Event Report

JCBが徹底する、お客様目線の顧客接点を追求する部署横断のルールと価値観|金融業界限定勉強会レポート

会員専用アプリ「MyJCBアプリ」を会員との主要な接点として活用している株式会社ジェーシービー(以下、JCB)。同社では、役割の異なる3部署が連携し、KARTEを共通の顧客コミュニケーション基盤としてお客様一人ひとりに必要な情報を届ける体制を築いています。金融業界限定勉強会にて、いかにして施策の乱立を防ぎ、質の高いCX(顧客体験)を守っているのか、JCBが部署横断でCXを磨き続けるための試行錯誤を語っていただきました。

JCBの会員専用アプリ「MyJCBアプリ」を、会員との主要な接点として活用している株式会社ジェーシービー(以下、JCB)。同社では、カード事業統括部・販売促進部・メディアデザイン部という役割の異なる3部署が連携し、KARTEを共通の顧客コミュニケーション基盤としてお客様一人ひとりに必要な情報を届ける体制を築いています。

2026年5月27日にプレイドが開催した「金融業界勉強会」には、JCBでKARTE運用を担うカード事業統括部の浜辺 武志さん、販売促進部の藤林 健太さん、メディアデザイン部の見谷 舞さんが登壇。テーマは「部署を超えた協働をいかに成し遂げるか」です。

JCBでは、毎月のべ200人もの社内関係者から顧客向けの施策の依頼が寄せられるといいます。すべての施策を実現させることは、必ずしもお客様にとって心地よい体験につながるとは限りません。同社ではいかに施策の乱立を防ぎ、質の高いCX(顧客体験)を守っているのでしょうか。

「売上よりも、お客様の利便性を優先する」という宣言から始まったガイドライン、3部署による施策選定、粗利を共通言語にした効果測定まで。3名のプレゼンテーションと質疑応答を通して、部署横断でCXを磨き続けるための試行錯誤が語られました。

MyJCBアプリが目指す、お客様にとって心地よい顧客接点

最初に登壇したのは、カード事業統括部の浜辺 武志さん。「MyJCBアプリ」のプロダクトマネージャーとして、約4年前に同職に着任し、2年前には同アプリのリニューアルを実行しました。

浜辺さん「クレジットカードを使ってくださっている方にとって快適なコミュニケーションを通して、JCBのサービスを知ってもらい、いかにお客様の体験の質を上げられるか。それをいつも考えています」

AK104056

株式会社ジェーシービー カード事業統括部 次長 浜辺 武志氏

JCBでは、電話やメールなどの従来接点に頼らず、アプリ内でお客様とコミュニケーションを取る方針へ舵を切っています。その主要な接点である「MyJCBアプリ」で重視しているのが、4つのポイントです。

1つ目は、ログイン時のセキュリティ強度とわかりやすさの両立です。不正利用対策は重要ですが、複雑にしすぎると、お客様の利便性を損なう恐れがあります。

浜辺さん「直近では、ログインの手間を減らしながらもセキュリティ性の高いパスキーやFace IDなどの生体認証を、わかりやすく提供することを大切にしています」

2つ目は、お支払い明細確認のわかりやすさです。「何はともあれ明細が見たい」というニーズが強いため、カラータグなどを活用して自分仕様にお支払い明細をカテゴリ分けできる「家計簿機能」も提供しているそうです。

3つ目は、不正利用を防ぐためのアプローチです。浜辺さんは、これこそがJCBの一番の「推し」だと紹介しました。

浜辺さん「アプリ内で、セキュリティ設定をしていないと赤信号のようなものが灯り、直感的にとらえやすい仕組みを導入しています。不正利用対策のような、重要でありながら難しい機能をわかりやすく伝えることに重きを置いており、そこはユーザーのみなさんからも評価いただけているポイントだと感じています」

そして4つ目が、一人ひとりのお客様に合わせたアプリの使い心地です。現在はレコメンド機能なども実装し、パーソナライズにも注力されています。

こうした工夫を重ね、「My JCBアプリ」ではお客様にとって使いやすい接点づくりを進めています。その中でKARTEをどう活かしているのか。浜辺さんから、藤林さんへバトンが渡されました。

CXを守り、部署間の公平性を保つWEB接客ガイドライン

続いて登壇したのは、販売促進部の藤林 健太さん。KARTEのほかSalesforce、Treasure DataなどのデータマネジメントやSMS配信、LINE公式アカウントの運営をしながら既存会員向けのクロスセルなどを担当しています。

藤林さんがまず語ったのは、他部署との協働のベースとなる「考え方」です。藤林さんが所属する販売促進部は、その名の通り売上に責任を負う部門です。しかし、藤林さんはKARTE導入前から「売上よりもお客様にとっての利便性を優先する」と宣言し、上長からもその方針に対する決裁を得ることで、CXの向上に注力する姿勢を明確にしていました。

さらなるCX向上を追求する手段の一つとしてKARTEを導入した一方で、藤林さんには「いち消費者としての違和感」もありました。

藤林さん「いち消費者として日々いろいろなアプリを利用していますが、アプリを開くたびに広告色の強いポップアップが出ることに対して、抵抗感を持っていました。
KARTEを導入してからは、毎月各事業部から『こんな施策を打ってくれ』と依頼が来るようになりましたが、すべてに応えていては施策が乱立し、お客様の体験を損なってしまう恐れがありました」

AK104271

株式会社ジェーシービー 販売促進部 次長 藤林 健太氏

そこで定めたのが「WEB接客ガイドライン」です。「1ユーザーの1セッション中に掲出するポップアップは1つまで」「同じポップアップは2回出さない」「画面の30%以上は絶対に支配しない」「動的なポップアップは使わない」といったルールを定め、その運用を徹底しました。

ガイドラインと並ぶもう一つの柱が、3部署による合議制の施策選定です。各部署から寄せられる施策を、今回登壇した3人で確認し、実施可否を決定しているといいます。

藤林さん「さまざまな試行錯誤を経て、現在は『利便性』『利得性』『安全性』という3つの基準を設け、一つひとつの施策に対して点数を付けています。『この施策は、利便性が3点で、利得性は2点、安全性は5点だね』といった具合です。所属部署もミッションも異なる3人が、共通の基準から施策を評価することで、公平性を担保しています」

施策の選定と実施の流れは、月初に全事業部からエントリーシートを集め、一つひとつを採点するところから始まります。採択が決まっても、事業部の希望通りに実施するのではなく、部門の担当者と必ずミーティングを設け、「なぜやるのか」「本当にトップページでやる価値があるのか」と、対話を重ねながら要件を固めていくそうです。

AK104229

JCBが実践している、施策の募集と実施・検証のサイクル

FAQで不安を減らし、申し込みやすい体験へ

藤林さんに続いて登壇したのは、メディアデザイン部の見谷 舞さんです。マーケティングや販促ではなく、FAQやチャットボットによるお客様の自己解決率向上を担っている見谷さん。それらの機能の利用を広げる中で出会ったのが、KARTEだったといいます。

見谷さん「FAQやチャットボットは、お客様が使ってくれないと意味がありません。KARTEの強みはプッシュでお知らせできるところなので、お客様自身での活用を促すのに役に立つのではないかと。そこで、マーケティングを担当している藤林さんに声をかけて、一緒に導入を進めることにしました」

AK104242

株式会社ジェーシービー メディアデザイン部 次長 見谷 舞氏

KARTEの活用は、お客様が手続きの途中で迷いやすい場面を支える施策にもつながりました。たとえば、JCBが展開する最上位カード「JCB ザ・クラス」のメタルカードの申し込み促進です。「MyJCB」ブラウザのトップにKARTEで申し込み動線を提示したものの、以前は途中離脱率が高く、手続き完了までの動線設計が課題となっていました。そこで、プレイドグループのRightTouchが提供し、KARTEとの連携性も高いWebサポートプラットフォームである「QANT Web」で申し込み画面に手数料などに関するFAQを提示したところ、お客様が不安や疑問を解消しやすくなり、申し込み完了率は施策なし時と比べて170%にアップしました。

Webサイトの動的な作り分けができるKARTE Blocksを活用した施策も、大きな成果につながりました。お客様の会員属性に合わせてトップ画面のコンテンツの掲出箇所を増減させ、内容も変化させる施策を実施。必要な情報に触れやすい状態をつくった結果、各コンテンツの平均CTRは約10倍になったと言います。

部署横断の信頼を支える、成果の「共通言語」

プレゼンテーションに続いて実施された質疑応答では、会場に詰めかけたKARTE Friendsからさまざまな質問が寄せられました。

まずは、司会を務めたプレイドの門口が代表して「部門が違う中で、なぜ横の連携が当たり前にできるのか」と問いかけました。

AK104030

株式会社プレイド アカウントディレクター 門口 真士

浜辺さん「各部署には、やりたいことがある一方で、自部署だけではリソース的に実現しきれない苦しい状況がありました。『KARTEでやりたいことはあるけれど、運用に10人は投入できない』と感じていましたし、技術的な課題もありました。そのような状況の中で、3部署それぞれが『他部署と協力して、少しずつリソースを出し合えば大きいことができる』と考えていたからこそ、スムーズな協働ができたのだと思っています」

次に取り上げられたのは、導入初期の課題に関する質問です。現在は高い成果を出しているものの、初期にはどのような苦労があったのか。藤林さんは、施策選定の難しさを振り返りました。

藤林さん「難しかったのは、施策の選定基準です。事業部から持ち込まれた施策の中には、明らかに効果が期待できないものもありました。選定基準を明確にしていなかった当時は、そういった施策も受け取らざるを得ませんでした。」

AK104345

KARTEの導入後、最初に実施した施策のCVRはまさかの0%という結果でした。この反省から、事業部と実施可否について十分に時間を取って話し合うようになったといい、前述の「WEB接客ガイドライン」の策定後も、事業部との対話は徹底されています。

また、KARTE活用を進めるうえでは、経営層に対して明確な「成果」を示すことも重要でした。しかし、CXに関する取り組みの中には、お客様の利便性向上など成果の定量化が難しいものも少なくありません。そこで、JCBは成果を示すための「共通言語」を設定しているといいます。

浜辺さん「実施した施策の成果を、あるルールに則って『粗利額』に換算しています。これによって、経営層に対して『合計で何億円ほど貢献したことになる』という説明が可能になりました。

私が担当するアプリに関する施策は、特に成果を定量化しづらいのですが、たとえば、あるセキュリティに関する施策を打ったことで不正利用を抑制できたとして、その経済効果を算出するわけですね。そうして、利益というわかりやすい数字を用いることで、経営層からの信頼も獲得できたと思っています」

AK104365

会場ではリアルタイムに質問が投稿でき、活発に質疑応答が交わされた

ガイドラインを育て続け、納得できる施策選定へ

最後に会場から、「ガイドラインと選定基準はいかに策定し、運用しているのか」という質問が寄せられました。

浜辺さんは「選定基準として『利便性』『利得性』『安全性』という項目を設けたものの、それぞれの点数の付け方については、実際に施策の選定を進める中で感覚をつかんでいくしかなかった」と答えました。

また、藤林さんはガイドラインの運用方法をこのように述べます。

藤林さん「ガイドラインはブラッシュアップし続けています。最初につくった時点では、足りない観点も多かったため、そのままではワークしませんでした。3人で話し合う中で、さまざまなルールを追加していったのです。

たとえば、施策の選定についても、当初は合計点が3点でも合格してしまうことがあったんですよね。結果を見るとそれではダメだろうということで合格ラインを4点に定めたり、解釈に幅が出かねない『利便性』といった言葉の定義を次第に明確にしたりしていったんです。そうすることで、全員が納得できる施策選定ができる状態になってきました」

質疑応答の後には、「所属部門を超えた他部門との横連携、どのように行っていますか?」をテーマに、参加者同士のディスカッションを実施。各テーブルで、部門間連携に関する意見交換が行われました。

AK104424

その後は軽食と飲み物を交えた交流会を実施。カジュアルな雰囲気の中、金融業界特有の悩みに対する対応策や、部門間連携に関する知見を共有する姿が見られました。

AK104486
AK104504

プレイドでは今後も、業界特化型の勉強会を通じて、皆さまの交流と学びの場を提供していく予定です。次回の開催もぜひお楽しみに。

SHARE