コンシェルジュのように寄り添って「解決するAI」へ。カウネットがFAQ・AIエージェント・有人チャットを統合して進める、個社最適な顧客サポート

オフィス用品通販のカウネットは、法人向けEC特有の複雑な問い合わせに対応するため「QANT Web」と「QANT Webエージェント」を導入。FAQ・AI・有人チャットを統合し、自己解決率70%を実現しました。ノンボイス化で効率化を図りつつ、人はより深い相談に応じる体制へシフト。今後はWeb行動データと連携し、コンシェルジュのようにアクションまで完結できる「解決するAI」を目指し、CX向上を推進しています。

法人向けECでは、返品や配送、キャンセルなどの条件が顧客ごとに大きく異なります。それぞれの問い合わせに、従来の検索型FAQやシナリオ型チャットボットだけで対応するのは難しい状況がありました。
オフィス用品通販サービスを展開するカウネットは、こうした顧客一人ひとりの文脈・状況に応じた応対するため、Webサポートプラットフォーム「QANT Web」と対話型AIエージェント「QANT Webエージェント」を導入。有人チャット「KARTE Talk」も連携し、電話以外の手段でいつでも解決できる、ノンボイス(※)化を進めながら顧客の利便性を高め、人にしかできない深い相談には、有人応対でより丁寧に向き合える体制づくりに取り組んできました。
※コンタクトセンターなどのカスタマーサポートにおけるFAQやチャットボット、Webチャット、メールなど電話以外の顧客応対手段を指します
今回、同社のCXデザイン本部 CX戦略部の間宮 賢治さん、長谷川 昌弘さん、倉科 裕充さんに、CX戦略部立ち上げ後の取り組み、QANT Webエージェント導入の経緯、人とテクノロジーの役割分担について伺いました。

個人向けECとは違う、法人向けECに求められる「個社最適化された顧客対応」

まず、カウネットが目指している顧客体験について教えてください。

間宮:カウネットは、お客様の体験価値を上げていくことを何よりも大切にしています。もともとは商品を通じて価値を提供してきましたが、2023年1月にCX戦略部が立ち上がってからは、サービス全体をよくしていくフェーズに入りました。

そのなかで、法人向けECとして重視するお客様体験の指標を3つ定めています。「欠品率」「配送遅延率」「電話の応答率・応答待ち時間」です。これらの指標は売上や利益と同様に全社で重要な指標として扱っています。仕事で必要な商品を扱っている以上、欠品や配送遅延は避けなければいけませんし、困ったときに電話がつながらない状態も防がなければいけません。そうした法人向けECにとって基本的な顧客体験を届けられる体制を、まず整えてきました。

その結果、過去3年で指標はかなり改善しました。お客様アンケートでも「電話がつながるようになった」という評価をいただけるようになっています。そのうえで次に取り組むべきテーマとして加わったのが、お客様自身がその場で答えにたどりつけるかどうか、いわゆる自己解決比率の観点です。これは問い合わせの電話を減らすことが目的ではありません。24時間使えるWeb上で、お客様がより便利に困りごとを解決できる選択肢を用意することが狙いです。

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CXデザイン本部 CX戦略部 部長 間宮 賢治氏

個人向けECと比較した際に、法人向けECならではの難しさはあるのでしょうか。

間宮:個人向けECと比べると、法人向けはビジネスモデルが複雑です。特に大企業のお客様向けでは、企業ごとに販売条件や配送条件が異なります。そのため個人向けEC以上に企業によってどの情報を出すかの出し分けや情報管理に細心の注意を払っています。

長谷川:間宮が言ったように大企業のお客様向けでは、返品、配送、キャンセルなどの条件が企業ごとにまったく異なります。それをWeb上でどう出し分けるかが大きなテーマです。ここができないと、自己解決率は上がりませんし、お客様の困りごとも解消できません。

そのため、ログインしているお客様のアカウントごとに、どのFAQをどう見せるかまで考える必要があります。中小企業のお客様向けでは実現できていることもありますが、大企業のお客様向けではまだ課題が残っています。来年から再来年にかけて、システム面の連携も含めて個社ごとの個別の対応を実現していきたいと考えています。

「FAQは見られているのに、問い合わせが減らない」という発見

QANTシリーズの導入前には、どのような課題があったのでしょうか。

間宮:導入していたFAQツールに、メンテナンスの難しさ、コストの高さ、柔軟性の不足、レスポンスの悪さといった課題がありました。FAQ自体は用意できていても、お客様体験を高めていくための基盤としては十分ではなかったと前任者からは聞いています。お客様の属性に応じた出し分けも難しく、必要最低限の案内にとどまっていました。

倉科:以前のFAQツールでは、どのFAQがどれくらい見られていて、実際に問い合わせ削減につながっているのかが分析できませんでした。QANT Web導入後は、FAQの閲覧状況や効果を見ながら改善できるようになりました。FAQごとにゴールを設定し、「このFAQを見たらこのボタンを押してもらえれば解決とみなせる」といった定義を置いて、100以上のFAQを追っています。
印象的だったのは、「FAQが見られているのに問い合わせが減らないなら、FAQの内容に課題がある。逆に、問い合わせは減らせそうなのにFAQが見られていないなら、コンテンツの見せ方・届け方に課題がある」という考え方です。こうした見方で数値を追えるようになったことで、コンタクトセンターのメンバー自身がダッシュボードを見ながらWebサポート施策を回せるようになりました。

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CXデザイン本部 CX戦略部 コンタクトセンターグループ 倉科 裕充氏

FAQサイトとAIエージェントを統合運用、対話型AIで自己解決率70%に

QANT Webエージェント導入の背景と決め手を教えてください。

倉科:背景として、まずコンタクトセンターには営業時間の制約があります。24時間、ノンボイス(電話以外の手段)でお客様が自己解決できる状態をつくりたいという思いがありました。さらには、FAQサイトだけでは限界があったことです。たとえば返品ひとつとっても、購入からの期間、商品の種類、お客様の状況によって回答が変わります。FAQを細かく分ければ分けるほど、お客様は知りたい情報にたどり着きにくくなってしまいます。

そのため、単語検索ではなく、お客様が自然な言葉で質問できる対話型の仕組みが必要だと感じていました。加えて、社内にもAIエージェントなどの新しい技術に前向きにチャレンジする空気がありました。
QANT Webエージェントにした決め手の一つは、既存のFAQデータ(アンサーデータ)をそのまま情報源として回答を生成できることです。チャットボット用に別系統で情報を持つと、FAQを変更するたびに両方を更新しなければならず、二重運用による負担が大きくなります。QANT WebエージェントはFAQをもとに動かせるので、二重管理を避けられました。また、QANT上にFAQの情報がすでにあるので、配信箇所などの最低限の調整だけで準備に時間をかけずにすぐに立ち上げられる点も、導入ハードルを下げてくれました。

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実際に導入して、どのような変化がありましたか。

倉科:導入は2025年9月末で、イレギュラー対応などもあったため厳密な平均値は取りづらいのですが、導入初期は月間で約2000件、お客様にWebエージェントをご利用いただいていました。お客様の質問に対して回答を生成できた割合が約80%、そのうち解決まで至った割合が約70%という結果でした。この数字だけでも、早めに導入できてよかったと実感しています。

現時点では、すべてのお客様に共通して案内できる内容が中心です。そのため、一般的なFAQでは対応できない問い合わせや、お客様の属性に応じた個別対応にはまだ課題があります。ただ、ご不便を訴える声は特にありません。定点アンケートや困りごとの投稿でも、使いづらいといった意見は出ていないことも、ポジティブに捉えています。

幅広い問い合わせはエージェントへ、深い相談は人へ

ノンボイス化が進むなかで、有人チャットへの影響はありましたか。

倉科:Webエージェント導入後、適切に回答できない場合は自動的に有人チャットにつなぐ導線を設けています。当初は有人チャットの件数が増えすぎるのではないかと懸念していましたが、実際には大きな増加はありませんでした。電話対応と同じように、安定した運用が続いています。

一方で、障害時には有人チャットに集中し、対応が難しくなる場面もありました。その際は待機の設定などを調整しながら乗り越えました。チャットも電話もメールも、お客様にとって「選べる安心感」につながっていると捉えています。

自己解決が進んだ先で、人にはどのような役割が残ると考えていますか。

倉科:人に聞いてほしい、深く相談したいというニーズは残ります。だからこそ、AIを駆使しながら簡単な問い合わせはWebで解決可能にしていくべきだと考えています。その一方で、オペレーター対応ではより深い問い合わせに時間を使えるようにしたいと考えています。そのために、お客様の声や音声の書き起こしデータを使って、応対の品質も高めていきます。

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CXデザイン本部 CX戦略部 コンタクトセンターグループ 長谷川 昌弘氏

長谷川:「電話をかけたい」というニーズ自体を否定するわけではありません。目指しているのは、本来ならWebで完結できるはずの事柄が、答えが見つからないためにやむを得ず電話での問い合わせになってしまうという状況を解消することです。そのうえで、人が対応する場面では、注文にもつながるような、より丁寧なコンシェルジュのような応対を担っていけるとよいと思っています。

間宮:私はどちらかというとAI活用に振り切って考えるタイプだと自覚していますが、それでも人が不要になるとは思っていません。むしろ人の価値は高まっていくはずです。クレームに応対するだけでなく、クレームを検知して根本解決を促す司令塔的な役割など、人にしかできない仕事がよりスペシャルになっていきます。カウネットを体現するような、当社らしい感動していただける応対を目指していきたいですね。

案内で終わるAIから、コンシェルジュのように完結まで伴走できるエージェントへ

今後、QANT Webエージェントで実現したいことは何でしょうか。

間宮:理想は、情報の案内で終わるのではなく、実際のアクションまで完結することです。たとえば「カタログがほしい」とおっしゃったときに、申し込みフォームを案内するだけでなく、裏側で連携して自動で送付まで進む状態です。返品も同じで、エージェントが指示を受けて処理まで完了できれば、お客様にも、運営企業側にもよい体験になります。
長谷川:そのためには、ログイン情報やページ閲覧情報などのWeb行動データと連携し、お客様がまさに今ご覧になっている画面の情報を取得できることが重要です。注文情報の載ったページを開いている状態で「この商品をキャンセルしたい」とおっしゃったら、機械的に確認をせずとも、その文脈を踏まえてお応えしたい。そうなれば、より人のコンシェルジュに近い支援になります。

一方で、課題も多くあります。商品データとの連携、物流管理システムとのリアルタイム連携、複数システムの接続、お客様の情報の扱い、AIセキュリティ対応など、具体化するほど論点が増えます。ただ、社内ではシステム投資やテクノロジー活用に前向きで、全社員向けのプロンプト作成研修も実施しています。課題が見えていること自体、前進している状態だと捉えています。

最後に、VoCの活用について、今後の方向性を教えてください。

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間宮:VoCはお客様体験の改善にとって神経のようなものです。音声をテキスト化し、AIで分析し、可視化して社員に伝え、その結果をまたVoCで確認する。このサイクルをつくっています。ただ、現状はまだ半自動で、ツールも分かれており、バケツリレーのように回している部分があります。ここをもっとシームレスにしていきたいです。

さらに今後は、VoCだけでなく、Web行動データや顧客属性など、さまざまなデータと組み合わせていきたいと考えています。QANT WebエージェントやFAQ改善の取り組みも、その大きな流れの中にあります。今後はQANT VoCQANTナレッジデスクQANTスピークの導入などAIオペレーターの領域も検討の対象に入っています。顧客接点を横断した、よりパーソナライズ化された支援と、より速い改善サイクルの両立が、次のテーマになっていくと思います。

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