お客様の数だけ、ストーリーがある。シャープの「COCORO STORE」がKARTEで深める、一人ひとりに向き合う顧客体験

「COCORO満たされる生活を、お客様と共に創るSTORE」を掲げる、家電・スマホなどの各種シャープ製品や消耗品、また、マスクなど幅広い商品を取り扱うシャープの公式通販サイト「COCORO STORE」。KARTE導入前の課題、顧客理解の深まり、そして今後の展望を伺いました。

家電メーカーが、自らの手でお客様に商品を届ける――。シャープが運営する公式通販サイト「COCORO STORE」にとって、コロナ禍での不織布マスク販売はEC事業の在り方そのものを問い直す転機となりました。そのときの経験が、ECサイトでの顧客データ活用と顧客体験の改善を本格化させる出発点になったといいます。

「COCORO満たされる生活を、お客様と共に創るSTORE」を掲げる、家電・スマホなどの各種シャープ製品や消耗品、また、マスクなど幅広い商品を取り扱う同社の公式ECサイト。その変革を支えてきたのが「KARTE」です。メール配信ツールのリプレイスから始まり、Web接客、データ基盤の整備へと活用範囲を広げ、「届けるべき顧客に届ける」運営へと少しずつ歩みを進めてきたといいます。

今回、同社のマーケティング統轄部 デジタルマーケティング部 部長 坂田 新吾さん、課長の髙尾 広行さん、係長の太田 昂志さんに、KARTE導入前の課題、顧客理解の深まり、そして今後の展望を伺いました。

マスク抽選販売で900万人の応募者。コロナ禍をきっかけとしたECサイトの転機

まず、COCORO STOREについてお伺いさせてください。

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坂田:COCORO STOREは、最新の家電製品や交換用の消耗品はもちろん、マスクや食品、デジタルサービスまでを幅広く取り扱う、シャープとお客様が直接つながるECサイトです。

もともと、COCORO STOREは細々と運営していました。社内でも存在を知らない人がいたほどです。転機となったのはコロナ禍で、シャープがマスクを製造してECサイトで販売したことでした。

約900万人が申し込むという想定外の反響があり、ECサイト運営の「やり方を変えないといけない」という意識が一気に社内に広がりました。我々は家電メーカーですので、製品をお店に卸すのが本業です。直接お客様に販売した経験はほぼなく、言ってみれば素人集団の集まりでした。ただ、マスクの販売を通じて、お客様とのコミュニケーションやデータ活用の重要性に気づくことができました。

最近マスク定期便を解約されたお客様からも「今まで本当にありがとうございました」という感謝の声が届きますし、当時マスクを買ってくださったお客様の中には、その後も COCORO STORE で家電を購入してくださる方が少なくありません。あの経験が、お客様に寄り添うCOCORO STOREの原点になっています。

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シャープ デジタルマーケティング部 部長 坂田 新吾さん

転機を迎えた後のCOCORO STOREはどのような課題を抱えていたのでしょうか。

坂田:当時は、月に約60回ものメールを200万人以上の会員のみなさますべてに一斉配信していました。セグメントも分けず、女性向け化粧品や美容家電などのメールも性別や年齢問わず、お客様のニーズを踏まえないまま、多くのメールを配信していました。 今振り返ると顧客体験の視点が抜け落ちたコミュニケーションを行っていました。

その結果、メール配信によるオプトアウトも増えていましたし、お客様からはメールが多すぎるといった厳しいご意見もいただくなど、社内からセグメント配信をすべきだという声が出てくるようになりました。しかし当時使用していたMAツールではセグメントを作るにはSQLを書く必要があり、当部のリソースでは、全ての依頼に応えるのは現実的ではありませんでした 。A/Bテストによる施策の比較検証も難しく、メールの開封率やクリック率などを改善するためのPDCA、お客様がどのようにWebサイトを見て購買しているかも把握できすUI/UXの改善もあまりできませんでした。 やりたいことは明確なのに、ツールの仕様や工数がハードルになって実行できない状況が続いていました。

髙尾:また、メール配信だけでなく、サイト内の体験においても課題が放置されたままでした。家電メーカーならではですが、商品数が非常に多く、たとえば洗濯機には糸くずフィルター、空気清浄機には交換フィルターといった関連商品があります。

これらの関連商品をサイト内で表示する仕組みを構築していたのですが、商品の関連設定を手動で行うのは膨大な作業です。そのため、過去に一度設定したまま誰もメンテナンスしていないという状態が生まれていました。しかも、その設定は商品担当が「売りたいもの」を出す仕組みで、お客様に合ったものを提案するレコメンドとはほど遠いものでした。

ECサイト未経験者でもできた、自分たちで回せる仕組み

課題を解決するために、KARTEを導入することになった背景を教えてください。

坂田:いろいろな外部の支援会社の方に「どのMAツールがいいですか」と聞くと、必ず KARTEの名前が出てきました。セグメントやシナリオメールの設定も簡単で、コンテンツのテンプレートを使えば、専門知識がなくても簡単にメールを送れるという点が大きかったですね。

太田:私はサイト上での商品レコメンドの実装を強く望んでいました。以前のツールでもルールベースでの設定は可能でしたが、工数的に運用が回らない。KARTEなら動的なレコメンドを実現できると聞き、それが強いモチベーションになりました。

髙尾:メール配信にかかる時間の短縮に加え、Web接客でいろいろなことができる点が魅力でした。以前はマスク購入者に定期便を案内するためのポップアップを無理やり作っていたので、それが簡単にできるようになるのは非常に便利になると感じました。

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シャープ デジタルマーケティング部 課長 髙尾 広行さん

導入後、活用が軌道に乗るまでにはどのようなステップを踏みましたか?

太田:まずメール配信ツールのリプレイスから着手しました。リマインドメールや誕生日メールなど、配信タイミングが先に決まっているメールを優先しました。

髙尾:前のツールにためていたテンプレートをKARTEに入れる作業もスムーズで、実際に送付する際にもトラブルなく完了できました。

太田:並行して、KARTE Datahubを活用したレコメンドの実装にも取り組みました。KARTE Datahubのクエリテンプレートをそのまま使うのではなく、販売実績データをKARTE Datahubで連携し、ロジックを調整しています。プレイドさんのサポートや参考ドキュメントが豊富にあったので、データ基盤の整備も順調に進めることができました。

「届けるべき顧客に届ける」を形にした3つの施策

COCORO STOREにおいて、印象に残っている施策について教えてください。

坂田:ポイントプログラム「COCORO POINT」を開始したものの、商品の購入以外にお客様にポイントを貯めていただく機会をほとんど用意できていませんでした。とはいえ、なにか機能を追加したくても技術部門に開発を依頼すると半年以上かかってしまう。そんなときに、KARTEのWeb接客機能を使えば会員向けのルーレット型のコンテンツがつくれそうだと分かり、1か月足らずで「楽しみながらポイントを貯められる場」をお客様にお届けできました。

いまではルーレットを楽しんでくださるお客様が着実に増えていて、これまで眠ったままだったCOCORO POINTが、お客様の日常の中に少しずつ溶け込み始めています。サイトを訪れる「楽しみ」がお客様の側に生まれた、という感覚です。その後もA/Bテストで少しずつ改善を重ね、サイトを訪れること自体に「楽しみ」を感じていただけるようになり、ルーレットを回すことがお客様の日常の習慣へとつながりました。その結果、施策開始時と10か月後との比較でルーレットを楽しむお客様が約60%も増加しています。単なる一時的な集客ではなく、お客様とブランドの継続的な接点を築けたことは、KARTEがなければ実現できなかった大きな変化だと感じています。

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太田:KARTE Datahubで自社の商品データを連携させたことで、カート画面などにおいて、お客様一人ひとりの閲覧・購買行動に基づいた柔軟な商品提案が可能になりました。以前のように担当者が「関連商品」を手動で設定するのではなく、最新の行動ログと商品データを掛け合わせることで、今まさにそのお客様が必要としているものを自動でレコメンドできる仕組みです。その結果、お選びいただく商品の幅も少しずつ広がってきています。

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太田:ほかに、メールのクリックを視覚化するヒートマップを独自に構築しました。以前は「クリック率何%」という報告しかできず、たとえば福袋を訴求するメールでどの商品にお客様の関心が集まっているかといった詳細は、パラメータを手作業で突合して約1時間かけて調べていました。それをシステム化して約5分で生成できるようにしたことで、商品担当者が自分でお客様の関心を確かめられる環境が整いました。

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お客様の数だけ、ストーリーがある──ロイヤルティ分析と n1 ワークショップがもたらした顧客理解

KARTEの導入後、顧客理解の面ではどのような変化がありましたか?

坂田:ロイヤルユーザーを増やすという当たり前のことに向き合えていなかったのですが、ここにも変化が生まれました。

太田:ロイヤルティの定義を行うために試行錯誤した結果、「セッション数」と「半年間の平均注文単価」を組み合わせると、将来の売上貢献度と非常にきれいな相関が出ることが分かりました。いわば、どの指標が伸びればロイヤルユーザーへと成長するのか、その「予兆」をデータで捉えられるようになったのです。

この仮説に基づき、将来ロイヤル化する可能性が高い「予備軍」のお客様に対して、再訪の習慣化を促す特別なルーレット施策などを実施しました。その結果、狙い通りに来訪頻度が向上し、上位ランク(ロイヤル層)へ移行するお客様を増やすことができました。

一方で、ロイヤルユーザーの定義が進むほど、この方たちはなぜサイトに来訪し、どういうきっかけで購入に至ってるのか。数値に表れない部分に疑問が沸くようになってきました。

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シャープ デジタルマーケティング部 係長 太田 昂志さん

PLAID ALPHAチームとの n1 ワークショップも実施されたと伺いましたが、どのような課題や仮説を発見できましたか?

太田:ワークショップでお客様のWeb上での行動を観察しました。観察したのはスマートフォンを購入されたお客様で、実は購入の半年ほど前からサイトを訪れて商品をチェックしていたことが分かり、検討プロセスがこんなに長いのかと驚きました。

髙尾:PLAID ALPHAの方が、事前に私たちの要望を聞いたうえで、「なぜこのような行動を取ったのだろう」という仮説を検討しやすいお客様サンプルを複数集めてくれていました。顧客を見ずに数値だけを見て施策を考えるのと、こうした行動データを見てから考えるのとでは、発想の質がまったく違います。

坂田:お客様一人ひとりの行動の差について肌感を持って理解できたのが、n1ワークショップでの一番の収穫です。ワークショップ後、顧客行動を分析して得られる発見が増えています。気になることがあると、自発的にn1分析を行うメンバーも増えました。

たとえば、高額な空気清浄機を購入されているお客様の行動が気になったので、n1分析をしてみたんです。すると、サイトを訪れてからほとんど迷わず、短時間で購入を決められる方が多いことが分かりました。さらに調べてみると、中規模の事業所で事業用としてお使いになっているケースが目立ったんです。家電メーカーから直接買うことに納得しているお客様は、こうした「迷わず購入する」買い方をされるんだと気づかされました。

この発見をもとに、たとえば、空気清浄機をご購入いただいた事業所のお客様には、事業所で使われる(購入される)頻度の高い商品を改めてご提案するなど、特定のお客様に向けて商品をお知らせする方法を考え、お客様一人一人の日常に寄り添ったメールのご案内に加え、メールの許諾が取れていないお客様には、今春よりKARTE Signalsを導入し、One to Oneで広告配信を行い始めました。

「感覚」ではなく「お客様の姿」で語り合うチームへ

KARTEの導入は組織にどのような変化をもたらしましたか。

坂田:毎週開催される部内マーケティング会議では、データをもとに議論する文化が根づきました。メールの開封率が悪ければ「A/Bテストやってるの?」と誰かが言い、メールの件名の問題なのか送信タイミングの問題なのかをデータで検証する。感覚ではなくデータで話す空気が醸成されてきました。KARTEシリーズを活用して、Web接客、メール、サイト内のUI改善、デジタル広告など、さまざまな顧客接点において一貫したデータに基づき、即座に検証を回せる環境が整いました。やりたい施策を各領域でスピード感を持って実行できるため、検証から得た気づきを次の施策へ活かすという良いサイクルが生まれています。

もともとECの経験がない素人集団でしたが、KARTEとの出会いもあり、デジタルスキルと顧客理解の知見が飛躍的に向上しました。ECは売上という結果がすぐに分かるため、PDCAが回しやすく、スキルが付きやすい。KARTEによって人材が日増しに育っていると感じています。

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最後に、今後チャレンジしたいことを教えてください。

髙尾:COCORO STOREの情報を、必要としている方にきちんと届けられるように、いまよりもさらに適切な情報の出し分けを実現したいですね。お客様にとって煩雑に感じられるコミュニケーションは、結局はお客様との関係を細らせてしまう。お客様一人ひとりの状況に寄り添った届け方を、これからも探っていきたいです。

太田:サイト上のレコメンドだけではなく、メールでもレコメンドを実装し、お客様が欲しいと思っている情報をその方に届けたい。それが次の目標です。

坂田:分析をAIに任せて、施策の企画と検証にもっと時間を割きたいですね。お客様の行動の変化を毎日キャッチして、すぐに次の打ち手につなげていく。そんなサイクルを当たり前にしていきたいです。また、アプリのお客様はロイヤルティも購入率も非常に高いため、今後はさらにアプリを通じたコミュニケーションを強化していきたいと考えています。そうすることで、お客様の日常に寄り添い、より密接な関係を築ける場を広げていけるはずです。

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