「それ、KARTEでできるんじゃない?」MaaSアプリ「my route」展開のトヨタファイナンシャルサービスで広がった意識の変化

トヨタファイナンシャルサービスが提供するMaaSアプリ「my route」。アプリの開発やグロース施策の展開に多くのリソースを割けない中、KARTEを活用したことでユーザーエンゲージが向上し、DAUが倍増。今回は、my routeの運営を担うイノベーション本部 モビリティーサービスグループ シニアマネージャーの甲斐沼大輔さんと同グループ マネージャーの豊田航太郎さんに、導入理由から活用方法、社内の変化などを伺いました。

トヨタファイナンシャルサービス株式会社が提供する、国内最大級のMaaSアプリ「my route(マイルート)」。アプリの開発やグロース施策の展開に多くのリソースを割けない中、KARTEを活用したことでユーザーエンゲージが向上し、DAU(デイリーアクティブユーザー)が倍増しました。

my routeアプリをグロースさせるうえで重要なのが、地域の情報やチケットを提供してくれる「地域パートナー」との取り組みです。KARTEで解析したデータを可視化して地域パートナーへ提供し、my routeの価値を伝え続けています。

KARTEを活用し続けた結果、社内から「KARTEでできるんじゃないの?」という相談が相次ぐようになり、組織の意識が変化しました。

my routeの運営を担う、イノベーション本部 モビリティーサービスグループ シニアマネージャーの甲斐沼大輔さんと同グループ マネージャーの豊田航太郎さんに、導入理由から活用方法、社内の変化などを伺いました。

トヨタファイナンシャルサービスの新しいチャレンジの1つ「my route」

はじめに、おふたりの自己紹介をお願いします。

甲斐沼:トヨタファイナンシャルサービスには、2020年4月にジョインしました。イノベーション本部で、モビリティーサービスグループのグロースハックとデータ分析チームのリーダーをしています。

豊田:私はもともと、鉄道会社で勤務していました。2020年7月にトヨタファイナンシャルサービスへ移ってきたという経歴です。甲斐沼がリーダーを務めるデータ分析とグロースハックのチームで、KARTEの配信設定やデータ分析を担当しています。

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トヨタファイナンシャルサービス株式会社 イノベーション本部 モビリティーサービスグループ シニアマネージャー 甲斐沼大輔

甲斐沼:現在、モビリティーサービスグループでは「my route」というMaaSサービスを展開しています。トヨタファイナンシャルという金融サービスをしている会社が、次の事業領域を目指すうえでの新しいチャレンジの1つです。

豊田:my routeには移動総量を増やし、まちの賑わいを作り出すというビジョンがあります。my routeから得られる知見を、いかにトヨタグループに取り込んで生かしていくか。これを考えることが、私たちのグループの仕事です。

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my routeの概要

具体的な業務内容について教えてください。

甲斐沼:KARTEの運用やレポート項目の作成など、分析環境の地盤づくりをしています。

他には、グロースハックの施策やカスタマージャーニーを考えています。現在は、これからどういうところにオンボーディングをしていくかを設計しているところです。

豊田:my routeのコンテンツがどのように使われているか、クエリを書いて得られたデータを分析しています。例えば、おでかけ先を特集した記事をmy route上に掲載していますが、実際にどのように記事が見られているかを調べながら、地域の事業者の方々と一緒になって、どんな記事が読者の心に響くかを一緒に考えています。

「すべての人に移動の自由を」をビジョンに、地域へ貢献

my routeのサービス概要について教えてください。

甲斐沼:my routeは、移動する目的を持ってもらうためにはどうしたらいいのかを考えて提供しているアプリです。「おで活」をコンセプトに2023年1月にアプリをリニューアルしました。おでかけ情報の提供やおでかけ時に必要なルート検索、デジタルチケット機能を備えており、ログインしなくても主要機能が使えるようになりました。

私たちには「すべての人に移動の自由を」というビジョンがあります。人が移動しやすくなって移動総量が増えると、街や地域がにぎわいます。そういう形で地域に貢献したい、という思いを持って提供しているサービスです。

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トヨタファイナンシャルサービス株式会社 イノベーション本部 モビリティーサービスグループ マネージャー 豊田航太郎

豊田:人の移動を促してまちや地域ににぎわいを生むという意味では、私たちにとって地域パートナーのみなさまは重要な存在です。my routeはプラットフォームを提供し、地域パートナーのみなさまからその利用料をいただきながら、各地域の住民や観光者に向けた交通チケット、地域の魅力を発信する記事などを提供いただいています。そのために必要な企画や折衝などを、地域パートナーのみなさまと協力し取り組んでいます。機能で足りないものがあれば、必要に応じて私たちがプラットフォームを強化していくというモデルです。

my routeのユーザーには、どのような体験をしてほしいと考えていますか?

甲斐沼:おでかけの際に、my routeをポケットに入れてもらっているイメージですね。必要であれば電車やバスの時刻表を見ていただき、お昼休みにはランチの情報を見てもらいます。週末になったら、子どもと一緒に出かける先の記事を見てもらいたいと考えています。

これらに加えて今後は、どこかにでかけたいと思ったら、そこのチケットを買ってもらったり、経路の提案をしたりしていきたいです。また、でかけた先でポイントがもらえるなど、よりよい体験を提供できればと思っています。おでかけ前から帰るまでの充足感を高めていく施策に取り組みたいです。

KARTEを導入した決め手は「エンジニアでなくても使えるから」

KARTEを導入することになった経緯を教えてください。

甲斐沼:アクティブユーザーを増やすための施策として、プッシュ通知をしたいと考えていました。それを開発担当に話したら、当時は全ユーザーにプッシュ通知が送られてしまう仕様だと言われてしまいました。

やりたいことに対してリードタイムが長く、ハードルも高いといった状況だったため、それらを整理できるツールが必要でした。必要としていたのは、「ユーザーとコミュニケーションできる」「開発エンジニアがいなくても運用できる」「イベントでデータを取って可視化できる」といった機能です。データに関しては、OSSを使ってBIツールで実現することも考えました。でも、稟議を上げたり環境を用意したり、そもそもシステムの運用がすごく大変です。

これらの内容をもとに、いくつかのツールを比較検討した結果、KARTEを導入しました。

比較検討した結果、KARTEを選んでいただいた理由は何でしょうか?

甲斐沼:わかりやすくて、エンジニアでなくても使えるからです。別チームの方にお願いすると、どうしてもスピーディーに動けないので、自分たちでできる状態にすることが重要でした。

そのうえで、プッシュ通知機能やデータの可視化機能が必要要件としてありました。あと、プレイドの営業担当の方のサポートもよかったですね。会社としてこのようなツールを入れるのが初めてでしたので、機能だけではなく、社内の納得を得て稟議を通すための工夫など、いろいろなことを相談させてもらいました。

豊田:私みたいにエンジニアではない人間でも、使ってみると普通に使えました。慣れると、どんどん使えるようになりましたね。

KARTEを導入して施策を実行した結果、DAUが倍増

2020年11月にKARTEのトライアルを開始し、2021年4月から本導入となりました。

甲斐沼:そうですね。私がジョインして1年でようやく本導入できました。プッシュ通知がやっとできるようになり、各種の数値も見られるようになりましたね。

そのあと、地域パートナーのみなさま向けにmy routeの各種データやKARTEで解析するデータをまとめたレポートを提供するため、KARTE Datahubも導入しました。いまはそれをベースに、スプレッドシートと連携してレポートを提供しています。このレポートで、各パートナーが実施した施策の効果がひと目で分かるし、次の企画のタネにも使えます。

豊田:2021年4月以降、社内体制や業務の関係でKARTEに触れない時期もありましたが、レポートティングやデータ分析での活用に関して、2022年の春から本格的な取り組みを始めました。

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甲斐沼:それぞれに役割を持たせて任せる仕事を決めていったことで、2022年10月からは担当者がプッシュ通知を自分で考え、担当だけで打てるようになりました。ある程度メンバー全員にKARTEの操作が身についてからは、チームメンバーが月に1回くらい集まってプッシュ施策を話し合っています。あとは、カレンダーに埋めてくれればやっていいというライトな感じです。

その結果、1地域に対して月8本のプッシュ通知を実施できるようになりました。ありきたりな情報ではなく、エリアに属した情報を提供できていて、成果につながっています。

豊田:大きく分けてエリアが5つあるので、月に40本くらいのプッシュ通知を実施できました。この効果もあり、1年でDAUが倍増しています。運用パートナー企業のDearOneさんと協力体制を組んで、定期的に施策を回しています。

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プッシュ通知のイメージ

豊田:定期的に施策をおこなうことで、開封率の高い文言の傾向もわかってきました。例えば、誘うイメージです。「〇〇してみないですか?」という文言は効果が高いです。昨年、チームに加わってくれたメンバーのセンスがいいんです。

甲斐沼:エース誕生の瞬間でしたね。10月にチームへ入ってもらって、10月中旬から担当してもらいました。私たちの作ったプッシュ通知施策を見せて、自分でいいと思う内容を考えてもらいました。

これまでは金融の仕事をしていて、アプリに関する業務については未経験者でしたが、やってみたらうまくいったんですよね。さらに、うまくいった施策のデータをもとに、メンバーでも振り返って改善し続けています。うまくいったので伸ばしたい地域を担当してもらったら、開封率が倍増しました。

Datahub BIのおかげで、1日かかっていた作業が1時間に激減

データの可視化はどのようにされているのでしょうか?

甲斐沼:データの可視化にはDatahub BIを使っています。よかった点としては、みんなが好きなときにデータを見られることです。営業やマーケティングのメンバーが数値を見たいと思っても、すぐに見られないと人は行動を起こせません。そのハードルを取り払えたのは、とてもよかったです。

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ダッシュボードのイメージ

他にもクエリを事前に書いておいて、各エリアの営業のメンバーが自由にダッシュボードを使えるようにしました。見たいエリアとチケットを選ぶと、その人たちのほしいデータが参照できます。営業の人が必要なときに必要な情報を自由に見られるので、営業の時間もこちらの時間も短縮できています。

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豊田:そこは大きいですよね。「あのデータがほしいんだけど」と言われても、従来のやり方だと加工して渡すまでに時間がかかってしまいます。エリア数が12あるので、それぞれの担当から依頼が来ると、それだけで膨大な時間がかかってしまいます。Datahub BIのおかげで、工数が減りました。

工数はどれくらい減ったのでしょうか?

豊田:1日くらいかかっていたレポート作成が、約1時間で終わるようになりましたね。地域パートナー向けに、毎月のDAUやチケットの売れ行きをレポーティングしているのですが、以前はGoogleアナリティクスのデータをもとにレポート作成をしていました。そのときは、担当エリアのレポートを作るのに1日かかっていました。

でも、レポート用のデータをKARTEに移行し、作業を定型化したことで、おおよそ1時間で終わるようになっています。KARTE Datahubのジョブフロー機能を使っていて、Googleドライブ上でプレゼンテーションの更新ボタンを押すだけで、その月の数字が出てきます。

甲斐沼:これは感動しましたね。ジョブフローがないと、やっていけません。レポーティングの工数が減った分、内容を拡張できればと考えています。

開発にもKARTEを活用いただいているとうかがっています。

甲斐沼:イベント計測機能を実装しました。社内でこの機能を開発する場合、長いと2か月くらいかかってしまいます。KARTEの「ビジュアルトラッキング」機能を使うことで、1週間後にはある程度の計測ができるようになりました。ネイティブアプリ側の実装なしにできたのはよかったですね。

あとは、ポップアップ機能も活用しています。my routeのポップアップの表示パターンは、単純にオンボーディングやグロースというだけではなく、注意喚起としての要望もあるので、そこにKARTEを活用しています。

豊田:去年、台風で宮崎の道路が崩落し、公共交通が不通になりました。そのエリアがmy route上で売っているチケットの利用可能範囲だったため、「現在運行見合わせ・チケットの利用ができません」という注意喚起を急いで出してほしいというリクエストがありました。一からそれを開発するとなると時間がかかってしまうため、KARTEで注意喚起のポップアップが出すことで、急なリクエストにも対応することができました。これはすごくありがたかったです。

「KARTEでできるんじゃないの?」チーム全体に生じた変化

KARTEを使ってできることへの要望が社内からあがってくることはありますか?

甲斐沼:マーケティングチームからの相談で、ジオターゲティング施策にKARTEを活用しました。たとえば、豊田スタジアムへサッカーを見に来た人や横浜のイベントに参加した人に向けて、ポップアップ通知で特典をお渡しする施策などです。

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ポップアップ通知施策のイメージ

豊田:他のチームの方から「KARTEで何とかできる?」と相談されるようになりましたね。

甲斐沼:自社で開発する場合は時間や人手などのリソースがかかりますが、KARTEであれば、さくっと試せます。まずはKARTEで試してみる。できなかったら、開発に回すというケースが多いです。手段としてKARTEを選べることが当たり前になっています。

豊田:とても多くの相談が来るので、うれしい悲鳴ですね。できないと言ったほうが楽ですけど、大体のことはできてしまいます。

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KARTEで解析したデータを可視化し、my routeの価値を高めたい

今後、サービスとして目指していきたい姿と、それを実現するためにKARTEをどのように活用していくかを教えてください。

甲斐沼:2023年1月にmy routeをリニューアルしたので、さらにユーザーを増やしていくためにいろいろな角度から試していきたいです。2023年度は、PDCAサイクルを回せる体制づくりと、ノウハウをためて、やり続けることを目標にしています。

今後はオンボーディングやチャーン対策、開封率の改善まで踏み込んでグロースさせていきたいです。加えて、トヨタグループの強みでもある「次世代のモビリティ」をサービスとして落とし込めるきっかけがあれば、どんどんやっていきたいと思っています。

豊田:私もユーザーを増やしていきたいと考えています。そのために、各エリアのユーザーがどのようにmy routeを使っているのかを知っていきたいです。

また、地域パートナーに向けて、どういう人がどのようにアプリを使っているのか、チケットがどこで買われているのかといったデータを提供し、人を動かす為に必要なことを一緒に考えることで、my routeの価値をさらに高めていきたいと思います。

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