Event Report

CDPとKARTEをつなぎ、柔軟なデータ連携施策を実現。ラジコによるデータドリブンなアプリ改善

電通デジタルとKARTEを提供する株式会社プレイドの共催セミナー「ラジコ流 CDP活用の極意 導入1ヶ月でスピード実現したデータ連携施策とは」では、株式会社radikoのプロダクトオーナー 帆苅晃太さん、株式会社電通デジタル コンサルティングマネージャー 羽田裕哉さん、株式会社プレイドPMM矢ノ目亮が登壇。「radiko」のCDP活用のプロセスやKARTEを用いた施策事例、データドリブンなPDCAサイクルのポイントなどの実践知を共有しました。

近年、CDP(※)を導入する企業が増えている一方、データを蓄積、統合するにとどまり、貯めたデータを適切に活用しきれていない例も少なくありません。
※複数のツールにまたがる顧客データを統合・管理を行うためのツール

国内最大級のラジオ配信プラットフォーム「radiko」では、CDPをKARTEと連携させることで、貯めたデータを柔軟に活用できる環境を構築。データ連携施策の改善をクイックに重ね、成果につなげています。

電通デジタルとKARTEの共催セミナー「ラジコ流 CDP活用の極意 導入1ヶ月でスピード実現したデータ連携施策とは」では、株式会社radikoのプロダクトオーナー 帆苅晃太さん、株式会社電通デジタル コンサルティングマネージャー 羽田裕哉さん、株式会社プレイドPMM矢ノ目亮が登壇。

「radiko」のCDP活用のプロセスやKARTEを用いた施策事例、データドリブンなPDCAサイクルのポイントなどの実践知を共有しました。

使い続けてもらうために。アプリ外の体験向上に注力

「radiko」は、インターネットでラジオ放送を聴取できる、国内最大級のラジオ配信プラットフォームです。スマートフォンやパソコンはもちろん、スマートスピーカーや車載機器など、複数のデバイスに対応しています。

主な機能として、地上波のラジオ放送を生放送で聴ける「ライブ」、聴き逃した番組を後から聴ける「タイムフリー」、放送エリア外のラジオ番組を聴ける「エリアフリー(有料)」があります。

月間ユニークユーザーが900万人を超える「radiko」では、どのような顧客データをCDPに格納し、活用しているのでしょうか。冒頭ではCDP活用の状況について帆苅さんが説明します。

帆苅さん「弊社のCDPには、聴取ログと行動ログが格納されています

聴取ログとは、音源再生中に1分に1度の間隔で発火されるログです。放送局などにも共有する公式な数値ですので、厳密な計測が求められます。行動ログは、アプリやウェブのユーザー行動をトリガーに、フロント側から発火されるログです。聴取ログのように公式な数値としては扱われないため、計測方法などは比較的、柔軟に変更できます。

CDP内では、共通のユーザーIDをキーにして、これらのログを自由に組み合わせて活用できるようになっています」

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CDPに聴取ログと行動ログを貯め、組み合わせて活用する環境が整っていた「radiko」。KARTEを導入した背景には、どのような課題があったのでしょうか。

帆苅さんが挙げたのは「アプリ外の体験の継続的な改善」でした。

帆苅さん「ユーザーに『radiko』を使い続けてもらうには、アプリの起動から使い方の理解、番組の検索、番組のフォローやシェアといったステップを踏んで、サービスの魅力を知ってもらう必要があるという仮説を持っていました。

かねてから、そのプロセスの途中で離脱してしまったユーザーに対して、アクションを行いたいと考え、アプリ自体のユーザー体験改善や機能追加、番組のレコメンドロジックの調整などを行ってきました。

一方、すでに一度離脱し、アプリを開かなくなったユーザーに、再び使ってもらうためのアプリ外でのアクションは、やり切れていない状況でした。たとえば、目的のコンテンツを探し出せなかったユーザーに合わせた番組を、プッシュ通知などでおすすめし、もう一度使ってもらう機会をつくれないか、といった話は社内でも上がっていました。

さらに、先ほどお話した通り、CDPには一定のデータが貯まっていましたので、これをアプリ外の体験向上にも活用したいと考えていました。そのためのツールを検討する中で、候補に挙がったのがKARTEだったんです」

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データを活用してアプリ外の体験向上を目指すにあたり、帆苅さんがKARTEを選んだ理由は大きく3つあったそうです。

  1. CDPとの自動連携の容易さ
  2. 施策設定支援などのサポートの充実
  3. モチベーションの上がるUX

一つは、CDPとの自動連携の容易さです。KARTEの「ジョブフロー」と呼ばれる機能を活用すれば、CDP内のデータテーブルの更新や、あらかじめ設定した頻度に合わせて、KARTEにデータを自動連携、施策の実施や分析に活用できます。

「radiko」ではCDPの更新に合わせてデータを抽出、プッシュ通知やアプリ内メッセージの配信などを行う仕組みを構築しました。自動連携によって細かい設定の工数を削減できるため、「ライトに施策を試したいという私たちのニーズにマッチしていました」と、帆苅さんは振り返ります。

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さらに機能以外に、活用サポートの手厚さや“気分の上がる”UXも、KARTE導入の決め手になったポイントでした。

帆苅さん「導入を決めるにあたって、SDKの実装やCDPの連携、施策設定などのサポートが充実しているかを重視していました。

その点、KARTEは専任のカスタマーサクセス担当者が導入・活用を支援してくれますし、チャットの返信も迅速。ヘルプのドキュメントも豊富なので、安心感がありました。

おかげで、KARTEに連携するイベントの設計、SDKの導入など、導入時に必要な設定もスムーズに進められ、およそ1ヶ月で施策を行う環境が整いました。

また、KARTEの気分の上がるUXも決め手の一つです。導入後も、粘り強く施策を改善していくにあたって、ツールのUXやUIが触っていて楽しいと感じるものかどうかは、とても重要だと考えています。KARTEは、デモで触っているときから、絵文字のようなキャラクターでユーザーの感情が表現されており、より一人ひとりのユーザーを知りたい気持ちになりました」

CDP×KARTEの自動連携で、プッシュ通知を細かく出し分け

実際にKARTEを導入し、CDPと連携して施策を行う環境を整えた後は、どのような施策を行ってきたのでしょうか。

一つ目は、CDPとKARTEの自動連携によるプッシュ通知施策です。

具体的には「レコメンド訴求」と「最新回訴求」「完全聴取訴求」という3種類のプッシュ通知施策を実施したそうです。

「レコメンド訴求」
・ユーザーごとに最もおすすめ度の高い番組をレコメンド
・CDPに保存されているユーザー毎の番組レコメンドデータをKARTEに自動連携、番組名/画像/リンクを変数扱いし、個別のメッセージを自動生成

「最新回訴求」
・聴取期限内に放送回を聞き逃さないようにお知らせを配信
・よく聴取している番組であるにもかかわらず、最新の放送回を聴取していないユーザーをCDPで抽出し、KARTEに自動連携

「完全聴取訴求」
・過去24時間以内に番組を聴取したユーザーをCDPにて抽出しKARTEに自動連携
・番組名/画像/リンクを変数扱いして個別のメッセージも自動生成

3種類のプッシュ通知をすべてのユーザーに配信するのではなく、ユーザーの属性や使用方法に合わせて、配信する内容や配信頻度にも「メリハリをつけた」そうです。

帆苅さん「新規ユーザーや急に復帰したユーザーは、アプリの使い方が分からなかったり、聴きたい番組に出会っていない可能性が高い。新しい番組との出会いを増やすため、レコメンド訴求を頻繁に行った後、聴いてくれた番組の最新回訴求や完全聴取訴求へと、通知の種類をシフトしていきます。

一方、すでに継続利用しているユーザーの方は、通知を送らずとも聴いてくださるので、最新回訴求も頻度を抑えています」

配信内容や頻度の細かな設定に活用されているのは、KARTE for Appが2023年3月のメジャーアップデートにて発表した新機能「KARTE Message」です。大規模なプッシュ通知配信に対応し、KARTEで計測したデータや外部から連携したデータをもとに、SQLなしで柔軟にターゲットリストを作成できる機能。データ連携による深いパーソナライズはもちろん、運用工数の削減にも貢献します。

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「細かい配信内容や頻度の設定を、KARTE側のみで簡単かつ素早く行えるので助かっています」と語る帆苅さん。KARTE Messageを使ってクイックに改善を重ねた結果、3種類のプッシュ通知施策では、各KPIに対して一定の効果が得られているそうです。

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さらに「radiko」では、企業向けに展開する「ラジコサーベイ」においてもKARTEを活用しています。

ラジコサーベイは、「radiko」で簡単なアンケートや行動計測を行い、ラジオオーディオ広告の効果を計測するサービス。CDPにて接触・非接触ユーザーを抽出し、KARTEに連携、KARTEのアンケート機能を利用して、ブランドリフト調査を実施した後、結果をCDPで集計、クライアントに提案する仕組みです。

帆苅さんによると「KARTE導入時には想定していなかった使い方」だったそう。KARTEのオフィシャルパートナー(運用実績やプロダクト理解などの基準を満たしたパートナー企業にのみ認定される)である電通デジタルのサポート、KARTEの豊富な機能によって実現できたと振り返ります。

データ活用のためのKPI設定、PDCAサイクルを回すポイント

続いて登壇したのは、「radiko」におけるデータ活用を支援した電通デジタルの羽田裕哉さん。CDPデータを活用して適切にPDCAを回す上でのポイントを紹介しました。

一つ目のポイントはKPI設計についてです。羽田さんは、追うべきKPIは「KGIと明確な相関関係がある」「すぐに効果がわかる」「施策アイデアが出やすい」ものであるべきと強調。具体的に「radiko」ではどのように検討していったのか解説します。

羽田さん「『radiko』のサービスとしてのKPIは『MAU』です。この場合、KPIを『翌月継続率』に置いてしまうと、1ヶ月単位でしか成果が見えづらく、施策アイデアが出づらいかもしれません。あるいは『開封率』に置いてしまうと、MAUに直結するのかが見えづらく、結果が不明瞭になりやすい。

こうしたよくある失敗を避け、使いやすく本質的なKPIを設定するには、地道なデータ分析と、プロダクトをよく知る担当者のビジネス理解、担当者の勘が必要だと考えています。

電通デジタルの協力のもと、「radiko」は『何をすると翌月継続するのか』を分析。すると『1ヶ月間の聴取日数が4日以上か以下か』が翌月の継続率に強く影響していることがわかりました。

そこから、「radiko」の担当者として実感があり、かつ『先週聴いた番組をもう一度リマインドする』など、具体の施策も浮かびやすいという理由で『月4日聴取率』をKPIに設定しました」

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KPI設計に続いて、データ連携におけるポイントです。

先ほど帆苅さんが紹介した通り、「radiko」ではCDPからKARTEにデータを連携して施策を実施、あるいはKARTEからCDPにデータを戻して効果測定を行う仕組みを整えました。

その際に「どんどん施策をやりたくなってしまう“沼”にハマらないように注意してほしい」と羽田さんは語り、常にユーザー視点を意識して、施策を絞り込む重要性を指摘します。

羽田さん「連携で施策の幅が広がると、つい『週一回じゃなくて毎日にしよう』と、配信の頻度を上げてみようとか、レコメンドロジックを変えてみようとか、アイデアが浮かぶと思います。

その気持ちはよくわかりますが、ユーザーにとっては体験が大きく変わらない施策、KPIへの貢献が少ない施策だと、CDPの実装コストだけがかさんでしまうというケースもあります。

これは極論ですが、KARTEは優秀なプラットフォームなので、CDPに連携せずとも、ユーザーに合わせた様々な施策を試すことはできます。CDPとKARTEを最大限活用するためには、『ユーザー視点で何を求めているのか』を踏まえて、施策を精査する意識も大切だと思います」

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データ連携に続いて、最後は効果検証についてです。ここでも、データ連携と同様、実装にかかるコストを踏まえて、最適な分析方法を選ぶことがポイントになると言います。

羽田さんが具体例として紹介したのは、「radiko」において、CDPデータとKARTEのデータを掛け合わせ、ABテストの結果をクイックに分析したケースです。KARTE側で、施策を配信する際の設定を工夫することで、データ連携にかかる工数を減らせたと言います。

羽田さん「まず、KARTEで施策を配信する前に、CDPのユーザーIDをKARTEにも連携させます。そして施策を配信する際に『IDがaで始まるユーザーをフィルターから配信から除外』を選択。そうすると『IDがaで始まるユーザー』には、施策が配信されず『それ以外のユーザー』には配信されます。

IDはCDPとKARTEで共有ですから、施策を行った後、CDP側でも『IDがaから始まるユーザー』と『それ以外のユーザー』に分けて、行動がどのように変化したのかなど、比較・分析できます。

このやり方であれば、KARTEのプラットフォームとCDPの間で、実際にデータをやり取りせずとも、擬似的に、両者を掛け合わせた分析が可能になります。もちろん簡易的なものにはなりますが、クイックに傾向を知りたい場合などは、こうしたやり方も用いることで、素早くPDCAを回すことができます」

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羽田さんのお話からは、データドリブンにPDCAを回すためには、環境構築などのシステム面だけでなく、使いやすく本質的なKPI設定や、「ユーザー視点で何を求めているのか」を踏まえた施策の精査など、考え方やマインド面でも、大切なポイントがあることが伺えました。

それらを取り入れながら、KARTEとCDPを組み合わせた柔軟なデータ連携の仕組みを用いてPDCAを回し、成果につなげてきた帆苅さん。取り組みの成果を踏まえ、今後の意気込みを語ってくださいました。

帆苅さん「これまでの施策も十分数値には貢献していますが、さらによくする余地はあるはず。スクラッチで開発していたら工数のかさむ施策も、素早く行えるのがKARTEの強み。今後も積極的に活用して、改善を続けていきます」

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