データをどう顧客体験に活かせるか? Databricks×プレイドが実現するAI時代のデータ基盤

AIの急速な普及や顧客ニーズの多様化に伴い、汎用的なデータ戦略ではなく自社のビジネスを変える力を持った独自のデータ戦略が求められる時代が到来しています。2026年7月9日、株式会社プレイドは、変革のリーダーによる共創的対話から新しい価値を探索するカンファレンス「X DIVE(クロスダイブ)2026」を開催しました。
「価値を創るデータとは何か」を全体テーマに掲げ、CDOやCMO、IT・プロダクト部門のビジネスリーダーに向けて開催された本イベント。本記事では、「データをどう顧客体験に活かせるか? Databricks×プレイドで実現するAI時代のデータ基盤とは」と題したセッションの模様をレポートします。
登壇者は、データブリックス・ジャパン株式会社 エンタープライズ第四営業部 部長の窪田 正典氏。モデレーターは、株式会社プレイド Ecosystem Partner Unit Manager の中野 康平が務めました。組織にありがちな「データの分断」を乗り越え、最新のAI基盤とCXプラットフォームの連携によっていかに顧客体験を向上させるのか、その具体的なアプローチに迫ります。
攻めのマーケティングと守りのIT。部門の壁が招く顧客体験の分断
データの活用が叫ばれて久しい昨今、多くの企業では未だに「本質的なデータの統合」に苦労しています。世界トップクラスのデータ・AIカンパニーであるデータブリックスの窪田氏は、数多くの企業と対話する中で見えてきたリアルな課題からセッションを始めました。
「マーケティングチームとIT部門の方々が同じ組織にいたケースはこれまで2社しかお目にかかったことがありません。大体は別々になっていらっしゃって、マーケティングチームがやりたいことと、IT部門がやりたいことがズレてしまうケースが非常に多いです」(窪田氏)

データブリックス・ジャパン株式会社 エンタープライズ第四営業部 部長 窪田 正典さん
売上の最大化や顧客体験(CX)の向上を目指し、新しいテクノロジーをいち早く試したい、攻めの姿勢のマーケティング部門。一方で、セキュリティリスクやコスト、システムの安定稼働を重視する守りの姿勢のIT部門。この分断が、データのサイロ化を引き起こし、結果として顧客のペインを生み出してしまいます。窪田氏は、データ活用に行き詰まっている企業の状況をリアルなエピソードで描写しました。
「ある企業で、購買履歴をもとに広告メールを配信しました。しかしそのお客様は、過去のコミュニケーションミスにより、コールセンターに対して『今後は連絡してこないでください』とすでに伝えていた方だったのです。コールセンターが見ている世界と、マーケティング部門が見ているデータが分断していた結果として起こった悲劇と言えます」(窪田氏)
システム中心の部分最適な仕組みでは、顧客の真の姿を捉えることはできません。「価値を創るデータ」を生み出すためには、まずこの分断を解消し、一貫した顧客体験へとつなぐ土壌を整える必要があると強調しました。
膨大なデータを繋ぎAIを民主化。KARTEとの共創が生む革新
ブレイクスルーの鍵となるのは、ツール導入にとどまらない「データとAIの民主化」と、パートナー企業との「伴走・共創」によるエコシステムの構築です。窪田氏は、著名な大手コーヒーチェーンにおける需要予測とサプライチェーン最適化の海外事例を挙げ、徹底した顧客理解とマインドセットの変化について解説しました。
従来、その企業では週次・集計レベルでの画一的なデータ処理しか行っていませんでした。しかし、サプライチェーンの最適化によってコーヒー豆の鮮度を保ち、一人ひとりの顧客に最適なタイミングで商品を届けるという「理想の顧客体験像」を再定義したことで、アプローチが劇的に変化します。従来のバッチ処理から脱却し、コーヒーメーカーのIoTセンサーデータや、店舗周辺の天候・イベント情報などの非構造化データも取り込み、日次・店舗・SKU(最小在庫管理単位)レベルへとデータの解像度を引き上げたのです。

ただし、こうした非構造化データを含む処理には、従来の1,700倍もの計算量が必要となります。そこで真価を発揮したのが、大量データを高速処理するDatabricks のプラットフォームでした。
さらにモデレーターの中野が、データブリックスとプレイドの共創が生む新たな価値について掘り下げます。
「すでにデータブリックス様を利用されている企業様から、KARTEとのシームレスなプロダクト連携を求められるケースが増えています。顧客の行動データなどが蓄積されているKARTE Data Hubのデータをデータブリックス上で管理し、裏側にある顧客ニーズを捉えた独自のレコメンドモデルを回していく。これが、これから推進していきたい一つのベストプラクティスです」(中野)

株式会社プレイド Ecosystem Partner Unit Manager 中野 康平
単にデータを一箇所に集めるだけでなく、「顧客が本当に求めているものは何か?」という問いを立てること。両社の強みを掛け合わせた伴走支援こそが、分断の壁を突破する原動力となると語られました。
予測精度向上で数十億円の成果。全社でデータを触り考える文化へ
徹底したデータ統合とAI基盤の構築は、定量的にも定性的にも目覚ましい成果をもたらします。先のコーヒーチェーンの事例では、きめ細やかな需要予測が可能になったことで、数十億円規模のビジネス効果が創出されました。しかし「最も重要なブレイクスルーは組織文化の変化です」と窪田氏は強調します。これまで一部の専門家やIT部門しか触れられなかったデータが民主化され、あらゆる部署のビジネスユーザー自らがデータを活用するようになったのです。
![[R3 12]Databricks×プレイドで実現するAI時代のデータ基盤とは X DIVE2026](http://images.ctfassets.net/ny33gje9xatd/5CrQSCSRKByidgTqxkVwWw/1ac488ff33cb0db835c20ff97274ed8c/0c8017d5-adce-437a-95e9-83b6622c2231.png?fm=webp)
「自然言語を用いたチャット形式の分析機能などを駆使し、現場のスタッフ自身が『先月との比較はどうなっているか?』と自ら問いを立てて深掘りするようになりました。部署横断で同じデータ基盤を見ることで社内に共通言語が生まれ、なぜ(Why)を考える文化が醸成されたことが、最大の収穫と言えます」(窪田氏)
AIが購買を代行する未来へ。次世代を見据えた価値を創るデータ

セッションの終盤、議論は「未来の顧客体験」へと広がり、窪田氏は次世代のプラットフォーム構想に触れ、非常に興味深い視点を提示しました。
「これから商品を買っていく主体は、人間ではなくなるかもしれません。AIエージェントが一人ひとりのリクエストに応じて最適な商品を選び、購買活動を行う世界がそう遠くないうちにやってきます」(窪田氏)
顧客の代理人となるAIエージェントに最適なデータを連携する一方で、デジタル時代だからこそ、その裏にある「リアルな人間の感情や熱量」を満たしていくことが求められます。リアルな接客の温かみや、顧客に寄り添う「人ならではの価値」が、より一層再評価されるようになるはずです。
最後に中野は、「価値を創るデータとは何か――その答えは、単なる膨大なログの集積ではなく、顧客への深い理解と『問い』から生まれ、組織の壁を壊す『血の通ったデータ』に他なりません」とコメント。
続けて「プレイドは、データブリックス様と連携したAIネイティブなデータ基盤の構築と、よりシームレスなプロダクト連携という2つのピラーを軸に推進してまいります。マルチチャネルのプロダクト群を基盤に、お客様の事業戦略から運用まで一気通貫でご支援し、新たな顧客体験を創造していきます」と力強いメッセージを送り、セッションを締めくくりました。