店舗とデジタルをまたぐ顧客理解を、成果につなげる。コーセーとHISに見るデータ活用と顧客体験設計
店舗とデジタル双方に顧客接点を持つ企業では、それぞれの接点で得られる情報を、一人の顧客の行動として捉えることが重要です。本記事では、株式会社コーセー「DECORTÉ(デコルテ)」と株式会社エイチ・アイ・エスの事例から、店舗とデジタルをまたいで顧客の行動や状態を理解し、その理解を、より良い顧客体験や事業成果につなげるための考え方を紹介します。

店舗、EC、Web、アプリ。
それぞれの接点でデータは取れていても、顧客が実際にどのように比較し、迷い、購入や相談に至っているかまで見えているでしょうか。
「データはあるが、現場の接客に活かせていない」「デジタル担当と店舗担当の連携が難しく、チャネルごとの分断が起きている」。オムニチャネル化を推進する企業の多くが、こうした壁に直面しています。
たとえば、店頭で購入した顧客が、その前日にECで何を調べていたのか。店舗へ相談に来る顧客が、来店前にWebでどの商品やプランを比較していたのか。
こうした行動が見えると、「店舗利用者」「Web訪問者」といったチャネル単位の捉え方だけでは分からなかった、顧客の検討状況や関心が見えてきます。
その理解を接客やコミュニケーションに活かすことで、それぞれの接点を、より顧客に合った体験へ変えていくことができます。
実際に株式会社コーセー「DECORTÉ」と株式会社エイチ・アイ・エスでは、こうした顧客理解を起点に、チャネルをまたいだ体験設計を進めています。
店舗とECをまたいで、「顧客がどう選んでいるか」を理解する
コーセー「DECORTÉ」|チャネル横断のデータから、購買前後の行動を理解する
【事例サマリー:コーセー「DECORTÉ」】
・課題:店舗とECの分断により、顧客の一連の購買体験が見えづらい
・施策:共通IDによるデータ統合と、n1分析による関与度に応じた体験設計
・成果:あらゆるタッチポイントで「必要な時に、必要な情報をブランドらしく届ける」という顧客体験の高度化を進めるなか、2024年にブランド全体で過去最高売上を記録
顧客は、SNSで商品を知ってECサイトを訪れたり、身近な人から勧められて店舗へ足を運んだり、ECで商品情報を調べたあとに店頭で実物を確認して購入したりと、複数のチャネルを行き来しながら商品を検討・購入しています。
購入後に、再びECで口コミや使い方を調べることもあります。
化粧品ブランド「DECORTÉ」を展開するコーセーでは、共通顧客ID「KOSÉ ID」を軸に、ECだけでなく、百貨店やドラッグストアなど店頭での購買も含めて、顧客の行動や購買履歴を捉えています。
KOSÉ IDは2021年に運用を開始し、2023年には店頭利用時にも連携できるようになりました。2024年からは、本格的な分析・活用フェーズに入っています。
チャネルを横断してデータを見ることで、それまで見えにくかった顧客行動も分かってきました。
たとえば、ロイヤル顧客を対象にn1分析を行ったところ、店頭で商品を購入する前日にECで熱心に情報収集していたり、高額商品を購入したあとに口コミを検索していたりする行動が確認されています。
こうした行動が見えると、「ECで何を売るか」「店舗でどう接客するか」を別々に考えるだけではなく、
・購入前にどんな情報が必要なのか
・店頭ではどんな提案が意思決定を支援するのか
・購入後にはどんな情報を届けるとよいのか
といった、購買前後を含めた体験設計がしやすくなります。
コーセーではさらに、「ECでの購入回数」と「実店舗での購入金額」を軸に顧客を5段階に分類し、顧客の関与度を可視化。その理解を、顧客育成シナリオやCRM施策の設計・改善につなげています。

引用:CX Clip「なぜDECORTÉは過去最高売上を記録? EC×OMO戦略の成功要因と体験設計フロー」
重要なのは、複数の接点で起きている行動を、「一人の顧客の一連のストーリー」として捉えることです。
それにより、チャネル単位ではなく顧客起点で次の体験を設計できるようになります。
「DECORTÉ」は2024年、EC・百貨店・化粧品店を含むブランド全体で過去最高売上を記録しました。KOSÉでは、あらゆるタッチポイントの顧客体験を高度化し、LTV最大化につなげることを目指しています。
Webでの検討を、店舗でのよりよい接客につなげる
HIS|Web上での行動を、来店前の顧客理解に活かす
【事例サマリー:HIS】
・課題:来店前のWeb検討状況が不明瞭で、店舗でのゼロベースからのヒアリングに時間がかかる
・施策:Web上の閲覧履歴を生成AIで分析し、来店前に店舗スタッフへ共有
・成果:提案工数を削減しながら顧客理解と提案の質を高め、相談予約経由の成約率が約5ポイント向上
旅行サイトで検索する際、行き先や予算、日程が最初からすべて決まっているとは限りません。
「この時期に行きたい」「このエリアが気になる」「予算はこのくらい」といった大まかな条件から情報を探し、比較しながら徐々に希望を具体化していく。そのうえで、店舗で相談する顧客もいます。
HISでは、店舗で相談予約をした顧客について、Web上でどのような情報を閲覧していたのかをAIで分析し、その内容を店舗スタッフに共有する「生成AIベースの相談予約ダッシュボード」を実装しています。

引用:CX Clip「成約率5ptアップ!HISが実践した「店舗×Webデータ×AI」で導く体験価値向上」
店舗スタッフは、顧客が来店する前から、どのエリアに関心があるのか、どの商品を比較していたのかといった検討状況を把握したうえで、ヒアリングや提案に入ることができます。
この取り組みのポイントは、Web上の行動データから顧客の「迷いやニーズ」を事前に読み解き、店舗での提案の質を高めることに活かしている点です。
HISの狙いは、単なる接客時間の短縮ではありません。来店前の閲覧データから顧客の関心や検討状況を把握しておくことで、ゼロから状況を確認する時間を減らし、より深い対話や提案に時間を使えるようにしています。
この取り組みの結果、相談予約を利用した顧客の成約率は、導入前と比べて約5ポイント向上しました。
取り組みは全国の店舗へ展開され、提案工数の削減や若手スタッフの早期育成にも効果が見られています。
さらに、AI活用によって店舗スタッフが顧客との対話により時間を使えるようになったことで、これまで見えにくかった顧客のニーズも捉えやすくなりました。
たとえば、行き先に迷いながら相談に訪れた顧客の声を聞くなかで、国内旅行か海外旅行かのどちらか一方ではなく、両方を候補として比較しているケースが想定以上に多いことが分かりました。
こうした顧客との対話から得られる気づきは、Web上の行動データだけでは捉えにくいものです。事前に把握できる情報をデータで補うことで、店舗ではより深いヒアリングや提案に時間を使うことができ、その対話から新たな顧客理解にもつながっています。
HISの事例は、Web上の行動データを店舗接客に活かすことで、接客効率を高めるだけでなく、顧客との対話を深め、提案の質や成約率の向上、さらには新たな顧客インサイトの獲得につなげた例といえます。
共通するのは、「顧客の今」を理解し、次の体験を変えていること
コーセー「DECORTÉ」とHISでは、取り組みの内容は異なります。
コーセー「DECORTÉ」では、店舗とECをまたいだ行動や購買履歴から、顧客がどのように商品を検討し、購入に至っているのかを捉えています。
HISでは、Web上の閲覧行動から顧客の関心や検討状況を理解し、その情報を店舗スタッフの接客に活かしています。
共通しているのは、データから「この顧客は今どんな状態にあるのか」を捉え、次の接客やコミュニケーションにつなげていることです。購入前に何を調べているのか。
何を比較し、どこで迷っているのか。
店舗を訪れた時点で、どこまで検討が進んでいるのか。
こうした顧客の状態が見えることで、届ける情報や接客の内容、タイミングも変えられます。
コーセー「DECORTÉ」では、その理解を顧客育成やLTV向上へ。HISでは、店舗での提案の質や成約率向上へつなげています。
複数の顧客接点を持つ価値は、顧客理解の解像度を高め、その理解を接客やコミュニケーションに反映することで、「顧客体験」と「事業成果」の双方につなげていけることにあります。
顧客の行動を次の体験につなげるCXプラットフォーム「KARTE」
「KARTE」は、独自のリアルタイムデータ解析基盤とAIを掛け合わせ、顧客理解から施策実行までを支援するCXプラットフォームです。金融・保険、人材、不動産、小売、旅行など、幅広い業界の企業で活用されています。
KARTEの特徴のひとつは、Webやアプリ上の行動データをはじめ、会員情報や購買情報などさまざまなデータを、ユーザー軸で捉えられることです。
さらに、顧客の「今」の行動変化をリアルタイムに捉え、その理解を次のアクションにつなげられます。

今回の事例のように、Web上での検討行動を店舗での接客に活かしたり、顧客データと生成AIを組み合わせて、行動の背景にある関心や検討状況を捉えたりすることもできます。
Webだけでなく、店舗での購買や会員情報まで顧客理解の範囲を広げることで、店舗接客やコミュニケーション設計にも活用の幅が広がります。
たとえば、
・Webとアプリをまたいだ行動を、一人の顧客の行動として捉える
・デジタル上の行動を店舗接客に活かす
・店舗とEC双方の購買から、顧客の状態を理解する
・購入前後の行動に応じて、コミュニケーションを変える
・顧客ごとの関心や検討状況をもとに、次の体験を設計する
といった活用が考えられます。
まずは、「顧客が今どう動いているか」を捉える
自社では、顧客が店舗とデジタルを行き来するなかで生まれる行動を、どこまで一人の顧客として捉えられているでしょうか。
どこで商品やサービスを知り、何を比較し、どこで迷い、購入や相談に至っているのか。
その流れを一人の顧客の体験として捉えることが、次の顧客体験を考える出発点になります。
KARTEで広がる顧客体験や、BtoC企業での活用事例について詳しく知りたい方は、プロダクト概要資料もあわせてご覧ください。