プランをご用意しています。お客さまごとにご契約いただいているサービスが異なりますので、ご契約状況にあわせてのメッセージ配信や、どのようにお伝えすると目にとめていただけるかのA/Bテストなども行っています。

ガスと電気をまとめるとお得になるという訴求をする接客例
お客様の属性や閲覧いただいているコンテンツなどにあわせて、お客様にお役立ていただける情報を提供できる施策はまだまだあると感じています。サービスサイトにおいても、会員サイトにおいても、KARTEを活用するとお客様に合わせた情報提供が可能なので、それを前提に日々さまざまな施策を検討しています。
他にも活用事例があれば教えてください。
三浦:「マイ大阪ガス」では会員様にお楽しみいただくための記事コンテンツを配信しているのですが、実際に会員のみなさまにご満足いただけているかの把握がしづらい状況でした。
記事の最後にアンケートフォームなどを設置しても、ご回答いただくのは難しいだろう、という考えもあり、実装の優先度を下げて後回しにしていました。しかし、KARTEを導入したことで施策の実行ハードルが大きく下がり、「試しにやってみよう」とアンケートを設置したんです。結果としては、予想に反して多くのフィードバックをお客様からいただけました。
記事を最後までご覧いただいている方にご回答いただきたかったので、アンケートを出すタイミングを細かく調整できるのが大変嬉しい機能でした。記事の9割あたりまでご覧いただくとアンケートを表示するという設定も、すぐに対応することができました。毎回、記事制作チームは、次は何を記事にしようかと、企画に悩んでいましたが、お客様からの直接のお声はとても参考になっています。
アンケートの回答も含めて、各記事を評価しているのでしょうか。
三浦:アンケートを出すことが容易にできるので、お客様の反応を知りたい記事はアンケートを組み込み、評価をいただくようにしています。アンケートが表示される回数により、どれくらいの方が9割あたりまで読んでくださったのかも把握できるのもありがたいです。
記事の最後にアンケートを出す接客例
KARTEを通じてチームが顧客目線を持ち、アイデア発想も活発に
複数のチームで顧客のための施策を次々と実施されていますが、なにか取り組んでいることはあるのでしょうか。
谷:お客様とのOne to Oneのコミュニケーションの質を追求するようにしています。そのために実施したことの例を挙げると、PLAID ALPHAの方々にサポートいただいて開催した「ユーザー体験ワークショップ」があります。
以前は、お客様の課題抽出が十分ではなく、その結果、Webサイト上にも使いにくい部分が残された状態となっていました。こうした課題を解決するために、顧客体験を軸としてKARTEの施策のアイデアを網羅的に洗い出す必要があり、そのためにワークショップを開催しました。

ワークショップはどのような内容なのでしょうか?
谷:お客様がお手続きをする際に、「どのような課題を持って」「どのようなページにアクセスして 」「どのような流れでお手続きをするか」などを深く知るためのワークショップで、ユーザーになりきる人と、それを観察する人に分けて課題を抽出しました。
該当するページの運用を担当していない社員がお客様に扮してページにアクセスし、画面を操作するのを全員でモニタリングします。お客様の行動を動画で可視化する「KARTE Live」に近い体験なのですが、KARTE Liveのアカウントを作る前に一度自分たちでも試してみるために企画しました。
その結果、KARTEで解決する課題以外も含めて、さまざまな課題を抽出できました。「LPはあまり見ないですぐにフォームに遷移した」「このフォームは使いづらいよね」「スマホで入力する時これ困るよね」など、さまざまな声が挙がりました。運営側として申し込みフォームをいちユーザーになりきって体験するという機会を設けたことがなかったので、その点でも良い機会だったと思います。私を含めて、全員のお客様の体験に対する目線が大きく変わりましたね。

堀:ワークショップでは、複数のチームから参加しているメンバー全員でカスタマージャーニーマップを作ってくれていたのも覚えています。
ワークショップ前から、各々の頭の中でイメージがあったとは思いますが、こうした場を設けてお客様に対する理解を揃えることで、その後の議論がより円滑になりました。
お客様に対する理解が向上したことで、先ほどお伝えしたようなさまざまな施策のアイデアもでやすくなり、KARTEを使って素早く実行できるようになりました。KARTEをチームで最大限に活用するための環境を整えるきっかけになったと思います。
ユーザー体験会のほかに、KARTEの導入後にチームに生まれた変化はありますか?
谷:KARTEというプロダクトの一番の長所は、ノーコードである程度の実装ができる点だと思っています。なるべく外部の手を借りずに、施策の制作と実装を内製化して、PDCAを回せるようになったのは大きな変化ですね。
PLAID ALPHAのみなさんには、施策の評価と示唆出しもご支援いただいています。たとえば、施策を実施したかどうかでABテストを行っており、その差分から今年度中に続けた場合に何件積み上がるかの試算方法
などをフォローいただきました。
あと何件積み上げていく必要があるのかを具体的にイメージできるようになったことで、次のアクションにも移しやすくなっています。こうした施策の評価の仕方のインプットや、評価のためのフォーマットなどを提供いただいたおかげで、さらにPDCA速度が上がりました。
堀:内製化できたことによってチームのコミュニケーションも活発になりました。以前は無意識のうちに「課題を指摘してもすぐに改善できないだろうから」と、気付いたことがあっても口をつぐむ場面もあったかもしれません。今では、いろいろなメンバーが思いついたアイデアを積極的に提案してくれるようになりました。
チームの全員が参加するワークショップも定期的に開催しているので、KARTEを使ってできること、できないことの理解度は、チーム全体で一定のレベルに達していると思います。実務でKARTEを使っていない人でも、KARTEの活用に関する具体的な意見を出せる土壌が育ってきたなと感じますね。

その状態に到達するまでに苦労したことはありましたか?
堀:いくらノーコードとはいえ、ITツールに対する知識のあるメンバーとそうでないメンバーとでは習熟度に差が生まれますから、ツールを扱うスキルの均一化には時間がかかりました。現在、ポップアップなどのクリエイティブ制作には5〜6名が携わっていますが、アカウント数は20名前後。今後も継続的にフォローして、みんなが使えるものにしたいですね。
谷:KARTEの基本の操作を習得することで、さまざまな施策が実施できるようになり、PDCAの速度は次第に上がっていきます。また、それらのノウハウは蓄積されていく中で、「俯瞰図」のような施策を別のチームに横展開できるのもメリットだと感じています。
三浦:スピードは出ていますね。以前なら「やるかどうか悩む」というレベルの施策も「とりあえずやりましょう」と走り出すことが増えてきました。クリエイティブも社内で共有されているので、バナーを1枚出すだけなら「とりあえずやろう」と素早く動くようになりました。
セグメントごとの対応ではなく、本当の意味でのOne to Oneをやろう
最後に、今後の展望について教えてください。
谷:引き続き、ガス・電気・固定通信などのサービスへのお申込数を増やすことに注力していきます。加えて、Webサイト全体のユーザビリティ改善もこれまで以上に取り組んでいきたいと考えております。
三浦:私の担当する会員様専用サイトでも、お客様にとってお得だからお伝えしたい情報も、お客様によっては今は不要だったりもするので、線引きが難しいと感じています。お客様が求めていることに向き合いながら、ビジネスとしてのバランスを取ることを意識していきたいですね。

堀:オフラインの営業では、お客様が何かを購入したあとに自然とお礼の言葉をかけられますが、Webサイトではこうしたコミュニケーションが起きるとは限りません。きっとまだ改善の余地があります。
大きな方向性では、部署やチャネルといった区分を取り払って、一人ひとりのお客様に向き合う「本当のOne to One」を目指していきたいと考えています。今年度からマスプロモーションが大阪ガスから当社に移管されたことも、お客様に向き合おうとする姿勢の表れです。
それは、ただ売って終わりではなく、本気でお客様に向き合い、伴走するということ。プレイドさんと我々の関係もある意味ではそうかなと思います。私たちを本気で支援してくれる担当者がいて、その方を信頼して伴走をお願いしている。ただツールを売るだけであれば、ここまでの関係を築けなかったなと感じます。
私たちも同じようにお客様と密にコミュニケーションをとりたいと想像しています。製品の修理やメンテナンスの現場では、「その後お変わりはないですか」というような声かけが自然に行われます。こうしたコミュニケーションは、売り上げには直結しませんが、双方にとって良い体験ですよね。こうした良い体験を、私たちが担当するデジタルマーケティングの領域でも実現していきたいと思います。