用語解説

CXにおけるKPIとは?顧客視点を意識した指標を解説

事業の健全性を判断し成長を加速する上で、多くの企業が目標に到達するまでのプロセスを定量的に計測する「KPI」を設定し、数値を追いかけています。

事業の健全性を判断する上で、定量的なデータは重要な役割を果たします。事業を成長させるために、多くの企業では目標に到達するまでのプロセスにおける目印として「KPI」を設定し、その数値を追いかけています。

関連記事:KPIとは?オンラインマーケティングの目標管理に欠かせない指標を解説

では、CX(顧客体験)を意識したKPIとはどのようなものでしょうか?今回は、顧客視点を持ったKPIについて参考になる情報を紹介していきます。

顧客への提供価値からKPIを決めるのは事業成長につながる

プレイド社が実施した「企業経営におけるKPIの位置付けと社員の認識に関する調査」における「KPIが何に基づいて決められているか」の設問では、1位が「全体的な数値目標からの逆算」、2位が「所属部署の数値目標からの逆算」となりました。

参照:KPI設定に「顧客への提供価値の最大化」があるビジネスパーソンの約8割が 「(自社の)事業が成長している」と回答!

同調査では「顧客への提供価値の最大化を重視して決めている」の回答は最下位。ですが、この顧客への提供価値の最大化を重視して決めているという回答者の78%が、「(自社の)事業が成長している」と思っていることもわかりました。

顧客への提供価値からKPIを決めることは、顧客の状態を測るだけでなく、事業の成長に関係していると考えられます。

CX(顧客体験)向上のために見るべき指標と取り組み事例

ではCX(顧客体験)を向上させるためには、どのような指標をKPIに設定するべきなのか。参考になる指標をいくつか紹介します。

ライフタイムバリュー(LTV)

ライフタイムバリュー(LTV)は、顧客生涯価値と訳され、「一人の顧客が、その取引期間を通じて企業にもたらすトータルの価値」を意味し、マーケティング指標の一つとして使われています。

関連記事:ライフタイムバリュー(LTV)とは?顧客との継続的な関係構築を表す指標を解説

新規顧客の獲得は、日本の市場が成熟化により難易度が上がっています。そのため、多くの企業が新規顧客にアプローチし続けるだけでなく、既存顧客との長期的な関係を維持に力を入れています。その顧客との継続関係を測る指標として、LTVが活用されているのです。

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カスタムチョップドサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」は、「熱狂的なファンをつくる」ことを目的に2014年に創業。一貫して顧客との関係作りを重視してきました。そのため、アルバイトスタッフでも「店舗のファンづくり=LTVの最大化」を考えるような店舗づくりを目指しています。この一例として、会員制度を導入することで、顧客の来店回数、LTVの変化を見ることができるようになりました。

参考:「接客から機械的な会話をなくしたい」ーークリスプ・サラダワークスが店舗のデジタルシフトを進める理由 | XD(クロスディー)

NPS®(ネットプロモータースコア)

NPS®(ネットプロモータースコア)は、顧客推奨度と訳され、これまで定量的な調査が難しかった顧客ロイヤルティを数値化するための指標です。

関連記事:NPS®(ネットプロモータースコア)とは?顧客ロイヤルティ指標を改善する方法

「自分の近しい人に商品をすすめるかどうか」をアンケートし、そのスコアをつけた理由も記載してもらうことで、定量的かつ定性的な分析が可能になります。NPS®の分析によって、自社の改善すべき優先課題だけなく、推奨度を上げている自社の強みも把握することができます。

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SMMLabの掲載記事より日用品大手のライオン株式会社のオウンドメディア「Lidea(リディア)」の事例をご紹介します。ライオンでは、このメディア運営を通じ顧客との関係構築の強化を目指し、サイトの評価指標にNPS®を採用しています。

NPS®を取得する際に、回答者がなぜそのスコアをつけたのかを明確にするため、「Lideaで得たノウハウを実践しているか」「ライオン製品を買っているか」といった、行動に関することも聞いています。このNPS®の分析を通じて、KPIを「会員登録の数」だけではなく、「ユーザーのLideaへの来訪目的」も追っていく方針へと変更したそうです。

そして、NPS®からロイヤルティが高いユーザーの特徴的な行動を抽出し、「NPS®が高まる行動」を逆算しています。この行動を促す施策を打つことで、更なる顧客ロイヤルティの向上を目指しています。

参考:「NPS(ネットプロモータースコア)」でKPIが変わった?!デジタルコミュニケーションの新機軸を目指すライオンのオウンドメディア戦略を聞く【後編】

注:ネット・プロモーター、ネット・プロモーター・システム、NPS、そしてNPS関連で使用されている顔文字は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

リテンションレート(定着率、継続率)

リテンションレートは、新規ユーザーのうち、一定期間内にアプリやWebサービスに再訪したユーザーの割合を指し、定着率、継続率とも表現されます。アプリやWebサービスを事業として成長させるためには、新規ユーザーを獲得するだけでなく、既存のユーザーに継続的に利用してもらう必要があります。そのために追うべき指標がリテンションレートです。

関連記事:リテンションレートとは?ユーザーを深く理解するために欠かせない指標

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MarkeZineの掲載記事によれば、フリマアプリの「メルカリ」では、ユーザーがメルカリに価値を感じ、継続的に利用してくれているのかを見るため、リテンションレートを最も重要な指標に位置づけ、改善に活かしているそうです。

同社のデータサイエンティスト石附氏は、その理由を「リテンションレートは、ユーザーがアプリに価値を見出したときにのみ向上する」からと説明しています。例えば、アプリのアクティブユーザー数は、プッシュ通知の配信によって一時的に伸びる可能性があります。

しかし、過度なプッシュ通知はユーザーにとってネガティブな体験となり、アンインストールにつながるかもしれません。リテンションレートは、ユーザーにとって価値ある体験を届けるために欠かせない指標なのです。

参考:なぜメルカリはリテンションを重視するのか アプリ市場への新規参入者が見るべき指標と競合調査のコツ

アクティブユーザー数(MAU・WAU・DAU)

ある期間のうちアプリやサービスを一回以上利用したユーザーを指す「アクティブユーザー数」。

関連記事:MAUとは?アプリのアクティブユーザーを示す重要指標を解説

モバイルアナリティクスのスタートアップ「Quettra」のデータによると、アプリをインストールしてから3日以内に平均77%、30日以内に90%の日々のアクティブユーザーが消失することが明らかになっています。つまり、ほとんどのアプリはダウンロードしてから数ヶ月以内でユーザーに利用されなくなっているのです。

アプリの運用において、ユーザーに使ってもらわなくては、事業として成立しません。だからこそ、アクティブユーザー数をみていく必要があります。

アクティブユーザー数を示す指標は、1ヶ月間に利用したユーザー数である「MAU」や週毎の「WAU」、日毎の「DAU」が用いられています。それぞれ「計測対象期間」が異なり、アプリの目的や特性、ユーザーの使用用途によって使い分けます。

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コスメのクチコミアプリ「LIPS(リップス)」では、DAUやMAUを指標とし、そこに紐づく形で、ダウンロード数、7 day retention rate(7日後の起動率)をおいていると述べています

そして、CPI(Cost Per Install:ユーザー獲得単価)とARPU(Average Revenue Per User:1ユーザーあたりの売り上げ)を出して、LTVに見合うように広告を打っているそうです。

参考:推測せずに、計測せよ。「マーケのホンネ」で語られたスタートアップ企業のマーケティングのリアルとは?

自社の施策にあった指標を見直していく

CX(顧客体験)の向上のために、どの指標を設定するかは、事業や施策ごとに変わってきます。常に、より良い顧客体験(CX)を提供していくという、顧客視点を忘れないようにしながら、自社の施策にあったKPIを設定していきましょう。

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