コホート分析とは?ユーザーの動向を正しく把握し、施策に活かす方法
ユーザーを細かく分けて数値をみる「コホート分析」。Google Analyticsを用いた基本的な分析方法を解説していきます。
Webサービスやアプリを事業として成長させるためには、アクセス数/起動数やコンバージョン数、コンバージョン率、リテンションレートなど継続的に計測すべき指標が多数あります。
それらの指標を分析する際、「初回アクセス/起動日が同じ」や「経由したキャンペーンが同じ」など、ユーザーを細かく分けて数値をみると、より正確にユーザーの動向を把握できます。
そのために用いられる分析方法がコホート分析です。今回はコホート分析とは何か、注目されている理由、Google Analyticsを用いた基本的な分析方法を解説していきます。
コホート分析とは?
「コホート」とは「同じ時期に近しい経験をしている人々のグループ」を指す言葉です。「コホート分析」は、もともと心理学や社会学において用いられており、世代や社会的な経験によって被験者を分け、行動や意識にどのような変化が表れるのかを調べる分析手法です。
Webマーケティングにおける「コホート分析」は、ユーザーを属性や条件でコホートに分け、ユーザーの動向を知るための分析方法として知られています。
ECサイトにおいて「同じキャンペーンを経由したユーザー」をコホートに分け、月ごとのコンバージョン率や購入金額の変化を追い、キャンペーンの長期的な成果を測る。アプリにおいて「ダウンロードした週が同じユーザー」をコホートに分け、週ごとのリテンションレートの変遷を追い、リテンションレートが改善しているかをチェックするなど。目的によってコホートの種類や計測期間はさまざまです。
「経由したキャンペーンが同じ」や「初回訪問/ダウンロードが同じ」といった条件だけでなく、性別や国、デバイスなどの属性によって、コホート分けする場合もあります。
コホート分析はなぜ重要なのか?
コホート分析は、近年のSaaSやサブスクリプションビジネスの登場・普及によって、さらに注目されるようになりました。SaaSとはクラウド上で利用するソフトウェアサービス。サブスクリプションビジネスとは消費者が製品やサービスを一定期間利用できる「権利」に対してお金を支払うビジネスモデルです。
SaaSやサブスクリプションビジネスは、ユーザーに継続的に利用してもらわなければ、利益を得られません。ユーザーの動向を正しく捉え、改善に活かす必要があります。そこでコホート分析が重要になります。
米シリコンバレーのデータ分析サービス「Exploratory」のIkuya Murasato氏は「チャーンレート」を例に説明しています。チャーンレートは、顧客のサービス解約率を示す数値です。
基本的にチャーンレートは新規顧客ほど高く、既存顧客ほど低い傾向にあります。そのため、ユーザー全体のチャーンレートを追っていると、既存顧客の比率が増えるにつれ、チャーンレートは改善したようにみえてしまうことがあります。
そこで、「ユーザーがサービスを購読し始めた時期」でコホート分けをし、購読時期が最近のユーザーほど、チャーンレートが低くなっているかを確認します。例えば、「2019年1月に購読を始めたユーザー」より「2019年7月に購読を始めたユーザー」のほうがチャーンレートが低くなっていれば、半年間でチャーンレートが改善したと正確に把握できます。
このように、コホート分析は、より正確にユーザーの動向を正しく把握するために、欠かせない分析方法なのです。
WEBサービスやアプリにおけるコホート分析
ビジネスモデルを問わず、Webサービスやアプリの改善においても、コホート分析によってユーザーの動向を深く理解し、施策に活かすことができます。
例えば、米国の子ども向けの教育アプリ「codeSpark」では、流入したキャンペーンごとにユーザーをコホート分けし、リテンションレートやチャーンレートを計測。継続的に行動の変化を追いました。
その結果、流入したキャンペーンごとに、コンテンツの達成度やリテンションレートに違いがあることがわかりました。同社は各コホートに合わせてアプリ内のコンテンツの難易度を最適化。その結果、リテンションレートを85%も向上させることに成功しました。
Google Analyticsを用いたコホート分析の方法
Webサービスやアプリの改善のためにコホート分析を始めたい場合、最も気軽に利用できるツールがGoogle Analyticsです。無料で簡単にコホート分析を行うことができます。
以下では、Google Analyticsを用いたコホート分析の基本的な方法を解説していきます。
コホート分析の管理画面
Google Analyticsの管理画面からサイドバー「オーディエンス」内にある「コホート分析」を選択すると、以下のようなページが表示されます。
赤枠で囲ったエリアで「コホートの種類」や「コホートのサイズ」「指標」「期間」を設定できます。
①コホートの種類
「コホートの種類」ではユーザーをコホート分けする条件を設定します。Google Analyticsでは「集客の日付」のみが選択できます。
②コホートのサイズ
「コホートのサイズ」ではコホートのサイズを設定します。「日別」「週別」「月別」を選択できます。
③指標
「指標」では計測する指標を設定します。1ユーザーあたりのPVや累計PV数、ユーザー維持率などを設定できます。
④期間
「期間」では計測する期間を設定します。コホートのサイズが「日別」なら過去7日から30日、「週別」なら過去1週から過去12週、「月別」過去1ヶ月から3ヶ月の間で設定できます。
同じキャンペーンを経由したユーザーのコンバージョン数を知りたい
コホートの種類を「集客の日付」、指標を「目標の完了数」に指定します。今回は過去3ヶ月間の数値をみると仮定し「コホートのサイズ」は「月別」を選びます。
次に右上の「セグメントの追加」から「新しいセグメントを作成」を選択。「シーケンス」を選びます。
「シーケンス」はユーザーを特定の条件で分けるための機能です。以下では、「シーケンスの開始」を「最初の通過地点」に、キャンペーン用のランディングページのURLを指定しています。これによって、最初にキャンペーン用のランディングページを訪れたユーザーのコホートを作成できます。
「保存」を押すと、以下のように、キャンペーンページのURLから訪問したユーザーの月別コンバージョン数が表示されます。
時間の経過にともなう維持率の変化を知りたい
維持率の変化を把握するには、コホートの種類を「集客の日付」、指標を「ユーザー維持率」に設定します。「コホートのサイズ」や「期間」は計測したい期間に合わせて設定します。
以下では、コホートのサイズを「日別」、期間を「過去7日」に設定し、2019年11月29日から12月5日までにサイトを初訪問したユーザーの数値を表示しています。
ユーザーがコンバージョンするタイミングを知りたい
コホートの種類を「集客の日付」、指標を「目標の完了数」に指定します。「コホートのサイズ」は「月別」を選びます。「コホートのサイズ」や「期間」は計測したい期間に合わせて設定します。
以下は、コホートのサイズを「日別」、期間を「過去7日」に設定し、2019年11月29日から12月5日までにサイトを初訪問したユーザーのコホート分析を行っています。
KARTE for Appでアプリのコホート分析を実施
アプリのマーケティングにおいて、より詳細なコホート分けを行いたい場合、KARTE for Appの「リテンションレポート(β機能)」を活用すると良いでしょう。
「KARTE for App」の「リテンションレポート(β機能)」では、より細かいコホートを設定でき、アプリにおけるユーザーのリテンションレートを追うことができます。KARTE for Appは、アプリ上で顧客行動をリアルタイムに解析、適切なコミュニケーションを図るためのプラットフォームです。顧客体験の向上をサポートするCXプラットフォーム「KARTE」が提供しています。
リテンションレポートではユーザーのログインやコンバージョンなど、特定のイベントが発生したユーザーに分けて、リテンションレートを把握できます。以下のような例があります。
- 30代以上 AND お気に入り登録を3回以上したことがあるユーザーの日ごとの継続率
- プロフィール登録完了 AND 詳細ページを合計5回以上みたことがあるユーザーの週ごとの継続率
- 特定ランク AND 特定の接客サービスをクリックした人の月ごとの継続率
ユーザーの変化を見逃さないための分析方法
コホート分析はユーザーの動向を正確に把握し、改善に活かすために有益な方法です。リテンションレートやコンバージョンの向上、ひいては顧客体験向上のために、ぜひコホート分析を実施してみてください。
KARTE for Appのリテンションレポートを活用してみたい方は、以下のページからお問い合わせください。
https://karte.io/product/app/