用語解説

プッシュ通知の開封率を改善するには?成功の鍵は一人ひとりのユーザーに寄り添う姿勢

アプリマーケティングでおさえておくべき用語や施策のヒントを連載でお届け。プッシュ通知を利用したマーケティングの成功事例を紹介します。

CX Clipでは、アプリマーケティングでおさえておくべき用語や施策のヒントを、連載でお届けします。今回のテーマは「プッシュ通知」です。プッシュ通知を利用したマーケティングの成功事例を紹介します。

アプリのマーケティングに欠かせない「プッシュ通知」

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プッシュ通知は、アプリやサービスからユーザーが持つデバイスに送ることができる通知、またその仕組みを指します。

アプリから送られるプッシュ通知は、iOSでは「Apple Push Notification Service(APNs)」を、Androidでは「FCM(Firebase Cloud Messaging)」という仕組みを用いて、配信されます。複数存在しているプッシュ通知配信サービスを利用して配信する場合も、最後にはAPNsやFCMの仕組みを活用します。

アプリやブラウザを開いているときのみ表示される通知もプッシュ通知に含まれますが、区別するために、「アプリ内プッシュ通知/メッセージ」「ブラウザ内プッシュ通知/メッセージ」と呼ばれることもあります。本記事でも同様に分けて説明します。

プッシュ通知の表示方法も複数の種類があります。デバイス画面の最前面に表示され、ユーザーに操作を促す「ポップアップ」や、画面の上部や右上に表示される「バナー」、アプリやサービスのアイコン上に表示される「バッジ」などが代表的です。

プッシュ通知がアプリマーケティングにもたらす効果

プッシュ通知をうまく活用することで、アプリマーケティングにおいて、「既存ユーザーのアクティブ率を高める」「コンバージョン率の向上」といった効果が期待できます。

既存ユーザーのアクティブ率を高める

2018年に株式会社メタップスリンクスが実施したプッシュ通知に関する調査では、プッシュ通知を送信した場合と送信しなかった場合で、 翌日のDAUにおよそ1万人の差が出ました。

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参照:PR TIMES

既存ユーザーのなかでも、特に休眠ユーザーへの配信がアプリの再起動を促す上で効果的という調査結果もあります。下記のグラフは、プッシュ通知を送ったユーザー全体のDAUと、7日以上アプリを起動していない休眠ユーザーのDAUを比較したものです。休眠ユーザーほど継続率が高いことがわかります。

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参照:PR TIMES

コンバージョン率の向上

プッシュ通知は新規ユーザーや既存ユーザーにコンバージョンを促進する上でも役立ちます。例えば、アプリをダウンロードしたユーザーに会員登録を促す、タイムセールの開始を通知するなどが挙げられます。

2016年に実施された「ECプロモーション別消費行動調査」によると、直近1年間にECサイトで購入したことがある20〜50代の男女のうち、「ECサイトアプリのプッシュ通知が購入のきっかけになる」と答えた人は28.9%、20代に絞ると40.3%に上ります。

参照:コンバージョン率とは?CVRの平均目安や向上につなげる事例

プッシュ通知の開封率を高めるには?

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アプリプッシュ通知を効果的に活用するには、ユーザーが開封したくなる情報を届けることが重要です。

世界各国9億人を対象にしたAccengageの調査では、プッシュ通知の平均開封率は7.8%、iOSでは4.9%、Androidでは10.7%と、開いていないユーザーが多数派です。

国内のプッシュ通知に関する調査でも、プッシュ通知を受信しても良いという人は80%でしたが、そのうち「内容に興味があれば受け取っても良い」「気が向いたら受け取る」人が合わせて66%に上ります。また、通知が原因でアプリをアンインストールした経験のある人の割合も23%でした。

むやみに何度も配信したり、ユーザーにとって興味のない内容を送ってしまうと、逆効果になる可能性もあります。ユーザーの利用用途や興味関心に合わせ、「開封したくなる」プッシュ通知を追求していきましょう。

開封したくなるプッシュ通知のためには、以下の手順に沿って改善を繰り返すことが重要です。

プッシュ通知を送る目的を設定する

まずはプッシュ通知を誰に何のために送りたいのかを整理しましょう。既存ユーザーの休眠を防ぎたいのか、新規ユーザーのアクティブユーザー化を図りたいのかなど、目的によって適切なプッシュ通知は異なります。

送る対象を絞るためのセグメント分けする

プッシュ通知は、通知する対象のセグメントを決められます。設定した目的や対象に合わせて、セグメント分けを行いましょう。セグメント分けの軸は、アプリの起動回数やデバイス、利用目的、最終ログイン日などが挙げられます。例えば、既存ユーザーの休眠防止のためのセグメントなら、「最終ログイン日から一定期間が経過しているユーザー」などが設定できるでしょう。

最適な文言、送付タイミングをABテスト

目的や対象となるユーザーが決まった後は、ABテストを行います。ユーザーがいつどのような気持ちでプッシュ通知を開くのか仮説を立て、文章の内容や文体、長さ、配信日時、プッシュ通知のアイコン画像など、幅広い軸でテストしましょう。どの単語を前に持ってくるのかなど、細かい違いでも、結果が大きく変わることもあります。

開封率やDAUなど複数の指標から効果測定

プッシュ通知の効果測定は、目的に応じてどの指標を測るべきか変わってきます。例えば、プッシュ通知を開封しなかったとしても、通知をみてからアプリやWebサービスを開くユーザーもいるかもしれません。既存ユーザーのアクティブ率を上げたい場合、開封率が変わらなくとも、DAUが上がっていれば、一定成果は出ているといえます。

そのため、効果測定を行う際は、「開封率」だけではなく、「リーチ率」や「DAU」など、他の数値も計測しておきましょう。コンバージョン率やユーザーの継続率など、目的に合わせて「開封率」以外の指標もチェックします。

プッシュ通知を活用したマーケティング成功事例

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具体的にどのような成功事例があるのでしょうか。アプリ内の行動に合わせて柔軟にセグメントを設定できる「KARTE for App」の事例から、ピックアップして紹介します。

購入意欲が高いユーザーにオススメ商品を伝える

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ファッションECサイト「MIX.Tokyo」では、カートに商品を入れたまま離脱し、一定期間が経過しているユーザーに対し、おすすめの商品をアプリを開いていないときと、開いているときの両方でプッシュ通知でお知らせしました。その結果、クリックからの購入率は、他のどのプッシュ配信施策よりも高くなり、購入促進施策として継続的に配信しているそうです。

「KARTE for App」では、ユーザーの年齢や性別だけでなく、「カートにアイテムが入ったまま」、「カート内のアイテム合計金額が〇〇円以上」など、幅広いセグメントを設定できます。また、「カートにアイテムを入れてから〇時間後に配信する」など、特定のイベントの発生から一定時間が経ったユーザーへプッシュ通知を配信する機能もあります。

参照:事例|購入意欲が高いお客様だけにレコメンド商品をプッシュ配信(App)

アプリ未インストールの人にウェブでインストールを訴求

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「MIX.Tokyo」では、ウェブのユーザーにアプリの魅力を伝えるためにも、プッシュ通知を活用しています。アプリが未インストールかつ、モチベーションの高いユーザーにブラウザ内プッシュ通知を送信しました。

「KARTE for App」 とウェブ版の「KARTE」 を併用すれば、ウェブとアプリのユーザー行動を紐づけることができます。未インストールかつ直近1週間以内に2回以上来訪しているユーザーをセグメント分けし、文言やクリエイティブのABテストを実施。検証を重ねた結果、日別平均新規ダウンロード数は180%増加しました。

参照:事例|購入意欲が高いお客様だけにレコメンド商品をプッシュ配信(App)

ユーザーのモチベーションが高いタイミングで入力を依頼

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飲食店の求人・転職サイト「クックビズ」では、ユーザーのモチベーションが最も高い登録直後のタイミングで、アプリを開いていないユーザーに履歴書の入力を促すプッシュ通知を配信しました。また、文言や時間のABテストを実施。

改善の結果、会員登録直後の履歴書入力率は、iOSデバイスでおよそ50%増加しました。「KARTE for App」では、ユーザーのセグメント更新がリアルタイムで行われるため、ユーザーが配信直前に履歴書を入力した場合などに、通知が送信されることはありません。

参照:事例|アプリで新規登録を行った直後に、PUSH通知でユーザー情報の入力を促進(App)

特典がもらえるまでに必要なログイン回数を共有

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日本最大級のサンプリングサイト「サンプル百貨店」では、3回ログインするごとに、販売前の商品を予約購入するためのチケットを付与しています。商品には限りがあるため、ユーザーが欲しい商品を受け取れるよう、アプリを開いていないユーザーにログインを促すプッシュ通知を配信しています。

「KARTE for App」を用いて、あと1回ログインすれば先行チケットがもらえるけれども、アプリを開いていないユーザーに対して、プッシュ通知を配信しました。ユーザーにとってメリットのある通知を送ったことで、プッシュ通知経由のログイン率が3.5%と、従来よりも高い結果になりました。

参照:App|ログイン特典がもらえるまでに必要な残りログイン回数をプッシュ通知(サンプル百貨店)

プッシュ通知を活用したCX(顧客体験)の実現を

プッシュ通知を通して、適切なコミュニケーションを図ることで、ユーザーにアプリやWebサービスを、より快適かつ便利に利用してもらえるでしょう。短期的なMAUやコンバージョン率だけでなく、長期的なCX(顧客体験)向上を視野に入れ、プッシュ通知を活用していきましょう。

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