Event Report

AI を「自律的な組織のバディ」にするには? Gemini が導く、自社データによる「独自価値」の創出

指示待ちAIでの業務効率化に限界が見える中、今求められるのは事業変革を起こす「自社独自のデータ戦略」です。2026年7月9日開催のプレイド主催カンファレンス「X DIVE 2026」では、グーグル・クラウド・ジャパンの垂見周三氏とプレイドの中野康平が登壇。「価値を創るデータ」をテーマに、分断されたデータとAIを繋ぎ、自律型エージェントとしてCX向上や組織変革へ活かす最前線のアプローチを解説しました。

AI のビジネス実装が急速に進み、多くの企業が業務効率化に取り組む中、単なる「指示待ちのAI 」では生産性向上に限界が見え始めています。AI を導入したものの、期待したような事業変革に至っていないというジレンマを抱えている企業も多く、今求められているのは、汎用的な答えではなく、ビジネスを根底から変える「自社独自のデータ戦略」です。

2026年7月9日、プレイドは変革のリーダーによる共創的対話から新しい価値を探索するカンファレンス「X DIVE(クロスダイブ)2026」を開催しました。「価値を創るデータとは何か」を全体テーマに掲げた本イベントにて、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 パートナー事業本部リージョナル・アライアンス推進部 部長の垂見周三氏と、株式会社プレイドのEcosystem Partner Unit Manager 中野康平が登壇し、分断された企業のデータとAIをどのようにつなぎ、自律的なエージェントとしてCX(顧客体験)向上や組織変革に生かすのか、その最前線のアプローチを紐解きました。

「文脈の壁」を越えよ。AI導入が直面するサイロ化と疲弊の罠

現在、多くの企業がAIを日々の業務に導入していますが、現場には想定以上の「コスト」が隠れていると垂見氏は指摘します。それは、情報やAIが各アプリケーションの中に閉じてしまっているがゆえの課題です。

「AIの活用は、メール作成や要約といった『点』の効率化から始まりました。しかし、そこには『文脈の壁』と、アプリを切り替えるたびに生じる『ハンドオフ・タックス(画面切り替えの税)』が存在します」(垂見氏)

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グーグル・クラウド・ジャパン合同会社 リージョナル・アライアンス推進部 部長 垂見 周三さん

平均的なエンタープライズ企業は、実に250以上もの異なる SaaS やアプリケーションを利用しているといいます。メール、チャット、CRM 、ファイルサーバーなどが個別の境界線を持って起動している状態では、企業の全体像や文脈が断片化されてしまいます。

「アプリを切り替えるたびに AI の記憶はリセットされ、人間がコピペをして、もう一度前提条件を説明し直さなければいけない。1日数百回にも及ぶこの往復は従業員を疲弊させ、集中力を確実に削ぎ落としています」(垂見氏)

ユーザーがどれほど高性能なAIを採用しても、情報自体がサイロ化(孤立化)していれば、AI はその真価を発揮できません。システム中心の分断された環境こそが、顧客視点の欠如や、価値創造を妨げる最大のボトルネックとなっていたのです。

指示待ち AI から自律型バディへ。マーケティングにおける共創アプローチ

この行き詰まりを打破するブレイクスルーとして Google Cloud が提唱するのが、「エージェンティック・ワークプレイス・トランスフォーメーション」です。単に質問に答えるだけのチャットボットの時代は終わり、ゴールを理解する「文脈」、最適解を導く「推論」、実際にシステムを動かす「ツール」の3つを兼ね備えた自律的な AI システムが求められています。
この AI システムの中核を担うのが Gemini です。高度なセキュリティとガバナンスを標準で組み込みながら、多様なアプリを横断して自律的にタスクを遂行するハブとなります。

多くの企業はすでに多様なツールを組み合わせてマルチベンダー、マルチクラウドの世界でビジネスを展開しています。そのため Gemini を活用していくうえでは、すべてのレイヤーでパートナー企業と協力していくことが重要となります。プレイドはこれまでCXプラットフォーム「 KARTE 」を通じて徹底した顧客理解を支援してきましたが、 Google Cloud とのコラボレーションにより、データ活用のマインドセットそのものを変えようとしていると話す。

他方プレイドの中野は、「従来のように KARTE の中だけで1から10まで完結させる形ではなく、皆様がお使いのAIエージェントの環境から直接分析をかけ、そのままシームレスにアクションを設定する。皆様のお手元の環境に適した形で、サービスをご利用いただける環境を作っていきたいと考えています」と語っており、 Google Cloud をはじめとする様々な企業とのアライアンスの可能性に言及しています。

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株式会社プレイド Ecosystem Partner Unit Manager 中野 康平

プレイドと様々な企業とのアライアンスの結果、 AI が自社データを横断的に読み解き、「問いを立てる」段階からサポートする。――これにより、現場の担当者は作業に追われるのではなく、顧客の「裏にあるニーズ」を捉え、理想の体験像を再定義するための時間を創出できるようになります。

ツールの連携が数分で完結。自律的エージェントが促す業務の進化

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自律型エージェントを活用したアプローチは、現場の業務を劇的に変えつつあります。セッション内では、マーケティングやIT運用における変革のプロセスが示されました。

例えば、数日かかっていたマーケティング資料の作成も、エージェントへ指示を出すだけで、ROIの分析に基づいた顧客セグメント別のプレゼン資料を数秒で完成させることができます。

また、ITインフラの障害対応では、IT運用システムと人事システムの異なるエージェントが連携し、コンプライアンスをクリアした上で最適なスタッフの手配までを自動で完結させる事例が紹介されました。

そして、プレイドが提供する KARTE においても、大きな変化が生まれています。披露されたデモでは、 Gemini 上から「 KARTE のアナリティクス・エージェント」を用いて売上や顧客の離脱ポイントの分析を実行。具体的なインサイトを得た上で、Gemini の画面から切り替えることなく、特定のブランド購入者に絞ったキャンペーン配信設定を完了させる様子が示されました。

「本日お見せしたデモで実現できるのは、単なるマーケティング業務の効率化だけではありません。分析からアクションをシームレスに実行することで、ツールや部署ごとに断絶していた業務が一本化され、誰もが迅速に作業を行える環境が整います。しかし、真の価値はその先にあります。こうした効率化を基盤とした上で、なぜ離脱したのか、どうすれば LTV が向上するのかといった顧客理解に対する共通言語がチームをまたいだ形で生まれ、データに基づいた自律的な意思決定を行う文化が組織内に醸成されることが期待できます」(中野)

人ならではの価値に集中。エコシステムで描く顧客体験の未来

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データとAIを「指示待ちのツール」から「自律的な組織のバディ」へと進化させることで、企業はさらなる価値創造のステージへと進むことができます。

プレイドは、特定のベンダーに依存しない「オープン・バイ・デザイン」の哲学のもと、企業の AI 活用を推進しています。また、多様なツールが連携するエコシステムが広がることで、データのサイロ化は解消され、より精緻なパーソナライズ体験が実現可能となります。

AI がデータを繋ぎ、業務の複雑さを解消するデジタル時代だからこそ、浮き彫りになるのは「人ならではの価値」です。煩雑なデータ収集やシステム間連携のプロセスをAIバディに任せることで、人は顧客の感情に寄り添い、真に心動かすリアルな接客や、温かみのあるコミュニケーションに注力できます。

変革に挑むビジネスリーダーに向け、登壇者の二人は力強いメッセージでセッションを締めくくりました。

「システム統合に伴う摩擦を取り除き、オープンな環境でマルチエージェントのパラダイムシフトを推進する。私どもGoogle Cloud は、皆様の AI による変革を確かなものへと導く最良のパートナーであると確信しています」(垂見氏)

「どの企業様で何の製品を使われていても、 KARTE が柔軟に価値を発揮できるようエコシステムを広げていきます。各企業の皆様とお話をしながら、業務改革のためのエージェントを共に創り上げていければと考えております」(中野)

「価値を創るデータ」とは、決して分断された数字の羅列ではありません。部門やツールの壁を越え、人の思考とシームレスに結びつくことで初めて、顧客の心を動かし、自社のビジネスを変える強力な武器となるのです。

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